『皮膚の内側は静かだった』

あんなに強い日差しの下
汗が伝う肌の温度が知りたくて


『皮膚の内側は静かだった』


動く喉仏に唇を押し当てて
動脈の拍動を数える
生きてるって凄いことね
強く脈打つ度に実感するの

今ここにふたりで居て
お互いの息がかかる程近い
接点なんて数えるくらいなのに
こんなにも近づいている

ノースリーブの白い肩を
弱々しく撫でる手が擽ったくて
吐息で笑えば拍動が速くなる
連動してるってことが嬉しいの

日に焼けた首、胸、腰
口付けてみても貴方は寡黙
優しい手つきで抱き寄せてくれる
見るのと触れるのでは大違いね

沢山の人がいつも周りに居るから
本当の貴方を知るのは難しかった
だけどその人たちは貴方を
どこまで深く知ってると言うの?

静かに体重を傾けるその顔を
アタシ以外に誰が知ると言うの
賑やかな喧騒の中の貴方ではなく
今ここに居る貴方が愛おしい

そんな風に言葉少なに愛を口にするのと
どんな女の子でも軽口で口説くのとでは
どちらが簡単でどちらが難しい?
答えなんて本気で求めてはいないけど

日差しを拒む真っ白な首、胸、腿
口付けられれば恍惚のテノール
内側まで触れられアタシは意外に
饒舌な女だと教えられる



「いつもの戯れと本気を比べるような無粋は頂けない」

『皮膚の内側は静かだった』

『皮膚の内側は静かだった』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-07-22

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