zoku勇者 ドラクエⅨ編 50

スクールカルテット・3

「お早う、え~と……、お名前が……」

「おはよう、君、僕に声を掛けてくれるんだね、ありがとう」

「?ええ、お友達ですもの、当たり前じゃない、ふふ!」

「お友達……、か……」

アイシャとパッツンデブのやり取りを見て、ジャミル達男性陣も
駆け寄って来た。

「よう……」

「やあ、お早う!」

「一応、挨拶しておくね、おはよう~……」

「モンモン!ちゃんと朝ご飯は食べましたか?モン!沢山食べないと
健康なおならが出ませんよ!プッププッププ!」

(きゃははは!デブ座布団、なんか影響受けて先生ぶってるし!マジうける~!)

パッツンデブは気さくに挨拶してくる4人組とモンを見て、何となく
複雑な気分になる。そして、彼にはどうしても一つ、アイシャに対して
聞いておきたい事があった。

「……あのさ、君、なんで怒らないの……?」

「えっ?どうして?」

「……だってあの時、僕ら君を墓地まで連れ込んで……、悪い事しようと
したじゃないか、なのに、なんでこんな僕に優しくしてくれるの……」

「もういいのよ、終わった事ですもの!いつまでも気にしていないわ!
皆さんが仲良くしてくれればそれでいいの!あなたもね、これからも
仲良くしてね!」

「……わあ……、も、勿論!」

アイシャは太陽の様な明るい笑顔をパッツンデブに向け、見せる。
パッツンデブの顔が一瞬にして上気し、煙を吹いた……。

「だ、そうだ、良かったな、感謝しろよ、……んじゃ授業始まっから、
又後でな!」

「……ちょっとジャミルっ!も~っ、じゃあ、またね、教室でね!」

「う、うん……、またね……」

ジャミ公はさっと間に割り込むと、アイシャの手を掴んでグイグイ
引っ張って、学院へ連れて行く。明らかに焼きもちを焼き、アイシャの
笑顔を誰にも取られたくないらしき。どうしようもないアホである。

「全く、普段から授業なんか嫌だってギャーギャー騒いでる癖に……、
あ、ああ、ごめんね、僕らも行くね、また後で……」

「はあ~、だよお~……」

「うん……」

アルベルトとダウドは先に行ってしまったジャミルとアイシャの後を
追って、自分達も慌てて走って行く。そんな彼らの姿をパッツンデブは
羨ましそうに暫く眺めていた。

「いいなあ、彼らは……、心から信頼し合える関係で……、僕も
モザイオとあんな風に気兼ねなく、何でも話せたら良かったのにな……」

モザイオ、青髪、パッツンデブの関係は、一見仲が良さそうで
連んでいる様に見えても、気の弱いパッツンデブは3人の中で
殆どがパシリの様な役割だったのである。それでも。自分には
ないワイルドなカッコ良さを持つモザイオは彼の憧れだった。
だから、何処までもモザイオに付いて行き、ちょっぴりワルを
気取ってみようとした。でも、自分にはやはり無理なんだと、漸く
気づいたのだった。

……そして……。

「うう~、きついきついきつい、……き~つ~いいいっ!!」

本日はジャミ公に取って最悪の一日であり、地獄だった。何せ、
一日の授業が終了後、放課後、ジャミ公だけ追試のテスト……。
勿論、追試をやっても合格点を取れないのは本人も分かって
いるので、ただ、ただ……、とにかく地獄日。購買のパンも
買えず。ちなみに、今日は彼が唯一輝ける体育の授業も日程にない。

「はあ、やっと今日も終わったねえ~、やれやれ……」

「よう、ダウド……、何でオメー試験で普通に平均点取ってんだよっ!
おかしいだろっ!オメーも追試受けろってのっ!」

ちなみに、今回の他メンバーの点数は、アルベルト、85点、アイシャ、
70点、ダウド、60点だった。

「……失礼だなあっ!滅茶苦茶言うなよお!八つ当たりもすんなよお!
もうっ!!」

「ジャミル、ダウドの言うとおりだよ、事前にちゃんと学習して
おかなかった君が一番悪いよ……」

アルベルトは教科書を鞄にしまいながらさらっと言い放つ。実際、
アルベルトがジャミルに事前に試験の予習をしようかとちゃんと
声を掛けたが、当然の如く、逃走したんである。

「まあ、しょうがないわよね、ジャミル、頑張ってね、私達、また
情報の聞き込みもしなくちゃならないし……」

「ジャミル、ジャミルの分の生姜焼きはちゃんとモンがお腹にいれて
おいてあげるモン、だから安心してね……」

「るせーっ!この野郎っ!こうなったら何が何でも飯の前には試験
終わらせてぜってー寮に戻るかんなっ!!……うおおおーーっ!!」

……闘志を燃やす処が違うだろ……、と、アルベルトは心で突っ込みを
入れた。とにかく、自分達にはやらなくてはいけない事がある。ジャミルを
除く3人は帰り支度を終え、ジャミルを残して教室を後にするのだった……。
ちなみに、此処の追試は時間制限が無く、ちゃんと全て答えを埋めるまで
終わらせて貰えない。つまり、ちゃんと回答を埋めないと、試験監督の
教師にまで迷惑を掛ける事態に……。

「……揃いましたかね、では、追試試験を開始……、その前に、1人
足りませんね、いつもの事ですが……」

試験監督の禿げた教師はずり落ちたメガネを押し上げる。そう、
追試試験の人数が1人足りない。……モザイオである。彼も
ジャミル同じく当然赤点を取り、追試は確実だった。だが、姿は
見えず。いつもの事らしく、教師はもう諦めムードだった。

「後でまた彼の事は学院長に伝えておきますので、では、此処に
いる皆さんだけで追試を始めます、制限時間は各自無制限、終わった
者から速やかに引き上げる様に……」

……終わってなくてもとっとと引き上げさせろとジャミ公……。
問題用紙を確認。口を3の字にし、鼻の下に鉛筆を挟み、
変な顔になった……。

「君は確か、学院長の推薦でお仲間と此処に入学されたのでしたかね、
あなただけ、どうにも成績が余り……、の、様ですが……、とにかく
頑張って下さい……」

「うっす……」

試験が漸く終わったのは……、21時。しかも、最後まで残った
頑固者は、やっぱり言うか、ジャミル1人。終わるのを只管
待っていた試験監督教師も、ジャミル本人も……、それはもう
フラフラである。しかも、合格点に追いつける筈がなく、
取りあえず、今日の処は終わったと達成感、ジャミルは教師に
頭を下げ、教室を出た。

「……ううう~、飯ーーっ!!俺の生姜焼きちゃーーんっ!!
またいつかーーっ!!」

教室内で、誰かがコケて倒れた様な音がした。ジャミルの声におったまげ、
多分試験監督がすっころんだと思える。だが、構わずジャミルはのそのそ、
誰もいなくなり、暗くなってしまった学院の廊下を歩き出した……。

「よう……、今晩は……」

「……?お、お前……」

本日はもう誰もいなくなったと思われた学院にこっそり隠れ残っていた
人物。その人物は廊下の角から、のっそりとジャミルの前に姿を現す。
……モザイオであった。

「え~と、ジャミルサン……、だっけ?アンタに話があってさ、
こうしてさ、ずっと待ってたのさ……、俺、偉いっしょ……」

モザイオは腕組みをし、ニヤニヤしながらジャミルを見ている。
明らかに何か企んでいるのがもう見え見えだった。

「お前も追試だったんだろ?いいのかよ……」

「フン、やってられるかってんだよ、それよりもな、ちょっと
耳寄りな情報、この学院の怪談話の事さ、生徒が行方不明に
なっちまってる、例の話……」

「何だと……?」

モザイオは待ってましたとばかりにジャミルの方を見て笑みを
浮かべる。だが、奴が又何か企んでいる事にジャミルは慎重にと、
心に留める。

(アンタ、気を付けなさいよっ!ジャミ公っ!)

「分かってるってのっ!で、その事なんだけどよ、お前、何か
知ってんのか?頼むよ、少しでも教え……」

「やだよ、誰が教えるか!……んなモン、知らねえよ!」

……こうである。耳寄りな情報と言っておきながら、モザイオは
結局、何も話してくれようとしない。……ジャミ公は、プッ、ツン、
キター!……状態。

「よう、アンタ、度胸試しは好きかい?」

「はあ?」

「こっちの話の方が本題なのさ、この学院の屋上にさ、天使の像がある、
真夜中の深夜0時にその天使の像のデコを叩くと、モノホンの幽霊に
会えるって噂だぜ、どうだい?俺と明日、チャレンジしてみねえ?」

「……ふざけんなっ!俺はんな暇人じゃねえっつんだよっ!
……くっだらねえ……」

(常にいつでも暇だとは思うんですケド……)

「……ガングロっ!うっせーっ!」

「おいおい、誰と喋ってんだよ、ま、そう言う事か、要するに怖いのか、
はは……」

「……なんですと?」

ジャミ公、更にプッツンキタ。モザイオはジャミ公を怒らせ、段々本気に
させようと目論んでいる。こうすればこの男は嫌でもムキになってやるから
である。此処数日の間、モザイオは何となくジャミルに興味を持ち、暇さえ
有ればこっそり、色々と生態を研究……、では、なく、細かい日常の様子
などをチェックしていた。頭の弱い短気な単純バカと言う事も脳内に
刻み込んだ。

「いいよ、やってやらあ、冗談じゃねえってんだよっ!!」

(……よしよし、バカが段々調子に乗って来たな……)
「じゃあ、明日、深夜23時に学院の前で待ってるよ、但し、アンタ
1人で来るんだぜ、いつも連んでる連中には絶対言うなよ、
……分かったか?」

「分かったよっ!んで、話はそれだけかっ!?」

「ああ、他には何もねえよ、用はねえからさ、んじゃ明日の夜、
宜しくな~!楽しみにしてるよー!」

モザイオは片手を振りながら先に姿を消した。……残されたジャミルの
口からどっと大きな欠伸が出た……。追試試験で疲れている処をモザイオの
所為で余計に疲れた。

(アンタ、ホントにいいワケ?アルベルト達にもサ、言った方が……)

「いいんだよっ!これは俺自身のプライドの問題だっ!バカにされて
黙ってられるかっ!」

(ハア、全くど~しよーもないわネ、……何がプライドよ、プライド
ポテトでも囓ってろってカンジ!)

……寮に戻ると、食堂のテーブルに着いてアイシャが1人で待っていた。

「お帰りなさい!」

「ただいま……、って、わざわざまだ起きてたのかよ、節介だなあ~……」

「別にいいでしょっ!ふんだっ!」

(ウソウソ!ホントは嬉しいクセに!心臓の音、バクバク聞こえてるし!)

「……オホン!……ゲ、ゲホッ!?」

ジャミ公は自分の中のサンディを黙らせようと、胸を強く叩いたが、
強く叩きすぎて、逆に自分がむせる始末。

「……大丈夫?って、もう、何やってんのよっ!」

(ばぁ~カ!)

「あ、これ、食堂のおばさんが、ジャミルにって、特別よ、試験を
頑張ってんだからねえ、終わった後のスタミナを取らなくちゃねって、
作っておいてくれたのよ」

「お、おおお!……しょ、生姜焼きィーっ!俺の分ーーっ!
いただきまーすっ!」

ジャミ公は夢中で夕ご飯に齧り付く。ちなみに、量は通常の食事の半分。
多分、遅くなると思うので、量は半分でいいですよと、カロリーの事も
考えアイシャがおばさんに伝えたのだった。

「処で、追試試験の手応え……、どうだった?」

「……うっ……」

「ま、まあ、聞かないでおくね、それにしても、私も疲れちゃったから
お部屋に戻るわね、モンちゃんも待たせてるし!じゃあ……」

「おう、遅くまで待たせちまって悪かったな……」

……アイシャも部屋に戻り、静かになった食堂で、ジャミルは黙々と
食事を平らげるのだった。そして翌日。今日は休日。4人が入学して
から初めてのお休みの日。都会の学院ではないので、近くにお洒落な
ショッピング施設も何も無いが、生徒達は寮で身体を休めたり、友達と
お喋りをしたりして過ごしたり。何気ないそれぞれのお休みを満喫する。
ちなみに、休日でも学院は空いているので、図書館で勉強したりする事も
可能。本日、勿論この4人の休日の日程は決まっていた。

「とほ~、今日も聞き込みかあ~……、何か、まるで三流刑事みたいだね、
オイラ達……」

「ダウド、文句言わないんだよっ、何せ、まだ有力な話が殆ど話が聞けて
ないからね、今日は徹底的に皆に聞いて回ろう」

「……」

「ジャミル、どうしたのよ……」

「……あ?ヘッ!?い、いや、何でも……」

「変なジャミルねえ、変なのはいつもなんだけど……」

「……うるさい……」

ぼけーっとしていたジャミルは、昨夜のモザイオとの件を
思い出していた。仲間達にはちゃんと伝えた方がいいのか……、だが、
やはりモザイオにバカにされっぱなしでは腹の虫が治まらヌ。なので、
このまま黙っている事にした。

(ま、モザイオとか言う野郎の真意は不明、何企んでるか分からんけど、
此処は一つ、突撃するしかねーっての、……見てろ……)

彼らは情報集めに休日の学院へと入って行く。そんな光景を見ている
2人組が……。

「おい、モザイオ、マジでやんのか……?」

「ああ、今夜決行さ、あのジャミルとか言う野郎、今度こそ泣かせてやるよ、
惨めな気分をとことん味わえってんだよっ!」

モザイオと青髪である。だがこの場にはパッツンデブはおらず。
やはりメンバーから解雇されてしまったのだろうか。深夜に
ジャミルを呼び出す手口、天使の像の件は、やはりモザイオが
仕組んだ罠であった。モザイオは屋上からジャミルを叩き落とし、
怪我をさせ、恐怖に怯えさせてやろうと目論んでいた。……だが、
んな事企んでも無駄なのだが。やはりまだ、あの男の事を何一つ
分かっていないのだった。

「ええ、少しだけ知っている事があるわ、例の神隠しの
件でしょ……、私が伝えられる事で良ければ……、でも、
信じる、信じないかはあなた達次第よ」

「た、頼むっ、教えてくれっ!」

「「お願いしますっ!!」」

4人組は遂に、本日用があり学院を訪れていた生徒から有力な
情報を掴めそうに。ジャミルの後に続き、他のメンバーも声を
一斉に揃え、情報の提供をお願いする。話を聞くと、女子生徒が
言うには、どうやら屋上で幽霊を見たらしき、その幽霊はじっと
女子生徒の方を見ていたらしい……。

「この学院に伝わる古い怪談話で、屋上の天使像のおでこを触ると
幽霊が出てくるって言う噂もあるのよ……、最近物騒だし、何だか
怖いわ……、やっぱり学院で行方不明になっている生徒達は皆
その幽霊に連れ去られたのかしら……」

「い~やああーーっ!!やっぱりオイラも連れて行かれちゃうーーっ!!」

「……ダウド、昼間からそんなんでどうするの……」

ダウドはアルベルトに飛び付く。アルベルトが呆れるその横で、
ジャミルは再び、今日の夜の事、……モザイオとの約束を
思い出していた。

(ネ、ジャミル、やっぱさ、アルベルト達にも夜の事、話した方が……)

「るさいっ!俺一人でいいっつったらいいんだっ!余計なお世話だっ!」

(!!なにっ、その言い方っ、スッゲーアタマくるんですケドっ!?
いいわよっ、もうアンタなんかどーなったってしんねーかんネっ!!)

「……」

サンディは怒ってそれきり黙る。モンはそんなジャミルの態度に
首を傾げた。

「アイシャ、またジャミルとサンディが何かケンカしてるモン……」

「全く、今度は何よ、あの二人にも困ったものねえ~……」

「そうだなあ~、不良グループの一人が、先生に逆らって……、次の日、
その生徒が急に消えてしまったんだよなあ~……、それから、次々と
同じ様な事件が立て続けに起こっているのさ……」

其処にもう一人、男子生徒がやって来る。すらっとしており、感じの
いい生徒である。

「まあ、君達もモザイオには近づかない方がいい、奴らは筋金入りの
不良グループだからね……」

「私が話せるのは此処までかしら……」

「ああ、色々有り難う、参考になったよ……」

「もしかして、あなた達が幽霊を捕まえてくれるの?……そんなワケ
ないわね、じゃあ、私はこれで……」

「じゃあ、僕もこれで失礼、くれぐれもモザイオには気をつけて、
幽霊は程度の低い生徒を狙って連れて行くみたいだから、モザイオ
なんかと一緒にいれば、それこそ幽霊に目を付けられてしまうかも
知れないからね……」

女子生徒も男子生徒もその場を去る。4人はもう少し更なる情報をと、
歩き回った際……。

「この学院の初代学院長のお墓に光る果実をお供えしたら、数日の
間に消えてしまっていたの、誰かが食べたのかしら、まさか、流行りの
幽霊が……?」

通りすがりの女子生徒から、4人にとって本日一番のビッグニュースを
耳にする。この学院に、なんと、女神の果実の行方の手がかりらしき情報を
手に入れる事が出来た……。

「よ、よしっ、オマエら、行くぞ、墓に直行だっ!」

「多分、私がこの間連れて行かれた墓地だと思うわ、場所は分かるから!」

「モンモン、シャアーーッ!」

「アンタらモタモタしてる暇はないわよっ!行く行くーっ!!」

さっきまでふて腐れていたサンディも興奮し、妖精モードで
飛び出して来る。だが、ダウドだけはやはり消極的……。そんな
ダウドに渇を入れる為、アルベルトとアイシャは左右からばしっと
ダウドの背中を引っぱたいた。そして、モンはおならを噛ます。

「行くよ、行きますよおーっ!……ううう~……」

そんな訳で今度は学院から墓地への移動を開始。そして辿り着いた
場所。あの時、アイシャが無理矢理、青髪とパッツンデブに
連れ込まれた墓地で間違いはなかった。

「この墓っぽいな、え~と、……生涯を……、に、やし……」

「僕が読むよ、……生涯を生徒の育成に費やし、エルシオンを
築いた教育者、初代学院長、エルシオン卿此処に眠る……、そうか、
このお墓の主が……」

墓地には他にも数体の御霊が眠っていると思われるお墓があるが、
やはり初代学院長のお墓だけは一際目立つ大きなお墓だった。
お供えした光る果実は数日で姿を消したと女子生徒は言っていた。
少なくとも、普通の生徒ならこんなお偉いさんのお墓の供え物に
間違っても手を出そうとはしないだろう。……だが、考えられる事は……。

「モザイオ達が悪さした可能性ならあるが……」

「うん、そうかも知れないね……」

「私をあの時、助けるみたいに降ってきた落雷……、もしかしたら、
このお墓の下の学院長さんの幽霊さんだったのかしら、不思議ね……」

「アイシャあーっ!やめてよおーーっ!!……モンも噛み付くの
よしてえーっ!!」

「シャアシャアーーっ!!」

「……とにかく、果実の行方は此処ではこれ以上無理だ、また
モザイオ達をとっ捕まえて話を聞く必要があるな」

ジャミルの言葉に他のメンバーも納得。特にダウドはほっと胸を
なで下ろす。取りあえず、今日は相当の情報の収穫もあった為、
寮へと戻る事にしたのだった。

「そう言えば、休日は食堂のおばさんもお休みなのね、休日は
自分達でご飯を自炊、用意したりするのね……」

「そうだね、たまにはそれぐらい、自分達でやらないと……」

食堂のロビーで寛ぐ4人。ダウドは疲れたのか、椅子に腰掛けた
まま居眠り。モンはダウドの頭を叩いて遊ぶ。いつも通りの光景。
……だが……。

「……ジャミル、どうかしたのかい?」

「え、ええ……?」

「さっきからずっと黙ったままじゃない、珍しいわね……」

アルベルトとアイシャに見つめられ、はっと我に返り、ジャミルが
慌てる。実は、今夜の事をまた只管考えていたんである。やはり
きちんと仲間達にも伝えた方がいいのか……。

(なにサ!意地はってんじゃねえわよっ!このアホっ!)

「る、るせーっ!こうなったら何がなんでも俺一人で決行だあーっ!」

「だ、だから何……!?あっ……」

「悪いけど、俺暫く部屋で寝るわ、じゃあな……、飯もいい……」

「……えええーーっ!?」

アルベルトもアイシャも更におったまげる。今日は夕ご飯も
食べないで休むと言う。アイシャはジャミ公が何処か具合が
悪いのでは無いかと心配するが……。

「大丈夫だよ、お腹が空けば起きてくるから……、慣れない事やって、
疲れちゃったのかもね……」

「そ、そうね、だといいんだけど……」

アルベルトとアイシャが心配する中、時間は過ぎて行く。……そして……。

「……やべ、マジでこんなに寝ちまった……、ああっ!?」

ジャミルがやっと目を覚ました時刻は、午後23時30分……。
あの後只管、眠り姫?の様に眠り続けていたジャミルに、
……このまま寝かせておいてあげようと、アルベルトも
ダウドもほおっておいたのだった。その結果、こうである。

「おいおい、後30分しかねえじゃねえか、急がねえと……、
おい、サンディ、サンディよう……」

(……)

ジャミルは自分の中にいるサンディに呼び掛ける。あのまま又
機嫌が悪いままなのか、それとも就寝しているのか、返事はない。

「ダメか、ま、いいや、俺、そろそろ行かねえとな……」

ジャミルはベッドから飛び降りると、一応、護身用にカルバド集落で
買っておいた新武器のヴァルキリーソードを小袋に入れ、背中に背負う。
そのままダッシュで寮を飛び出すのだった……。

「……悪いけど、やっぱ心配なのよ、アンタだけじゃ……、ぜっ、
たいいい~!何かドジ踏んでやらかすんだからネッ!」

……ベッドの下に隠れていたサンディが飛び出す。彼女は
音信不通のフリをし、既にジャミルの身体から抜け出て、
ジャミルがいなくなるのを待っていた。今夜の事をやはり
アルベルト達にも伝える為に……。

「よう、遅かったじゃねえか……、お前、アホかよ、少なくとも
約束の30分前には現場には行きなさいよって、母ちゃんに
教わらなかったか?」

急いで学院に行くと、学院入り口前には既にモザイオが。呆れた様な
態度でジャミルを見ていた……。

「うるせんだよっ!それよりも、どうすんだよ、学院もう閉まってん
だろうが!」

「フン、んな事心配しなくていいよ、……この後の事を心配しやがれ……、
ほらよ……」

モザイオは学院の扉を開ける。そしてジャミルが何か言う前に
さっさと中に入る。実は。学院が閉まる前に、既に中には青髪が
進入し、隠れていた……。そして、見回りの教師が帰宅するまで
只管待ち、鍵の仕舞ってある部屋に侵入、盗んだ鍵で扉を開けて
しまったのだった。

「……アイツ、ピッキングも出来んのか?……まさかなあ?」

「どうしたんだよ、来ないのか?やっぱり怖くなったんなら、
止めてもいいんだぜ?俺様は弱者に優しい紳士だからな……」

「!う、うるせーってんだよっ!何が紳士だっ!!たくっ!!」

ジャミ公もブリブリ怒りながら深夜の学院に侵入。……その姿を見て、
モザイオはよかれよかれと笑みを溢した。

(テメエのその威勢のいいのも今日までさ、明日からアンタは相当
恥を掻く事になるんだよ、大怪我してな、連れのお仲間さんもな……、
夜の学院に無断侵入、そして屋上から転落……、最高のアホ記事を
学院内の新聞にも掲載されるぜ……、フフフ……、テメエらは
今度こそお終いだ……)

……そして、此方は再び寮の部屋……。サンディに叩き起こされた
アルベルトとダウドが一件をサンディから聞いていた。ジャミル達
男性陣の部屋には、同じく、サンディに無理矢理起こされ、連れて
来られたアイシャとモンの姿も……。

「そうだったのか……、またジャミルの奴っ!僕らにちゃんと話も
しないで勝手な事してっ!」

「は、早く行かないとだよおーーっ!……うう、夜の学院なんて、
正直あまり気が進まないんだけど……」

「全くもう、何よ、ジャミルったらっ!また無茶して意地張って……、
絶対許さないんだからねっ!」

「ウシャシャのモンモンブーっ!!」

「ま、モザイオが何考えてるかなんて、分かんないんだケドさ、何か嫌な
予感がすんのよ、早くいったげてッ!」

サンディの言葉に3人も頷く。そして、ジャミル同じく、皆も護身用の
武器を用意し、急いで寮を飛び出し、深夜の外の中を駆けて行く……。

「あ、あの……」

「君は……」

先頭を走っていたアルベルトが足を止めた。3人の前に突然現れた人物。
パッツンデブだった。サンディは今回、ダウドの中に急いで身を隠すの
だった。

「お願いがあるんだ、い、今……、君達の部屋に行こうと思って……、
ねえ、モザイオを止めてっ!!……こ、このままじゃ……、本当に
大変な事になっちゃうよう~……」

パッツンデブは泣きながらアルベルトに縋り付いて来る。その必死な
姿を見て、これはモザイオは何かとんでもない事をやはりやらかそうと
しているのが覗える……。

「何か知っているんだね?教えてくれるかい……?」

「うう、ぼ、僕……、部屋でずっと寝たふりをしていて、
……モザイオ達が何かこそこそ話してるのを聞いてしまって、
モザイオ達が出掛けた後、僕もこっそり後を付けたら、2人は
学院の前にいたんだ、そしたら……、今夜屋上の天使像の
前から……、ジャミル君を叩き落として恥を掻かせて
やるって……、話が聞こえて……」


「モザイオ、アイツホントに来んのか?やっぱりびびって今頃寮で
ションベン漏らしてさあ、泣いてるんじゃね?」

「いや、あの野郎に限ってそれはねえだろ、何せ融通の利かない野獣
みてーな奴らしいからな、来るのには間違いねえよ……」

「そうか……、で、でも、もし、バレたらどうすんだ?」

「バッカだなあ~、お前もよう、今からんな事心配してどうすんだよ、
ま、証拠が残んねえ様に上手くやるしかねえだろ、そうだな、事前に
アイツをな、気絶させておくのさ……、なら、簡単に叩き落とせるだろ?
抵抗も出来ねえでさ……」

「なる程っ、で、でも、その方法は……?」


「何て事を、あいつら……」

「大変っ、は、早く急がなくちゃ!ジャミルが危ないわっ!!」

「……まさかジャミルが簡単に落とされるなんて事、絶対ありえないと
思うけど、で、でも、本当に何考えてんだよおーーっ!!」

「シャーモンシャーモン!……ガルルーーっ!!」

(だからアタシがあんなに言ったのに、全然話キカネーし!……バカよ、
ジャミ公はっ!)

「ぼ、僕、其処で逃げて来ちゃったから、それ以上の話は
聞けなかったけど、お願い、僕も一緒にいかせて!何も
出来ないかもしれないけど、大変な事になる前に、僕も
モザイオ達を止めたいんだ……、何かしたいんだ……、
無駄なのは分かってるけど、僕なんか……」

パッツンデブはアルベルト達に土下座してまで頼み込む。彼はもう、
これ以上モザイオ達に悪い事をして欲しくないのである。例え、
ハブられても、嫌われても。……友達と思われていなくても。
彼のそんな必死な姿に皆も何も言えなくなった……。アルベルトは
代表で、パッツンデブにそっと手を差し出す。

「……アルベルト君……」

「一緒に行こう、友達を思う君の気持ち、絶対に無駄にはさせないよ、
分からせてやろうよ、頑固者のモザイオ達にね……」

「ありがとうーっ!みんなっ、本当にありがとう……、うう~……」

泣き崩れてしまったパッツンデブをアイシャもダウドも優しく支える。
そして、アルベルトは……、いつものスリッパを懐に隠すと、黒い
笑みを浮かべた……。ワルのモザイオを成敗する気満々……、遂に
邪心腹黒モード降臨である……。

「よし、急がなきゃね、……学院に行こう!……うふふ、うふ、
う~ふふふ……♡」

zoku勇者 ドラクエⅨ編 50

zoku勇者 ドラクエⅨ編 50

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-24

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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