zoku勇者 ドラクエⅨ編 87

カナト……act4

「……観念しろっ、この糞クソババアっ!!」

ジャミ公、等々女魔法使いを追い詰める……。女魔法使いは明らかに
同様はしていた物の、変な腹正しい笑いは止めようとしなかった。

「ホホ、ホホホホ!何なの、このクソガキはっ!何度だって
召喚してやるわっ!ホ~ホホホ!……ぎゃあーーっ!!」

ジャミルの会心の一撃、女魔法使いにヒットする……。コイツは只管
部下を召喚する事ばかりで、攻撃する事をしなかったアホ。本当の意味で
糞魔法使いかも知れなかったが。

「ホホホ、……そ、ん、な……」

「いやったあ~~っ!」

小躍りするジャミル。やっと女魔法使いを倒せた。取り戻した
自分の力で、そして、仲間とカナトの援護により、勝利を掴む事が
出来たんである。

「やったモン、ジャミルっ!モン、嬉しいモン!」

「まあ、それなりにやっぱ成長してんのネ、アンタもサ!」

モンとサンディに祝福される中、アイシャ、アルベルト、ダウドも
駆け付ける。特にダウドはいつも通り、ベチャベチャの鼻水をジャミルに
たけ、デコピンされた。

「さあ、ジャミル、邪魔者はいなくなった、僕とのバトルも再開して
欲しいね……」

「お前……」

これで終わった訳ではあらず。カナトとの戦いはまだケリが付いて
いない。……無理だと分かっていながらも、ジャミルはもう一度、
カナトへと完全バトル停戦への交渉を望むのだが……。

「カナト、さっきも言ったけど、俺、どうしてもお前と戦わなくちゃ
駄目なのかい?嫌なんだよ、カナトと戦うのは……、だから、伝説の
装備なんかなくたって……」

「……まだキミはそんな事を言っているの、此方も、さっきからずっと
同じ事を言っている、それは避けられない事だよ、厳しい事を言う様
だけど、まだキミの力は完全に戻った訳じゃないんだ……」

カナトは再び目つきを鋭く戻すとジャミルの方を見る。やはり、
どうしても戦わなくてはいけないのか……、しかし、迷っている
暇は無い……。


ホホホ、ホホホホ……


「……これは、……ジャミル!」

カナトはいち早く、ジャミルへと迫っている異変に気づく……。
明らかに、地面の中から何者かの異様な気配をカナトは感じ……。

「ねえ、もうさあ、ケリ付けちゃいなよお、今のジャミルなら
ゴールドドラゴンにも勝てるんじゃ無いの?」

「!!ダウドっ、ダメモンっ!カナトとジャミルはケンカしちゃ
ダメなんだモンーーっ!!」

「あだだだ!だ、だって、向こうがケンカ売ってるんだもの、
しょうがないじゃないかあ!!」

「……私も……、本音を言うと、ジャミルとカナト君にはこれ以上
争って欲しくないと思っているの……」

「……難しい処だよね、僕にもどう言ったらいいのか……、でも、
やっぱり最後は君の気持ち次第だよ、ジャミル……」

モンはダウドの頭に噛み付き……、アイシャも自分の心をジャミルに。
アルベルトの言う通り、どう決断するのかはジャミル自身に委ねられている。

「カナト、俺……」

ジャミルがもう一度、カナトと向き合おうとした、その時……。

「……カナト……?……!!」

一体、何が起きたのか分からなかった……カナトがいきなり、
ジャミル達4人に向け、魔法を放ち、遠くへと弾き飛ばしたの
である……。弾き飛ばされたジャミルは慌てて立ち上がると状況を
確認。……他のメンバーは再び全員失神……。只、モンとサンディ
だけはどうにか意識があった……。

「何なのよッ!やっぱ、あのカナトって子、ゼッテ~おかしいってっ!!」

「モ、モォ~ン……」

「サンディ、落ち着けってのっ!おい、アイシャ、アル、ダウドっ!
返事しろっ!!」

ジャミルは気絶しているメンバーに呼び掛けながら、カナトの方を
振り返る。其所には……。

「う、うう……」

「カナト、ど、どうした……?」

明らかにカナトの様子がおかしい。頭を抑え……、かなり
苦しそうである。ジャミルは仲間達をサンディとモンに任せ、
カナトの側へと急いで走る。

「……来るな!僕に近寄らないで!……」

「アホっ!何言ってんだっつーのっ!!……カナト……?」

「……やられた、あの女魔法使いだ、最初から……、これを狙って
いたんだ……」

「ど、どう言う……、ああっ!?」

「僕は、……もうすぐ、乗っ取られる、この身体と……、力……、
うあああーーーっ!!」

「……カナトーーっ!!」

カナトが苦しみだし、絶叫する……。カナトの身体を黒いモヤが
包んでいる……。一体何が起きたのか分からず、ジャミルはカナトを
何とか救おうとするのだが、次にカナトがジャミルの顔を見た、
その顔は……。

「……ホホホ、ホホ、ホホホホ!」

「……お、お前、カナトじゃねえな……、テメエっ!!」

「ホホ、そうよ、ボウや、お久しぶりね、と、言っても僅か
数分の間だったかしら?」

ジャミルは銅の剣を構え、身構える……。どうやら、あの
女魔法使いがしぶとく生きていたらしく、カナトの身体に
異変を起こさせたのもコイツである……。

「一体どう言う事だっ!説明しろっ!」

「説明するも何も、坊やの言った通り、最初からこれを狙って
いたのよ、コイツの力を乗っ取る為、弱い不利をしてあんた達を
油断させて騙していただけ、このドラゴンの坊やはね、もう、
力が弱まっていたの、この世界の衰えと共にね……、チッ、ま、
まだ……、ああああっ!?」

「ハア、ハア……、ジャミ、ル……、僕は……」

「カナトっ!お前かっ!?」

再び糞魔法使いを押しのけ、カナトの人格が現れる。だが、
その表情には生気が感じられず……。

「……ごめん、ジャミル……、本当はもっと……、早くキミに
打ち明けるべきだった、でも、僕もどうしたらいいか……、
迷ったんだ、だからこんな事になってしまった……」

「な、何言ってんだか分かんねえけど、安心しな!俺が助けてやる、
だから……」

「……ジャミ……あ、あ……うわあーーーっ!!」

「カ、……カナトォォーーっ!!」

再びカナトの身体が黒いモヤに包まれる……。次の瞬間、
ジャミルの目の前に現れたのは……。

「……ゴールドドラゴン……、いや、カナトじゃねえっ!!
カナトは何所だっ!?」

「……ホホホ、やったわっ!私は遂に最強のガーディアン
ドラゴンの力を手に入れたのよっ!!」

「まさか……、んな事あっかよ……」

ゴールドドラゴンではあったが、体中から溢れている闇の
オーラ……。又目の前で起きた非常事態にジャミルは只、
立ち尽くすしかなかった……。

倒れたフリをし、カナト……、ゴールドドラゴンの身体を乗っ取り、
力を吸収してしまった女魔法使い。事態は最悪の方向へと動いて行く……。

「テメエ、ゴールドドラゴンの力を奪ったってどう言う事なんだよっ!
それにカナトの力が弱まっていたって……、ちゃんと分かる様に
説明しろっ!!」

「モォーーンっ!!」

「……ジャミ公っ!!」

騒ぎを聞きつけ、モンとサンディも飛んで来る。だが、まだ他の
メンバーは気絶している。モンは慌ててジャミルの肩へと飛び乗る。
ジャミルをフォローする様に言葉を続けた。

「……カナトは弱くなんかないんだモン!強くてカッコイイんだモン!
シャーー!!」

「それは、精一杯の此奴の強がりだ、この小僧……、ゴールドラゴンは
既に自分の力に限界を感じていたのだ」

「ゲッ、コイツ、何か調子に乗って喋り方まで変わってるし!?何か
エラソーになってるんですケドっ!?」

「……ガーディアンであるゴールドドラゴンはこの世界と共に
生まれし主、だが、この世界を守護する力が弱まる事により、
次第にガーディアンの力も共に衰えて行くのだ……」

「……カナト……」

ゴールドドラゴンの力を乗っ取った、偽ゴールドドラゴンは
淡々と話す。だが、サンディの言う通り、喋り方まで偉そうに
糞生意気になって来た偽者に、ジャミルも痛烈に腹が立ってくる
……。そして、ある事実に気づく。カナトが異様に早く自分に
力を取り戻せと言っていた訳、時々ぼやいていた、時間が無いと
言っていた事、それはカナト自身が自分の力の衰えを理解していた
からかも知れなかった。

「此奴は最強のガーディアンだが、デメリットも備えている、
強力な力を使えば使う程、自身の寿命も縮まるのだ、その様に
創られている筈、最も、主と認めし者に伝説の装備を託し時、
この世界も消滅し、ガーディアンの役目も終わる様になっている、
……創造神グランゼニスはその様にこの世界を創ったのだ……」

「……まさか、カナトっ!お前はっ!!」

「モォーーンっ!?」

そして、漸く完全に理解する。カナトは数百年の間、この世界に
侵入して来る侵入者達と戦い、力を使い、寿命を更に早く縮めて
いたのだと。しかし、ジャミルに伝説の装備品を託してしまえば、
役目を終え、異世界の終わりと共に完全に寿命は尽きるのだと。
カナトの命がどの道もう残されていない事を漸く知ったのであった。

「ありゃ……、何か……、あのグランゼニスって神サマも……、
相当エグい世界の創り方すんのねえ……、使い捨ての世界と
ガーディアンだなんて……」

「……やーモン!やーモォォ~~ンっ!!カナト、死んじゃ
イヤなんだモン!!ジャミル、お願い、カナトを助けて
モォォ~ンっ!!」

「俺だって……、んな……、ぐっっ!おいっ、テメエ!カナトを出せっ!
話をさせろっ!!おおーーいいっ!!」

「ホホ、ホホホホホ!!」

偽ゴールドドラゴンは途端に素の女魔法使いの高笑いを始める。
何とかして、偽者に取り込まれているカナトと話をしたかった。
どうしても話がしたいと……。そして、一番肝心な事を隠していた
カナトにも怒り爆発……、握った拳が震え出す……。

「俺の所為だ……、アイツがあんなのに取り込まれたのも……、
これまで俺を助けてくれたり、俺と戦ったから……、カナト……、
コラーーっ!!お前何で、んな大事な事、今まで俺に隠して
たんだっつーのっ!!」

しかし、カナトへと幾ら呼び掛けてみても、取り込まれたカナトは
出て来てくれず、返事もしてくれない……。目の前にいるのはカナトを
取り込んだ偽者の姿だけ……。

「ジャミル、落ち着いて!」

「……アルっ!アイシャ、ダウドっ!」

気落ちし掛けたジャミルの肩を後ろから誰かが叩く。アルベルトだった。
アイシャも、ダウドも。又、駆け付けてくれた。

「倒れていても、話は聞こえた……、ジャミル、とにかく落ち着こう、
落ち着かないと……」

そう言いながら、ジャミルを落ち着かせようとするアルベルトだが、
方法が一つしか思い浮かばないのも事実だった。カナトを救えるかも
知れない唯一の方法。けれど、今はジャミルの目の前でそれを口に
出す事は出来ず。

「ハア、やれやれ、あれだけ大声で吠えれば嫌でも目が覚めます
よお~、……あ、あのおばさん、ゴールドドラゴンの中からどうにか
追い出せれば……、……」

「……」

「うひゃーーっ!無理無理無理!絶対無理ですーーっ!!」

ダウド、目の前でギロリと自分を睨んでいる様な形相の偽ゴールド
ドラゴンに、丸くなって怯え、サンディに、アンタ又何やってんのよッ!
と、脅される始末。

「モォ~ン、アイシャ……、カナトがこのままじゃ死んじゃうモン、
嫌モン~……」

モンは泣きながらアイシャに飛びつく。アイシャはそんなモンを
優しく抱擁し、慰めるのだった……。

「モンちゃん、大丈夫……、きっとカナト君を救える方法がある筈よ、
皆で考えよう、ね……?」

「モォ~ン……」

「アイシャ……」

アイシャがモンを慰める横で項垂れるアルベルト。そして、更に
ジャミルは……。

「……畜生、畜生……、カナトーーっ!!出て来てくれーーっ!!
お前と話がしたいんだーーっ!!」

「……幾ら叫んでも無駄、もうすぐ此奴は消滅する……、ホホ?
ホホホーーっ!?」

「……ジャミル……」

「カナト……、カナトかっ!?」

「うん……、僕だよ……」

……最後の力を振り絞り、カナトの人格が再び姿を表す。その声は
どんどん弱々しさを増していた……。

「キミの事だから、こうなるから……、無事に伝説の装備を
継承させたら……、黙って消えようと思った、それなのに……、
こんな事になってしまって、本当に済まない、ジャミル……」

「……何言ってやがるっ!俺は絶対オメーを消させねえぞ!待ってろっ、
コイツを倒したら特大デコピンの準備だっ!!」

「……ふふ、やっぱりキミには叶わないよ……」

「うるせー!黙ってろ、この腹黒ドラゴンっ!!」

「……腹黒って、カナトまで……」

「ダウド、僕の方何で向いてるの……?」

(……ジャミル……、出来るなら、キミともっと……)

カナトは静かに目を閉じ、心を落ち着ける。どうしても彼に
伝えなければならない事、……ジャミルへ……、お願いしたかった。

「ジャミル、頼みがある……」

「な、何だっ!?」

「……僕を取り込んでいる現況のコイツ事、僕を今すぐ斬って
欲しい……、そうすれば……」

カナトがジャミルに頼んだ事、それはアルベルトがジャミルに
上手く事を伝えられず、迷っていた考えだった。……この方法しか、
女魔法使いに飲み込まれたカナトを救う事は出来ないのである……。

「僕の、最後のお願いだよ、そうすれば……、キミは僕に勝った
事になる、伝説の装備もキミへと受け継ぐ事が出来るんだ……、
僕の……ガーディアンとしての使命が終わる……、この世界に
生まれた苦しみから解放される……」

「……ふ、ふざけんなバカ野郎!んな事出来るかっつーのっ!」

「ジャミル、頼む、お願いだよ、本当にもう時間が……、ううっ!」

ゴールドドラゴンの顔が再び苦痛に歪み出す。やはり原始人の
ジャミルは言う事を聞いてくれない……。そして、カナトの意識は
再び偽者の方に乗っ取られる……。

「……ク、糞め、まだそんな余力が残っていたとは……」

「どうすりゃいいんだよ、……俺、アイツを犠牲にしてまで……、
力なんか欲しくねえよ……」

「ジャミル……」

苦悩するジャミルを心配し、仲間達が側に寄る……。と、再び神殿内に
大きな揺れが……。

「……うあーっ!又だよおーー!」

「この揺れは……、侵入者の所為じゃない、この世界がもう……、
恐らく、崩壊寸前だから……、その所為もだったんだ……」

「……モンちゃんっ!」

「モォォーンっ!!」

「俺、俺……、どうしたら……」

「ジャミ公!アンタ早く決断しちゃいなよっ!このままアンタが
ウダウダしてても何もならないのよっ!このままじゃ、全員
この世界とシンジューだよっ!……アタシ達を元の世界で
待っててくれてるテンチョー、エルキモすの侵攻でショック
受けて怯えてる天使界のみんなのコトも考えてっ!」

頭の回転が速く、いつもなら物事をスパッと決める事の多い
ジャミルだが、今回だけはサンディの必死の訴えにもどうしても
決断出来ず、偽ゴールドドラゴンの姿を見つめ、苦しんでいた……。

「安心しろ、この世界は滅びん、何故なら……、この世界は
あのお方の支配する世界の新たな領土の一部となろう、我は
新たな主が治めし世界の一つに貢献するガーディアンと
なるのだ……」

「んだとっ!?」

「あのお方……、エルギオスの事ねっ!」

「……僕らがいる限り……、そんな事はさせないっ!」

「あうあう~……」

「ほう、出来るのか?我を倒すか?……其所の小僧は迷っている様だが……」

「……ううっ」

皆はジャミルの方を向く……。カナト、サンディの言う通り、ジャミルが
決断しなければ本当にもう時間が残されていない。この世界の消滅は
避けられても、このままでは何れエルギオスに乗っ取られ、新たな世界と
破壊のガーディアンを迎える事になってしまう……。

「ダメだ、やっぱり、俺……」

「……ジャミ公の意気地ナシーっ!」

「そうか、やはり貴様はクズ男か、ならばどんどんやらせて貰うぞ、
まずはこの世界に有る、邪魔な伝説の装備を破壊する事……、新しき
世界での我の最初の仕事だ、ホホホホ!」

「!や、止めろっ!させねえっ!!……うあああーーっ!!」

「「ジャミルーーっ!!」」

遂にジャミルが動いた。偽者のゴールドドラゴンへ……、銅の剣を構え、
無我夢中で斬り掛かって行く……。

「ホホホ、これを見るが良い……、お前はこれでも攻撃出来ると言うのか?」

「……カ、カナト……」

「モォーーン!!」

偽ゴールドドラゴンが映し出したビジョン。水晶の中に閉じ込められ、
静かに眠っているカナト本人の姿だった……。

「あ、あああ……」

再び戸惑いだし、偽ゴールドドラゴンへの攻撃を止めてしまう
ジャミル。膝を付いて持っていた銅の剣を落とし、その場に
崩れ落ちた……。

「腑抜けの間抜けめが!……邪魔なその力、我の一部となり、
手助けせよ!」

「……あああーーっ!!」

偽ゴールドドラゴンがジャミルに向け、波動を放つと同時にジャミルの
身体から光が溢れている……。

「あ、あれ……、まさか……、もしかして、またジャミル、力、
吸い取られてる?」

「……そんなっ!?折角……、カナト君が……命を掛けて……」

「だ、だからっ!も、もう……、ジャミ公なんかホントに
知らないわヨッ!」

「そんな事言ってる場合じゃない、ジャミルを助けなくちゃ!」

「あわわーー!」

「何よ、いつもいつも、どいつもコイツも、ホント、しょーもない
お節介連中……」

悲観に暮れているサンディを置いてジャミルの元へ飛び出して行く
3人とモン。もうジャミルの試練だろうが何だろうが、このまま
ジャミルをほおっておけなかった……。

「力、抜ける……、カナト、済まねえ……」

「ホホホ!ホホホホーーっ!……!?」

突如、メラミが偽ゴールドドラゴンへと放たれる。ジャミルは力を全部
抜き取られる前に解放され、地面へと倒れる……。

「ジャミルっ、しっかりするのよう!ホラ、立ってっ!」

「……アイシャ……?」

ジャミルは倒れたまま瀕死の状態でそっと薄目を開ける。側に居たのは、
アイシャ、アルベルト、ダウド、モンであった。

「ジャミル、このままじゃ駄目だ、一緒に力を併せよう、まずはカナトを
助けなくちゃ!」

「アル……」

「全くもう!カナトに助けて貰ってばっかりで、ダメじゃないかあ!今度は
ジャミルがカナトを助けるんだろっ、もうっ!……ヘタレはオイラの特権
なんだから、真似しないでっ!」

「ウシャーー!」

……ヘタレは激おこぷんぷん状態でジャミルにベホマを。その間に、
モンはジャミルの頭に噛み付くのだった……。

「いてて……、だよな、俺、悲観するばっかだった、全く俺らしく
なかったよ、どうかしてた、カナトを救う方法は幾らでもあるんだ、
そうさ……、無理なんて事、この世にありえねえんだよ……」

……ジャミルはモンに頭を噛み付かれたまま、フラフラ立ち上がる。
そして、皆の間に割って入り、仲間達に向かって頷くと笑みを交わした。

「ハア、や~っぱ、ジャミ公ってまだまだお子ちゃまよネっ、ホント、
アタシ達がいないとな~んにも出来ないんだからさっ!」

「……るさいっ!」

文句を言いながらも、結局は飛んで来てくれるサンディ。皆の励ましは
ジャミルに勇気を与えてくれるのだった……。

「……おい、偽モン、カナトを返して貰う、お前の中からカナトを
助ける、絶対に……」

「ほう……?どう助けると言うのだ?こやつは我を倒さねば中からは
出られぬ、最もそれは我が消えれば、中のこやつも一緒に消滅すると
言う事、我とこやつはもはや死も一心同体なのだからな……」

「……」

ジャミルは偽ゴールドドラゴンをキッと睨む……。絶対に
諦めたくない、絶対にカナトを救う、そう強く思い、カナトの
無事を願った……。

「……な、何だっ!?これは……」

「モンっ!?」

「ジャミル……?」

突如、ジャミルの身体が淡く光り出す……。と、同時にジャミルの姿が
その場から消えてしまう……。

「大変よっ!ジャミルが消えちゃったわっ!……頭に噛み付いたままの
モンちゃんも一緒に!」

「……ま、また、ジャミルはあ~!どうしてこう、あーで
こうなんだよおお!!」

「……アイシャもダウドも落ち着いて!」

「あ、あの糞ガキめ、何故だ、何故、我の中へ……、そうか、
そう言う事か……」

「え、えっ……?」

突如又仲間達の前で起きた非常事態が……。カナトを救いたい、
そう強く思った瞬間、ジャミルとモンは……、カナトが
取り込まれているらしき、偽ゴールドドラゴンの身体の中へ
吸い込まれてしまったのだった……。

「……ホホ、これもあの女の外部からの差し金、そう言う事か、
駄女神め、邪魔はさせんぞ……」


……ジャミル、どうかお願いします、カナト……、あの子の孤独を
救えるのは太陽の様な心を持つあなただけなのです……

その頃、天使界……


……あ、あああ……、力が……、わ、私の力を妨害する者……、
何とか、あの子達を……


「おお、女神様、ど、どうなされたので……!?」

「長老、世界樹の色が……!」

「お、おおお……、これはどうした事じゃ!……世界樹の色が
暗い灰色に!?」


ジャミル達に大きな危機が迫っています……、オムイ、皆さん、
どうかお願いです、もっともっと強くどうか祈りを捧げて下さい、
祈りはきっと大きな力に変わります、……どうか、あの子達が
無事に此処に戻って来れる様……


「……み、皆の者……、儂らももっともっと強く願おうぞ!
ジャミル達の生還を!」

「……長老……!」

「ジャミル、あなた達の戦いはこれからよ……、まだまだ大変な事は
続くんだから……、どうか挫けないで……、無事に戻って来てね……」

長オムイ、ラフェット……、天使界の皆が世界樹の前で祈りを捧げる……。
そして、再び異世界……。

「あの小僧はどうやら奇跡とやらを信じ、竜小僧を生存させたまま
我の中から助け出すつもりの様だ、何を無駄な事をやっておるのか、
クク……」

「……そうか、ジャミルは……、アイシャ、ダウド、信じよう、
必ずジャミルはカナトを助けて戻って来る、それまでこの場は
僕らでこいつを食い止めよう……!伝説の装備も守らなければ!」

「そうね、完全に倒す事が出来なくても、ジャミル達が戻って
来るまで、出来るだけダメージを与えておいてあげましょっ!
全くもう、どうしてすぐいなくなっちゃうのよっ、ジャミルはっ!
本当にじっとしていられないんだからっ!」

「……」

「何?ダウド、何で人の顔見てるの!?」

「何でもないっ!オイラも頑張るっ!」

「よしっ!それでこそジャミ公の変な連れっ!どんどんイッケーっ!」

「フ、その前にあやつも我の中で命尽きるわ、この場の貴様達もな……」

偽ゴールドドラゴンの前で対峙する、残った3人……。ジャミルが
戻ってくるまで何としても踏ん張ろうと……、取り戻した力と共に
全力で戦うと覚悟を決めた……。

「ジャミル、ジャミル~……」

「……う……」

「大丈夫モン……?」

「モン……、此処は……?」

ジャミルは頭を抑え、周囲を見渡す。まるで出口の見えない
トンネルの様な場所で真っ暗だが、かろうじて不思議と目は
見えるんである。

「モンもジャミルも……、あの嫌なドラゴンの中に吸い込まれ
たんだモン……」

「そうか、此処はアイツの中か……、それなら、此処の何処かに
カナトがいる筈だ、モン、来いっ!」

「モォ~ン!」

モンをジャミルの肩に飛び乗らせ、薄暗い中を歩き出す。
必ずカナトに巡り逢える事を信じて。

「お外にいる皆も心配モン~……」

「そうだな、早くカナトを助けてとっととこっから脱出しねえと……」

「モン……?」

ひたひたと只管薄暗い中を歩いて行くジャミル。だが、モンが
何かを感じたのか、肩に乗ったまま後ろを振り返る……。

「モギャーー!ジャミル、大変ーーっ!!」

「おう、どうしたい?……あ?……マジかあーーっ!!」

背後から……、変な丸っこい水晶の様な固まりが追いかけて来る。
それも何個も……。事態に気づいたジャミルは急いで走る。だが、
水晶はしつこく追って来る…。

「ありゃあ、カナトを閉じ込めてる水晶と同じだっ!畜生、俺らも
捕まえる気だな!捕獲されてたまるかっつーのっ!」

「ウシャーモンモン!」

このまま逃げていてもどうしようもない。そう考えたジャミルは
立ち止まり、いつの間にか自身の手の中に有った落とした筈の
銅の剣を握り締める。カナトから譲り受けた、大切な剣。不思議と
握っていると勇気が沸いた。

「来いよっ!」

ジャミルは正面まで迫って来た水晶を叩き割る。水晶は次から次へと
容赦なく襲って来る。こんな処で立ち止まって負ける訳には行かない。
絶対にカナトを助けてみせると……。数体叩き割った処で追いかけて
来る水晶の群れは途絶えた……。

「ハア……、ふう~っ……」

「ジャミル、本当に大丈夫モン?」

「大丈夫だ、これぐらいで負けてらんね……、さあ、行こう……」

「モン~……」

モンが心配する中……、ジャミルは再び歩き出すが、やはり出口は
見えない……。そして、ジャミルは又理解する。もしかすると、此処は
カナトの心の闇でもあるのかも知れないと。

「このままずっと我武者羅に歩いていてもダメだ、無限ループだ……、
やっと分かった……、カナトはすぐ近くにいるんだ……、肝心な事に
気づかなかったよ……」

「モ、モン?」

ジャミルは立ち止まると、見えない周囲に向かって言葉を
呟き始める……。

「カナト、其所にいるんだろ?出て来てくれよ、頼む……」

「……あ、あれれ?急に周りが明るくなったモン……?」

「カナトっ!!やっぱりかっ!!」

ジャミルがカナトへ向け、言葉を呟いた瞬間、周囲が明るくなり、
空中に浮かぶ水晶が見えた。中にはカナトの姿……。ジャミルは
急いで水晶に駆け寄る。

「カナトモンっ!ジャミル、急いで水晶を割るモン!」

「よし来たっ!今助けるからな!待って……、!?」

「……そう簡単に行くと思っているのかい……」

「バカめがあーー!!」

「ホホホ、ホホホホホ!!」

「畜生っ!やっぱり邪魔が入るかっ!!」

「ドラゴンがいっぱい出たモンーーっ!!」

やはりカナトを助けるにそう簡単に上手く行く筈が無く、カナトが
閉じ込められた水晶の前に並ぶ無数のドラゴン……。何所までも
邪魔をしてくる卑劣な敵の前にも怯む訳にいかなかった。

「ジャミルううう~、こ、これ全部戦うのモン……?幾ら何でも
この数のドラゴン、ジャミル一人じゃ厳しいモン~……」

「止まってる暇はねえ、大丈夫だ!直ぐにケリを付けるからよ、
モン、待ってろ!」

「モォォ~ン……」

モンが心配する中、ジャミルは今度は一人でドラゴンの群れに
突っ込む。見ているしか出来ないモンはまた歯がゆくなる。何も
出来ず、只ジャミルを見守っているだけの自分に……。そして、
元の場所でも、偽ゴールドドラゴンと仲間達の死闘が……。
バトルに挑み、早くも僅か数分で瀕死状態に追い込まれた……。

「やはり大した事は無いな、雑魚が……」

「く……、やっぱり、桁が違い過ぎる……、でも、此処で倒れる
訳には行かないんだ……」

「そりゃあそうだよお、あのカナトの力を奪っちゃった
ドラゴンだもの……、ど、どう考えたって幾らオイラ達が
力を取り戻したって……、無謀に決まってるじゃないかあ……、
何でこうなるの!ってジャンプして逃げたい状況……」

「ダウド、諦めないでっ!必ずジャミルはカナト君と一緒に
戻ってくるわ、それまで頑張るのよ!私も諦めないんだから!」

「……ジャミ公、は、早く戻って来てよ、じゃ、ないと……、
みんなやられちゃう、冗談じゃないわヨ……」

此方の状況を見守るサンディもハラハラであった……。勝てないと
分かっていても、ジャミルが戻ってくるまでの間、強敵を食い止め
ようと頑張ろうとする仲間達……。天使界の皆の祈りは届くの
だろうか……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 87

zoku勇者 ドラクエⅨ編 87

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-03

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work