『擬態』
あの子にアタシは狂わされると
気づいていながら離れられない
『擬態』
素知らぬ顔で出した彼の名前
また欲しくなったのね
恒例の悪い癖でまた奪うのね
そしてアタシは黙してそれを許す
譲っても譲っても次から次へと
興味はころころと移り変わり
今は何も要らないわと
アタシの右側に体重をかける
こうして満足してるような態度も
長くは続かないって知ってる
アタシが誰かを好きになれば
またあの悪い癖が顔を出すんだから
奪えば満足だなんて可愛いものね
本当に欲しいものじゃないから
飽きるのも捨てるのも早いのよ
アタシみたいにちゃんと明確にしなきゃ
手に入れれば満足なんて
そんな次元で考えてる訳じゃない
一生飼い殺しにするくらいの
覚悟と気概があるんだから
後腐れない餌を毎度用意すれば
面白いくらい食いつくから
最早これは餌付けのようなもの
その彼を食したら次はどんな味がいい?
狂わせたのはあの子なんだから
縛り付ける権利はあるわ
誰より可愛い笑顔に白けても
アタシだけは愛してあげる
「全ては誰より愛しく、誰より憎いあの子の為」
『擬態』