演技中毒者の独白
いつからか脈絡を欠いた物語の海に浸かっている
語ることの過酷さを喉に刻みつけられ
失語へと堕ちていく
わたしはどうして
どのようにして生きればいいのですか
一秒ごとにばらばらになっていく自分を抱きとめながら
覚束ない足どりでどこへ向かえばよいのですか
来歴をもたないわたしのことを人は不気味がる
そしてわたしは嘘の自分を演じるようになった
嘘の自分を語るようになった
嘘を吐きつづけているうちにそれがほんとうのわたしだと思うようになった
語りとは騙り、騙すことだ
簡単に騙されるほうが悪い
わたしは自分のことすら騙しているとも気づかずに人を見下していた
ほんとうのわたしという表象も新たな嘘によって否定されていく
何が嘘で何がほんとうか、そんなことはもはやどうでもよかった
息をするように嘘を吐く、というのは順序が違う
嘘を吐かなければ息もできなかったのだ
演技中毒者の独白