仮想現実

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第一章 平凡な1日 #1

「はぁ…今日も仕事か。」
体が重い。とても憂鬱な気分だ。
「まあ、仕事だから行くしかないんだけどさ。」
独り言をぽつりぽつり呟く。
行くしかない、そう自分に言い聞かせ、体を起こした。

「…さすがに朝食くらいは食べなきゃな。」
冷蔵庫に出を伸ばし、何かないか探す。
ふと端の方をみると、赤い果実があった。
「っあ、これ昨日上司からもらったりんごだ。」
上司の家は農家らしく、有り余るほどりんごがあるからあげる、と言って部署全員に渡していたのだ。
「これでも食べるか。」
そうしてりんごを水で軽く洗い、まるかじりした。
「ん、結構おいしい。」
このりんごのおかげかは知らないが、なんだが少しやる気が出てきた。
さらにやる気出すため、自分の頬を叩いた。
「よし、今日も頑張るか!」
気を奮い起こし、一歩踏み出した。

駅に向かうため少し歩く。
ここは都内。
通勤ラッシュで人に潰されそうになりながら、駅まで向かっていく。
ふと、何か赤いものが視界によぎった。
「…??って、風船か。」
赤い風船が空にあったのだ。
『うああああー!!風船さん空にいっちゃったー!!』
小さい女の子が近くで大声で泣いていた。
(多分、手から離しちゃったんだろうな…)
少し哀れに思いながらまた歩き出す。
「…でも、なんだか懐かしいなぁ。」
小さい頃は赤色が好きだった。
おもちゃも、好きなものも、好きな食べ物も、全部赤色がついていた。
それのせいなのか、近所の人には気味悪がられた。
血の色やら、男の子らしくないやら、気持ち悪いやらなんやら……。
「今考えたら、別に大したことじゃないのにな。」
昔のことを思い出していたら、もう電車が出発する時刻だった。
「あっ、やばい!!急がないと!」
足早にその場を後にし、ダッシュで駅まで向かった。

第一章#1 終了

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  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-21

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