zokuダチ エスカレート編・2

揃って誘拐されました・2

マモルとジャミルはイボガエルが発砲するマシンガンの嵐から
只管逃げ捲る。やがてその内、弾も其処をついた。イボガエルは
疲れ切った様子で一旦手を止め、マシンガンを下に下げるので
あった。漸くこの2人が此処に平然と乗り込んで来た事実を理解
してきた様である。

「ハアハア、……お、お前等、只のおかしいバカ共ではないな?
……ヌ、ヌウ~、一旦何者なのだ……」

「んな事はどうでもいいんだよ!アイシャとゆうな、
それから早くネコを返せ!」

「……早くするんだ……、早く……」

「!わ、分った、言う通りにしよう、ワシの負けだ、……ヌウ~、
ほれ、猫を渡そう、持って行け……」

イボガエルはマモルが背中に背負っている忍刀を
抜こうとしたのを見、慌てて命乞いを始める。
神棚の上に乗っている子ネコを籠ごとジャミルに
手渡す。が、マモルにはこの手の悪党が対外大人しく
降参する筈がない事を見抜いている。そして、案の定……。

「にゃあああーーー!!」

籠の中で眠っていた子ネコ。しかし、突然目を
かっと見開き、籠から飛び出、爪を立てジャミルに
襲い掛かって来た。

「バカめがっ!」

「うわ!?」

「……ジャミィっ!どけっ!はあ、変な呼び方だな、
しかし……」

マモルが急いで苦無をネコへと投げる。ネコの身体に
苦無が刺さり、ネコは煙を吐き、絶命する。……ネコは
偽物のロボットだったのである……。

「び、びっくりしたあ……、て、てめえっ、よくもっ!
じゃあ、本物のネコはっ!?」

「簡単に渡すかああ!猫も、そして、……この嬢ちゃん達もな……」

壁際に寄りかかっていたガマガエル。近くにあった
ボタンを押す。……すると、壁がいきなり上がり、
奥からロボットが姿を現した。壁だと思っていたのは
シャッターだったのである……。

「侵入シャ、排除スル……、ヨヨヨ~ン……」

「このっ!畜生!機械まで変な喋り方しやがる!」

「ウ~……、ばうばうばう!!」

「フン、犬と一緒にいつまでも吠えてろ糞小娘が!ヌーー!」

「侵入者、ハイジョ……」

イボガエルはどうやらジャミルが完全に女だと思って
いるらしかった。ロボットの腕が突然長く伸びる。
ロボットはジャミル達を攻撃するかと思いきや、
アイシャの身体を掴むと手元に引き寄せ、イボガエルに
手渡すのだった。

「ああっ!?て、てめえっ!!」

「ハイ、マスター、ロリ少女、一匹、収集完了イタシマスタ……」

「うぬ、ご苦労、……ヌーヌヌー!」

「……アイシャを返せっ!」

「カエセトイワレテ、けえす(返す=聖地の表現)バカ、
イナイ……」

「ヌウ、全くその通りだ、知能の足りない小娘が……、
おおっと、お前等動くな、其処のエセ忍者擬きもな……、
少しでも動いてみろ、このワシのロボットが小娘の
身体を圧し折るぞ……」

「……」

エセ忍者と言われ、癪に障ったのかマモルの表情も
険しくなる。直ぐにでも攻撃したいと思っているのだが、
相手はアイシャを人質に抱えている為、敵の動向を黙って
睨んでいるしか出来なかった……。

「では、ワシはこれで逃走いたす!お前らはワシの可愛い
ロボットと遊んでいるがよい、ヌー!」

「て、てめ……、待てーーっ!あっ!」

「マスター、ココカラオニゲクダ、サイ……」

「ぬーー!うむ、良くやった!さらばだあーーっ!」

ロボットがもう片方の腕を伸ばし、窓ガラスを壊すと
イボガエルの逃走用出口を作る。イボガエルはアイシャを
人質に抱えたままそこから逃走。ロボットは後を追おうと
するジャミル達の邪魔し、行く手をはぐんでしまう……。

「此処、トオサ、ナイ……、侵入者、ハイジョ……」

「ジャミル、行くんだ、此処は僕がやる!僕はこいつを
倒してゆーなを守る、アイシャは君が助けろ!大切な人は
自分自身の手で守るんだ……」

「マモル……、分ったよっ!無茶すんなよっ!また後で会おうぜ!」

「……お互いにね……、敵を倒したら必ず合流しよう、さあ来いっ!」

「!?アッ!」

マモルはロボットに向かって煙幕を投げる。その隙に
ジャミルも割れた窓ガラスからガマガエルを追い、
外へと飛び出して行った。しかし、マモルと比べると、
格好がスケバンジャミ子なので、今一間抜けである。

「ニガサ、ナイ……、マスターノ命令……、カナラズハタス……」

「残念だが、その命令は果たせない、……お前は此処でもう
お役目引退だ、行くぞ、ぶる丸!」

「……ばうーっ!」

マモルは眠ったままのゆうなの前に立ち、静かに背中から
背負っていた忍刀を抜く。主人の隣へとぶる丸も一緒に
並ぶのであった。……そして。


「待ちやがれーーっ!ブ男ーーっ!!」

「ひいいいーーっ!!」

……外ではスケバンジャミ子とイボガエルの鬼ごっこが
始まっていた。よっぽど使われた薬が強いのか、こんな
状態でも、イボガエルに脇に抱えられたまま、アイシャは
全く目を覚ます気配がない。

「くそっ、う、海まで出られれば……、何とか……、ひゃ、
びゃあああーーっ!?」

「待てって言ってんだよ、コラ……」

……俊足のジャミ子からデブのイボガエルが逃走出来る
筈もなく。イボガエルは竹刀を肩に担いだジャミ子に、
あっという間に正面へと回り込まれた。

「ワタサヌ、……ウウウ、に、20億円も、この小娘も
ワシのもんじゃああーーっ!!」

「はあ?20億円?何言って……」


……仕方ないわね、屑に少し力を貸してあげましょうか……


謎の声がガマガエルの耳に届いた。その途端、イボガエルの
身体が光だし、何と……。

「ああっ!な、何だこいつっ!?」

「……下~路下呂!ゲロ下呂!」

イボガエル男は本当に巨大なイボガエルへと変化してしまう。
今度はアイシャを背中に乗せて。

「人間じゃなかったのかよ、チッ!……気色わりィなあ~、
んな事言ってらんね、ガマでもイボでもどっちでもええわ!
早くアイシャを助けねえと!」

「下呂下呂下呂!げ~ええええ……」

「うわ!汚ねえな、……こいつっ!」

イボガエルはジャミ子に向かって、特大のゲロの塊を
放出。咄嗟に飛んで避けるがとんでもない相手である。

「下呂下呂下呂!下呂下呂下呂!!」

「……畜生!ゲロにばっか気ィとられて……、アイシャっ!」

ジャミ子はイボガエルの背中のアイシャを見上げる。
近づこうとすればゲロを放出するので、近寄れないので
ある。ジャミ子にもそろそろ疲れが出始めていた。
このままではアイシャを助けられないまま、ダウン
してしまう恐れもある……。


『大切な人は自分自身の手で守るんだ……』


「分かってるよっ!このまま黙って大人しくして
られるかっつーの!……ええい畜生、ゲロでも
何でも吐けえええーーっ!」

マモルの言葉を思い出し、ジャミ子が再び竹刀を
構え、イボガエルに突っ込む。ゲロを喰らっても
何でもいいから、もうとにかくアイシャを助けて
やりたかった。それだけであった。

「……下呂っ!……下呂?」

イボガエルが焦り出す。どうやら胃の中の吐く胃液が
全て尽きたらしい。

「チャンスっ!脳天割いーーっ!」

「げろおおおおーーーっ!!」

ジャミ子の竹刀脳天スマッシュ、イボガエルに命中。
頭部を思い切り叩かれたイボガエルは元の人間の
イボガエル男へと、姿が戻ったのであった。

「アイシャ!……はあ、今回も無事取り戻せて
良かったよ、しかし、毎回毎回、本当に懲りませんねえ、
……あなたはよっ!」

ジャミ子は地面に倒れているアイシャを急いで救出。再び
手元へと取り戻し、デコピン。しかし、相変わらず意識は
戻らないまま、眠った状態のままである。……頭部を
思い切り叩かれたイボガエルもすっかり気絶して伸びていた。

「ジャミルっ!」

「ばうばう!」

「!おお、マモルっ、後、顔のなげー犬も!そっちも
無事だったみたいだな!」

ゆうなを背中に背負ったマモルがぶる丸と共に
駈けてくる。マモルの背中に負ぶわれている
ゆうなの方も実に幸せそうな表情をしてそのまんま
眠っていたのであった。

「さてと、後は肝心のネコの行方だな……、こいつから
問いただして、何としてもネコを連れ帰らなきゃな……」

ジャミルの言葉にマモルも頷く。後はネコさえ
救えればえればもう少しで今回の騒動も収まる。
2人はそう思っていた。しかし、時価20億円の
ダイヤを行方不明のネコが飲み込んでいると云う、
何とも恐ろしい事実をまだジャミルもマモルも知らない。

「おい、イボガエル、寝てる場合じゃねえぞ、
もしもしイボよー、イボさんようー、……ちょっと
話があんだけどよ……」

余り起こしたくはなかったが、猫の事もある為、
……ジャミ子、ジャミルは仕方なしにイボガエルを
揺さぶり叩き起した。

「……ヌ?……ぎゃあああーー!ぼ、暴力スケバン
女ああーーっ!!」

「失礼ね、もう一回脳天叩き割ってやろうかしらっ!?」

「……いいから、お前に聞きたい事がある、全て話して
貰おう……」

マモルは噴気し鼻息を荒くするジャミルを押しのけ、
イボガエルの前に出る。勿論、苦無もしっかりと片手に
持ち、キラリと光る先っちょをイボガエルの顔の前へと
近づけた。

「ね、猫の事だろう……?な、何があってもこれだけは
話を洩らさせん……、死んでも猫は渡さん、例え殺されても
居場所は教えんぞおおーーっ!!」

「ありゃま、こりゃ随分と……、だけどな、てめえが
盗んできたネコだってちゃんと飼い主がいるんだよっ!
ネコが突然消えちまって心配で毎日苦しい思いしてんだぞっ!」

「……知った事かああーーっ!それにネコを盗んだのは
そもそもワシではな……」

「ふ、ふぎょーっ!?お前えええーーっ!!」

「……」

マモル、何も言わず、持っていた苦無をイボガエルの
首筋に刺す。イボガエルはその場に再びばったりと倒れた……。

「心配しなくていいよ、これは睡眠薬効果のある別の
苦無さ、軽く突いただけだよ、こんな事もあろうかと
思ってね、様子を見てたんだけど……、やはり口は
堅い様だ、仕方がない、強行手段でこれを使おう……」

マモルはそう言うと、持っていた小袋から、がさがさと
小さな薬を取り出す。

「が、丸薬……?」

「ああ、頑固な相手から色々と口を割らせて情報を
得る為の忍びの薬さ、これを飲ませれば隠している
事も全て何もかも白状するだろう……、よし、さあ、
大人しく飲むんだ……」

「にゃふう~……、ごっ、くん……」

「ハア……」

ジャミルは軽々と丸薬をイボガエルの口にほおり込み、
器用に鵜呑みさせるマモルの手つきを見ていた。やっぱり
何か忍びって、上手く言葉に出来ないが、恐ろしい
イメージがある様な、無い様な……、見ていて不思議な、
そんな感じだった。

(……俺も元シーフだけどな、隠密とは何かが違うんだな……)

「さあ、言え……、何を隠してる?全部言うんだ、
そもそも何故罪もないネコを誘拐したんだ?ネコを
何処へ連れて行った……?」

「だから……、ネコ、誘拐したん、ワシじゃない……、
ネコの腹の中……、ダイヤモンド、……入ってるんよ……、
20億円の……」

「!!!」

「にゃ、にゃにいいーーー!?が、ががが、が……、に、
にんじゅうおくえん……、だだだだだだ……、だいやあ
ああーーーっ!!……もんどおおーーっ!!あう!」

「落ち着けっ、ジャミルっ!静かにするんだっ!……ダ、
ダイヤ……」

マモルは錯乱するジャミルを静かにさせようと首筋に
苦無を刺した。しかし、苦無を持っているマモルの手も
明らかに震えている。冷静を装っている様に見えても、
頭と腹の中はパニックに陥っていた。その証拠に。

「あっ、ごめん、これ普通の苦無だった……」

「……おめえなああーーっ!!」

首筋から血を噴出しながらジャミルが叫ぶ……。

「おんなに……、頼まれたヌウ……、私は資産家の
大富豪の妻……、だが、ある男に恨みを抱く復讐の
悲劇の女でもある……、とな」

「!お、女だとっ!?資産家のっ!?」

「ジャミルっ、黙って!」

「そうだ、……ワシらはある日依頼を受けた、突如アジトに
現れたその女に頼まれてヌー」


「私は今、とても暇なの、今から一緒にゲームをして
下さる?この何の変哲もない、何処からか、かっさらって
きたネコ……、そうね、このネコに此処に有る、20億円の
ダイヤを飲み込ませるわ、偽物じゃないわ、きちんと確認
しなさい、私が今から名前を言う、恨みのある男を探して
捕まえて来て?そうしたら、このネコのお腹の中のダイヤと
交換してもいいわ……」


「と……、女がワシらの目の前でちらつかせたダイヤ……、
ありゃ間違いなくモノ本だった……、女はワシらの目の前で、
ほぼ強引に本当にネコにダイヤを飲みこませた……」

「……な、なななななっ!?」

「……」

イボガエルがぽつぽつ洩らし始めた真相。ジャミル達は
衝撃を受け、ただ黙って最後まで話を聞き出すしかなかった。

「女なんぞブッ殺しても良かった、ダイヤだけ奪えれば
良かった、そんな下らんゲームに付き合っている暇はない……、
だが、あの女の目を見た途端、……急に何だか逆らえん様に
なってしもうた……、嫌な女だったヌウ……」

薬の所為とはいえ、イボガエルはどんどん喋り出した。
虚ろな目をして。

「女はこう言ったよ、ネコの腹には3日間ぐらいダイヤが
残っている筈、その間に男を探せと、だが、やはりそんな
駆け引き、下らなくなってな、部下に女を襲わせ、ネコだけ
強引に奪ってやった、女は脳天にピストルを撃ちこんで
ブチ殺してやった、ふざけるんじゃねえとな、……確か
其処の海に死体は投げ捨てた筈だが……」

「……ひょえええーーっ!?」

「だから、ジャミル、落ち着きなって、君の隣の部屋の
相棒君みたいになってるよ……」

「ふん、ワシらだって鬼じゃねえのさ、極秘でいい医者に頼んで
ネコの腹からダイヤを取り出してやろうと……、だが、医者に
連れて行ってやろうとした最中にうっかり車の窓からネコめ、
逃走しやがった……、ネコだろうがなんだろうが、親切の恩を
アダに斬る糞は始末してやる、こうなりゃ、直に自分達の手で
猫の腹引き裂いてダイヤ取り出してやるとな……」

「な、なんて奴だ……」

「こ、こ、この……、この話ってえええーー!こんなん
だったっけえーー!?なんか2時間枠ドラマミステリー
状態と化してんだけどおーー!!」

「だから、落ち着きなってば、ああ……」

マモル、頭を抱える。ダウド化してしまいそうなジャミ公、
そして、イボガエルが洩らした衝撃の真相に……。

「ばうばうー!」

「……ぶる丸っ!」

その時、急に姿を消していたぶる丸が戻ってくる。背中にはネコ、
ニャミルを乗せていた。

「その猫だっ!間違いねえ、婆さんのだっ!お前、ちゃんと
探してきてくれたのかっ!!」

「ばうー!(だからいなり寿司頂戴!)」

「よくやったよ、ぶる丸……、よし、帰ったらご褒美に
いなり寿司だな……」

「はっ、はっ、はっ!」

だが、まだ問題は解決した訳では無く……、ニャミルの
腹には爆弾の様なダイヤが入ったままである……。
この事態を一体どう解決するのか……。

「……で、どうすんだよ、まさか俺らでダイヤ取り出す……、
とか……、このままにしておけねえモンな……」

ジャミルはおそるおそるマモルの表情を覗うが、マモルは
浮かない様な硬い表情をしている。

「ばうばう!」

「おい、どうし……、って、何だよそれ……」

ぶる丸がしきりに吠えていた。……ニャミルの側に
ダイヤの様な形をした石ころ……、が、転がって
いたからである。ジャミルは石ころを拾い上げてみるが。

「これ、石か?何でまた……」

「ばう!」


「そうよ、これはそのネコの体内に飲み込ませた物、
元はダイヤ、でも、今は唯の何の価値もない石ころよ……」


「な、何、……誰だてめえはっ!」

「ばうー!」

「!!」

突如、足音が響き渡り、フードを被った女性らしき
人物が現れた。外は薄暗く、女はフードで顔を覆って
いる為、はっきりとした表情は分らず……。

「あなた達も、私の今回のゲームに巻き込まれて
くれて有難う、楽しかったかしら?ふふ、猫はもう
返してあげるわよ、何処にでも持っていきなさい、
保健所行きにでも、好きにしたらいいわダイヤも
抜き取ってサービスで石にしてあげておいたのよ、
これでもう騒動にはならない筈よ……」

「……ゲ、ゲームだとううう~?」

「お前は……、もしかして、このイボ男に依頼を
頼んだ女じゃないのか?」

「ヌウ~……」

女はそうよと、静かに頷き、マモルはイボガエルを見る。
全てを暴露させられたイボガエルは疲れたのか、その場に
倒れて眠ってしまっていた。

「……てめえ、こいつの部下に殺されたんじゃ
ねえのか?ま、まさか……」

「違うわよ、おバカさんね、そもそも私は最初から
殺されてなどいなかったのよ、こいつの手下が私だと
思って撃ったのは、私が術で作り出した影武者、ふふ……」

「術だと……?お前、人間じゃないのか……?」

「そう、私はある男に復讐する為、再び闇から
立ち上がった女……、とでも言っておきましょうか、
何もかも奪われたのよ、その男にね……、だから
しつこく追い回すの、これからも……、私の力で
あなた達を混乱させてあげるわ……」

「だああーーっ!回りくどいなっ!一体何が
やりてんだか分かんねえんだよっ!そもそも俺らと、
てめえの復讐したい相手っつーのと何の関係があるっ!!」

ジャミルは女に向かってしきりに吠えているが。マモルは
少し気に掛る事があった。……女の視線の先がずっと
ジャミルを見ている、……そんな気がしたからである。

「ジャミル、まさか……、君……」

「何だよっ!?」

「いや、多分僕の勘違いだよ、気にしないでくれ……」

「っ!?」

マモルは何か言いたそうだったが、言葉を伏せた。
もしかしたら、この女はジャミルに恨みがあり、
何か知っているのではないかと……、そう思ったの
だが黙っていた。

「覚えておきなさい、これからもあなた達は常に
私に狙われていると言う事を……、ね、今回は
この程度だったけど、次はもっと混乱させてあげるわ……」

「!!!」

女は今度は倒れているアイシャの方を一瞬ちらっと
見たが直ぐに視線を反らし、再びイボガエルの方を見た。

「こいつは又使えそうだわ……、利用価値がある、
持っていきましょうか……」

(……ゲスよりも、ずっと役に立ってくれそうだわ……)

「ヌフ……、下呂下呂~……」

「ま、また術っ!?し、しかも本物のイボガエルに
替えやがったっ!?」

イボガエル男は女に術を掛けられ、再び本物の
イボガエルにされる。先程、ジャミル達を襲った
時よりも遥かに小さいサイズであったが……。

「安心しなさい、こいつの部下も全て纏めて私が
全部面倒見るわ、だから今回はとっとと豚小屋に
帰りなさい、一時の安らぎを味わっておくがいいわ、
……私はまた、いつあなた達の前に姿を現すか
分からないわよ?では、さようなら……」

「!あっ、待てっ!てめっ!」

女は術を唱え、その場から姿を消す。イボガエルを連れて。

「逃げられたかっ!うう~っ!一体何だってんだよっ!
考えれば考える程頭がおかしくならあ!」

「今はあまり深追いしない方がいい、それより、見ろ……、
奴らのアジトが跡形もなく消えている、……あの怪しい
女が術で消却させたんだ……」

「な……」

ジャミルとマモルは唖然としてその場を見る。先程まで
建っていた筈のイボガエルのアジトは最初から何も
なかったかの様に無くなり、嘘の様にひっそりと
静まり返っていた。

「取りあえず、一旦マンションに戻ろう、夜が明ける前に
戻らないと……、2人が目を覚まさない内に……、ネコの
事もあるしね、行こう……」

「ああ……」

ジャミルはアイシャを背負い、マモルはゆうなを背負って、
マンションまでの帰路を急いだ。ぶる丸はニャミルを
背中に背負い……。漸くマンションに戻れた時には、
時刻はもう朝方の4時であった……。

……それから、数日後……。

「ああ、ニャミル、ニャミルなのね、無事でいてくれて……」

「にあ~!」

「良かったですね、お婆さん!」

「ホントに良かったねっ!こむぎもうれしくて!
わんだふる~っ!ね、いろは!」

「うんっ!こむぎっ!」

「もう迷子になっては駄目、二度と大切な人と離れちゃ駄目よ、
ね……?」

「うん、……本当に、本当に良かったね、猫ちゃん……」

「こういうのもいいもんだな、何だか目頭が熱いぜ、
悟……」

「大福……、そうだね……」

マンションにはあの時のお婆さんが訪れていた。ネコが
無事に見つかったとジャミルがいろはに知らせ、携帯で
お婆さんにすぐ連絡を入れてくれたのである。再会を
喜び合うお婆さんとニャミルの姿を見て、わんぷり組も
心から喜んでいた。

「皆さん、本当にありがとうございました……、何の
お礼をする事も出来ませんが……、心から皆様の御親切と
ご合意に感謝いたします……」

「い、いや……」

皆に頭を下げるお婆さんの姿を見て、ジャミルは少々
複雑な気持ちになる。そもそも、ニャミルは今回迷子に
なったのではなく、あの謎の女の訳の分からんゲームの
目的に利用する為に適当に攫った被害ネコである。もう
狙われる事は無いと思うが、一体女の本心と真の目的は
何だったのか。そう考えると、罪もない動物を利用し、
アイシャとゆうなを誘拐したあの女に怒りが湧いてきた。
ジャミル達は女と何の面識もない。だが、これからも
ジャミル達を更なる混乱に巻き込んでやると言っていた。

……女は知っているのである。ジャミルとアイシャの事を。

「良かったね、ニャミルちゃん、これでお別れだね、
……元気でね……」

「私達の事、忘れちゃ嫌だよ?お婆ちゃんとお爺ちゃんと
これからも仲良くね!」」

「にゃあ~」

ニャミルはお別れに、アイシャとゆうな、2人にすり寄り、
ペロペロ顔を舐めるのだった。

「私達は、隣町に住んでいます、どうか良かったら、
これからも何時でもこの子に会いに来て下さいね!
お待ちしていますよ、本当に有難うございました!」

「はいっ、勿論!絶対会いに行くわ!」

「うん、バナナ持っていくねっ!」

……だから、バナナはいいっつんだよ……、と、ジャミルは
思ったが。さっきから横で黙って突っ立っているマモルも
相変わらずのボケゆうなに困った顔をしていた。

「「さようならーー!」」

「ばいばーい!またねー!」

いろは達とこむぎもマンションから去っていくお婆さんと
ニャミルに向かって手を振るのであった。

「それにしても、ニャミルとジャミル、……なんだか
面白い組み合わせね、……変コンビになりそうだわ、
でも、ニャミルの方が可愛げあるかしら……」

「……ああーーっ!?」

「……ユキってばっ、それでは、私達はこれで、また後で、
行こう、皆!」

「くく……」

何かツボに来たのか、ずっと笑っているユキの背中をまゆが
慌てて押した。……ジャミ公、ユキにまで構われる様に……。
いろは、こむぎ、悟と大福コンビもジャミルに笑い掛けながら
自分達の部屋へと帰って行く。

「ジャミル、僕達も部屋に戻るけど……、当分は大丈夫
だと思うけどさ、いつもあの女の事は視野に入れて警戒
しておいた方がい……、って、ゆーな何処行くんだよ!
そっち部屋じゃないだろ!おーい!」

「まも君、ほらほらー、みてみてー!あの雲バナナの
形してるんだよー!」

「ハア……」

マモルはまたふらふら一人で外に出て行こうとしたゆうなを
慌てて追いかけて行った。懲りねえなあ、……と、ジャミルも
苦笑する。

「ふふふっ!」

「ん?」

後ろを振り返ると、アイシャが笑っていた。……あの時、
2人が誘拐された時の事は、熱中症で倒れて夢でも
見てたんだよと、アイシャ達には言ってある。そうかなあ~
……と、本人達は不思議がってはいたものの。

「やっぱりジャミルって優しいね、ちゃーんと
ネコちゃんの事、考えてくれてたんだね……、
バカなんて言ってごめんなさい……」

「……た、たりめえだろっ、アホ!……てか、
お前がいつも俺に馬鹿馬鹿言うのはいつもの
事だろうが……」

「ううん、今日はちゃんと謝りたいの、ごめんね、
ジャミル……」

アイシャはジャミルに後ろからぎゅっと抱き着く。
アイシャの温もりを感じたジャミルは顔を赤くする。
そして、今回もアイシャが無事であった事に心から
安堵と喜びを感じた。……ので、あったが。


ブッ


「!!!い~やああーー!ジャミルのバカああーーっ!!」

「で、出ちまったんだから仕方ねえ……、あたたたた!
叩くなってんだよっ!……ま、またバカって言った
なあーーっ!」

「もうーっ!何回だって言うわようーっ!ジャミルのバカっ!
バカバカバカっ!!」


いつも通り変わらない、マンションでのドタバタ生活。
……本当に今日も平和であった。そして又、愉快な日々が
始まるんである。

zokuダチ エスカレート編・2

zokuダチ エスカレート編・2

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-09

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work