『綻びすら美しい』
薄く笑った君は躊躇いなく
その手で僕を突き落とした
『綻びすら美しい』
浴衣の襟合わせを気にしだし
こんな風に何気なく不意に大人になると
いつまでも気付かなかった僕が悪い
すっかり君は少女を捨てたね
夕日の帰り道、同じ話題で
何度も喧嘩するのが好きだった
君が頬を膨らませる仕草が
余りに可愛くて守りたかった
ちっぽけな正義感と恋心は
いつか君の中で色褪せてしまう
そんな日もあったねなんて
本当は思い出しもしない癖に
ヴァネッサ・パラディに憧れて
危ない橋を行ったり来たり
無邪気を装った故意に翻弄されれば
まるでジェットコースターの気分
運命なんてものはどこかしらに
欠点があるものだと諦めて
降伏を認めても掴みきれない
君の後ろ姿が陽炎に消える
最後の言葉が何だったかさえ
今はもう思い出せない
君は君の幸福を求めて飛び立つ
僕の幸福を置き去りにして
「何度夏が巡っても君が消えない」
『綻びすら美しい』