zoku勇者 ドラクエⅨ編 49

スクールカルテット・2

朝食も終わり、いよいよ4人組のこの学院での本格的な活動が
スタートとなる。昼間は他の生徒と同じ様に普通に授業を受け、
放課後に聞き込みなどを怪しまれない様、行なう。初日は自由に
クラスなどを回り、色んな授業を見て回って良いとの事。取りあえず、
まだ座って受ける授業は本格的に行なわなくても良いので、ジャミルは
ほっと一安心。

「あ~、新入生で良かったなあー!……けどよ、今日中に事件が
解決しちゃえばよう、もう授業なんか受けなくても済むのによう……」

「ジャミル、駄目だよ、そんな甘い考えじゃ……」

「そうだよお!そんなに簡単に事が終わるワケないじゃん……」

「折角入学したのにもう終わっちゃうなんて嫌よ!」

「シャアーっ!」

……と、他のお仲間達はやる気満々?何でお前らそんなに気力が
あるんだよと、ジャミ公は1人項垂れていた。早くお昼ご飯に
ならないのかしらと……。

(アハハハ!ジャミ公のバーカ!)

「……ガングロっ!うっせーぞっ!」

「取りあえず、此処のクラスの授業から見学させて貰おう、
すみませーん!」

「おいっ、アルっ!勝手にっ!」

アルベルトは目に付いたクラスへと堂々と入って行く。
ジャミ公は慌てるが、アイシャもダウドも揃って中に
入って行った。……ジャミ公はもう、早速吐き気が
来そうであり……。

「堪えろ……、分かったか?このジャミ公野郎……」

「うわーーっ!オメー何口調が変ってんだよっ、腹黒ーーっ!!
分かったからスリッパ引っ込めろっつーのっ!!」

「宜しい、さ、行こう……」

アルベルトに脅され、ジャミルも仕方なしに教室内へ……。入ると、
中にいたのは、恐らく教師であろうが、ポニーテールに派手な衣装の
イケメン男性……。アルベルトが4人組代表で目を輝かせ、教師に
話し掛けた。

「……何だお前らは……」

「こんにちは、あの、僕達、昨日この学院に入学した者ですけれど、
初日の授業は色んな所を自由に回って見学していいとの許可を
学院長から頂いていますので……」

「フン、好きにしろ、……但し、俺の授業を邪魔する様な
真似をしてみろ……」

「でさ、体育の先公のズボンがさ、下にずり落ちてさ……、履いてた
パンツの柄がよ……、ハート柄……」

「……」

「……ひゃあーーーっ!?」

教師はしゃべくっている生徒達に向け、無言でヴァーミリオン
サンズを発射する。生徒達には当てるつもりはあらず、脅しを
掛けたつもりの様だが……、それにしてもソラ恐ろしい教師である……。

「こうなるんだ、良く見ておけ、貴様らもだ、……何回言ったら
分かるんだ、俺とて貴様らの相手をしていられる程暇ではない、
わざわざマジックキングダムから出張して来てやっているんだぞ……、
学習能力のない奴らめ……」

「ひゃい……、ブ、ブルーひぇんひぇい、ごめんなひゃい……」

鬼畜教師はそう言いながら、もう一発いつでも術を発射出来る様、
準備。喋っていた生徒2人組は涙目になり、おしっこを漏らすと
そのまま大人しくなった……。

「す、凄い、これが教育のあり方なんだ……」

「……何処がだっ!たく、ポニーテールのスカシってマジで碌な
性格の奴がいねえ……」

「……」

「っと、うっかりそう思っちゃっただけでーす!あははーっ!
サイナラーーっ!!」

鬼畜教師はジャミ公には殺意丸出しで本気で術を当てるつもり
だったらしいが、ジャミ公は慌てて間一髪、術を避けると教室を
飛び出して行く。アルベルトも鬼畜教師に頭を下げ、挨拶すると
仕方なしに教室を出た……。

「……フン、知能の無い外道の糞盗人猿めが……、虫唾が走る……」

「駄目じゃないか、ジャミルはっ!!」

「んだよ、あの鬼畜を最初に怒らせたのは俺じゃねえってのっ!!」

「もういいわよ、次、回りましょう……、どんどん動かないと
時間無くなっちゃうわ!」

「はあ、ヘタレの授業ってないのかなあ~……」

……ジャミ公、アルベルト、アイシャは速攻で揃って片手を振り、
んなもん、あらへん、あらへん、あらへんわをした。

「あらへんわモン!」

(ねーってのよッ!)

「……何だよおお!モンとサンディまでっ!!」

「モン?……何だか向こうの方から楽しそうな音がするモン!」

「あっ、モンちゃんっ!駄目よっ!!」

アイシャが叫ぶがモンはダウドの頭から離れると、いきなり飛んで
行ってしまう。4人は急いでモンの後を追い掛けるのだが、モンは
とある教室の前で立ち止まり、暫く首を傾げていたが、そのまま中に
入って行ってしまった。

「……ハアハア、モンっ!待てっての、この野郎!」

「此処は音楽室みたいだよ……」

「成程、音楽室か、なら、音楽の授業をやってんだな……、……?」

「んな事言ってる場合じゃないよお!早くモンを捕まえないとっ!!」

(そーよネ、音楽室って言えばサ、本物のタイコがあるでしょ、
……デブ座布団の大好きな……)

「「大変だあーーーっ!!」」

しかし、既に遅し。中では生徒達が合唱の授業中であり、
ダウドの頭では無く、本物の本格的な太鼓を目にした
モンが感動していた……。

「すごいんだモン、本物の大きな太鼓なんだモン……、ドキドキ
なんだモン……、た、叩いてみるモン……」

「はい、では皆さん、発声練習の曲、行きますよ~、我が学院の
合唱コンクールも近いですからね、大きな声で、……声を揃え、
さんはい!」

「♪はあ~るう~の、おならは~……ち~んぽ~こ……モ~ンモン♪」

「……こらああーーーっ!!」

モンは駆け込んで来たジャミル達に捕獲され、直ぐに教室から連れて
行かれ、取りあえずどうにか事なきを得た……。

「何でしょうか、今一瞬音声が乱れた様な気がしましたが……、ま、
まあいいでしょう……」

「シャアーーっ!シャアーーっ!!」

モンは何とか捕獲したが、折角巡り会えた本物の太鼓を叩くのを
邪魔され、相当機嫌が悪くなっており、ダウドは腹癒せに頭を
囓られっぱなしである……。しかも、今回はキャンディーを
与えたぐらいでは機嫌が治りそうにない始末。

「やっぱり飼い主にどうしたって似ちゃうんだろうけど……」

「……アル、うっせえっ!モン、テメエいい加減にしろっ!!」

「……ウッシャアーーッ!!」

「しょうがないな、このままじゃ話が進まないよ、……ダウド……」

「分かったよお~……、ラリホー……」

アルベルトはダウドに目配せすると、ダウドはモンにラリホーを掛けた。
魔法は成功し、モンは一発でコロッと寝てしまった。

「ブゥ~、ブゥ~、モン……」

「良かった、モンちゃん寝てくれたみたい、ダウド、今度は私が
預かるわ……」

「うん、はい……、でも……、目を覚ました時が恐ろしいよお~……、
あっ……」

プウ~……

アイシャにモンを渡す際、モンはダウドに向かって寝屁を噛ます。
……苛ついていたダウドは漂ってきたニンニクの臭いに凄い勢いで
ジャミルの方を睨んだ……。

「……だから何で俺の方見るっ!!」

「はあ、今度は体育館の方に行ってみようか……」

「おっ、体育かっ!いーねえっ!さー、行ってみようぜっ!」

(ジャミ公もデブ座布団も、ホンット、バカ!)

頭を使わない授業、……体育会系バカのジャミ公は張り切り出す。
分かっている事とは言え、モンと言い、この飼い主と言い、毎度の
アホさにアルベルトは頭を抱えた。

「……お、おい……、モザイオ、今の見たか……?」

「ああ、間違いない、奴らは玩具じゃねえ、モノホンのモンスターを
連れてたんだ……」

「……せ、先生達に知らせた方が……」

「待てよ、なあ、奴らを泣かせてやろうかと思ったけどよ、俺、
ま~たおもしれー事、考えちまったんだよなあ~、ヘッ、俺、
天才かよ……」

「え、……えええ?」

授業をサボリ、こっそりと影から……、ジャミル達の後を
付けていた不良トリオ。当初考えていた悪さより、もっと
更なる悪巧みをリーダー格であるモザイオは考えていた……。

結局。その日の午後は眠ってしまったモンの面倒を見る為、
アイシャは先に寮へと戻り、残されたのはジャミル達野郎
3人だけになってしまった。モザイオ達は寮へと戻って
行くアイシャの姿を隠れたままじっと見つめていた。

「よし、お前らは女の方をやれ、俺は野郎共の方をシメて恥
掻かせてやるからよ……」

「ええ~、モンスターでしょ、あの女の子が連れてるの……、
何か嫌だなあ~……」

「テメエ何言ってんだっ!まだ子供の雑魚モンスターじゃねえか!
俺らにだってイザとなりゃあれぐらいどうにか出来らあ!デブ、
腰抜かしてんじゃねえよ!んじゃ、モザイオ、そっちは宜しくな!」

「ああ、奴らもこれで終わりだ、初日で学院から追い出される事
請け合いさ、ははっ!ザマアミロってんだっ!」

二手に分かれ、モザイオは体育館方面へ向かったジャミル達を、
残りの2人はアイシャの方を追った。それにしても、ヘタレも
何処にでもいる。パッツンデブは3人グループの中でヘタレ属性
担当であった。しかしこの時間帯は非常に静かである。それも
その筈、普通の生徒は今は皆授業に出ているのだから。今、
教室外をフラフラしているのはジャミル達と、サボリの
不良トリオだけである。なので、悪ガキ共には非常に悪さも
しやすかった……。

「ふう、昼間も寒いわねえ~、……あら?」

「よう、お嬢ちゃん……」

「へ、へへへ、どうも~……」

寮へと戻る為、学院の外に出たアイシャの前に、別ルートで先回り
したモザイオの連れが待ち構えていた。アイシャは嫌らしい顔を
して近づいて来る2人組に何となく嫌な物を感じていた……。

「だ、誰?あなた達……」

「お嬢ちゃん、大きい声出すなよ?で、ないと……、アンタが連れてる
そのぬいぐるみの事、皆にばらしちゃうよ……、実は本物のモンスター
なんだろ……」

「!!!」

「僕達、見ちゃったんだ~、その子がもの凄い顔して大口開けて牙
むいてるの、それ、絶対、モンスターだよねえ~?どうしてそんなの
連れていられるの?随分懐いてるねえ~、まさか君達、そのモンスター
送り込んで学院でテロ計画でも起こそうと企んでるの?その為に、
わざわざ新入生のフリしてこの学院に入り込んだの?」

「……違うわよっ!モンちゃんは私達の友達よっ!テロなんて
そんな事する訳ないじゃないのっ!!勝手に推測して酷い事
言ったら怒るわよ!!」

アイシャは前髪パッツンデブの質問攻めに焦って押され気味だった……。

「やっぱりモンスターだな、認めたな……、ふ~ん、オラっ、来いよっ!!」

「きゃっ!?……痛っ!何するのっ!!もうっ、乱暴はよしてっ!!」

「……デケえ声出すなって言ってんだよっ!いいからこっち来いっ!
俺らと一緒に遊ぼうぜ、なあ、いい事しようよ、アンタ、まだ初めて
なんだろ?色々教えてやるよ、楽しいぜえ~?」

アイシャは青髪に手首を掴まれたまま、引っ張られ何処かへ
連れて行かれる。此処でうっかり魔法でも使って暴れでも
したら益々大変な事になってしまう。暫くは堪えて、様子を
見るしかなかった。モンはまだ目を覚まさず……。

(……もう~、此処でも私ってこうなっちゃうのね……、ううう~……、
どうしよう、ジャミル……、どうしたらいいのっ!)

そして、んな処でもアイシャが又危ない目に遭おうとしているのを
知らず、ジャミル達は体育館でバスケの授業を見学していた……。
特にジャミルは試合を見学して異様に興奮気味である。

「あ~あ、下手クソだなあ~、あ!又外したし!焦りすぎだっつーの!
俺だったら即一発でダンクシュート決めてやるんだけどな!」

「……皆、異常で変なモンキーの君とは違うんだよ……、全く
うるさいんだから、大人しく見学してて……」

「そうだな、俺、異常で変なモンキーだもんな……、って、
何抜かすかっ!この腹黒ーーっ!!」

「グウグウ、オイラ寝てるんじゃないです、起きてるんです、
……グウグウ……」

「あのう、今、試合中なので……、お願いですから静かに見学していて
貰えませんか……?」

審判役の生徒がおずおずとジャミル達の処にやって来る。アルベルトは
顔を真っ赤にして慌てて謝罪し、ジャミルはふて腐れる。ダウドは……、
見学椅子で寝ていた。

(ふぁ~あ、ココでヘボジアイ見ててもつまんないしー!
どっかお散歩してこよー!)

発光体のサンディはジャミルの身体から飛び出すと、ふよふよと
何処かへ飛んで行く。学院の外に出て、何か面白そうな事はないかと
暫く探し回っていたが。

(あ?アレって……、アイシャじゃん……)

サンディは首を傾げた。モンを連れたアイシャが慌てて此方に
走って来るのである。かなり焦っている。

「オ~イ、アイシャー!」

「……サンディっ!!」

サンディはアイシャの前で妖精モードに戻る。やはりアイシャは
相当焦って困っている。

「ねえねえ、アンタ、こんなトコで何してんの?寮へ戻ったんじゃ
なかったの?」

「それがね……、き、来てくれて有り難う!とにかく学院に戻りましょ!」

アイシャはサンディと共に学院内へと駆け戻り、急いで女子トイレの
方へ……。先程、ワルに絡まれそうになり、学院圏内の墓地まで
無理矢理連れて行かれた事をサンディに話した。

「え~!?んで、その、アンタに悪さしようとしてた奴ら、お墓の
側でいきなり落雷にうたれたって?マジで?……アンタは狙われ
なかったワケ?マ、バチが当たったのかしらネ」

「ええ、さっきの2人も気絶してるだけみたいだから、
大丈夫だとは思うけど……、とにかくこのままじゃ大変だわ、
急いでジャミル達に知らせなくちゃ!」

サンディは発光体に戻り、アイシャはジャミル達がいるであろう
体育館へと猛ダッシュ。……ジャミルとアルベルトはまだ呑気に
試合を見学していた。

「……ジャミルーっ!アルーっ!大変ーーっ!!」

「ん?アイシャじゃないか……、ど、どうしたんだろう……」

「ああん?本当だ、あの野郎、又何かやらかしたんか……?」

それはお前も同じだろうと思うが。ジャミルとアルベルトは寮に
戻ったはずのアイシャが息を切らして此方に戻って来た事から、
又何か起きた事は間違いないと感じていた。

「……あの雌ブタ……、何で……、奴らまさかしくじったのか?
何やってんだよっっ!!ちっ、折角人が考えてやったおもしれー
作戦が台無しじゃねえか!!」

そして、此方はモザイオ。先にアイシャだけが戻って来たのを
見て、モザイオは地団駄を踏む。……そしてジャミル達の方を
睨むのだった。

「いいさ、こうなりゃ俺だけでも……、奴らを泣かせんのは十分だっ!」

隠れていたモザイオはブレザーのポケットに隠していた
カッターナイフを取り出す。そして、アイシャの背後に
そっと近寄っていった……。アイシャに抱かれ、眠っている
モンからじっと目線を反らさず……。

「……何してんだよ、お前……」

「!?っ、てっ、テメエ……」

だが、モザイオの暴挙にいち早く気づいたジャミルが素早く
モザイオの手首を掴んだ。細身とは思えない力でジャミルは
モザイオの手首にそのまま更に力を入れねじ伏せる。これには
モザイオもびっくりし、手が痛みで緩んでしまい、カッターナイフを
下に落とした。

「え、ええ?これ、どう言う事……?」

「アイシャ、平気か!?怪我してねえか!?」

「うん、私は大丈夫だけど……」

アイシャの側にジャミル達男性陣も慌てて駆け寄って来る。
アイシャと言うよりは、多分、モンを狙ってモザイオが
近づいて来ていたのだろうと言う事に、ジャミルは
直ぐに気づいたのだった。しかし、掴まれた手首を摩りながら、
モザイオは4人組を睨みつつ、冷たく不適な笑みを浮かべた。
体育の授業中だった生徒達も騒ぎに気づいてオロオロし出し、
バスケの試合を一旦中断、皆ざわざわ集まって来た……。

「丁度いいや、おい、オマエら聞けよ、その女が抱いてるのは
モンスターだぜ……、正真正銘のよ……」

「えええ……?」

「!!」

アイシャは慌ててモンを庇うが……、だが、モザイオのチクリ発言で、
生徒達の視線は一斉にジャミル達の方に釘付けになる……。

「ちがうの、ちがうの……、この子は……」

「何が違うんだよ、オレ、ちゃ~んと見てたんだぜ?このモンスター
野郎がよ、このオールバックの頭に噛み付いて食おうとしてたのをよ!!」

(……なんか、スゲー事になってきたわネ……、アンタら、
ちゃんと上手く切り抜けなさいよ……)

「だから違うよお~っ!モンは悪い事はしたりしてないよ、
噛み付くのはコミュみたいな物で、オイラ達にとっては
いつもの事で、つまり、日常で……、あうう~っ!う、上手く
説明出来ないーーっ!!助けてえーっ!ジャミルううーーっ!!」

「……テメエ、やめろよっ!!」

ジャミルはダウドを制し、再びモザイオの前に出る。だが、モザイオは
平然としたまま。

「あ~ん?何がだよ、テメエら、そのモンスター使って学院へ
テロ攻撃を企んでたんじゃねえのか?……優等生のフリして、
学院長騙してちゃっかり入学したんじゃねえの……」

「何だと……?」

「……あなたまでそんな事言うのっ!?ひ、酷いわ……」

「……君は確か……、夕べ僕らの部屋にいた……、ねえ、言葉を
取り消してくれないか、僕達はちゃんと、学院長の許可を経て、
この学院に入学したんだよ……」

モザイオの表情が変る。厄介なのがしゃしゃり出てきたと……。
モザイオは特に4人組の中でも優等生系のアルベルトの存在が
やはり一番気に食わず、アルベルトから視線を反らすと強く
舌打ちをした。

「じゃあさ、説明してみろよ、そのモンスターの事をよ、ちゃんと
分かる様に説明しろよ……」

「それは私から説明しましょう……」

「……学院長……」

だが、其処に救世主現る。モザイオは慌てて学院長に、アイシャが
抱いているモンの事をピックアップして必死に話す。

「学院長、見てくれよ、こいつらモンスターを連れてんだぜ!
凶悪なモンスターをさ!今すぐこいつら、警備兵に突き出して
叩き出した方がいいんじゃね!?あいつらこの学院を乗っ取る
気だぜ!?」

「……あ、あいつらこいつらって、マジでウゼー奴だなっ!」

「ジャミル、……いいからっ!」

アルベルトは慌ててジャミルを引っ張る。学院長は静かに
モザイオへと近寄り、怪訝な表情をした。

「モザイオ、黙りなさい、第一、お前は何故今此処にいるんだ?
……今は別の授業中では無いのか?又、授業をサボって抜け出し
おったな……、こんな調子でお前の今期のあの最低な成績は
本当にどう覆す気だ……?」

「!そ、それは……、くっ……」

流石学院長である。4人組を陥れようとしたモザイオの企みは
早くも崩れ落ちそうだった。モザイオは逆に辱めを受ける羽目に
なる……。

「皆も聞きなさい、ジャミルさん達は、モンスター使いの職業の
上級の資格を持っておる、彼らはモンスターを手名付ける事など、
容易いのだ、安心しなさい……、だが、私の説明不足であったな、
済まなかったな……」

「……へ?お、俺ら……?イテっ!」

「コホン……、ジャミル……」

アルベルトは慌てて咳払いすると、ジャミルを肘で突き、目で
合図する。折角学院長が庇ってくれたのである。皆に信じて貰う
チャンスを逃したくなかった。

「そ、そうか……、成程……」

「確かに……、じゃ、なきゃあんなに大人しく眠ってないよな……」

「皆さん……、ありがとう……」

アイシャはモンを抱き締めながら涙目になった。学院長のお陰で
モンの誤解は解け、どうにかこの場を切り抜けられそうだった。だが、
面白くないのはモザイオである。

「さあ、皆も授業を続けなさい、中断させて済まなかったな、
……モザイオ、お前は又暫く仕置き部屋の方に入る様……」

「……チ、分かったよっ!……おい、テメエ、このままじゃ
済まさねえぞ、覚えてろよ……」

モザイオはその場を去るが、去り際に小声で呟いた言葉は
ジャミルに向かって発した物だった……。そして、その日の
授業終了後、4人組は揃って学院長室へ呼ばれる羽目になった……。

「全く、今回はこれで済みましたが、今後はどうかお気を付け
下さいよ……」

「へえ~い……」

「本当に……、お騒がせしまして申し訳ありません……」

「ごめんなさあ~い……」

「すみませんでした……、ほら、モンちゃんも謝るの、……ほらっ!」

「ブ~モン!」

ぷ~う……

「……モンちゃんっ!!あっ、ほ、本当にすみません……」

モンは反省の色無し。アイシャの手から逃れると、おならを一発、
いつも通りのダウドの頭の上へと、定位置に避難した。

「どうやら、本当にそのモンスターはあなた方のお仲間の様ですな、
まあ、いいでしょう、先程も言いました様に、今後は気を付けて
お過ごし下さいよ、この学院にはあの、モザイオの様な落ちこぼれの
不良生徒もゴロゴロおります故、何せあなた方には無事に誘拐事件を
解決して貰うまで、此処で頑張って頂かないと……、ですから……」

4人組は学院長に挨拶すると部屋を後にする。授業初日から波瀾万丈で
あった……。気がつくと、時刻はもう18時半……、また夕食を食べ損ない、
ジャミ公は涙目になるのだった。

結局。あれから数日。ジャミル達はモザイオの企みとは裏腹に、
返って別の意味で注目を浴び、学院中の沢山の生徒達と交流を
保てる様に。モンもぬいぐるみではなく、モンスターとして、
堂々と学院でも行動出来る様になった。……皮肉な事に、
こうなったのはモザイオのお陰でもあった。

「何だか私、複雑なのよね……」

「アイシャ、あんまり色々考えんじゃねーっての、そりゃ俺だって、
何となく……」

「……」

4人は顔を見合わせる。モザイオはあの後、いつもの2人組とも
余り行動しなくなり、独りでいる事が多くなった姿を見掛け、
孤立してしまっている様な状態だった。

「アイシャちゃん、モンちゃん貸してくれる?」

「え?あ、いいよ、ほらモンちゃん、お誘いだよ、遊びに
行ってらっしゃい」

「モン~、は~い、行って来まーす、モンモン!」

「キャー!モンちゃん可愛い~っ!」

「お腹たぷたぷ、ふよふよーっ!ぶよぶよーっ!」

「こっち向いてーっ!メタボちゃーん!はい、写メ取るよーっ!」

「シャアーーっ!」

「キャー!また面白い顔ーっ!キャー!」

(ったくっ、調子に乗るんじゃねーってのよ、デブ座布団はっ!)

「ははは、さあ、僕らも食事が済んだら寮で休ませて貰わなくちゃね……」

「でも、今日もあんまりこれと言って大した情報は得られなかったねえ~」

「……」

夕食後。今日も女子生徒達がモンを連れに来る。この処、生徒達は
一日の授業が終わった後、モンと一緒に戯れるのが日課、癒やしに
なっていた。モンの変なホラーカオス顔にも動じず、返って
喜ばれている始末。

「何かさ、アイツ、あんまり根は悪い奴に思えねえんだよな……」

「モザイオの事かい……?」

「なんでさっ!ジャミルはちょっとそう言うとこ、甘過ぎだよお!
アイツはモンに斬り掛かろうとしてたんだよお!!何が悪くないの
さあーーっ!!アイシャだって危なかったんだよっ!!」

「……ダウドっ、落ち着きなさいよっ、皆が見てるわよっ!それに、
私は大丈夫だったんだから……」

ダウドは興奮し、身を乗り出し、テーブルをバシバシ叩いて抗議。
だが、最初険悪だった、ワルのニードとも打ち解けたジャミルは、
やはりモザイオが何か本当は心で訴えているのでは無いかと、
そんな気がしてならなかった……。

「モウッ、オイラ先に部屋に行って休ませて貰いますよお!
ぷんぷん!」

ダウドは食器を片付けた後、2階のルームへと駆け上がって行った。
今回、ヘタレは異様にブチ切れていた。よっぽどモザイオがモンに
しようとしていた事が許せなかったのか……。

「じゃあ、僕も先に2階へ行くね、君達も早く休んだ方がいいよ……」

続いてアルベルトも2階へ。テーブルにはジャミルとアイシャ、
2人だけになった。

「……アイシャ、俺ってさ、やっぱり甘いのかな……」

「ううん、其処がジャミルのいい処だもん、私は好きだよ……」

「……ヘッ!?え、ええ……、あう……」

「私もお部屋に戻るね、じゃ、じゃあねっ!宿題もちゃんと
やりなさいよっ!」

アイシャもいなくなり、等々ジャミルだけになった。アイシャの
言葉に困ったジャミルは、顔を赤くし、気がついたら、デザートの
ホットケーキにメープルシロップを大量に掛けている始末……。

「やっぱり俺、甘過ぎだな……、とほほのほ~……」

(もうアンタ、完全にトーニョービョー、待ったなしってカンジ!?)

「……うるせーよガングロっ!……う、うめえ……」

ジャミ公は中のサンディに怒りながらも激甘ホットケーキに
フォークを刺し、口に入れた。相当甘過ぎだが、それでも
美味しくて、涙が出た……。

「……」

「よう、モザイオ、此処にいたんか……、この頃どうしたんだよ、
マジで……、移動授業も殆ど1人で先に行っちまうし……」

「フン、関係ねえよ……」

夜。一方のモザイオは寮に戻らず、滅多に誰もあまり来ない、
学院圏内外にある、お気に入りの片隅の場所で1人、寛いでいた。
其処にいつもの2人もやって来る。

「それでさ、よう、あの新入生共だけどさ……」

「……止めろよ!今は奴らの話はすんなってんだよっ!
……俺もまた、作戦を練ってんだよ、今度こそ、絶対奴らを
痛てェ目に遭わせて恥掻かせてやるっての!クソ、あんの……
クソチビ!」

モザイオは自分の拳と拳をぶつける。最初のターゲットは
アルベルトであったが……、段々と逆恨みを今度は
ジャミルの方に向ける様になってしまっていた。

「ねえ、こんな事、あんまり良くないんじゃないかなあ~……」

「何だと……?テメエ裏切んのかよっ!!」

「……お前っ!何ふざけてんだっ!!」

パッツンデブはモザイオと青髪に怒鳴られ、一瞬身を縮めるが、
そのまま続けて喋り出した。モザイオ達と4人組は同じクラスに
なり、数日間、同じ授業時間を過ごしていた。年齢関係なく、いつも
一緒にいた方がいいでしょうねと言う事で、学院長の気遣いにより、
皆揃って同じクラスに4人共突っ込まれた。

「だってさ、あの、赤毛の子、アイシャちゃん……、あんなに僕達、
酷い事したのに、授業の時に消しゴム、寮に忘れて困ってたらさ、
自分の分を割って、どうぞ使ってって、僕に半分くれたんだ、
アルベルトも……、分からない処は丁寧に勉強教えてくれるし、
話してみると、楽しいよ……、もしかして、あの時の落雷は……、
バチが当たっ……、ううっ!」

「テメエも此処で今シメられてえのか?……ええっ!?」

青髪はパッツンデブの胸ぐらを引っ掴んで持ち上げる。だが、
それをモザイオが止めたのだった……。

「よせ、又先公が飛んで来るぞ……、俺も今はあまり動きたくねえんだ、
この間の事で苛々してるしよ……、ま、所詮、テメエは知恵のねえデブ
だったっつー事だ、もうお前は金輪際、俺らと係わるな、役に
立たねえクズデブが……」

「そんな……、モザイオ、ま、待って……、あうっ!?」

モザイオはパッツンデブに向かって唾を飛ばすとそのまま振り返らず、
何処かへ歩いて行く。その後を青髪が追い掛けて行き、パッツンデブは
1人、その場に取り残された。

「……モザイオ、酷いよ……」

翌朝。今日も本日の授業がスタート。鐘が鳴り、生徒達は寮から
学院へと移動する。4人組も……。

「ああ~、早く事件を解決しないと……、俺、身体が溶けちまうよう~……」

「何言ってんのっ!バカっ!!」

アルベルトに注意されるジャミ公。昨日、物理のテストでジャミ公は
見事に6点を取り、更にネームを用紙に書き忘れた為、-点で0点を
取った。本当にバカである。

(んでもって、今日、放課後追試なのよネー!)

「ガングロっ!うるさいっ!ああ~、ま、また夕飯間に合うのかなあ~……」

「全く、心配する処が違うよお~……」

「ヘタレもうっせーっ!……あああーーっ!今日は生姜焼き
なのにィーーっ!!」

「本当にもう……、ジャミルったら……、あら?」

アイシャが見掛けたのは、モザイオとも青髪とも一緒におらず、
寂しそうにとぼとぼと、1人で学院に向かうパッツンデブの
姿だった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 49

zoku勇者 ドラクエⅨ編 49

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-18

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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