『秘め事』

赤い実食べたのだーれ?


『秘め事』


使い古した黒いガーターを脱いで
真新しい白い下着に手を伸ばす
いつでもミッションは抜かりなく
完璧を目指すべきと心に言い聞かせ

アタシはどんな時も完璧だった
笑った日も泣いた夜も変わりなく
彼が知るアタシを貴方は知らなくていい
貴方専用の女を用意してあげるから

偽って着飾った夢でも信じれば
いつしか真実味を持って
お互いの目を曇らせてくれる
安っぽいレースもシルクの肌触り

昨日までどんな風に孤独を飼い慣らし
どんな目で生きてきたのかとか
ふんわり匂わせるくらいが丁度いい
知り過ぎれば気まずいだけよ

ゼロ距離で見つめ合う時は
背景とか状況とか気にしないで
こんなものが愛かどうかなんて議論は
味のしなくなったガムを噛むようなもの

アタシが貴方にあげられるのは
熟しきった赤い実ひとつだけ
夢に見るほど溺れられたなら
それはそれで愛に近い何かだから

目を閉じ諦めて受け入れて
陶酔の余韻に浸る時間ならあるわ
寂しい昨日まではもう忘れて
いつか終わる夢を一緒に見ましょ



「赤い実はじけて後に残るは」

『秘め事』

『秘め事』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-09-06

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