朧月
高校の先生ふたりのお話です。(BL要素あり)
掌編です。
中村先生と佐々木先生
『朧月』
いつもの夜道を恋人と歩いていた。
行きつけの居酒屋の帰りの夜道。
雨は上がり、雲間から月が霞んで玉虫色の鈍い光を放っていた。
お世辞にも綺麗だとは言えない鈍い色だった。
「あのー、佐々木先生」
「はい」
「先生は、俺のこと好きですか」
「は?何言ってんですか急に」
「いやー、聞いたことないなーと思って」
確かに俺達は、
互いにそういう事を口にしたことがなかった。
「そうだ!一緒に言いません?
せーの、で」
「えー、嫌ですよ。
なんなんですかそれ」
「イヤイヤイヤ、こういうことはちゃんと、ね」
「いきますよ、せーの」
「愛してます」
「……ちよっとー!佐々木先生!!」
「なんで言ってくれないんですかー!!」
「え…なに? 泣いてんですか??」
「ちょ……え……スミマセンなんか……」
恋人だけが喋り続けた。
涙が止まらなかった。
朧月はますます霞んで見えなくなった。
終
朧月
不器用なふたりです。
"恋人"が中村先生です。
佐々木先生は、嬉しくて泣いてます。
「綺麗な月」は告白の象徴ですが、
この日の月はちっとも綺麗ではありませんでした。
が、佐々木先生の涙は
きっと美しく見えたのでしょうね(中村に)