zokuダチ エスカレート編・17
復讐のゲス・14
「な、何かみらいちゃん達の方、凄い事になってる……、
薬無しで洗脳解いちゃったよ、奇跡の力ってヤツ?って、
こっちは皆そんなわけにはいかないんだよお~っ!!
だ、……誰か何とかしてええ~っ!!」
 
「ダウドさーんっ!お待たせしましたーっ!!」
 
「……は?みらいちゃ~んっ!!」
 
吠えるダウドの元に、魔法ガールズ達が
慌てて走って来た。
 
「私達もお手伝いしますっ!!長い事ご迷惑と
ご心配お掛けしまして本当にすみませんでしたっ!!」
 
「はー!みらいから聞いたよ!このお薬、
早く皆に飲ませよう!!」
 
「……リコちゃん、はーちゃん、2人とも本当に
元に戻ったんだね、良かったね……、けど、あの
乱闘騒ぎの中、残りの皆に薬飲ませるのには覚悟が
いるよお……」
 
と、ダウドが言った処に、ケイも此方の方に
駆け寄って来る。
「良かった、あんた達もやっと元に戻れたんだね、
本当に良かった……」
「ケイちゃん……、うん、色々とごめんね……」
「私達、どう皆さんに謝ったらいいのか……」
 
「あんた達が悪いんじゃないんだもん、そんなに
自分を責めちゃ駄目だよ……、ね?」
 
「リコ、はーちゃん、ケイちゃんの言う通りだよ、
もう本当に時間が無いよ、皆で行こう!ダウドさん、
ケイちゃんとアイシャさんをお願いします!私達は
残りの皆さんにお薬を飲ませに行って来きます!!」
 
「!み、みらいちゃああ~ん……」
「……ホントに気を付けて……」
 
絆を取り戻した魔法ガールズ達。リコもはーちゃんも、
今は皆を助ける事が、自分達に出来る精一杯の償いだと
思っている。
 
「行こうっ!もう少しだよっ!!」
 
「計算通りにちゃちゃっと済ませるわよっ!!」
 
「はーっ!!」
「モフーっ!モフるンもいっぱい頑張るモフ!」
 
魔法ガールズ達も復活し、女の子達も逞しくなり、
頼もしい戦力が増えたと思いきや……。
 
 
……ご苦労だった、もう引っ込め、邪魔だ……
 
……もう何もしなくていいぞ、貴様ら……、
何もするな~、貴様ら……
 
 
「……あああ、この声……、やばい、まさか、まさか……」
 
ダウドが脅えて頭を抱える。まるで現実から逃げるかの様に……。
 
「……あああっ!?皆さんっ……!!」
 
みらいが叫ぶ。気絶させられていた、グレイ、
クローディア、ホーク、バーバラ、……そして、
ガラハドが……、瞬間ワープ術で現れ、あっと
いう間に皆を取り囲みメンバーは再び危機に陥る。
 
 
……そしてその頃の、何処かフラフラ行ってしまった
らしき、出番の無いラグナ……。
 
 
「はあ、急に出て来た親切なおじちゃんに湿布薬
張って貰って漸く復活したけどさ、俺一体何処まで
歩いて来ちゃったの?屋敷の中フラフラしてたら
迷子になっちまったよ~……」
 
 
「……う、ううう~……」
 
 
「何だい?何か呻き声がすっけど、お?
あ、あれはっ!?」
 
ラグナが慌てて倒れている人物に駆け寄る。
正確に言うと人ではなかったのだが……。
 
「……やはり……、間に合わなかったのですか、
ジャミル……、さん、ぎゃ……」
 
「しっかりしろっ!トカゲちゃんっ!!……おいっ!!」
 
「……グルルウーーっ!!」
 
「……ガウウーーっ!!」
 
「おお、お前らは確かクロちゃんの!!どうしたどうした、
落ち着けよ、どうどう……」
 
ゲラ=ハはクローディアにやられた様であったが、
やはり彼女の護衛でもあり、大切な友人でもある
ブラウとシルベンには危害を加えなかった様であったが、
2匹は相当興奮していて手が付けられない状態である……。
 
「……お願いです、ぎゃ……、どうか……、
キャプテンを……、止め……」
 
「トカゲちゃんっ!?……畜生、気絶しちまったのか、けど、
このままほおっておく訳には……」
 
傷だらけのゲラ=ハを前に珍しくラグナが怒りの
真剣モードの表情を見せるのであった……。
 
 
話は再びエントランスに戻る。強敵に回った
グレイ達を前に、洗脳組でないメンバーは
どうしようも出来ない状態で追い詰められていた。
 
「フ、貴様らなど、何も持たんでもすぐに
始末出来る……、覚悟するんだな……」
 
「……グレイ……、冗談やめてよお~、どうしよう、
ア、アルは倒れてるし、あっ!!」
 
……等々、シフ達、他の洗脳メンバーも此方に
近づいて来て、敵に回った残りのメンツに
追い詰められてしまうのであった……。
 
「何だ、嬢ちゃん達はもう元に戻ったのか、
お早い事、けど、あたしらはそう簡単には
屈しないんだよ、情けない雑魚め……」
 
呆れた様にリコとはーちゃんをシフが
冷めた目で見つめた。
 
「……シフさん!お願いです、元に戻って下さい!!」
 
「はーっ!駄目だよっ!!」
 
「さっきまで敵だった癖に良く言うわね……、
コロコロとお変りが激しいです事……」
 
「……くっ!」
 
「……」
 
クローディアの冷たく言い放つ言葉にリコと
はーちゃんが悲しそうに目を伏せる。が、
みらいは2人を強く抱きしめ、凛とした表情で
クローディアを見つめた。
 
「……クローディアさん、これ以上私の
大切な友達に酷い事言わないで!
誰だって過ちを犯す事はあるよっ!!」
 
「……みらい……」
 
「はー……、みらい……」
 
「モフ……」
 
「フン、その生意気な自信は何処から
来るのかしらね……」
 
「クローディア、こんなガキ共相手にしてても
時間の無駄だよ、言って分からないんだから
実力行使であたしらの恐ろしさを分からせてやるさ……」
 
「そう言うこった、嬢ちゃん達、覚悟しな……」
 
戸惑う事もなく、躊躇せず、バーバラとホークも
魔法ガールズ達を睨んだ。
 
「……腕が鈍っちゃってしょうがないわ、
ユリアンじゃまるで相手にならなかったもの、
かと言って、アンタ達じゃ余計駄目だしね、
あたしはパスだわ……」
 
「俺も同意見だ、見物させてもらう、余りにも
暇過ぎだ、アリを相手にする様なものだ……」
…………ノックダウンし、伸びて倒れている緑バカを
目の前にし、仁王立ちしているエレンとトーマスに
ダウドは恐怖を感じて脅え、ダンゴムシの様に
ますます丸くなってしまった……。
 
「……あああ~!!も、もう、手が付けられないん
だけど……、も、もう何でもいいです、ウ、ウルトラマンでも
仮面ライダーさんでもいいから……、通りすがりの
どすこいどすこいのお相撲さんでもいいです、誰か来てえーーっ!!
どうかオイラの聖なる祈りの呼びかけが聞こえたら返事を……」
「……」
「……やっぱ反応ある訳ないよねええーーーっ!?」
 
「……バーバラさん、ホークさん、トーマスさん、
エレンさん……、皆……、駄目、駄目だよ……、
もうこれ以上……、争ったら……駄目……」
 
みらい達3人は抱き合い、再び強く祈った……。
 
 
「シグ、どうしたの?もう終わりなの?」
 
「う、うるっせー!……オレは、オレは絶対
お前らを連れて帰る!諦めねえ!!大事なダチを
このままほおっておけるかあーーっ!!」
 
「そうか、仕方がないな、マリカ、リウ、融通の
利かない馬鹿にそろそろ止めを刺すか……」
 
「ええ……」
 
「了解、でも何なんだろうな、何かオレ、
変な感じがして来たよ……」
 
「惑わされるなよ、リウ……」
 
「ああ……」
 
 
「……さようなら、ジタン、あなた、こんなに
弱い男だったの?がっかりだわ、どうして
刃向かって来ようとしないの?私、弱い男は嫌いよ……」
 
「ダ……、ガー……、くっ、オレは君が……」
 
「私の前からもう消えて、軟弱男……、最低よ……」
「はあ……、くっ……」
「グレミオっ!大丈夫かっ!?」
「ぼっちゃん!ええ、諦めたら此処で終わりです!
もう少しです、皆さんも頑張っています!」
「……いい加減に消えてくれっ!!」
「……ぼっちゃんっ!!」
グレミオを守ろうとした、ティルの渾身の一突き、
一匹の怪物を直撃。その瞬間、ティルの叫びと同時に、
何故か無限に沸いてていた怪物達が突然消えた……。
「……これは……、一体……?」
 
その時……
 
「は、はあ、な、何とか間に合ったかな……、
もういい加減にしろっ!お前らっ!!」
 
「ぴいいっ!!」
 
 
「……こ、この声……、ジャミルっ!?」
 
「……ジャ……ミル?」
 
エントランスに大声が響き渡る。ダウドも声に
反応し涙目になり、気絶していたアイシャも
うっすらと目を開けた。漸く主人公様帰還す、
さてさて……。
「はー!ジャミルっ!私っ、ことは、はーちゃんだよっ!」
 
「……ごめんなさい、本当に私達の所為で
ご迷惑をお掛けしてしまって……」
 
すっかり元に戻ったはーちゃんとリコが
いつもの元気な顔をジャミルに見せた。
 
「ことは、リコ、そっか、お前ら元に戻ったんだな!
良かった、……よく頑張ったな、みらい……」
 
「……ジャミルさん……、うん、有難う……」
 
「2人はお薬なしで元に戻ったモフー!!願いを込めたら、
みらいが奇跡を起こしたモフ!!そしたら、リコも
はーちゃんもちゃんと帰って来たモフ!!」
 
「え、えへへ、モフルンたら……」
 
「……何?薬無しでか?マジで?そらまたスゲエな……」
 
「前のあたしらの時も急に洗脳解けたしな、まだまだ
分かんない事ってあるんだよな……」
 
ケイの言葉にジャミルも首を傾げるが取りあえずは
魔法ガールズ達は大丈夫なのだと言う事を実感し、
安心した。薬無しで自力で洗脳が解けたのは、
グレミオ、そして、水路でうっかり遭遇して
しまった変態のボーボボもいる。洗脳されていても
本来の自分の意識はあるが、どうにも出来ない者、
ラグナの様に、洗脳時の記憶がない者など、洗脳の
状況にも色々と有る様で……。
 
「フン、今更屁の役にも立たん貴様が来た処で
どうなると言うのだ、馬鹿めが……」
 
「グレイっ!うるっせーわ!ごちゃごちゃ言うなっ!
わりィけど、うるせーからちょっとお前らには
凍ってて貰うわ、このアイスソードでなっ!!」
 
「……む?」
 
「あらよっ!冷凍剣っ!!」
 
言うが早いか、ジャミルはアイスソードの
LV15の最強技である冷凍剣を洗脳されている
仲間に向かって放ち始めた。
 
「な、なるほど、凍らせてる間に薬を飲ませるんだね?」
 
「その通りだ、ダウド、少し力をセーブしてな、
全部凍らせねえ様に……」
 
「さっすが!ジャミルさんですねっ!」
 
「♪はーっ!」
 
「凄いわ……、こういう時の頭の回転の速さは完璧ね……」
 
「……小癪な……」
 
魔法ガールズ達も感心し、グレイも唸る。だが、
この話ではそんな都合良く、上手くいかないのが
お約束であった……。
 
 
『……うしが笑って、うっしっし』
 
「……は?」
 
「は~?」
 
『……うしが笑って、うっしっし』
『……うしが笑って、うっしっし』
『……うしが笑って、うっしっし』
 
……うしが笑って……
 
「だあ~っ!だ、黙れっ!も、もういいっつんだよ!
この野郎!!……な、なんなんだよ、これえ~!!」
 
顔を真っ赤にしてジャミルが慌てる。確かに
アイスソードは冷凍剣を放ったが、寒い
ダシャレをリピートし、……その場にいる
全員を凍りつかせた……。勿論、洗脳されて
いないメンバーも全員凍りつく寸前の状態に……。
 
「ぴい、チビは平気きゅぴ、でも、何だか皆大変……」
 
「……寒い、寒すぎるわ、……ジャミル……、もう……、
お休みなさい……」
 
「お~いっ!アイシャーっ!!頼むから寝るなあーーっ!!
寝たら死ぬぞーーっ!!寝たらアカンっ!!」
 
「……フ、フフフ……、やはり……、貴様の様な
未熟者に……、アイスソードを使いこなすのは、
ぶ、ぶり……、ひ、ひっくしよん……」
 
「……おい、鼻水垂らしたままカッコ
つけてんじゃねえよ……」
 
あくまでも、クールな表情を壊すまいとグレイも
相当必死になって無理をする……。
「……ジャミルさん、ご無事だったんですね!
良かったです!」
「!ティル、グレミオっ!ああ!……って……」
グレミオも駆け付けるが、ティルはグレミオに
お姫様抱っこされており……、彼の腕の中で
ガタガタ震えていた……。
「急にぼっちゃんが寒気を起こしてしまいまして……、
……ああ、どうしましょう!ぼっちゃん、ぼっちゃん、
しっかりして下さいっ!きっと、疲れが出てしまったん
ですね……」
「グレミオ……、僕は大丈夫だから……、お、降ろしてくれ!
恥ずかしいよっ!……はっくしょんっ!」
「……ぼ、ぼぼぼぼ!ぼっちゃあ~~んっ!!」
「……」
……ダジャレ氷結被害者は此方の方にも回っていた
様であった……。
 
「……けど、チャンスは今しかねえな、ことは、
薬の瓶借りるぜ!」
 
「は、はあああ~……、うん、でも、大丈夫……?」
 
「そうだ、こういう時はっ!モフルンっ!」
 
「ぴーん!みらい、おしくらまんじゅうモフっ!!」
 
みらいとモフルンが目を輝かせ、何やら頷き合った。
 
「そうねっ、皆でやるわよっ!ダウドさんも、
ケイちゃんも、アイシャさんもこっち来てっ!
おしくらまんじゅうで身体を温めあうんですっ!!
さあっ!!ティルさんもですよっ!」
 
「マジ……?……冗談でしょ?オイラもやるの?」
 
「冗談じゃないですよっ!さあさあさあっ!!
こっちに来てっ!!」
 
「あううう~?」
 
「何か楽しそうー!やるやるー!きゃー!」
 
「全くもう、アイシャってば、あ、あたしも
恥ずかしい……、けど……」
「……僕……も?」
「ええ、折角ですから……、ぼっちゃんも
お気持ちに甘えさせて頂いた方が宜しいかと……、
きっとお体も温まりますよ!」
「……いやだ……」
 
リコは戸惑っているダウドとケイを引っ張り、
ティルをも巻き添えにし、おしくらまんじゅうの
メンバーに無理矢理加えるのであった。
 
「何か向こうは始まったな、やっぱり若いのは
元気がいいか、倒れてるのはジジババの年増
集団だけだな……」
 
「……ジャミル……、て、てめえ……、後で
覚えてろ……、うう、寒い……」
 
「はいはい、お爺ちゃんは引っ込んでてね!……大人しく
お薬飲みましょうねっ!!介護しまーす!」
 
「な、何すっ……!!ううっ!!」
 
ジャミルはまず最初にホークの口に清涼剤を
無理矢理押し込み、次に、バーバラ、クローディア、
ガラハド、強敵シフ、最後にグレイと……、薬を
バンバン飲ませ、軽々と洗脳を解いて行った。
薬を飲まされたメンバーは取りあえず一旦眠った
様子であった。
 
「よし、ちょろいっ!次はあっちだ!!チビ、
こいつらはもう心配ねえ、ちょっとブレスで
あっためてやってな!」
 
「ぴい!」
 
次に、ジタン達の処に向かう。同じくダガーも
ガタガタ震えて倒れていた。ジタンはダシャレ
氷結攻撃は平気だった様で、ジャミルの姿を見て
きょとんとした表情になった。
 
「ジャミル、来てくれたのか……、無事で良かった、
ありがとな!だけど、どうしたんだろ?急にダガーが
震えだしてさ……」
 
「……寒い、寒いわ……、ガクブル……」
 
「それについてはあんまり言いたくねえんだよ、……何か
俺が悪いみてえだなあ、たく……、ジタン、彼女へは
お前が飲ませてやれよ、ほら!」
 
ジャミルはジタンへと、清涼剤の粒を渡した。
 
「助かるよ!……これでダガーは元に戻るんだな、ダガー……、
もう大丈夫だからな……」
 
ジタンは清涼剤をダガーに飲ませると、眠っている
ダガーを安心した様にそっと抱きしめた。
 
「よしっと!後は……、シグの処と……、
ユリアンの……、あいつ、白目向いて
モロ倒れてんな、まあ原因は分るけど……」
 
 
「……ジャミルさーんっ!もう、私達も
大丈夫ですよっ!!お薬の補助致しまーすっ!!」
 
漸く、おしくらまんじゅうで身体が温まったらしき
みらい達が、ジャミルの側まで走って来た。
 
「後、何人でもねえけど、よしっ!皆で片付けちまうか!!」
 
「はあーいっ!!」
 
 
……一方、最近めっきり忘れ去られている、この
ナンダカンダ家の領主の部屋にある、一人の訪問者が
訪れていた……。
zokuダチ エスカレート編・17
