詩人
詩が書けなくなればなるほど、いよいよ、詩人は詩人になる
と言った詩人がいた
詩人とは、単に詩を書き記す者の呼称ではない
むしろ、詩によって生かされている者にのみささげられるべき名だ
と言った詩人もいた
今の俺は詩人と呼べるだろうか
実在の人物を相手取ることもあれば、架空の人物も相手取ってきた
実際の記憶を相手取ることもあれば、虚構の記憶も相手取ってきた
実際と虚構の二本柱に支えられてきた、というより
実際と虚構の綯い交ぜによって生き延びてきた、といったほうが正しいだろう
俺だけがいつまでも約束を忘れられなくて
俺だけがいつまでも記憶を捨て去れない
なぜならそれが俺の全てだからだ
生きていればまた会えると信じていたからこそ生きてこられた
延命は必ずしも希望ばかりをもたらさない
確かに俺は生き延びるために詩を書いていた
そして誰かの夜を安穏なものにするために詩を書いていた
詩人