『透明になる練習』
今朝パーキングで拾ったアタシを
猫を捨てるみたいに置いて行って
『透明になる練習』
田舎の夜は目立ちすぎるから
都会は紛れるのに丁度いい
耳には常にイヤホンで
お気に入りをリピート再生
ここに居るのに居ないみたい
そんな孤独を愛してるの
不意に寂しくなる日には
見知らぬ優しさで慰められたい
どこに行くのも自由だけど
自由すぎると泣きたくなるから
初めましての延長で抱き寄せて
偽名の夜を超えたいだけよ
本物っていう宝石は似合わない
愛にしても涙にしても
だから量産の安物で取り敢えず
いい感じに今を過ごせればいい
どんなネオンも夜景も
どうせ全部作り物なんだから
あんなものに心は動かされない
それより薄汚い路地裏が心に残る
今日も誰かが泣いてる裏通りで
倒れて叫ぶ彼女も明日になれば
何も無かった顔をして
違う誰かとシャンパンを開ける
そうやってみんな毎日をやり過ごし
何となくを装って生きてるだけ
大切なものはできるだけ持たないで
簡単に踏み出せるように軽くしておく
そうしていつか来る本番に
決して怯まず後ろを振り返らぬよう
アタシは荷物を捨てて生きる
捨てたつもりの男に白けながら
退屈しのぎをありがとう
次はまた違う相手
踏み越えるギリギリを探って
白線の上をふらふら歩く
「いつでも選べるからまだ選んでないだけよ」
『透明になる練習』