雨の滴り
相変わらず空が暗い
見える道路にはゴミが散乱
変えられない自分が情けない
11月8日深夜1時 天候雨 巡回
私はよく分からない人間だ。
今日の巡回は憂鬱だった、
街灯が並ぶ道には
ゴミが散乱し、
落書きやシールが増え、
それを片付ける者さえ減った。
私はこの世の中に対し
とても情けないと思っている。
私は警察という立場上、
注意し、止めることこそ
警官としての存在意義だ。
なのに今の警察を見ると
助けられるはずだった人を見殺し
変な行動をし、
またもネットに晒されて
私たちは注意喚起しかしない
単なる外部者とほぼ同じだ。
そんなことに税金を払う庶民も
期待を持たれる警察官も
どちらもギスギスするのは
簡単に考えられる事実だ。
だからこそ私はこうやって
今日も歩く。
報告終了。
11月9日深夜2時 天候雨 巡回
私は歩きながら
日記を毎日書いている。
こうやって書く度、
自分が巡回し終えたあとにする
報告書に書く内容が
だいたい決まる。
一石二鳥だ。
またいつもの街灯道に出た。
ここは私にとって
ターニングポイントだ。
なんたってゴミばっかりで
拾いがいがある。
そして警察署でまた
ゴミを捨てる。
私にとって中継地点である
警察署では、
静けさに包まれている。
いつもその最中に置いてある
コーヒーを入れるティーポット
飲むようのカップが
私を元気づけてくれる。
田舎だからか人も少なく
警察なんて人材不足で
ほぼいないものだ。
恐ろしいのはもう私以外
見回りをするような人間が
いないことなのだ。
午前中ならまだ居るが
こんな雨の中歩き回るバカも
そう居ないだろう。
私はこの街で生まれ育ったからこそ
この街の景観も守っていきたい。
私の通った道は全て綺麗にしていく、
それこそやったもん勝ちだ。
報告終了。
11月10日深夜3時 天候豪雨 巡回
久しぶりに私は巡回に意味を感じた。
歩く度気分がだるくなる
この巡回において、
変化というのは実に
スリルでもあり最高でもある。
その時は急に来た。
街灯道にぽつんと佇む影は
私の朧気な瞳に
はっきりと映った。
小さな小柄の少女だった。
私が彼女に気づくと
その小さな影はトテトテと
まるで可愛らしい音をたてて
こちらに擦り寄って来た。
見る限りまだ小学生ぐらいか、
彼女は小刻みに震えながらも
この寒い夜に
私を待っていたのだろうか。
服に関しても
薄着でこんな秋の訪れが近い時期
どう考えても着るものではない。
とにかく今は私の着ていた服を
包むように被せ近くの署へと
歩み始めた。
こんな世の中に
この少女を放置するような社会、
実に私は不満だ。
彼女が何をしたとでも言うんだ。
ゴミの並ぶ街道に
少し私の視線がぐらつき始めた。
違和感に思った時には
もうかなり酷くなっていた。
途中から自分の異変に気づいた
雨の中女の子に被せた分
服が薄着になっていた。
横殴り気味の雨のせいか
傘をさしていても
雨が防げなくなっていて
雨粒は自分に槍を刺すように
服に当たってきた。
どんどんと意識が遠のく感覚がして
私はきっと
その場に倒れた。
私が目を覚ます頃には
近くの署に引っ張られたのか
少しズボンが下がっていた。
靴も私から離れかけていた。
目の前にはドンと
コーヒーが溢れんばかりの
マグカップが置かれた。
女の子は
ひとりで私を運んでくれたのか。
そう思うと私自身
あの寒さで倒れるなど弱った者に
変わってしまった気がした。
起き上がって彼女の特性コーヒーを
静かに口に運んでみた。
感想は言うまでもない
とっても忘れられない苦さだった。
彼女はきっと助けたい
という考えでこんなに入れたと
私は彼女の安堵する表情から
気づくことができた。
私は自分が情けないと思ったが
彼女が私に
その気持ちを示すほど、
自重する気分は、
随分軽くなっていった。
報告終了。
雨の滴り
あの...部長?
彼の日記読んで
分かりましたか...?
彼こういう経緯で辞めて...
今ではあの少女を引き取って
コーヒーショップやっていて
噂では苦いらしいんですけど...
この後1杯行きましょ?ね?