『濡れた嘘』
湿度の高い夜にひっそりと
咲いた花に零れる蜜
『濡れた嘘』
愛しさに潰れた胸の痛みすら
忘れるくらい眩しくて
つい踏み込んでしまったの
真実なんて所詮まやかし
その唇が発する宝石みたいな言葉
もしも幻だとしても構わないほどに
うっとりと目を閉じれば
ほら、もう何も見えないわ
貴方しか見えないし信じない
誰の助言も聞こえないふり
だって今この瞬間だけは
確かに存在してリアルでしょう?
愛してるって台詞は危険なクスリみたい
貴方以外曖昧で何だかフワフワするの
愛してるって何度も耳にした筈なのに
いつも少し冷静な自分が笑ってない
幸せかと聞かれればすぐ頷くけど
いつまでの幸せかなんて分からない
みんな勝手に評価したり諌めたり
それもアタシとは関係ない気がして
沼にハマってく自分を自覚しながら
助けを呼ぶなんて無粋な真似はしない
唯一名前を呼ぶなら貴方だけ
きっと一緒に沈んでくれない貴方だけ
お揃いにした安いバングルだけを
命綱にしてもっと深みへ
湿度が高ければ高いほど絡みつく
イミテーションの宝石たち
アタシにはこれがお似合い
寂しさに笑えば抱き締めてくれるけど
そんなの何の保証にもならないわ
ただアタシは濡れるだけ
「引きずり込む度量もないのだから」
『濡れた嘘』