末黒野・死・蛤・絶巓
末黒野
早春は蕾を混ぜて
真つ黒な野を人々に魅せ
鶯笛の音に春めく
炭は緑と合い鮮やかに
畦は美麗の涅を出す
死
人が死んだ
わあ人が死んだ
何処で死んだ?
崖から落ちた
海で溺れた
寿命で死んだ
撃たれて死んだ?
刺された死んだ?
君たちは一体何を言っているんだ?
彼が望んで死んだに決まっているだろう
蛤
「ねえ兄さん」
「何?」
「夜空を見上げて御覧よ」
「やあ星が綺麗だね」
「月もそうだろう」
春の浜辺に蛤二つ
月夜を眺めて愛しく二つ
絶巓
雲海は天道に煌びやか
王は世界一高き山の頂に臨む
煙花空を超えし
王は世界一高き山の頂より叫ぶ
噫 絶巓よ!
私は此処であるぞ!
私は偉大な山をも超えし存在であるのだ
韋駄天よ吹け!吾は飛ばせぬぞ!
矢のような滝雨も
槍のような雷槌も
吾には何も効かぬのだ!
ひれ伏せ!山よ!
龍のような太空も
轟々と鳴る大地も
吾には塵芥同然であるのだ!
噫 絶巓よ!
燃えよ!滾れ!
雲海は天道に煌びやか
王は世界一高き山の頂より挑む
神なる絶巓に挑む
末黒野・死・蛤・絶巓