掌編集 49

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481 返さない

 星空文庫っていいな。
 作品を投稿するだけで、他の作者さんのはほとんど読んでいない。
 自分の作品管理しか開かない。

 それでも読んでくださる方がいる。
 ここは、読み専門の方が多いのか?

 他のサイトは…‥お互い様。
 読んで読まれてコメントし合う。

 お互い様じゃない方もいる。
 
 返さない人っていいな。
 リアクションもらってもコメントもらっても返さない。

 よそのサイトだけど、膨大な中国の歴史小説(韓信)が面白くて、毎回リアクションしたけど、ついに1度も返ってこなかった。
 投稿してるのはこれ1作品だけで5年も前のもの。
 もう、放ってあるのかな?

 別のサイトではコメントしたら丁寧なお礼が返ってきた。でもそれだけ。お互い様じゃない。
 私の作品、読んでくれないのか。
 
 そしたらその作者さん、本を出すって。

 おめでとうございます。

 一方通行、真似したら終わっちゃうサイトが多い。

482 嘘じゃないよ

「おまえのおかげでいい人生だった」

 必ず言わなきゃな、と、毎日練習しているかわいいおじいちゃん。


 涙のしずく、ふたつこぼしてホッとしたおばあちゃん。



【お題】 世界で一番かわいい嘘

483 シェアしようかな

 年金暮らしなのに、値上がりすごくて節約節約の老後。

 値引きされたアジフライ1枚をふたりでシェアして、スイカひと切れもシェアして、でも酒はシェアしないわね。飲み放題ね。

 私も布団はシェアしません。
 寝室もシェアしません。
 リビングで寝てくださいね。

 高額宝くじが当たったら、車を買ってあげるわね。
 クルーズ旅行もいいわね。

 なんて、嘘。
 シェアなんかしないで消えてやる。

 小説が書籍化されてドラマにも映画にもなって印税ががっぽり入ったらどうしよう?
 自慢してやりたいしなあ。

 なんて考える必要ないか。
 宝くじは買わないし、小説なんて……



【お題】 シェアハピ

484 美人にならない

 首が長いから着物美人になるよ、と子どもの頃母に言われた。
 それをしばらく信じていた。
 母の声も笑顔も頭の中で再現できる。

 でも、成人式の振袖は着なかった。
 母は具合が悪くなり亡くなったのだ。
 大人になり初めて着た着物は喪服だった。

 首は長いし寸胴だし、かーちゃんの言ったとおり着物美人だったでしょ?
 誰も褒めてはくれなかったけど。

 姉は着付けを習い着物を揃えていたけど、私は興味がなかった。
 結婚して仲人さんのところへ新年の挨拶に行ったときには姉の小紋を借りた。
 あれは、きれいだった……あれだけは、夫もいまだに言ってくれる。

 次に着たのは、30年も経った頃、息子の結婚式の留袖。娘はグァムであげたから身内もムームー。
 
 留袖着るのはいやだった。長い首と寸胴は健在だけど、髪をアップにしたら……
 数週間前からエステに通い、お顔のマッサージにお金もかけたんだけど、おでことほっぺ丸出しは不細工。ぶっさいく。
 友人に写真見せたら
「あちゃー」
って。ひどいわよね。



【お題】 大人になっても

485 待てない

 孫と花火をしていた。マンションから歩いて5分の小さな公園。
 派手な花火のあとの線香花火はつまらないみたい。
「よく見てごらん、ほら、牡丹から松葉に変わった。最後は菊になってポトリ。この頃の花火はすぐ落ちるね」

 次々火をつけ歌う。
「はじっこつまむと線香花火……
 来年もふたりでできるといいのにね」
 
 気持ちよく歌っていたら突然。
「⚪︎⚪︎⚪︎がしたくなった!」
「えー?」
「これ、持ってて」
 私は慌てて後片付け。

 孫は速足で歩く。いつもはモタモタ歩くのに。
「おばあちゃん、オレ、先行く」
と、走り出した。

 車は少ないが危ない。必死で追いかけたが、追いつかない。
「先に行っても鍵開けなきゃ入れないよ」
 
 夫は酔っ払って寝ている。
 孫は一目散。こんな真剣な孫は見たことがない。
 孫は猛ダッシュ。ばーちゃんは追いつけない。
 
 おまけに鍵穴は錆びているのかすんなり開かないのだ。
 開けると孫は一気に駆け込み、間一髪。

「おばあちゃん、線香花火もっとやろう」
「もう、無理、疲れた。お風呂入って寝よう」
「そうなの? じゃ、youtube観ていい?」
「30分だけね」
「うん。おばあちゃん、お疲れ様ね。ゆっくり休んでね。
 はじっこつまむと線香花火……」


(歌詞はNSPの線香花火)


過去作を改筆しました。



【お題】 線香花火が終わるまでに

486 私がやってみたかった

 某サイトで見つけた作品。リアクションしたけど、作者さんの名を忘れてしまいました。

 ずうっと白紙。無文字が続く。
 何文字だろう? 4分33秒だから1800文字くらいかな? (勝手な憶測)
 そしてラストに「。」だったか「.」だったか忘れてしまいました。ごめんなさい。

 あれ、私がやりたかった、と自分のエッセイに書いた記憶もあるけどそれも忘れてしまった。

 忘れないのは、

【4分33秒】 ジョン・ケージ作曲

 アメリカの作曲家であるジョン・ケージが作曲し、1952年に初演された3楽章から成る楽曲。
 しかし、3楽章から成る『4分33秒』の全楽章は全て“休み”となっており、楽譜は以下のようになっている。

 第1楽章TACET (休み)
 第2楽章TACET (休み)
 第3楽章TACET (休み)

 TACET (タセット)とは、音楽用語で「比較的長い間の休み」を意味するが、それが3楽章全ての楽器の譜面に書き込まれおり、楽譜が意味するところは“休み”だけと言う事になる。
 しかし、“休み”だけと言っても、聴衆を前にして、指揮者は指揮台へと登り、演奏者はしっかりとステージに出て演奏姿勢へと移る。
 ところが、楽譜に書かれているのは“休み”のみなので、結局、4分33秒の間、全く演奏する事無く曲は終了し、指揮者と演奏者は聴衆に対して一礼し、聴衆は4分33秒の無音の音楽に対して拍手を送る。
 これだけ見たら、もう「お笑いのコント」のような楽曲なのだが、この『4分33秒』は世界的に見ても非常に高い評価を受けている楽曲の1つと言える。

 また、ジョン・ケージは、無音 (音の無い世界)の音を聴くためにハーバード大学の無響室に入り、その中で、“自分の神経系が働いている音”と“自分の血液が流れている音”を聴いた、と記している。



【お題】 謎の沈黙

487 会社

 20年くらい前、某化粧品を定期購入していた頃、嬉しいご招待があった。会社見学と、新商品のアンケート、対談、それに 肌のお手入れ、プロがメイクして写真を撮ってくれる。土産付き。
 1時間もかからないところだったのでお受けした。  
 集まった10人くらいの同年配の女達は和気あいあい。スタッフの対応も申し分なし。広い社内を見学した。  
 そのあとはひとりずつ、新商品の香水の意見を。これが長かった。こまごまと聞かれた。表現するのが難しい和の香り……  
 そして待望の肌の手入れとメイク。何人かのスタッフが褒めてくださる。肌がきれいだと。褒められてその気になる。プロが写真を撮ってくださる。鏡の中の自分は今よりずっと若く……
 プロの手にかかったのだ。期待した。冊子に載るのではないかと。  
 そして、対談。集合写真。土産までいただき大満足し帰った。  
 後日送られてきた写真には期待していたのだ。遺影にしようか、なんて……  
 しかし…… 「おかあさん、実物のが若いよ」  
それは真実か慰めか。  

 小説の中の、
『パパが大きくした会社は祖父の代とは比べものにならない』
は、そのときの会社をイメージした。
 有名な大きな会社です。

488 女子部

 娘の高校時代は25年も前。わあ、もう、そんなになるんだ。
 当時、都立校の制服はかわいくないからと、某私立高校を選んだ。男子部女子部に分かれていたスポーツの強豪校。 
 娘は勉強はしない。興味があるのはおしゃれだけ。スカートの丈を短くして、ネイルをして髪を染め、母はよく呼び出された。
「あなた、この学校、向いてないんじゃないの?」
と、担任の年配の独身女性の数学教師に言われた。母は謝るばかり。

 屋上に男子とふたりでいるところを見つかり、男子は丸坊主。娘はお叱りだけですんだが。

 帰りのホームルームに寝ていて注意された。
「起きなさい。⚪︎⚪︎さん」
「起きてます」
と言ったら、周りは皆立ち上がっていたそうだ。

 この先生には遅刻の理由を聞かれたとき、
「膀胱炎で医者行きました」
と皆の前で言ったら、
「大きな声で言うんじゃありません」
と言われたとか。

 いろいろあったが、なんとか卒業できた。
 卒業式には3年間お世話になったこの先生が、娘のために喜んでくださった。

 いろいろあった。真面目な母とは違い青春を謳歌した。母には心配と迷惑を思い切りかけたが。
 この娘が子を産んでも、絶対に絶対に手伝いになんかいかないからね。
 いや、子どもを置いて遊びにいくんじゃないか? 出ていくんじゃないか? 本気でそう思った。

 そんな娘が2人の女の子の母になった。
 長女はまだ小学生低学年なのに手を焼いている。
 夏休み前の面談では、はじめて時間内で終わったと喜んでいた。


【お題】 ホームルーム

489 読む

 作品の行間まで読めるけど、コメントはうまく書けない。
 作品の行間まで書けるけど、コメントいただけない。読んでいただけない。
 会話の行間わかるけど、お世辞は言えない。頷くだけ。
 夫の考えわかるけど、やってあげない。冷たくしちゃう。
 6人の無邪気な孫にはエンヤコラ、
 エンヤコラ、今年も金が出た。



【役に立たない特殊能力】

490 略して

 
【お題】 秋らかに

 また、おかしなお題。
 このサイト、毎日12時にお題が発表される。
 突拍子もないお題が多くて頭を悩ませる。

 連日投稿している方がザラにいる。3年続ければ作品は千を超え自分の作品を探すのも大変。
 過去作はほとんど読まれることはないのでは?
 旬のものが、それも短いものが読まれる。読む時間が表示される。400字で1分。
 4分超えると読まれる確率はかなり減るような……

 さて、『秋らかに』は、秋うららかに、を略したのかな?
 でも『うららか』は春の季語だ。

 お題のために検索する。いろいろ考える。
『……にから秋……』
 アナグラムかダイイングメッセージか?

『秋らかに』は、あれだ。
 あの歌。私の好きな
『初恋 Love in fall』

 秋に、
 らら、
 風の立つ秋
 に初めての恋

 無理矢理ですけど。
 歌は前川清でした。いいねえ。

 秋に
 人生の秋に
 初めての恋

 してみたいなあ。

掌編集 49

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  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-12

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