丘・烏

  丘

私は其の丘の上に立つてゐた
電車がとほる 老爺(ろうや)がとほる
私は其の丘の上に立つてゐた
雲がとほる 雀がとほる
私は其の丘の上に立つてゐた
名前も知らぬ 丘の上に
抑々(そもそも)名前などあるのかだうかも
知らぬと云ふのに
其れでも私は
其の丘の上に立つてゐた

拝啓 名もないであらう()の丘へ
貴方に此の詩を送ります

  烏

美しいのに知られていないその黒色の訳は
屹度(きっと)、人気者にはなりたくないからでしょう

丘・烏

丘・烏

  • 自由詩
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-12

CC BY-NC
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