「金鱗演説」共和国三百七十八年の戦役におけるアルベルタ・アルベルタ・タイラントの演説
演説の背景と本文
背景
メサイアノポリスに外遊中のベル王女誘拐未遂事件から端を発した共和国三百七十八年フォルティナ戦役。共和国第七軍団五万は賠償の回答を待たずにフォルティナ王国に侵攻。首都を占領し「犬の髄まですする」程の徹底的な略奪で賠償を執行した。
帝国軍が介入の動きを見せると、ベルは同盟国のバサラビア大公国に泣きつき、フォルティナ王の強制退位と新王の戴冠を条件にバサラビア大公主ミルカの援軍を引き出すと。バサラビア軍と共和国第十三軍団をフォルティナに据え置き、自らは第七軍団とともに消えた。
帝国軍が三個軍団十五万を動員し、フォルティナでの決戦に挑んでいるとき。ベルは別の中立国を侵犯経由し、がら空きの帝国領アイリスを襲撃。「花の都を炎の都にする」ほどの兵站地破壊を行う。戦利品を満載し帝国・フォルティナ間の国境まで引き返した第七軍団に、ベルは三度目の演説を行った。
本文
共和国で最も猛き、竜王に忠実な五万のドラゴンのみなさん!御機嫌よう!
(御機嫌よう!殿下!の唱和)
私はメサイアノポリスを旅発つ時に皆さんに約束しましたよね。替えの軍足のうち一本を、バサラビア米の代わりにフォルティナの銀貨で満たしてあげる、って。
私はフォルティナを発つ時に、もう一度皆さんに約束しましたよね。帝国に行くなら、もう一本を帝国の銀貨に変えてあげる、って。
今。みなさんの背嚢の中にはその証拠があるに違いありません。勝利の証として軍足二本分の銀貨があって。フォルティナもアイリスもからっぽです。
私はもう一度約束します。ポートジャーニー(新大陸に向かう共和国旧大陸側の母港)に到達したら。背嚢の中の軍足二本の銀貨にもう一本分を上乗せしてみなさんにお支払いします。
(将兵がざわめく。ベルは咳払いをする)
それだけじゃないわ。明日からは帝国兵の首ひとつを一オンスの金貨で買ってあげる。
(さらに騒然となる)
気前がいい司令官だと思うでしょう? 私には勝利が足りないの!
今。私の目の前には十五万の帝国軍がいて、ミルカ(バサラビア公)が負けてるのよ。
偉そうにティーポットを送って「公主殿はお茶でもしているがよろしかろう?」なんて
言った結果がこの有様よ!
私、貰ったポットを叩き割って送り返しちゃった。(軍団の将兵、笑う)
みなさん!ミルカの目の前で帝国軍を殲滅しましょう! 軍団一人につき金貨三枚!
こんなに美味しい話。今日を逃したら二度とないわ。お父様はしまり屋だから、新大陸に帰る前に清算しちゃう。私のものは私のものに、あなたのものはあなたのものに!
そうそう。アイリス公の首を取ったら、アルベルタ銀行の役員にだってしてあげるわ!
(もう一度咳払いをする。手を二回叩いて将兵を静める)
さて、お仕事をしましょう!
第七軍団長として、竜王の代理人たる竜宮公主として命じます。背嚢を投棄して可能な限り速やかに、百マイル先の敵を討て!私を破産させてみなさいな!
「金鱗演説」共和国三百七十八年の戦役におけるアルベルタ・アルベルタ・タイラントの演説