zoku勇者 ドラクエⅨ編 60

古の英雄

「……暑ィな……」

「うん、しょうがないよね……」

「暑いよお~……」

「暑いわあ~……」

「シャア~……」

……と、まあ、何とも間抜けな会話からスタートする今回の冒険。
彼らはこの火口の洞窟の最上階、英雄グレイナルの元へと向かって
いるのである。だが、只管暑い火山洞窟の中で文句と愚痴を連発して
いた。

「この溶岩が……、全部海だったらいいのに……」

「ダウド、それ、3の時も言ったよね、確かあの時はプールだったかな!?
ははっはは、今度は海かな!?ははははは!」

「やべえ、腹黒が壊れ始めた……」

「でも本当よね、……ええーいっ!」

「うわ!?」

「アイシャ、何やってんのおーっ!!」

アイシャ、溶岩の一部をヒャダルコで凍らせ、自らも魔法お着替えで
水着にチェンジ。……このまま氷に突っ込む気なのだろうか……。

「冷静におなりっ!このジャジャ馬ーーっ!」

ぴんぴんデコピン×10

「いたああーーいっ!もうー!ジャミルのバカーーっ!!」

「はあ、ジャミルに冷静になれとか言われ……、あ、あれれ?」

ダウドが不思議そうな顔をする。先程アイシャが凍らせた氷の表面が
割れ始めた。そして、中からマグマロンが飛び出す……。凍らせた溶岩は
マグマロンの熱気であっという間に溶けてしまったのだった。マグマロンは
無防備のアイシャ目掛け飛び掛かろうとする……。

「きゃーーっ!?」

「アイシャ、下がって!」

「たくっ、はよ支度を元に戻せ!」

先に落ち着いたアルベルトとジャミルがアイシャを庇い後ろに下がらせた。
アイシャも慌てて元の装備品に又チェンジ。戦闘態勢を取る。

「ブロロロローーッ!ブルルルルッ!」

「うきゃあーーーっ!!」

「モンーーっ!?」

「ダウド、モンっ!!」

此方は此方で、飛び出して来た暴走モンスター、エビルチャリオットに
ダウドとモンが引かれて倒れていた……。

「……気をつけよう、暴走車と、ア、アホジャミル……」

「モン~……」

「……まーた一言余計なんだってのっ!!」

「ジャミル、いいからっ!こっちは僕がやるから、ジャミルはアイシャの
方のフォローを!」

「たくっ!」

ブツブツ言いながらジャミルはマグマロンの方へ、アルベルトは
エビルチャリオットとそれぞれ対峙する。そんなんで、溶岩から
噴出する炎系のモンスターと格闘し、洞窟内を進む4人。等々最上階、
グレイナルの元へと辿り着く……。

「此処、頂上の最深部だよねえ~、……誰もいないよお~?」

「……誰じゃ?」

「ひええーーっ!?」

突如地響きがし、ダウドは慌ててジャミルの後ろへ隠れる。やがて声の主が
ゆっくりと姿を表すのだった……。

「まさか、アンタがグレイナル……、なのかい?」

「グレイナルさんて、竜さんだったの?」

「如何にも……、わしが空の英雄グレイナルである……」

ジャミル達の前に遂に姿を現したグレイナル。だがその正体は真っ白く
巨体な年老いた竜であった。4人は漸く理解。竜ならば300年前から
生きているのも頷けると。

「グレイナル様、初めまして、僕達はあなたに力を貸して頂きたく、
遠い下界の地より参りました……」

「モンー♪」

真面目なアルベルトはグレイナルに恭しく頭を下げ、モンはグレイナルの
周りをパタパタと飛び回ろうとし、アイシャに注意される。ダウドは
びびりっぱなし。

「成程、里の者ではないのは分かる、しかし、見知らぬ旅人が一体
このわしに何用……、……むっ!?こ、このニオイは……」

「あのさ、アンタに色々と聞きたい事も……、?」

だが、突如グレイナルはジャミルを見るなり目つきを変える。まるで
何か嫌な物でも見るかの様に。

「貴様……」

「え、ええ……?」

「忘れもせぬ、帝国のニオイだ、魔帝国ガナンに纏わり付く兵共の
ニオイ、貴様、……ガナンの手先だな!」

「ハア!?ちょ、ちょっと待てよ!」

「……グレイナル様、どうか落ち着いて下さい!」

「わ、私達は何も……」

「あああっ!?い、いや~な展開っ!!」

(この竜オヤジ、何か勘違いしてネ?)

何かグレイナルは4人組を見て勘違いをしている様であるが……。だが、
グレイナルは更に牙を向く……。特に一番ジャミルが気に食わないらしく、
じりじりと詰め寄った。

「黙れ、性懲りも無くまたわしの命を狙ってきおったのかっ!!
……よかろう、古の竜の力、思い知るが良い!!」

「グレイナルっ!……くっ、どうすりゃいいんだっつーのっ!!」

「仕方ないよ、此処は一度戦って分かって貰うしか……」

「何でこーなるのおーーっ!!」

4人は迫って来るグレイナルにどうにもならず。まさか、英雄と
バトルをする羽目になるとは夢にも思っていなかった。だが、禄に
話も聞いてくれようとせず、横着な老害ドラゴンは一度フルボッコに
して黙らせるしかない。だが、伝説の英雄などに喧嘩を売られ、
勝てるのかどうかも不安だった。しかし売られた以上、今は
戦わなければならない……。

「モンちゃん、ちゃんと隠れてるのよ、バトルが終わるまでね……」

「モォ~ン……」

「よしっ、お前らいくぞっ!!」

「「了解っ!!」」

「……じゃ、ないよおおーー!!」

(頑張ってーー!!)

遂にグレイナルが襲いかかって来る……!やはり古の英雄の強さは
半端ではく、4人組はバトル開始直後から燃えさかる火炎で全員
ほぼHPを大半削られる大ピンチに襲われる……。

「「……うああああっ!!」」

「どうした?もう終わりか……?」

「……ざ、ざけてんじゃねえよっ!!」

「どうしよう、どの攻撃魔法も効きづらいわ……、でも、
頑張らなくちゃ……」

「……オイラもういやーーっ!!」

「此処はアイシャはサポートに徹して貰った方がいい、ダウドも
回復をしっかり頼む、ジャミル、ドラゴン斬りで二人で突っ込もう……」

「……分かったっ!アイシャ、バイキルトを頼むっ!」

「ええ!」

ジャミルはドラゴンキラーを構え、グレイナルを睨んだ。ドラゴン系の
モンスターに有効なドラゴン斬りでチクチク攻めるしかない……。
アイシャはまず、ジャミルにバイキルトを掛けようとする。だが、
其所にグレイナルは矛先をアイシャの方に向けるのだった。

「……させぬわ!思い知れっ!!」

「えっ!?きゃ、きゃあーーっ!!」

「……ああっ!アイシャーーっ!!」

グレイナルは防御力の低いアイシャを狙い痛恨のダメージを与える……。
アイシャはその場にばったり倒れ気を失うのだった……。初っぱな
から苦戦を強いられる4人の運命は……。

「……なろお、よくも……、絶対許さねえ、古代の英雄だか何だか
知らねえけど、よくもやってくれたなっ!ダウド、アイシャの回復を
頼むぞっ!」

「あ、ジャミルっ!」

「……無茶しちゃ駄目だーーっ!」

「うおおおおーーーっ!!」

ジャミルはアイシャを傷つけられた怒りで二人が心配する中、
ドラゴンキラーでグレイナルへと突っ込む。……やはりちゃんと
オートバイキルトになっている。恐るべしバカップル力。どうにか
グレイナルに初めて大ダメージを与える。

「こんなバカな!こ、このわしに……、おのれ、よ、よくもやりおったの!
この小僧めが!!」

「どんどん掛かってこいよっ!相手してやるぜ!」

グレイナルは額から流れ出る血を見ながら信じられんと言った表情をし、
自分を挑発する目の前の阿呆突貫小僧を見つめた。そして益々訳が
分からなくなるのだった。

「人が大人しくしていれば……、いい気になりおって、このまま謝れば
帰してやろうかと思うたが……、よかろう、帝国の犬っころめが、
殺してやる……、お前がわしを傷つけたのも何かの間違いであろう、
この翼さえ傷ついていなければ……」

グレイナルは改めてジャミルを見返す……。目はどんどん血走ってきており、
恐ろしい形相に……、本気でジャミルを始末する気でいる……。

「うわーっ!どんどん変な事になってきてるよおーっ!折角此処まで
苦労してグレイナルに力を貸して貰いに来たのに、これじゃ……」

「ダウド、仕方ないよ、牙を向いて来たのは向こうなんだ、でも、
このままじゃ!早くジャミルを止めなくちゃ!でも、グレイナル様の
誤解も解かないと……」

睨み合うジャミルとグレイナル。先にどちらを止めたら良いのか、
アルベルトは混乱する。だが、グレイナルもとても話を聞いて
くれそうにない。だが、再びジャミルがグレイナルに斬り掛かる!

「……竜爺ーーっ!大人しくしろーーっ!人の話を……」

「ジャミルーーっ!よせーーっ!!」

「……馬鹿め、青二才が……!!」

「ああーーーッ!?」

グレイナルはジャミルに向かって容赦せず強い炎を吐く。盾を装備出来ない
ジャミルは咄嗟にドラゴンキラーで防ぐが、炎に押され地面に転がり倒れた。
ジャミルを慌てて援護しようとしたアルベルト達にも今度は稲妻攻撃が……。
やはり古の竜である。圧倒的破壊力に押され、4人は絶体絶命に陥る……。

「揃いも揃って、愚か者共め……」

「グレイナル様……、お願いです、どうか、僕らの話を……」

「やだよお~、こんなの……」

グレイナルは気絶しているジャミルとアイシャ、そして、瀕死の
アルベルトとダウドに詰め寄る。このまま全員に揃って止めを
刺す気でいる。溜まらず、ジャミルの中から飛び出し、モンと共に
隠れながら様子を伺っているサンディは……。

「どーしよー、これ、マジヤバイって!もしもジャミ公がやられ
ちゃったら……、!?デ、デブ落花生、ちょっとッ!」

「ウシャーーっ!」

「だが、わしとしても複雑である、この様な雑魚に手を下さぬとは
ならぬとは、哀れな……、むっ!?」

「シャーーッ!」

「モンっ!……だ、駄目だっ!逃げるんだっ、……は、早くっ!!」

モンがグレイナルの前に飛び出して来る……。アルベルトは慌てて
モンに逃げる様に何とか身体の痛みを堪え、伝えようとするが……。

「……うう~、あの頑固な処、無茶する処……、飼い主そっくり
だよお~……、って、そんな場合じゃないのは分かってるんだけど……」

「……何だ、下級雑魚モンスターではないか、其所をどかぬか!でないと
お前も焼き殺してしまうぞ!」

「シャーーっ!シャーっ!……プ」

「……そうか、やはり貴様も死にたいか、ならば……」

モンはグレイナルを挑発した後、イザヤールに続き、後ろを向いて古の
英雄にまで放屁。……別の意味で伝説になりそうだった。グレイナルは顔に
青筋を浮かべた。状況は更にヤバイ事になって来ていた。……僕達、今度こそ
此処でお終いなのかとアルベルトは固く歯を食い縛った……。

「お、お待ち下されええーーっ!!」

「……む?」

「あ、あの人は……」

アルベルトは呆然とする。何と。走って来たのは長の家の手伝い人の
あの婆さんだった。グレイナルのお世話を良くしていたと言う……。
だが、こんなモンスターだらけの処をどうやって……とアルベルトは
突っ込みたかった。だが、モンに危害を加えようとしていたグレイナルは
婆さんの姿を見て、漸く手を止めたのである。

「……婆やよ、久しいが一体何の様だ……」

「はあはあ、き、気になって後を追って来たのですが……、これは一体
どう言う事なのです!?あなた方は黒い竜を追う為、グレイナル様に
助けを求めに来たのではないのですか?それが何故この様な事に
なっておられるのです!!」

「……そ、それは……」

唯一何とか動けるアルベルトが説明しようとするが、婆さんはジャミルに
傷つけられたグレイナルの傷の容体だけを心配し、此方の話など聞こうとも
しない。宣戦布告をしてきたのはグレイナルの方からだと伝えても聞く耳
持たないだろう。

「……黒い竜だと?バルボロスの事か?……バカな、奴なら300年前に
わしが倒した筈だ!」

「……それが、この者達が現世に黒い竜が復活したと、それで
グレイナル様に助けを……」

「ふむ、それは今一度わしにバルボロスと戦えと言う事か……?」

「あ、いや、其所までは……、只、戦いの為、グレイナル様に何か助言を
頂ければと言う事かと……」

「空も飛べぬモウロクしたわしではバルボロスと戦えんか?
……どちらにしろお断りじゃ、帝国の手先と同じニオイを
纏った者など信用出来ぬ、バルボロスの復活などデタラメじゃ!」

「……そうですか、では仕方ありません、お聞きになられた通りじゃ、
グレイナル様がこうおっしゃる以上わしにはどうすることもできん、
お客人には申し訳ないが今すぐこの場から立ち去ってもらえんかのう?」

「そういう事じゃ、はよう何処にでも行ってしまえ!貴様が帝国の
手先かどうかなど、もはやどうでもいいわ、とにかくわしは貴様の
ことが気に食わんのだ、さっさと立ち去れい!」

「……グレイナル様、僕らは本当に……」

どうにか戦いからは解放して貰ったが……、折角力を貸して貰いに
苦労して此処まで来たと言うのに、グレイナルからは信じて貰えず
拒絶され、すっかり気力を無くしてしまった4人は里の宿屋へと戻った。
ジャミルももう気絶からは回復してはいたが、元気なジャミルが
やるせない怒りですっかり言葉を無くしていた……。

「マジビビったぁ~、空の英雄グレイナルの正体が竜だなんてきいて
ないんですケド!どーりで300年前に魔帝国ガナンと戦ったって
話なのに今も生きてるわけネ、でもすっかり老いぼれちゃって
空の英雄なんてよばれてたのは大昔のことってカンジ、こっちの話
ロクに聞いてくんないしありゃ使えないって!」

「……アル、俺さ……」

「うん?」

「……最近どの話でも、話がきつくて状況が落ち着かなくなってんだよ、
あっちでもこっちでも、もういっその事、次はす○っ○ぐらしにでも出て、
端の方で丸くなってるかなと……」

「あのね……、今はそんな裏話してる場合じゃないだろっ!しっかりしろっ!!」

……パンッ、パンッ、パンッ!!

つい口を溢したジャミ公。久々にアルベルトにスリッパ乱舞連打された。

「はあ、私もびっくりしたわ、いきなりあんな……、怖かった……」

アイシャも下を向き、グレイナルに襲われた時の事を思い出す。
力を貸して貰いに行った筈が……、誤解され、逆にグレイナルの
怒りを買う羽目に……。どうしてこんな事になってしまったのか、
理由も分からず4人はモヤモヤしていた。

「ジャミル、何かやったんじゃないの?」

「……は?何でだよっ!」

「だって……、異様にジャミルに敵対心燃やしてたし……」

「ダウド、君までなんだよ、ジャミルも僕らもグレイナル様が
竜だなんて知らなかった訳だし、初めて会ったんだからそれは
あり得ないだろ……」

「……だよね、何かオイラもムシャクシャして……、色々思考が
落ち着かないみたい、ごめんよ……、はあ、熱々のおでん食べたい
なあ~……」

「モォ~ン……」

ダウドはそう言うと、ベッドの上で丸く座ったままの体制で俯いて
膝に顔を埋める。……一瞬、ちょっと何か違う愚痴も出た様だが。
ダウドだけでなく、モヤモヤしているのは皆同じだった……。

「とにかく、此処で立ち止まっちゃいられねえよ、……苦労したのに
グレイナルに拒絶されたんは悔しいけどな、それならそれでクソ竜に
対抗出来る別の手段を考えねえと……」

「……」

ジャミルの言葉に皆一同押し黙る。……それではそれでそうなのだが、
闇竜バルボロス、それに帝国に対抗出来る手段が他に果たして見つかる
のか……。今は全く分からなかった。

「……ん?何かやけに外が騒がしい様な気がするな……」

「気の所為だよお、オイラもう疲れ……」

「……大変よっ、皆、外を見てっ!!」

「ああっ!?」

アイシャに言われ、ジャミル達も急いで窓の外を見る……。一体何時
来たのか、里の中に集団武装兵が現れ、里の中で民を暴行、やりたい放題、
暴れ回っていた……。

「帝国の兵士かな……、何て事を!止めなくちゃ!」

「恐らく、グレイナルの言ってた魔帝国ガナンとか言う処の奴らだろ、
汚ねえ真似しやがる!……奴らのツラも汚えけどさ……」

「行きましょ、このまま里の皆さんをほおっておけないわよ!」

「ああ、行こうぜ!グレイナルの爺さんよりは雑魚だからな、丁度ストレスも
溜まってるしな!いっちょ暴れてやらあ!」

「うう~、オイラもう休みたいよお~……、あだだだだ!わ、分かった
よお~、モン!」

「シャーー!」

(がんばってえ~、アタシ、此処にいるわヨ~!)

サンディはジャミルの中で旗を振る。ヘタレようとしたダウドは
モンに突かれ、しぶしぶ了解。4人は宿屋の外へと飛び出すのだった。

「我らは偉大なる魔帝国ガナンの兵士だっ!」

「オラオラオラーーっ!!クソがあーっ!我らにひれ伏せーーっ!!」

「い、痛い、止めて……」

「ひいっ、……ら、乱暴は止めて下さいっ!!」

「まま~、こわいよう~……」

「このドミールはかつてわが帝国に逆らった者たちの巣窟、地上に残す
価値などの無い場所だ、空の英雄グレイナル共々この地にいる者は
一人残らず葬り去ってくれよう!」

「……行くわよっ、イオラーーっ!!」

「む……?ぎゃ、ぎゃあーーーっ!!」

突然の爆発に巻き込まれ、民に暴行をしていた兵士の数人が
バタバタ倒れる。其所に……、爆発を起こした張本人アイシャと
ジャミル達が駆けつけたのである。

「皆さん、今の内に早く避難して下さいっ!!……此処は僕達が!!」

アルベルトの指示で暴行を受けていた民達は急いで散らばる。兵を
指揮していたであろう、軍曹らしき兵は突如現れた4人組を
憎々しげに睨んだ……。

「貴様ら、何処の雑魚共だ……、許さんぞ……」

「ふんだっ!魔法のセーブはしておいたから怪我程度で済んでる筈よ!
もうこんな事やめなさいよっ!!」

「おのれ……」

軍曹兵はアイシャを睨み指笛を吹く。すると又別の兵士が直ぐさま
駆けつけ、4人を取り囲んだのである……。

「よし、こいつらをやれ……、殺してしまっても構わん……」

「……んな簡単に俺らがやられるかあーーっ!!お前ら行くぞーーっ!!」

「「おおーーっ!!」」

……結果は一目瞭然。折角新しく呼んだ兵士達も4人組のガキに
ボコボコに伸される。軍曹もこれ以上自分の部隊の兵を呼んでも
無駄だと漸く理解したらしく、焦りだした……。

「……よ よくも……、やってくれたな……、こ、この事を、将軍に
報告せね……ば……」


???:ホッホッホ……、もう知っていますよ……


「!?」

突如響いた汚いダミ声と共に、白フクロウの様な老人が姿を現す……。
ジャミルはこの奇妙なフクロウ面の老人の声を何処かでうっすらと
耳に聞いている様な記憶があるのだった……。

「……おお、ゲ、ゲルニック将軍!ど、どうかお助けを……」

「……やれやれ、嘆かわしい事です、偉大なる帝国の兵士とも
あろう者が人間如きに遅れを取るとは……、見てはいられませんな……、
あなたにはどうやらお仕置きが必要なようですね!」

「そ、そんな……、た……助けてくれぇぇーー!!
……ぐぎゃあああーーー!!」

ゲルニックと呼ばれた老人はまず魔法で倒れている兵士達を跡形もなく、
躊躇いもなく燃やし尽くす……。その後、命乞いをした軍曹に止めを刺し、
始末した……。

「……テメエ、何て事しやがる!味方なんだろっ!!」

「酷いわ……」

「くっ……」

「こいつらも最悪だったけど……、外道過ぎるよお……」

「モン~……」

「おや……、何処かで見たと思ったらあなたはイザヤールさんの……、
なんと生きてらっしゃったんですか……」

「な、何だと?俺はオメーなんか知らねえぞっ!そ、それに、テメエは
イザヤールの行方を知ってんのかっ!?」

「……帝国の敵はグレイナルだけではないというワケですね、……まあ
いいでしょう、あなたもグレイナルもドミールもどうせもうすぐ
この地上から消え失せるのですからね、ホホホホ、では、ごきげんよう……」

「あ!ま、待ちやがれっ!ホホホホじゃねーんだよっ!人の話を聞けーーっ!!」

ジャミルが問い詰めようとするが、謎を残したままゲルニックと名乗る
老人は逃走してしまう。だが、4人組の活躍により民は守られドミールは
どうにか平和を取り戻したのだった……。

「……皆さん、本当に有難うございましたっ!!」

「何とお礼を言えば良いのやら!ああ……」

ドミールの里の民は皆口々にお礼を言い4人組に頭を下げる。だが、
4人は咄嗟の事態だったので困惑する……。

「い、いや、別に……、そんな気にしないでくれよ、俺らも少し
苛々して……、何が何だか分かんなかったけど、取りあえず
突っ込んだら追い払えて良かったって感じだよ、な、皆……」

ジャミルの言葉にアルベルト達も頷くが、里の民はそうは行かず、
泣きながら命を救って貰った事に感謝し捲るのだった。

「……やはりあなた方はこのドミールの危機を救う為、来るべくして
訪れた旅人達なのですね……」

「は、はあ……」

語り部の詩人も4人組を絶賛。だが、何時又帝国の奴らはこの里を
狙って侵攻して来るか……。今回の様に簡単に守り切れるとは
言い切れない。それにあのゲルニックはグレイナルもドミールも、
そしてジャミルも何れは滅びると言っていた。……最後に要注意
人物なのか自分の名前も入っていた為、ジャミルはもしかしたら
何時までも自分が此処に留まっては良くない感じもした……。

「……おお、ジャミル殿、皆さん、丁度良かった、お話があります、
直ぐに火山洞窟入り口前まで来て下され……」

「婆さん……」

現れたのは長の家、グレイナルの世話係の婆さん。4人組は顔を
見合わせる……。

「とにかく行ってみよう、話を聞こうよ……」

「……お約束のパターンでさあ、ドミールに帝国兵が来たのはあんたらの
所為ぢゃ……、と、とか言い出すんじゃないの……」

「ダウドったら、其所まで悲観しないの!アルの言う通りよ、まずは
行ってみましょ、ジャミルも大丈夫?」

「ん?俺は別に平気だけどさ、ま、行ってみるか……」

「モンモン!」

洞窟前まで行くと入り口で確かに婆さんが待っており、皆を出迎えて
くれたのである。

「来てくれましたな、グレイナル様より言付けを預かっております、
……この里の地酒である、竜の火酒を持って、グレイナル様の処に
すぐ来る様にと……」

「……ば、婆さん、それって!」

つまり、グレイナルがジャミル達とちゃんと話をしたいと言う可能性が
あると。少し気が温和になったかも知れない、そう言う事である。

「ただし、グレイナル様の処へはジャミルさん、あんたお一人で
来る様にと……」

「お、俺だけで……?」

仲間達もジャミルを見る。どうにか又会ってはくれそうだが、
ジャミル以外は訪問を受け付けないと。どうしたもんかと頭を
掻いているとアルベルトが。

「ジャミル、もう大丈夫だと思うよ、もしかしたら、さっき僕らが
帝国兵を追い払ったのを知って会ってくれる気になったのかも、
このチャンスを逃す訳にはいかないよ!」

「……アル、けどなあ……」

「そう言う事です、グレイナル様は先程、あんたらが命がけで帝国兵を
追い払ってくれた事に大変ご関心をもたれた様です……」

「そうだったのか……」

「ジャミル、行ってらっしゃい、私達、此処で待ってるわ!」

「お願いしますよお~……」

「モォ~ン……、モシャ……」

「分かった……」

アルベルト達は此処で待っていてくれると言う。ジャミルは承諾し、
一人でグレイナルの元に再度向かう事になった。

「それでは頼みましたぞ、竜の火酒をお持ちになるのを忘れずに……、
地下蔵の酒造で作っている筈です、その酒はグレイナル様に捧げる
大好物のお酒ですので、丁度そろそろ完成する頃合いだと思います……、
其所の階段から地下に行ける筈です、尚、酒の製造には数ヶ月を
催しますので……、職人さん達も大変なご苦労をなさっておるのですよ
……」

「と、言う事は、もうっ!前にモンちゃんが舐めちゃったお酒って
それだったのね!……めっっ!!」

「モォ~ン……」

真実が分かり、慌てるジャミル達……。もしもモンがあの時、
完成間近の酒を全て飲んでしまっていたとしたら今頃どうなって
いたか……。グレイナルも会ってくれなかったかも知れない。
どうにか済んだ事になりそうだった件に、モンはまたアイシャに
めっ!された。

「……よし、じゃあちょっくら行って来るよ、すぐ戻るからよ……」

「気をつけて……」

「お、落とさないでね……」

「戻って来たらグレイナル様とのお話聞かせてね!」

ジャミルは地下蔵で竜の火酒を受け取り、再び洞窟前へ。今度はルーラで
一気に山頂まで飛ぶつもりでいた。

「ルーラっ!!」

仲間達はジャミルを見守る……。だが、ジャミルがルーラを唱えた直後、
何か異様な、……落花生の様な物体が素早くジャミルの背中に張り付いたの
には誰も気づかず……。

「……よしっ、あっという間の山頂だっ!後はこの酒を、……ん、
な~んか異様に背中がくすぐってえ……」

「モン、モン、モシャ……」

「モン……?」

「ジャミ公~、いるわよ~、アンタの後ろに~……、変な顔のデブ座布団
落花生が……」

「シャア~……」

「……うわあーーーっ!?」

「シャアーーーっ!!」

何と。飛ぶ直前に背中に張り付いた異様な物体。……モンが付いて来て
しまったんである。

「モォーン♡」

「……じゃ、ねえってんだよっ!おーいっ!サンディ、頼むっ!
こいつ今すぐ連れて帰ってくれよっ!!」

「やーなこったッ!メンドクセー!こいつは人間じゃないから
大丈夫じゃないのッ?なにせデブ座布団だし、許して貰えるって!
じゃーねー!」

「おいっ、こらーーっ!……薄情ガングローーっ!!……うわ!?」

サンディは発光体になり、さっさとジャミルの中へと消える。
一旦モンをどうにか仲間達の処に預けて来ないと……、そう
考えていると、地響きがし始めた……。

「其所で騒いでいるのは……、やはり其方か、酒は持って来たの
だろうな……、……?」

地響きを立て、奥からグレイナルが姿を現す。だが、グレイナルは
飛び回るモンを捕まえようと格闘しているジャミルを見て首を傾げた……。

「あ、ああ、こ、こいつ……、ついて来ちまって、い、今捕まえるから!
……いてっ!」

「シャーモン!」

「やれやれ、お前も間抜けじゃの、まあ良い、それよりも早く
酒を飲ませろ!……もう待ちくたびれたわ!早くせんか!!」

「へ?い、いいのか……?」

「害はないであろう、……早うせんか!そう言えばまだおんしの
名前を聞いておらんかったの、……ジャミルか、やはり名前から
して抜けておるの……」

「……大きなお世話だっつーのっ!ほれっ!!」

「お、おおー!これじゃこれじゃ!♪おほほー!どれどれ!お味は如何か!?」

「……」

どうにかモンの事は許して貰えた様である。グレイナルの機嫌を損ねない様、
ジャミルは慌ててグレイナルに竜の火酒を渡すのだった。だが、最初に会った
時よりも、やはりグレイナルはジャミルに対して明らかに態度が砕けて
来ている様子が見受けられた。このままグレイナルが酒を堪能し終えるまで、
静かに待とうと思った。モンのほっぺたをうにうに横に引っ張りながら……。

「もひゃ、もひゃ、もひょ~お~ん……」

zoku勇者 ドラクエⅨ編 60

zoku勇者 ドラクエⅨ編 60

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-03

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work