あれやこれや 241〜242

あれやこれや 241〜242

241 アリス

 初めて連城先生を見たのは、娘の小学校の運動会だった。転任してきたばかりの若い男性教師は母親たちの目を引きつけた。なるほど、目の保養になる美青年。若いママたちは、はしゃいでいた。

 5年生になった娘はブラスバンド部に入った。運動会の演奏は聴けたものではなかったが、その下手なバンドの顧問に連城先生がなったのだ。音楽の先生だった。若くて素敵な音楽の先生。女子部員が増えたという。娘が入部したのも先生に惹かれたからだろう。
 
 連城先生が来てからブラスバンド部は活躍し、コンクールにも出るようになった。彼はアマチュアバンドに入っていて、そのバンドの指揮者とメンバーも時々教えに来ていた。
 指導者の力はすごい。練習は厳しかった。夏休みも連日で、娘は旅行も行かないと言い出した。盆に田舎に帰ることも非難される雰囲気だという。たかだか区立の小学校の部活なのに。

 夏休み返上の成果はあった。初めて出場した都のコンクール。若いママたちの車に便乗して連れて行ってもらった。
 子供の成長はすごい。これが運動会で演奏していた子供たちなのか? すごい拍手だった。後ろを向いていた連城先生が前を向いた。黒の服を着た指揮者は手を胸に当てお辞儀をした。指揮者が主役になった。
 
『コンダクター、素敵でしたね』
 帰りの車の中で若いママたちは話していた。
 コンダクター? 指揮者をそう呼ぶのか? 私は娘の吹いた楽器の名前さえよく知らない。何度か聞いたが。ユーなんとか?

 娘は連城先生に懐いていた。女子は皆、レン先生と呼んで懐いていた。娘は冬休みに、飼い始めたばかりの子猫をレン先生に見せに行くという。
「連れて行っていいって言われたの?」
「うん。今日は練習ないし」
 猫はピアノの下に隠れて出てこなかった、とか。

 バレンタインデーには、レン先生のためにチョコを作った。私も手伝った。いや、ほとんど私が作った。

 連城先生は年度末の演奏会が終わると、他の小学校から借りた楽器を返しに行く。区立の小学校では楽器を工面するのも大変なのだ。
 娘は放課後数人で、先生の赤い車に乗って手伝った。帰りにケーキをご馳走になった。ハンバーガーをご馳走になった。おみやげにキーホルダーをもらった……娘は嬉しそうに話した。先生も大変だ、と思ったのだ。散財も。

 夫は……忙しかった。自分の娘を構ってやらなかった。その代わりに、欲しがるままに携帯電話も買い与えた。
 それからは、メールの着信音が夜遅くまで鳴っていた。怒ると娘はベッドにもぐり、返信していた。

 娘が6年生になると、私も役員をやらないわけにはいかなくなたった。広報委員になった私は、連城先生にブラスバンド部の記事を書いてもらう担当になっていた。
 放課後、もうひとりの担当と職員室へ行った。17歳年下の人気のあるさわやかな音楽教師と、紙面の打ち合わせをした。間近で見ても絵になる。若い女教師がチラチラこちらを見た。
 もうひとりの担当は頬が紅潮し饒舌になった。かなり意識している。私はパソコンの話だけした。原稿は家のパソコンに送ってもらうことに。

 送信されてきた原稿は文字数が多すぎてまとめるのが大変だった。字数を無視しやがって。載せたいことがたくさんあるのはわかるが……半分以下になったものを送信して了解をもらった。

 夜、学校に集まって印刷する。娘は付いてきた。玄関で連城先生の下駄箱を開け、
「帰っちゃったんだー」
と、がっかりした。私は幼い恋心を微笑ましく思った。
 翌日も集まって作業。娘はまた付いてきた。小さな会議室で印刷したものを分ける。数人、子供たちも来ていた。そこへガラッとドアが開き連城先生が現れた。娘の顔がパッと輝いた。連城先生は子供たちを音楽室に連れていき遊ばせてくれた。

 2年目の運動会。ブラスバンド部の演奏は昨年とは雲泥の差だった。親たちの目当ては曲ではない……素敵な連城先生。そういうママが大勢いた。

 演奏が終わると……
 ふたりは一瞬見つめあった。
 誰と誰?
 
 連城先生の背は175センチくらいか? 娘は145センチ。 

242 シングルで

 レモンアワー、これ、缶チューハイのネーミングですね。飲んだことないけど。(販売中止)
 娘たちに聞いてみよう。どれがおいしいとか話しているから。
 
 この娘達、私の手作りの果実酒は甘すぎると飲まない。
 おいしいのになあ。
 夫はたまに飲む。飲んだ後の口直しに。グラスにたっぷり注ぐ。それ、果物の汁で薄まってるけど、35度の焼酎なんですけど。

 案の定、私が夜の仕事 (配膳)から帰ったら、バスタオル一枚でソファで寝ていた。起こしたら頓珍漢なことを。認知症になったかと思った。
 本当に、飲み過ぎだよ。もう、帰ったら死んでた…‥なんてこともあるかもね。そうしたら、慌てなくていいと。

 いつか来る、そんな日の前に、コロナにかかり、治っても食欲がない。酒も抜いた。飲んでもおいしくない。 
 カレーを食べても辛くない?!

 これを機に考えてね。私は移らなかったよ。免疫力あるんだね。適度な運動にバランスの良い食事。腸内環境への気遣い……だって。毎日ヨーグルト食べてるから。
 便秘だけど。

 さて、検索してみつけたのは、手作りのレモンサワーの元。

 レモンはノンワックスのものを選ぶ。
 砂糖は溶けやすく、味が馴染みやすいグラニュー糖がおすすめ。
 蒸留酒は、長く漬けてもレモン本来の風味が損なわれないジンを使用。
[材料](2L分)
 レモン 6個
 グラニュー糖 300g
 蒸留酒 900ml
[作り方] 
 レモンを準備する
 果肉に中ワタを残して、黄色い外皮のみをらせん状にごく薄く剥いていく。皮は3cm幅にカットする。実は1.5cmの厚さの輪切り。種は除かない。
 瓶ををよく洗い、ジンを塗って消毒しておく。
 レモンを入れる
 1/4量のレモンの皮と、輪切りにしたレモンの果実を瓶の底に敷く。
 砂糖を入れる。
 1/4量の砂糖をまんべんなく重ねる。
 重ねる。
 3と4の作業を3回繰り返す。
 ジンを入れる。
 1日に一度、マドラーで混ぜ、1カ月で飲みごろに。
(呑兵衛が毎年仕込む「レモンサワーの素」)より。

 以前、オレンジ酒を焼酎で作ったとき、皮ごとだったから、苦味が気になった。これは、大丈夫? たくさん作っておいしくないのはご勘弁。

 ジンは娘の旦那が好きで前に買っておいたら全部飲んでいった。素敵な瓶だから梅酒を入れている。
 毎日強い酒を飲むから娘も孫も心配して、散々言って白ワインに変えたとか。
 まだまだ働かなきゃ、なのよ。体大事にしてね。



【お題】 フレッシュレモンアワー


 早速作ってみた。ジンはペットボトルの1、8リットル入りだから、レモンも砂糖も倍の量に。
 1カ月で飲み頃に。
 さて、味見を。ロックで。

 心配していた苦味はほんの少し。
 これは……焼酎とは違う。これが、ジンの香り?

 私が酒を飲むのはたまの付き合いと、家の果実酒だけ。それもたぶん大さじ2杯 (30ミリリットル)くらい。度数は強いけど。ほとんど健康のために飲んでいる梅酒や季節の果実酒。

 このレモン酒は、飲んだ翌日シーツ交換をしていたらふと飲みたくなった。味が蘇る。
 昼食のときに飲もうかと思った。
 でも……夜も仕事だからやめておいた。
 
 夜の仕事が終わり、食べるのはヨーグルトだけ。手作りのプラムのジャムをたっぷり入れて。
 また、レモン酒を飲みたくなったが、やめた。
 ここで飲んだら毎日飲むようになってしまいそう。

 若い頃は結構飲んだけど、お酒をおいしいなんて思わなかった。ビールはいまだにそう……
 夫はこの一杯のために生きているけど。
 季節の果実酒。手作りしたくて作ってはみたけれど……
 仕事に行く前も飲むようになったりして?

 不安になった。父の血を引いているから。

 この歳になって、依存症になったりして……
 夫が先に逝ったら酒浸り……
 
 いやだ、いやだ。
 父を思い出す。この世でいちばん嫌いな酔っ払い。

 飲みません。毎日は。
 飲むのは休みの日。週に4日もあるけど。
 大さじ2杯。シングルで。


 
 バーでウイスキーをオーダーする場合、大抵はシングル (30ミリリットル)かダブル (60ミリリットル)かを聞かれます。とくに指定しなければ、シングルで出されるのが一般的。
 その理由は、ウイスキーはアルコール度数が高いお酒なので、「大量に飲むのを防ぐため」とも、「少量ずついろいろな味をたのしめるように配慮しているため」ともいわれています。
(楽しいお酒 公式アプリより) 

あれやこれや 241〜242

あれやこれや 241〜242

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-10-08

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Copyrighted
  1. 241 アリス
  2. 242 シングルで