ひまわり

雨が降っているのか
晴れているのか
耳ではわからない天気だった
その人は松菱通りを北から南へ
でんでんでんと歩いていた
なぜか人々は彼を避けた
でんでんでんと迫る彼の左胸には
廉(やす)っぽい安全ピンタイプの
プラスチックの名札がつけられ
しみだらけの紙には鉛筆
六歳児のような文字で
「こころが不自由です」
と書いてあった
道行く人たちは彼を避けた
でも私は避けなかった
私はおおきく腕をひろげた
彼は目をみひらいて
驚いた、顔をした
でも 避けきれなかった
彼は私の胸へとびこんだ
私は彼を両腕で力強くだきしめた
彼は「ぐほっ」とうめいて
私の腕から逃げ出した 必死に
道にはプラスチックの名札が落ちていた
「こころが不自由です」
私はそのプラスチックの名札を拾った
そして自分の左ポケットにつけた
路傍におおきなひまわりが咲いていた

ひまわり

ひまわり

第七回浜松私の詩コンクール一般の部浜松市長賞

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-20

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