『無花果』
赤く熟したなら
貴方に食べて欲しい
『無花果』
腐り落ちる寸前が一番美味しいと
秘密を打ち明けるように耳打ちされ
途端に耳朶は赤く染まり
頭はそればかりを想像しだす
ただ震えることしかできないのです
悪い大人の手管に騙されただけと
賢い友達は言うけれど今更よ
アタシはもう食べられるのを待つ無花果
思えばずっと待っていた気がする
その相手は貴方だろうと分かってた
何も知らぬ少女のままでいる気なんて
更々なかったから無遠慮に踏み出す
この爪先に優しく触れて落としたキスが
アタシの全てを根底から変えてしまった
どんなに素敵な男の子も貴方以外は同じ
欠伸が出るくらい詰まらないわ
手慰みにしてくれた外国のお話は
聞いてる振りで聞いてない
夢物語よりアタシはここで満足よ
何処にも行かず貴方を想うわ
何処にでも行ける貴方を
ただ待ち続ける女がいるということ
そのことをしっかり頭に置いて
好きなところに行けばいい
「一度でも口にしたら蟻地獄」
『無花果』