漂泊者

僕は
自己の奥底へ
潜水する
そこは
仄暗い場所だった
そして
薄ら寒かった
だが不思議と
居心地の悪さは感じなかった
憎悪も
後悔も
寂寞も
澄みきっていて
透き通っていた
僕は自己という深海の奥底で
どこまでも身軽で自由だった
どこまでも軽薄で最低だった
自由が息苦しくなるのは
そう遠くないだろう
僕は弱いから
自由と不自由を往復する生涯
それもまた悪くない
僕は誰に向けるでもなく笑って
ただ漂泊の好機を待つ

漂泊者

漂泊者

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-29

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