山麓 猿島侘助 檜(ひのき)の梢は冬に白く、吹雪は虚しく幹を擲(たた)く。葉は銀鼠(ぎんねず)、枝は視えぬ。地は冴(さ)えて、空(くふ)は冷たし。やあ、夜に寒昴(かんすばる)。あゝ、星に雪催(もよ)い。不図(ふと)、静閑に乾つ風なり。 山麓