初夏の入り口

僕がその町に着いたのは5月の終わりだった

新緑が眩しかった

乾いた風には常に青い芝生のような匂いがあった

どんなに吸い込んでも吸い込みきれないほどの青い匂いだった

僕は自由を手に入れてしまったような気持ちになった

どこにも繋がれず
青い匂いの中をふわふわと漂う頼りない存在だった

大空を見上げるたびに
自分を見ろと言われてる気がした

空高く舞うトンビを見つけるたびに
人は孤独だと言われてる気がした 
 
僕を取り巻くすべてのものが僕を静観していた

自分で自分を操縦しなければこのままどこかへ流され
二度と自分を見つけることができなくなってしまいそうだった

5月の終わりのことだ

眩しい初夏の入り口だった

初夏の入り口

初夏の入り口

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-24

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