zoku勇者 ドラクエⅨ編 83

試練を超えろ!・5

あれから。アイシャの容体が完全に回復するまで、一行はその場から
動けなくなってしまう。が、近くに汚いボロ小屋を発見。其所で暫く
休む事に。高熱はダウドの必死の治療により、どうにか下がり掛けて
いたが、倒れてから眠ったまま。……ケンカしたまま、素直になれず、
煮え切らないこの二人も……。沈黙のまま、流れていく時を過ごしていた。

「こんな小屋、昨日までなかったのにねえ、ホント、おかしいね……」

「……面白くねえよ」

「ふう、幾ら魔法で何とか風邪ぐらいの病気治せる様になった
からって……、オイラ医者じゃないんだから、時間掛るんだよお、
……これ、愚痴じゃないよお、ごめん、アイシャ……、アルのアホ、
ジャミルのタコ……、ス○ローさん、広告詐欺は駄目だよ……」

ダウドも疲れている為、ついこんな言葉が出てしまうのだが、やはり
最後のは意味不明。等の本人は眠っているので声が聞こえる訳がなかった。
……それでも、何か反応して欲しいのか、ダウドは泣きたくなってきた。

「……」

「……ね~、アルベルト、アンタいつまでそーやって座りっぱなしで
イジケてるワケ?よくもマア、ず~っとそーしてられるよネ!」

けして茶化しに来たのでは無いのだが、アルベルトがいる川縁に
サンディがやって来る。

「別に……、僕はいじけてなんか……、ねえ、ジャミルはどうしてる……?」

「ふ~ん、やっぱ気になるんだあ!ふ~ん!……ふ~~んっ!!」

「だから別にっ!心配なんかしてないよっ!でも、やっぱり
僕の所為で今回も……、皆に迷惑掛けている事は分かっている、
アイシャにも悲しい思いをさせてしまったし、どう謝ったら
いいんだろう……、……で、でもっ、決して僕はバカなアイツ
……、ジャミルの心配なんかしていないっ!」

アルベルトは口を尖らせ、明後日の方向を向き、弁明している。
やはり此方もどうしようもない、ツンデレバカである……。

「はいはい、ま、一番いいのは、アンタが素直になって、カナトって
奴の処にお付き合いで一緒に行ってやる事じゃネ?」

「……」

サンディはそう言いながら皆の所に戻って行った。根がクソ真面目な
割にはコイツも団体行動乱すんだから、これってどーよ!と思いながら。
ノータリンの盗賊バカ、世間知らずの腹黒貴族、ヘタレ、ジャジャ馬、
結局、言うまでも無いが、このPTは全員が問題児と言う事。サンディが
いなくなった後、残されたアルベルトは……。

「……素直に……なる……」


……

「ダウド、アイシャは大丈夫モン?」

「うん、熱は何とか……、只、体力も相当落ちてるし、この先……、
病み上がりのこんな状態で歩かせられるかなあって、……」

「モォ~ン……」

「心配要らねえよ……」

後ろを向いてふんぞり返ったままのジャミ公が返事を返す。これも
あれからずーっとこのまんまなんである……。ジャミ公の態度に
ダウドは又カチンと来るのだが……。

「何がっ!心配要らないのさあ!!」

「……お、俺が負ぶっていくから……、よ……、責任持ってさ……」

「う……」

ふて腐れたかと思えばこう……、ノロケ始める。ダウドは吹きそうに
なったが、吹いた。

「……何笑っとるっ!このヘタレめっっ!!……俺がギャーギャー
言いすぎたんだ、アルなら……、別に一人で残っても何も問題ねえしな、
心配しすぎたんだ、LV1でもあの野郎には反則技があるしな、別に俺が
どうのこうの……」

「はいはい、けど、け~っきょくは心配なんじゃん、アルの事さあ!くくく……」

「だ、だから……、えーいっ!黙れ黙れ黙れっつーのっ!このヘタレ野郎っ!」

「……何だよおおおーー!」

今度はこっちがいつものバカバトルに突入しそうになり……、モンは
カオス顔に……。

「……アイシャが具合悪いのに何してるモンっ!シャーー!!」

「「……ごめんチャボ……」」

今度はモンに説教されてしまうこっちのコンビの二人であった。と、
其所にアルベルトが小屋にやって来る……。

「あの……」

「あ、アル……」

「何しに来たんだよ……」

「ま、ま~たジャミルは……、どうしてそう……」

折角アルベルトが戻って来た言うに、意地を張り続けるジャミ公に
呆れるダウド。モンも又、ジャミ公の頭に噛み付いてやろうと
カオス顔になり準備をしていた。

「ジャミル、みんな、ごめん、……本当に……」

「アルっ!?どうしたのさあ!!」

「……」

先に折れたのはアルベルトの方であった。アルベルトは申し訳なさそうに
皆に頭を下げた。

「……僕の所為で……、アイシャにも身体を悪くさせてしまって……、
本当に……、どう謝っていいか分からないんだ、でも、今はこんな
言葉しか出て来なくて……」

アルベルトは特に、ジャミルの方へ頭を下げている様に見える。
ダウドは横目でジャミルの方を見るが……。この男は腕を組んだまま、
ブンむくれ状態のまま、何も言わず黙りこくって……。

「ジャミル、どうしてアルベルトに何も言ってあげないモン?アルベルトは
ジャミルと仲直りしたいんだモン……」

「!!わっ、ち、ちちちち、違うっ!こ、ここここ……、こう言って
おかないと、後始末が大変……、な、何を言ってるんだっ、僕はっ!!」

「ほ~お……、後始末だぁ~?」

やはり、混乱し、また本心と違う言葉をアルベルトは口走ってしまい……、
ジャミルは再び激怒モードに入った……。

「ま、別にいいさ、俺ももうこれ以上オメーを突かない事にしたさ、
好きにしろよ、何所へでも行ってくれや、……後で合流すりゃ
いいだけの話さ、それだけだ……」

「……ジャミル、僕は……」

しかし、今度はアルベルトもそれ以上何も反論せず……。きちんとした
謝罪の言葉を伝えられないまま、こんな事ばかり繰り返し、無限ループ
状態、ヘタレももう気疲れで限界である……。

「……大変っ!大変なのよーーッ!」

「ガングロ……」

小屋の中に、アルベルトよりも先に戻っていた筈のサンディが
今頃戻って来る。だが、様子がおかしい。かなり慌てている……。

「アンタ達、もうケンカなんかしてる場合じゃないよっ!……出たのっ、
例の変な基地害花っ!!」

「……フラワーロックだなっ!!」

「うわあ~……」

「行かなくちゃ!ジャミル、一時休戦だっ!」

「言われなくたって分かってらあ!さっさと終わりにすんだっ!
俺の相手だろうが、オメーの相手だろうが、どっちでもいいっ!
モン、アイシャを頼むぞ!」

「気をつけて、……モン……」

こんな険悪の時に又、事態は困難を増す。現れたのは、ジャミルの因縁か、
アルベルトの因縁か、……それとも……。

……アイシャをモンに任せ、一行は小屋の外へと飛び出す。待っていた
相手とは……。

「僕はアルベルト、ローザリア王国、イスマス城主・ルドルフが息子!
お前達の様な悪人は許さない!」

「……そうか、こりゃまるっきりアルの相手だな、てか、ご丁寧に
自己紹介長いね、お宅……」

「悪、オイラ達……、悪なの……?」

「……うううう~、うるさいなっ!」

出現した3体目のフラワーロック、完全にアルベルトのコピーだった。
しかし、コイツを倒してしまえば自分の力も元に戻ると……、
アルベルトの気持ちは愈々高まっていく……。けれど、やはりこの
クソ花に自身の言葉を言われても実に間抜けである。

「アタシもアイシャ達が心配だから、小屋の方戻ってるから、頑張ってネ!」

「……はあ~、アル、ま、頑張ってくれや、俺も自分の相手じゃねえと
分かった以上、安心した、後、頼むな……」

「ジャミル……?」

「ちょっ、待ちなよお!」

ダウドは慌てて、逃げようとするジャミルを引き留めようとするが、
ジャミルは怪訝そうな表情をダウドに向けるのだった……。

「何だよ、それぞれの因縁の相手なら、自分で戦って倒すのが
試練なんだろ!俺には関係ねーっつーの!……コラ!何所
引っ張ってんだっ!」

「そりゃそうだけど……、そ、側で見守ってあげてもいいじゃないかあ!」

「うるさいっ!」

今までのジャミルなら、絶対こんな事はしない、絶対に仲間を
見捨てたりしない、ダウドはそう分かっているから……、こんなの
ジャミルの本心じゃない、でも一体何所まで意地を張り続けるのか、
この男はと、ダウドの苛々も最高潮に達した……。

「ダウド、僕は大丈夫、必ずこいつを倒してきっと試練を乗り越えて
見せるよ、頑張るから……」

「だ、そうだ……、だからもういいだろ、戻ってても……」

「ンモーーっ!ジャミルううーーっ!!最低っ!オイラ完全に
見損なったよおおーー!!」

「ジャミル……」

「な、何だよ……」

アルベルトがジャミルに話し掛ける。ジャミルは恐る恐る後ろを
振り返る。其所には笑顔のアルベルトがいた。腹黒モード時の
ドス黒い笑みでは無く……。眉間の皺もいつの間にか消えていた……。

「無事に僕の試練を乗り越えられたら、その時は……、この世界で
出会った友達、カナトを僕にも紹介してくれるかな……」

「アル……、い、今更何言って……、あっ!」

「危ないーーっ!」

「庶民は大人しくしていろーーっ!!」

「させるかっ!」

アルベルトフラワーロック、オーバーにジャンプすると、ジャミルと
ダウド目掛け、体当たりしようとする。しかし、アルベルト、二人の前に
立ち塞がり、ひのきの棒で思い切りフラワーロックを叩いた。

「大丈夫かい、二人とも!」

「……あ、ああ……」

「アル、ありがとう……」

「さあ、本当に早く!ジャミルもダウドも小屋の中へ!」

「ねえ、君は本当に僕なの……?そうなんだよね、僕は君の心、全てを、
力を乗っ取ったんだから……、だから……」

突如、フラワーロックがアルベルトに話し掛けて来る。まるで
惑わすかの様に……。

「だったら……、この中にある僕……、君自身の気持ちも本当
なんだよね、僕、本当は奴等といっしょになんかいたくなかった、
頭がバカになるから……、下々の下船なんかと付き合ってはね……」

「……お前……」

「アル、それ、本当なの……?」

「ち、……違う、違うっ!黙れ黙れ黙れっ!うわーーっ!!」

アルベルトはヤケになり、再びひのきの棒を振り回すが、あっさり
自身のフラワーロックに避けられ、地面に転倒する。急いで立ち上がり、
顔に付いた泥を落とすと、目の前の因縁の敵を睨んだ……。

「どうせ乗るなら、貴族の息子らしく、豪華客船にでも乗ったら
どうかな?こんな奴等と同船していれば直ぐに船は沈没してしまうよ?」

「……うるさい、黙れ……、くっ……、うああーーーっ!!」

「下手くそっ、何所を狙っているんだっ!」

「……ああーーっ!?」

だが、元々トロいアルベルトはヤケになっている所為で、素の
フラワーロックにも全くダメージを与えられていない状態だった。
このままでは何れ本体を表す前に、体力の無いアルベルトは先に
倒れてしまう恐れも……。

「スゲエ、敵はふざけてんのに、やっぱりアイツの相手だとバトルが
真面目思考になっちまうのかな……」

「そんな場合じゃないよお!」

その後も、アルベルト、思う様に反撃出来ず……、フラワーロックに
既に体力を半分取られていた。結局はジャミ公も、ダウドも小屋には
行かず、ずっと見守っているが、手出しは無用のバトルに不安と焦りを
感じていた……。

「アル……、あの野郎、このままじゃマジでやられちまうぞ……」

「分からない様に、こそっと回復魔法掛けちゃおうか……?」

「……アホっ!んな事してアイツが喜ぶと思うのか!?見守るしか
ねえんだ、これはアルが乗り越える試練なんだ……、最後は、俺も……」

「ううう~……、アル、頑張れえ~……」

「どうした?もう終わりかい?悔しかったら掛かって来なよ、ほら……」

「くそっ……、負けてたまるかあーーっ!!」

「うっ!?や、やったな……、トロいヘタレの癖に……」

アルベルトは遂に漸くフラワーロックへとダメージを与えられたので
ある。見守っているダウドを始め、ツンデレているつもりのジャミルも
やはり本心は……。

(アル、頑張れよ、お前なら出来るさ、きっとな……)

「くくく、本当はさ、こんな騒がしい奴等とは何処かで縁を切りたいって、
そう思っているんだよね?」

「!!ち、違……うあーーっ!!」

「アルーーーっ!!」

アルベルト、又も気持ちに迷いが生じたのか、戸惑い……、攻撃の
手を緩め、フラワーロックに蹴り倒され地面に倒れる……。フラワー
ロックは軽々と、触手でアルベルトが落としたひのきの棒を叩き割った……。

「くくくっ……」

「……ああ、ゆ、唯一の武器がっ!」

「大丈夫だ、アイツには……、フライング攻撃がある筈だ、アルーーっ!
立てっ、スリッパ乱舞だ、おーいしっかりしろーーっ!!」

しかし、既にアルベルトは気を失い掛けており、戦う気力も無く
なっていた……。フラワーロックが吐いた暴言、……アルベルトは
完全に否定する事が出来なかった。

(やっぱり……、カラコタの時と同じだ、僕は……、心の何処かで……、
ジャミルを、皆を……見下して……)

「……アルーーっ!立てーーっ!しっかりしろーーっ!この陰険
腹黒ーーっ!!」

「ジャ、ジャミル……」

(何処かで……、耳障りな不愉快な声がする……、凄く……)

気絶しようとしていたアルベルト、突如聞こえて来た不愉快な
声に目を覚まし、ひっくり返ってもいられなくなった……。
声の主は当然分かっている……。

(く、クソジャミルめ……、うう……、こんな、クソだなんて言葉……、
やっぱり僕は一体誰の影響を受けてしまったんだろうか……)

「オメー、俺らの世界でもこれまでも何回も立ち上がって来たんだろっ!
故郷を失って、家族を失って姉貴と引き離されて……、牢屋にぶち込まれて、
んでもって乗ってた船が難破して……、一体全体どれだけ不運なんだっ!
オメーはっ!!」

「う、うるさい……」

アルベルト、漸く声を絞り出す……。だが、又声が出せる様に
なったのも……。

「けど、んな不運をぶち壊すぐらいお前はこれまでしぶとく頑張って
来たんだろっ!これぐらいでぶっ倒れてどーするっ!立てーーっ!
オラーーっ!アルベルトーーっ!!」

「な~んか、丹下段平さんとジョー状態だなあ~……」

ジャミ公は地面をバシバシ叩き、興奮している……。ダウドの言う通り、
まるで何処かのボクシングの試合状態になっている。そして、更に……。

「アルっ、頑張ってーーっ!」

「ウシャーー!!」

「もっと腰入れるのよッ!ホラッ、どっかのヘタレみたいにへっぴり腰に
なってるよッ!」

「……うるさいなあ~……」

「……アイシャ、モン、サンディ……」

やかましい応援団も駆け付ける……。アイシャの状態を見る限り、
どうやら完全復活した様子だった……。

「……おい、オメー、まーたフラフラする……、大丈夫なんかよっ!」

「うん、ごめんね、皆、心配掛けて……、もう大丈夫よ、私もアルの
勝利を応援したいの、だって大事な友達だもん!アルっ、しっかりっ!!」

「頑張れっ!おならプーモン!」

「ほらほら、ま~だ腰が抜けてるッ!」

「だから、うるさいんだよお~……」

アイシャは握り拳を作り、アルベルトにエールを送る。アルベルトの
心の中に温かい物と不思議な力が溢れ出した……。

「ふん、今更何言ったって、君の本心はこいつらにもう届いている、
さっき僕が言った通りだよ、君達だってもう嫌になっただろ?こんな
嫌味な奴と一緒にいたくないって、馬が合わないのは仕方が無いのさ……」

「いや、それは違うぜ……、最初から俺達だって分かってんだよ、
アルの腹黒さはな、お前、はっきり言ってアルの能力だけ吸い取った
完全な偽物だな……」

「……な、何がだよっ!」

ジャミルはきっぱりアルベルトフラワーロックの方を向いて言葉を
継げる。その目には迷いがなかった。

「コイツは世間知らずの天然ボケ天邪鬼なんだよ、最初の頃はそりゃ
酷かったさ、何せやる事なす事滅茶苦茶で捻くれたボケ坊ちゃまでよ、
何か言やぁす~ぐムキになって反論しやがる、右って言えば絶対左だし、
可哀想だからって、乞食に全財産渡しちまうし……、俺らだってこんな
糞ボン、どう付き合っていったらいいかマジで悩んださ、庶民の君達とは
気が合わない!って暴れ出した時もあるしよ、お互い様なんだっつーのっ!!」

「ジャミルっ!うるさいよっ!ぼ、僕だってあの旅で少しは成長出来た
筈だっ!だから、これからも……、そうさ!何があっても負けないよっ!!」

「な、何を……」

アルベルトは歯を食いしばり気力を振り絞って立ち上がると目の前の
変な花……、自分の因縁の敵を睨んだ。

「皆……、我侭で世間知らずな何も分からない、未熟な僕の事を
受け入れて助けてくれた、これからもきっとケンカして揉めて
嫌になって……、衝突する時はあるさ、でも、衝突するのも、
関係に悩んだりするのも、毒舌を言い合うのも……、心を許した
大切な仲間だからこそなんだ……、もっと、もっと、どうしたら
仲良くなれるか……、だから悩むんだよ……」

「……ち、違うっ!そんなの嘘だっ!貴族で高貴な僕にはもっと
相応しい友達がいる筈さ!なあ、素直になれよ、僕!こんな糞奴等……」

「もう……、僕の仲間をこれ以上侮辱するのは許さない……、止めろ……」

それ以上、フラワーロックの言葉は続かず……。アルベルトは落ちていた
棒きれを拾い、目を瞑るとフラワーロックを叩き切る居合い斬りの
仕草をする……。だが、仕草の筈が……、棒きれでもしっかりと、
フラワーロックの手の代わりでも有る、葉っぱを一枚、ちゃんと
斬っていた……。

「……」

「あはっ、やっぱり、アル、すごおーいっ!」

「うんうん、お、オイラ……、益々惚れちゃうう~ん……」

「かっこいいモンモン!」

「う~む、恐るべし……、底知れぬ天然力……、って、奴ですカッ!?」

アイシャを始め、仲間達にも大絶賛されるアルベルト。何となくだが、
又、ジャミ公は不機嫌なツラをしていた。アイシャがはしゃいでいるので、
多分、ヤキモチを焼いているらしい。

「こ、こんな……、……ふざけるなよっ!!……ぼ、僕の……、
ああっ!大事なーーっ!……ち、畜生……、姉さん、怖いよう、
僕、おしっこ漏らしちゃったよう……」

心なしか、フラワーロックは涙ぐんでいる様である。それは……、
故郷にいた頃、何かあるとすぐふて腐れてメソメソ泣いていた
幼き日のアルベルト、まんまだった。最も、姉のディアナに殆ど
泣かされていた事の方が多かったが……。

「何でもいい、とにかく……、は、早く戦いを終わらせないと……、
そこっ!……君達もっ、……笑うなっ!」

つまんない処だけ完全に本人の過去まんまをコピーされている……。
このままでは、いずれ、あんな事、こんな事も寸劇でバラされる
かも知れない。溜まったモンじゃないとアルベルト。早くケリを
付けてしまいたい、だが、次はフラワーロックも本気モードに
突入するだろう。絶対、最後まで負けられないと……。

「そう……、そんなに僕を否定するんだね、いいよ、なら、
僕が君を完全に乗っ取って取り込んであげるよ……」

「……」

「僕は君になる、完全なアルベルトにね、君が心から望んでいる
筈のアルベルトに……、こんなずっこけた奴等とはさっさと縁を
切る、真面目でカッコ良くて、絶対に崩れたりしないクールな
聖騎士のアルベルトになるんだ……」

「僕、は……」

「アルっ!気をつけろっ、来るぞっ!!」

「!」

「くくく、くくく……」

フラワーロックの身体が震えだし……、アルベルトは身構える。
いつものパターンで、フラワーロックは殺人華へと変貌を
遂げると思われたのだが、いつもと様子が違う。今回、殺人華の
姿では無く、変貌した姿は、何と……。

「アルベルト……」

「……っ、ね、姉さんっ!?」

「う、うわっ……」

「おい、ありゃ……、アルベルトの姉ちゃんじゃねえか……」

「どうして?アルのお姉さんが……」

見守っていたジャミル達もあっけに取られる……。突然現れた人物。
髪に花飾りを着け、レイピアを手にしたロングドレスの美しい
ブロンドの髪の女性……。今回、フラワーロックは殺人華ではなく、
アルベルトが最も恐れる最強の姉、ディアナに姿を変え、アルベルトの
前に立ち塞がる……。

「綺麗なお姉さんだモン~……」

「へ~、あの人が?昔、アルベルトを滝壺に叩き込んだってゆー?
……って、何かそんな場合じゃないよネ……」

「ね、姉さん……、嫌、違うっ!お前は誰だっ!……ふざけるなっ!」

「……アルベルト……、あなたは……」

口では勇ましくそう言っているが、迫って来る姉の姿を見、
アルベルトの手が小刻みに震え始める……。体中、汗
びっしょりである……。

「やべえな、あの糞バナ、アルにとって一番厄介な弱点を出して
戸惑わせで来たか……、う~ん、流石あいつのコピー、知能犯……」

「アル、ま、負けないで……」

「しっかりっ、あんなの偽物だよおーーっ!」

「モォ~ン……、アルベルト~……」

「アルベルト、あなたに言いたい事があります……」

「ううっ、だから……、来るなっ……」

「アルベルトっ!!人が話をしている時はこっちを向きなさいっ!!」

「!!」

ディアナの幻影……、は、アルベルトを力強い口調で一喝、手に
持っていたレイピアを突きつけたのである。偽物だと分かっていても、
何もかも、故郷の姉と同じ口調、仕草をする為、アルベルトは益々
混乱し始めた……。

「……あなたがお父様の後を継いでイスマスの城主になるなど……、
未来がない事は、幼い頃からあなたをずっと見守っていて、
分かり切っていた事です……」

「ね、姉さ……、僕は……」

アルベルトは漸く避けていた姉の顔を見る。やはり、何から
何までそっくりだった。自分の知っている姉と……。姿、形、
うり二つだった……。

「ちょっとっ!酷いわっ!何なのっ!!アルは早く強くなりたくて
皆の為にいつも一生懸命頑張ってるわよっ!!」

「……ウシャーー!!」

「ア、 アルうう~、お願いだから、負けないでよお~……、
「イ、 此処で負けたら、もう終わりだよお~……」

「そうだぜっ!だから惑わされんなってーのっ!本体は只の糞バナだっ!!」

「アンタら、ちょっとムキになりスギだって、幾らなんでもあんな事、
身内に言わないでしょ……」

「分かってる、分かっているんだ、頭ではあんなの姉さんじゃないって、
だけど……」

無理もなかった。幼い頃から辛いスパルタ修行でいつもディアナに
泣かされていたアルベルトだからこそ、怖い姉にいつも逆らえなかった
頃のトラウマが蘇っていた……。ヤジをブーブー飛ばす外野の皆さんに
構わず、ディアナの幻影は更にきつい言葉をアルベルトにぶつける……。

「あなたがもっと真面目に騎士としての修行を受けて力を付けていれば……、
城も滅びる事は無かった、父上も、母上も……」

「……や、止めろっ!……う、うう……」

「アルっ!くそっ、……テメエ、止めねえかっ!」

ジャミルも必死でディアナの幻影に食って掛かる……。ディアナの
幻影がアルベルトに放った言葉は、実はアルベルト自身がずっと
心の中で自分を責め続けていた言葉だった。アルベルトの全てを
取り込んだフラワーロックが、彼を苦しめる為、ディアナの幻影に
姿を変え、自身の言葉をディアナの幻影に言わせていたのである……。

「アルベルト、あなたは何所まで落ちぶれたの?友人を作りたいなら、
もっと静かで優秀な友人達と縁を結ぶべきです、きっと、あなたを
助けてくれる筈です……」

やはり、ディアナの幻影までもがジャミル達の事を突っ込んで
来た……。これにはアルベルトも慌てて反論せずにはいられ
なかった。彼女が偽物だとしても……。

「皆は……、僕が困っている時、苦しんでいる時、迷っている時、
何度も何度も手を刺し伸べて助けてくれたんです、時には命を掛けて……、
お願いします、もう……止めて下さい、これ以上……」

俯くアルベルト……。彼女はお転婆、男勝りで厳しいが、とても
優しい女性で有る事は知っている。しかし……。

「そう……、それならば、アルベルト、あなたの迷いをこの私が
断ち切ってあげます!」

「……な、何を……、姉さんーーっ!?」

ディアナの幻影が触手を数本伸ばして来た……。やはり、その姿は
本来の本体が植物の化け物で有ると言う事を彷彿とさせた……。
伸ばした触手でジャミル達を全員捕らえてしまったのである。
だが、彼女は薔薇がとても好きで、城の温室でも自身の手で薔薇を
良く育てていた。……ディアナの幻影が繰り出して来た触手は棘の
付いた触手だった。只、捕獲された状況とは違い、締め上げられた
ジャミル達の身体から忽ち血が滲む……。

「……ち、畜生……、油断したか……、くっ……、んなろお……、
てか、俺ら、一体何回縛り上げられるんだ……」

「痛いモン……、でも、アルベルトが頑張ってるんだモン、モン、
頑張るモン……」

「そうよ、アル……、私達の事は心配しないで戦って、大丈夫だから……」

「うん、オイラも何とか……、耐えられるかなあ、頑張れるかなあ~……、
キツイなあ~……」

「ヘタレっ!また気弱になるっ!けど、こーなる前に、ジャミ公の処に
逃げてりゃ良かったわ~……、アルベルトっ!こーなったらっ、アンタ
絶対に勝つのよっ!」

「み、皆……」

モン、サンディまでもが人質に……。アルベルトは絶望で視界が
真っ暗になる。……又、自分の所為だ、自分が非力だから……。
目の前には自分を冷たい目で睨む姉の幻影……。一体どうしたら
いいのか分からなかった……。モンが最初に言った通り、外観は
綺麗なお姉さん……。だが、綺麗な薔薇には棘が有る、雅にそれが
正論かも知れなかった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 83

zoku勇者 ドラクエⅨ編 83

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-07-20

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work