zoku勇者 ドラクエⅨ編 78

試練を超えろ!2

「……危ねえよっ!って、いいいっ!?」

「……散れ!」

だが、少年は一言呟き、そのまま銅の剣で空中を斬る。と、……同時に、
集まっていた巨人集団があっと言う間に全員塵と化す……。

「ふう、これでよし……、もう当分は現れない筈……」

「あ、あの、さ……」

訳が分からず固まるジャミ公……。本当に一体何が起きたのか分からず
ガクブルしながら少年に尋ねるが少年は平常心でジャミ公へと振り向いた
その顔は相変わらずの笑顔であった……。

「さあ、家で休もう、ごめんよ、びっくりさせてしまって……」

「ん?べ、別にいいんだけど……」

ジャミルは改めて少年の容姿と格好を見る。短めのマントに首マフラー+
上半身は着物服を羽織り、下半身は半ズボン……、そして、ウイングブーツ。
まだ、すね毛など一切生えていない、初々しい生足丸出しのショタスタイル。
何が何だか頭が益々整理出来なくなっていた。仲間達の事を訪ねようと
思ったのだが……。言葉も出なくなってしまった。だが今は、この少年に
世話になるしかなかった。

「なあ、助けてくれてありがとな……」

「ん?別に気にしなくていいんだよ、キミも体力を消耗
している筈だから……、少しでも休んだ方がいい……」

「……」

ジャミルは再度少年に家の中へと通される。助けて貰った事は大変有り難く、
少年も人の良さそうな感じで良かったが、だが、彼が何者なのか得体が
知れないのも事実……。何せ、銅の剣一本で、ジャミル達があれ程わーわー
逃げまくっていた巨人モンスター集団を一瞬で全部斬ったのだから……。
それに、訳の分からない事が余りにも過ぎて今は頭の中がぐちゃぐちゃ。
何よりも、また離ればなれになってしまった……、仲間達の事を考えると
やるせない思いで一杯だった……。

「此処で待っていて、大した物は作れないけど、今、栄養の付く野草が
沢山入ったお粥を作るから……」

「あ、世話になりっぱなしで……、申し訳ねえ……」

「ふふっ……」

少年はジャミルに又懐っこい笑顔を見せ、台所の方に移動する。けど、
自分だけ本当にこんな事をしていていいのだろうかと考えると落ち着か
なくなる。ジャミルは少年に礼を言って直ぐにでも仲間達を探しに行こうと
思った。しかし……。

「……ガングロの言う通りじゃねえか、どうやって今の状態でこの先
切り抜けろって……」

それに、あんな小さな少年が自分よりも何で……、そう考えたら
何だか情けなくなった。

「……冗談じゃ、ねえ……」

「ねえ……」

「……おうわっ!?」

少年が再びジャミルのいる寝室に顔を出す。気の所為か、先程より顔が
ニヤニヤしており、笑っている……。

「お、脅かすなよ、んだよ……」

「キミが魘されてる時、誰かの名前を必死に叫んでたけど……、友達かな?
……糞腹黒、糞ヘタレ、糞ガングロ、糞モン……、何で揃って俺を置いて
いくーーっ!……って……、でね、最後に……、この時が一番絶叫してた
みたいだけど、……どうしてこう言う事聞かねえんだ、ジャジャ馬……」

「!!わ、わ~~っ!いいって、も~いいって!……頼むから止めてくれーー!!」

ジャミ公、顔を真っ赤にし、腕をブンブン振り回し奇声を上げる……。
その様子を見ていた少年は又もくすっと微笑むのだった。

「キミ、面白いね、そう言えば、まだ……、名前聞いてなかったね、
僕はカナト、改めて宜しく……」

「……あ、ああ、俺はジャミル、此方こそ……、へへ……」

「そう、ジャミル……、大丈夫だよ、悪い事は何時までも続かない、
希望を持って……」

「え?あ、あ……」

少年……、カナトはジャミルの言葉が終わらない内に再び台所に姿を消す。
何も言っていないのにまるでジャミルの素性を分かっているかの様に。
本当に不思議な少年だった。

「……あれ?」

部屋の隅に置いてあった、宝箱の様な古い箱……。その中から、本の
一瞬だけ光が漏れた様な気がジャミルはしたのだった。

「……気の……、所為だよな……」

そして夕食時、ジャミルはカナトが作ってくれた熱々の野草粥を
ご馳走になる事に。

「さ、どうぞ、見た目はこんなだけど、結構味には自信があるんだ、
冷めないうちに……」

「い、いや……、じゃ、じゃあ……、……」

「どうぞ……」

腹の減っていたジャミルは夢中で粥にがっつく。そしてお約束を発動させる。

「……っっぢいい~~!!」

「あはははっ!キ、キミって本当に面白いね……、何て言ってる
場合じゃないね、はい、お水どうぞ……」

ジャミルは急いでカナトが差し出してくれたお冷やを慌てて飲み干し、
舌を冷やす。カナトは笑いを堪えているが、笑ってる場合じゃねえやいと
ジャミルは変な顔になる。

「あ、あはははっ!く、くくく……」

「……」

そして、更に夜も更ける。今日中に此処を出て仲間を探しに行こうと
していたジャミルは結局どうするか判断が付かず、今夜はカナトの家に
一晩泊めて貰う事に……。皆の事は勿論心配であった。でも、自分一人だけ、
此処に流されカナトに助けて貰い、美味しい夕ご飯を食べて……。呑気に
休んでいる自分が嫌になってくるのだった。

「流石に……、ヘタレの言う通りだったかな……、なんでこんな事に
なってんだか、何が力を得る為の試練だっつーの、……糞……」

カナトは自分のベッドをそのままジャミルに譲り、自分は床で
寝るから……。と。流石にジャミルも遠慮するが、カナトは、
いいから……。と。ジャミルはカナトの行為に何所までも感謝した。
だが、何時までも彼の優しさに甘える訳にもいかない。明日は大分
体力も戻る頃だろうと、此処を出て、皆を探しに行く決意をする。
例えこの先、いきなり目の前に何処かでみた様なラスボス的な
大魔王が現れても……、もう絶対に躊躇しねえと。鼻から湯気を出す。

「……大丈夫さ、俺ら、ゴキブリみたいにしぶといからな……、きっと……」

皆はきっと、何処か別の場所に流れ着いてる、無事だ……、そう
思いながら、眠ってしまったのである。しかし、ジャミルが完全に
爆睡している頃……。

「……ね、ジャミル、キミも力を求めて来たの?異世界から……」

「むにゃ……、うう~……」

「寝ちゃってるよ……、ね……」

カナトは寝返りを打ったジャミルの毛布をそっと掛け直してやる。
ジャミルへと呟いたカナトの声は何処か寂しげで、悲しそうであった……。

「おやすみ、ジャミル……、また明日……」

キミも力を求めて来たの?異世界から……

「……」

聞こえていない様で、カナトの呟いた声は、睡眠状態のジャミルの耳に
届いていた。ただ、夢うつつだったので、誰が呟いたのかははっきりせず
分からなかった様だった……。

翌朝……。

「お早う!」

「……お、おう、もう起きたのか、はえーな、……へへ……」

「うん、この近くに自分の畑があるから、様子を見て来たんだ、ほら見て、
美味しそうでしょ、採れ立てだよ!この野菜で直ぐに朝ご飯を作るからね!」

昨日と変わらない人懐っこい笑顔でカナトが寝室に入ってくる。カナトは
籠一杯に入っている光ってつやつやの野菜をジャミルに見せた。

「あ、もうそんな時間か……、昨日夕飯貰ったばっかだっつーのに、
もう朝か……」

……既に自分よりも早く起きて一仕事をして来た、自分よりも年下で
あろう真面目なカナトとその間にも只管寝まくっていた自分が……。
今日は心底流石に情けなくなった。ジャミルはカナトの素性も聞いて
おきたいと思ったが、こんな歳で一人で生活している処を見ると
明らかに両親はおらず多分他界している事が頷ける。しかし……、
あの異様な強さは本当に何だったんだと、突っ込んで見たい気も
したが……。今は聞いたらアカン、止めておこうと思ったのである……。

「あのさ、俺にも何か手伝える事あるかい?」

「ん?大丈夫だよ、キミはお客様なんだから、さ、座って待ってて!」

「……けどなあ~……」

カナトは突然転がり込んで来た得体の知れない自分を一生懸命面倒見て
くれている上、しかもお客様だと言ってくれている……。本当に彼に
ちゃんとしたお礼も出来ないまま、此処を出て行っていいのだろうかと、
別の心配と悩みが出て来る……。しかし、一刻も早く仲間達を探しに
行かなければいけない事には変わりない状況なのだから……。

「それとね、今日は畑にもう一人珍しいお客さんがいたから連れて
来ちゃった、ほら!」

「……?……あ、あっ!?」

「モォ~ン?」

カナトが抱えている籠に入っているトマトの隙間から……、明らかに
異様な何かが……、生き物が動いているのが見え隠れしていた。その
生き物には耳がある様で、ウサギの様であったが、何故かモォ~ンと
鳴いた。

「モンっ、お前、モンかっ!?」

「……モン、……ジャミル?」

「俺だよっ、モンっ!!」

「……モ、モォ~~ンっ!!」

籠に入っていた謎の生き物はモンであった。メンバーは揃ってバラバラに
なったり行方不明になると、ジャミルは必ず最初にモンと再会出来る事が
多いパターンである。モンは目の前にジャミルがいると分かると、安心して
ジャミルに思い切り飛びつくのだった。

「モォ~ン、モォ~ン、良かったモン、ジャミルっ!!」

「モン……、無事で良かったよ、全く……、いつもいつも
心配させやがって……」

「♪モォ~ン、モォ~ン」

「そっか、キミの友達みたいだね、あ、昨日倒れている時、寝言の中で
言ってた友達の一人かな?……糞モン……」

「ウシャ?……モン?糞モン……?」

「……わーーっ!!い、いいってのっ!カナト、話せば長くなるんだけどさ、
こいつはモンスターだけど、俺のダチの一人で、モーモンのモンさ、宜しくな!」

「このお兄ちゃんがモンを畑で見つけて連れて来てくれたの、モン」

「あはは、改めて宜しくね、モン、ボクはカナトです、お喋り出来るなんて
凄いなあ、あ、こうしちゃいられない、朝ご飯を作らなくちゃ、二人とも
ゆっくり身体を休めてて!」

「んとに、何から何まで……、助かるよ、カナト……」

「♪モォ~ン」

カナトは台所へと走って行く。ジャミルはカナトに改めて心でも礼を
そっと言い、モンもパタパタ嬉しそうに尾っぽを振った。

「……そうだ、い、一番大事な事だ!モン、ダウドはどうしたんだ!?
アルベルトとアイシャは……、サンディ……」

「モォ~ン……、モン、ずっとダウドの頭の上にいたんだモン、でも、
気が付いたら……、ダウド、いなくなっちゃってて、モン、畑の中に
埋まっちゃってたのモン、それで、さっきのお兄ちゃんが助けてくれたの
モン、アルベルトとアイシャ、サンディも……、何処かに行っちゃったんだ
モン……」

「う、埋まってた?畑に……、……とにかく、お前が無事で良かったよ、
きっと皆も無事だ、……大丈夫だ……」

「ジャミル……、ありがと、モン……」

モンは済まなそうな顔でジャミルを見るが、ジャミルは笑顔でいつも
通りモンの頭をわしわし撫でた。アルベルト達もきっと無事だとモンを
励ますのだった……。が、やはりジャミルが一番心配なのはアイシャの
行方である……。お決まりのパターンだと、彼女は大概タチの悪い賊か、
悪人に捕まっている事が多いからだった……。

「……考えただけで頭痛くなるわ……」

「モォ~ン……」

「お待たせ、朝ご飯が出来たよ、さあ、モンもおいで!皆で一緒に食べよう!」

「お、悪いなあ!じゃあ、お言葉に甘えさせて貰ってと、モン、行こうや!」

「♪ご飯のニオイモン!」

カナトが寝室にお知らせに来てくれ、ジャミル達はご馳走になる事に。
モンはジャミルの肩の上に乗る。ジャミルの場合は頭よりも肩の上に
乗る方がいいらしい。台所のテーブルに案内され、カナト特製の朝ご飯を
頂く。テーブルの上には先程採って来てくれた野菜で作ったサラダとパン、
スープ。実に美味しそうだった。

「大した物じゃないけど、どうぞ……」

「い、いや……、大した事あるって!……アッ!?」

「……ムシャムシャ、ば~りばりっ!」

モンは……、作ってくれたサラダとは別に皿の上に置いてあったトマトに
舌を伸ばしバリバリ食いつき、食ってしまう……。カナトはそれをぼけ~っと
眺めていた……。

「す、凄い歯だね……」

「……モンっ!コラっ!行儀悪いってのっ!!」

「ムシャムシャ、ボリボリ、バリバリっ!!」

……いつもの自分を棚に上げ、モンを注意しようとするジャミ公だが、
普段の常習犯の為、サマになっていない。だが、カナトはいいよいいよと
笑ってくれた。

「げふ、げっぽモォ~ン……」

「何だかジャミルとモンて似てるね、兄弟みたい?」

「……にてねーよっ!」

「シャアーー!!」

同じ様な顔をするジャミ公とモンの姿にカナトは笑い転げる。……それは
カナトにとって本当に楽しくて幸せな一時だった……。

「……げ~ぷ、プップップ、モン~……、もう食べられないモン~……、
ふにゃにゃ~……、食べ過ぎてお尻からトマトのおならが漏れるモン~……」

「……足りめえだっ、アホっ!てか、オメー、人の方にケツ向けて
発射するなよっ!」

「モンプ~……」

「悪ィなあ、コイツ、どうもマナーのねえヤツでさあ~……」

「……ウシャブー!」

「あはは、いいからいいから……、それにしても、やっぱり大変な目に
遭っていたんだね、キミ達も……」

「……」

食事も落ち着いて来た頃、ジャミルは漸く少しだけカナトに自分達の
素性を話す。但し、自分達の世界の堕天使を倒す為の力を求め、女神の
力を借り、この世界に召喚された事はまだ伝えていない。モンスターに
襲われ、逃げている途中で川に落ちて皆流されたのだと……。ジャミルは
此処にまだお喋りガングロがうっかりいなくて正解だったと思った。

「カナトには本当に親切にして貰って嬉しかったよ、けど、俺らまだ、
残りの困った?メンバーを探さねえとなんだ、だから……」

「分かってる、いつかはさよならだって事、最初はびっくりしたけど、
でも、僕もジャミル達に会えて良かったよ、短い間だったけど、凄く
楽しかった……」

「……カナト……」

カナトは笑顔でジャミルに片手を差し出す。ジャミルもその手を強く握り返す。

「ね、もし、キミの友達が無事に見つかったら、又此処に来てよ、何時でも
待ってるから!早く友達が見つかるといいね!」

「ありがとな、カナト!」

「うん!」

「カナト、お野菜ありがとモン!モン、トマト大好きになったモン!」

「モンもね、ありがとう、そうなんだ、嬉しいなあ!又野菜食べに来てね!」

「モォ~ン!」

ジャミルとモンはカナトに何度も礼を言って手を振りながら彼の家を
後にする。だが、もしかしたらもう、カナトには会えないかも知れない
事は分かっていた……。カナトも、カナトの家も大分景色が遠くなって
来た頃……。

「はあ……」

「ジャミル、どうしちゃったモン?疲れちゃったモン?」

「いや、本当にあのままカナトと別れて良かったのかなって……、さ……」

「モン、モォ~ン?」

ジャミルはモンにそう呟きながら青空を見上げる。実はまだ、カナトに
聞きたい事が沢山残っていた。気になったのはやはりあの時、ジャミルを
モンスターから助けてくれたカナトの力だった……。カナトの外見は
12~、13歳ぐらいだった。……どう考えても明らかに彼は普通の
少年ではなかったからである……。

「それに……、な……」

あの時、カナトは巨人モンスター集団に向かって、しつこい、
何度来てもお前達には絶対に渡さないとも言っていた。
……カナトは何かモンスター達が狙う様な物を隠しているの
だろうか。……考えれば考える程、彼には多くの謎が残されて
いる様で、本当にこのままカナトの処を出て来てしまって
良かったのだろうかと、さっきからそればかり考えていた……。

「それになあ~、この世界の仕組みも……、何で俺ら、いきなり
砂漠から川ん中に叩き込まれなきゃならなかったんだよ、う~、
う~……、うう~~っ!!」

「ジャミル、消防車のサイレンみたいモン……」

消防車処か、逆に火の勢いが増しそうである……。

「モン、うっせーぞっ!とにかくっ、今はアル達を探す、探すったら探すっ!!」

「モン~……」

そう、ジャミ公はぶつくさ言いながら又歩き出すが、色々あって本人は
多分忘れている。装備品はランク最弱装備に戻され、LVも1。殆ど真面な
スキル技も魔法も使えない。モンは心配になる……。

「お?今度は草原か、やれやれ……」

「ジャミル、気をつけるモン!あのおっきな木の陰に何かいるモン!」

「……っ!」

モンが何かの気配を感じたのか騒ぎ出す。ジャミルは慌てて武器を
取り出そうとするが、其所で再び自分のバトルランクが最低に
なっている事を思い出す……。して、モンの言う通り、草原の
ど真ん中に立っている大木の木の後ろから、大きさはその木と
丁度同じぐらい、鉢植えに入り、グラサンを掛けた変な花が
飛び出して来た……。

「~♪」

「何だこいつっ!」

「モンっ!」

……フラワーロックがあらわれた!

「ハア?見た事ねえモンスターだな、けど、何か80年代後半に
流行ったっぽい感じだな、流石、訳分からん異世界のモンスターだ……」

「♪キャーーっ!」

「……お?こいつ、何か奇声上げたぞ!しかも、何か何処かで異様に
聞いた事ある様な、やかましい声……、お、おおっ!?」

「ジャミルっ!モンーっ!」

「♪キャー、キャー!キャーーっ!!」

フラワーロックはふしぎなおどりをおどった!……ジャミルはMPを
すいとられた!

「う、うう~……」

「ジャミルーーっ!しっかりしてモンーっ!」

「……な~んて、MP吸い取られる程、こっちゃMPはねえんだよっ!
この野郎!」

ジャミルは切れ、フラワーロックにキックを噛ます。フラワーロックは
鉢植えごとひっくり返って倒れるが、直ぐに起き上がり耐性を立て直す……。

「……よくもやったわねっ!もうっ、怒ったんだからっ!バカーーっ!!」

「ジャミル、あのモンスター、誰かに似てるんだモン……」

「ああ、俺もそう思ったさ、けどなあ~……、お、おおっ!?」

「イオラーーっ!!」

……フラワーロックはイオラをとなえた!

「……モンっ、危ねえーっ!!」

予想していなかった、フラワーロックの高レベルの魔法攻撃……。
しかし、やはりそれは誰かさんの得意魔法を思わせる様な攻撃っ
ぷりだった……。素早いジャミルは間一髪、モンを抱え、草原を
転がり、イオラを避けた……。

「いてて、モン、大丈夫か……?」

「うん、モンは大丈夫、ジャミル、ありがとね、モン♪」

「もうーっ!何ようーっ!じゃあ、これはどうっ!?えーい!メラミ
乱れ打ちーーっ!!」

「……うわわわーーっ!?」

あろう事か、フラワーロックは今度はメラミを連発、ジャミル達に
ぶつけて来る……。ジャミルはモンを抱えたまま、草原を再び逃げ捲る。
やはり、フラワーロックは言動が何処か似ているんである。やっぱり彼女、
アイシャに……。

「ぎゃうっ!?」

「モギャっ!?」

ジャミ公、モンと一緒にすっ転がる。……そのまま動けなくなった……。
そして、止めの一撃がジャミル達に襲い掛る……。だが。

「……だめえーーっ!!」

「……!?あ、あっ!?」

突如ジャミル達の前に誰かが立ち塞がり、大声を上げると、フラワー
ロックは魔法を一旦ぴたっと止める。大声を上げたその人物とは、
紛れもなく……。

「……アイシャっ、無事だったかっ!」

「モンーーっ!」

「ジャミル、モンちゃん、私も会えて本当に嬉しい……、って、
喜びたい処……、なんだけど、今、そんな場合じゃないの、あの
モンスターを何とかしなくちゃ、だから急いで追い掛けて来たの、
みっともないのよう~……」

「へ?へ?……あ?あ、ああ……」

「何ようーっ!アンタ、うるさいのよ!もうーっ、何なのようーっ!」

ジャミルは駆け付けてくれたアイシャと、変なフラワーロックを
交互に見つめた。アイシャは顔が真っ赤で今にも泣きそうだった。
まるでアイシャの口調の様なフラワーロック、そして、アイシャと
全く同じ魔法を使う……。こりゃまた一体、何が起きてんだよと……。

「……な、何がどうなってんだよ、マジで……」

「私だって分からないわよう、説明出来ないよ、川で溺れて気が
付いたら、私、岸辺に倒れていたの、そしたらこの変な花が私の
目の前にいて……、でも、今は……、この変なのを倒すしかない、
それしかないわ……」

「アイシャ……」

アイシャは顔を真っ赤にしたまま、ひのきの棒を持ち、目の前の
フラワーロックを睨む。折角又、ジャミルとモンに会え、話も沢山
したいだろうに、彼女だって辛い処であろう。……フラワーロックは
ケタケタ、自身の葉を左右に揺らし踊り出した……。

「そうよ、アンタは私、私はアンタなのよっ!」

「!!」

「え……?」

「モ、モン……」

「……どう言う事?……まさか……」

「そう、あんた達が此処に召喚された時、あんた達の力は全て失われた、
それはっ!私達がぜ~んぶ吸い取ってやったのっ!私はアンタの能力も
何もかもっ!」

「……な、何だと……?」

「そんな……」

「私の他にも同じフラワー兄弟がいるのよっ、だから他の連中も
私の兄弟に能力を全部吸い取られた筈だわっ!ざまあみろなのよっ!」

此処に来て衝撃の滅茶苦茶な事実が明かされる……。ジャミル達が
この世界で弱体化してしまった理由……。全てこいつらの所為だった。
これも乗り越えるべき大きな試練だった……。

「じゃあ、ジャミルも、ダウドもアルも……、皆今までのLVも
何もかも……、この変な花達に吸い取られていたのね……」

「何てこった……、俺らの能力丸生き写しのモンスターかよ!」

「や、やっぱり……、どうりで何だかアイシャに似てると思ったんだモン……」

「……モンちゃん、似てないから……、ね?似てないったら
似てないのよう~、……ね?同じなのは能力だけだから……、ね?」

「……う、うわ……」

「にょ、にょ、にょお~……」

アイシャは笑顔でモンの頬をいつもより強く横に引っ張る。よっぽど
触れて欲しくない様だった……。モンの顔は菱餅の様に伸びてしまった……。

「……取りあえず、コイツを倒しちまえばお前の力とLVは元に
戻るって事か?」

「ええ、はっきりとはまだ分からないけれど……」

「ふふふ、無理無理、無理なのよう~!だって、あなた達は今LVは
最低LVでしょう?反面、私のLVは38、あなたが今まで覚えた魔法も
しっかり使える、これでどうやって勝つ気なの!?」

フラワーロックは嫌らしげに葉っぱフリフリ、踊って挑発。……見ていた
アイシャはぷうっと膨れた……。

「……だから私の口調真似しないでっ!ええ~いっ!こうなったら
やるんだから!あなたに勝って私の力を取り戻してみせるわっ!」

「アイシャ、今の状態で何所まで出来るか分かんねえけど、俺も
力を貸すぜ!一緒にやっちまおう!」

「モンもいるにょお~ン……」

「ジャミル、モンちゃん……、ありがとう、嬉しいけど、でも……」

「ど、どうしたんだ?」

アイシャは一瞬困った様な表情をするが、直ぐに顔を上げた。そして
ジャミルとモン、二人の方を改めて見て……。モンの方は顔が変形菱餅に
なって伸びてしまったまま、元に戻っていなかった……。

「……え、え~と、あのね、……これは私自身の戦いだと思うの、
だから……、私一人で戦わなくちゃいけないのよ……」

「……な、何言ってんだよ、オメー!無茶だっつーのっ!アイツは
オメーの覚えた魔法全部使えるんだぞっ!無理に決まってんだろうがっ!」

「……モ、モモモンモン!」

「でも、でも、私、私……」

モンは慌てて伸びてしまった頬を元に戻す。本当はアイシャだって
一人で戦うのは心細い筈……。けれど、どうしても……、彼女は自分
自身の手で奪われた力を取り戻さないといけない様な気がしていたの
だった……。

「……その男、邪魔だわ、いいわ、あなたのその迷い、断ち切ってあげるっ!!」

「……うわあぁぁーーっ!?何すんだーーっ!!」

「モ、モンーーっ!?」

「……ジャミルっ!!モンちゃんっ!!」

……ふざけていたと思われていたフラワーロックに異変が起きた……。
フラワーロックは巨大殺人華へと変貌を遂げる……。地中から巨大な
ぶっとい根を生やし、ジャミルとモンを捕獲して上へと引っ張り上げ
高く吊し上げてしまったのだった……。更に周りの風景も草原でなくなり、
地獄の炎が吹き荒れる場へと……。

「さあ~、うるさい男もこれで静かになるわ……、たっぷりと、お前を
痛めつけてあげる、お前自身の力でね……、殺されるがいい……」

「……アイシャっ!逃げろっ!早くっ、頼むからっ!!」

「モン~……」

ジャミルは捕獲されたまま、大声で地上にいるアイシャに向かって
叫ぶが、……このお転婆ジャジャ馬ちゃんがそう簡単に言う事を
聞く筈が無かった……、のは、ジャミルも充分分かっていた筈だが……。

「ジャミル、モンちゃん、大丈夫、必ず助けてあげるからね!」

「……アホーーっ!だから言う事聞けっつーんだよっ!オメー
わああーーっ!!」

「そう、これは私の試練……、いつも皆に守って貰ってばっかりじゃ
いられないの、私、きっと試練を乗り越えて強くなってみせるんだからっ!!」

「ふふ、やっとやる気になったみたいね……、……?」

アイシャはひのきの棒を胸に抱き、願いを込め、祈る。強く、力強く……。

「ジャミルを……、モンちゃんを助けたい、どうか、力を……、
メラーーっ!!」

アイシャは両手を殺人華に向かって突き出し自分が今使える魔法を
精一杯放出……。それを見た殺人華はバカにした様に笑い、メラミを
お返しに唱えてくる。メラがメラミに叶う筈がなく、アイシャはメラミの
炎にあっけなく包まれる……。

「……きゃあーーっ!?」

「ジャミル、アイシャが大変モン!」

「あの野郎っ!だ、だからっ!……テメーやめろっ!よせーーっ!!」

「あはははははっ!楽しいわーっ!」

ジャミルは縛られたまま、唯一動く両足をバタつかせ宙を蹴りながら、
高笑いしている殺人華に向かって抗議するがどうにもならず……。
このままでは本当にアイシャが殺されてしまう、何とかしようと、
もがいて身をよじる……。

「う、うっ、……畜生……っ!」

「あっ、ジャミル、アイシャ、大丈夫みたいモン!」

「え?……あ、あっ!アイシャっ!!」

「な、何ですって……?」

モンの言葉に思わず地上を見るジャミル……。確かにアイシャは無事だった。
じっと歯を食い縛り、メラミの炎に耐えた様だった……。

「……」

「そんなバカなっ!あの炎を食らってあんな弱いのが無事でいる筈
ないわ!いいわ、何度でもお見舞いしてあげるわよう!だってあんたの
魔法だもの!」

「……違う、あなたは私の真似してるだけ……、偽物の炎なんかに絶対
負けたりしない、その口調も止めてって言ってるでしょっ!」

「うるさいのようーーっ!ええーいっ!!胸無し平面ヅラの超ドブスーーっ!!」

「……ぴく、……うるさいのはそっちようーーっ!!……いい加減にしてーーっ!!」

ぶつかり合うアイシャのメラと殺人華が放つメラミ……。其所で非常識
モードが発令する……。小さなメラだった筈のアイシャの魔法が膨張し、
メラミを越えたのである……。

「うそ、そんな、バカな……、うそっ、嘘ようーーっ!!」

「嘘なんかじゃないわっ!これが私の本当の力よっ!……メラゾーマっ!!」

「……きゃああーーっ!い、いやあーーっっ!!覚えてなさいよううーーっ!!」

殺人華はアイシャのメラゾーマの炎に包まれ、絶命し、消滅する……。
殺人華が消滅した途端に周りの風景も元の草原に戻り、ジャミル達も
いつの間にか地上へと戻り、捕獲も解かれていた。ジャミルは急いで
アイシャの元へ……。アイシャは放心状態で地面に座り込んでいた……。

「アイシャ、おいっ、大丈夫かっ!?アイ……」

「ジャミル、お話したい事、沢山あるの、でも、お願い……、今は
少しだけ……、こうさせて……、ちゃんと又会えて……、良かった……」

「……アイシャ、ああ、良く頑張ったな、ありがとな……」

「うん……」

アイシャは疲れてしまったのか、ジャミルに寄り添う。そしてアイシャを
抱き寄せるジャミル。……こうして、プチ営みが始まってしまう。モンは
二人に気を遣っているのか、後ろを向いて両手で自分の目を隠した。

「キャ~モン♡モン、何だかドキドキなんだモン♪モンも大人の階段
よっこらしょっとのぼるんだモン♪」

zoku勇者 ドラクエⅨ編 78

zoku勇者 ドラクエⅨ編 78

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-07-05

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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