短歌
かすかなる 響きは届かず 今日も往く 未知なる世界は 心のままに
星空の 彼方に優しき 父を見る あなたの思いは 未だ潰えず
戦没者 声なき声も 土の下 時流を奏でる 森のささやき
感官で 知りうる世界は 俗まみれ 聖なる世界は もはや知りえず
行きずりの 交わりなれど 恋しくて 去り行く背中は 群れの彼方に
信仰は 欲望の下 ひざまずく 夢にまで見た 新たな世界
広大な 宇宙の裂け目は すぐそばに 森の中にも 街の中にも
反逆者 その実態は 権力者 上から見るか 下から見るか
彼岸花 闇夜を背にして 赤と黒 冷たく彩る 生死のあわい
獄中で ただ一心に 書きなぐる 彼の思いを 今も背負いて
銭湯の 帰り道にて ほてる頬 京の夜風に 髪はなびかず
白人が 木陰で佇む 昼下がり 緑が彩る 春の鴨川
新宿の ネオンサインに 魅せられて 終電逃し 今日もさまよう
言語にて 表出されるは ごく一部 濁りの抜けた 清き上澄み
短歌