霜 猿島侘助 軒先の 垂氷(たるひ)は常に雫落つ 颪(おろし)は吹いて吐く息は 白くなりけり冬木立(ふゆこだち) 身を貫けり早朝の 射る薄光鄙(ひな)びたる 牡丹(ぼたん)の影を子供等(こどもら)は なにごともなし空(くう)は冷えて ことり唱(うた)わず懈怠(けだい)なる 夕風重く曇天の 竝木(なみき)は揺れて土手傳(づた)い 悩む者あり 霜