
何もない世界
気づけば、生まれて。
気づけば、生きていた。
青い空に気づいて、日差しの温もりに気づいた。
風は君の髪を優しく撫でて、私には冷たく吹き荒(すさ)む。
何もないこの世界に君は希望をくれた。
何もないこの世界に優しさを教えてくれた。
何もないこの世界に愛をくれた。
猫や犬までへつらうこの世界。
君だけはありのまま。
気づけば、悩んでいた。
気づけば、苦しんでいた。
夜の寂しさに気づいて、月の明かりの不気味さに怯えた。
星の光は君の瞳から溢れ、私はその頬に手を添える。
何もないこの世界に君は真心を教えてくれた。
何もないこの世界に美しさをくれた。
何もないこの世界に思いやりをくれた。
猫や犬まで争うこの世界。
何もないこの世界に君は勇気をくれた。
忘れはしない、忘れはしない。
そう思い、夜空の君に誓う。
何もない世界