zoku勇者 ドラクエⅨ編 48
スクールカルテット・1
ニード、ウォルロ村の皆に再びの別れを告げて数日。ジャミル達
4人組は船を止め、船室でこれからの事を話し合う会議に入っていた。
「え~と、オホン、野郎共、んじゃ話に入るぞ、いいか!?」
「……私、野郎じゃないわよう!」
「うるせーなっ、細かい事はいいんだっつーのっ!」
「……良くないわよう!大問題じゃないのっ!!」
「えと、あのさ、ジャミル、少しいい?……服装が……、
zokuダチの時のユル私服の恰好スタイルになったままだよ……」
「え?あ、ああーーっ!畜生、あっちゃこっちゃ派遣させるから
だっつーのっ!馬鹿作者っ!もう、何処行ったらいいか訳分かんなく
なってきたしーっ!」
ジャミルは慌てて着替えに引っ込んで行った。それを見ていた
アルベルトはいつもの如く大きな溜息を付いた。
「はあ、大分慌ててたみたいだね……、ご苦労様です……」
「私だって大変なのよう!」
「ふんふん、あ~、えんどう豆スナックおいしいなあ~!」
「ジャミルのジャンボフランクフルトちんちんちーんぽこモン!」
「……モンちゃんっ!また下ネタ太鼓叩いてる!めっっ!!」
モンのダウドの頭叩きは、何時の間にか、上記の様に命名されて
しまっていた。
「モン、ジャミルのは大きくないってば……、ポークビッツだよお……」
「……ダウドもっ!何言ってるのっ!!」
「あ、そうだったモン……」
ダウドとモンもいつも通り。マイペースでゆるい時間を楽しんでいた。
直後、着替えから戻って来たジャミ公に、モンとダウドは揃ってゲンコツを
食らう。全くもう、これじゃ会議にもなりゃしないよと、アルベルトは
眉間に皺を寄せた。
「でもサ、でもサ、まさかアタシもあんたら、ここまでやるとか思って
なかったのよ~!女神のカジツ、6コも集めちゃうなんてサ、残りあと
一コじゃん!も~、ここまできたらやるしかナイナイッ!」
「何だよ、ガングロ、たまに外に出て来たと思ったら、オメーはよ……」
「いいのっ!カワイイサンディちゃんは滅多におおっぴらに外に出ないのっ!
特に今、この世界、紫外線がチョ~強いんだから!オハダに悪いのッ!」
「はあ、さいですか……」
サンディは一応……、ジャミル達を褒めるつもりで出て来たのだが、
彼女の事なのでどうしても茶化している様にしか見えなかったんである。
「処でジャミル、会議の内容って何だい?早く始めようよ……」
「うん、アルさあ、それなんだけどな、何か今日は面倒くさく
なっちまってさ、明日に……」
「……今日の夕ご飯はアイシャ特製のスタミナハンバーグだったね、確か……」
「えへ♡」
「……うわっ!す、少しでも飯を遅らせる為、ちゃんと今から会議だ会議!」
ジャミルは慌てて物言い直し、会議を今度こそ始めようとする。この間、
アイシャが発挑戦で夕飯に作ったハンバーグは肉が全部生焼けだった。
だが、肉食のモンだけは生焼けだろうが何だろうがカオス顔で、
おいし~!おいし~んだモン!と、喜んで食べた為、また調子に
乗ってクッキングしようとしていた。
「えーとだな、その……うわっ!?」
「……ふ、船がああ~!揺れたああーーっ!!」
「又、モンスターだっ!」
甲板の方で凄い音がし、船体が揺れた。アルベルトの言う通り、
モンスターが船内に乱入して来たのだった。こうして、会議は
瞬く間に中断となり、4人は腰を上げた。
「仕方ねえ、ま、どうせいつものオーシャンクロー軍団だと
思うけどな、行くぞっ!!」
「頑張ってねえーっ!アタシはまた失礼しまーす!」
サンディはさっさと発光体になり、ジャミルの中へと消える。ダウドは
一度、サンディにどうやったら発光体になれるのか尋ねた処、サンディに
大激怒されたんである。……それはおいといて、4人とモンは急いで
甲板に向かったのだが……。
「うっ、な、何だよ、これっ!?」
「……吹雪だ、まさか……」
「ゆ、雪降ってるよおーーっ!!」
「敵も何だかいつもと違うわっ!!」
何時の間にか、辺りは雪が舞い散る事態になっており、猛吹雪であった。
おまけに、現れた敵はザラキを使ってくる嫌らしい敵、ブリザード軍団
だったのだった。しかも、実際のⅨのゲーム本編には奴ら、今回出ないし。
「……うっそーっ!聞いてないよおーっ!!」
「ダウド、戦うしかないよっ!!アイシャ、魔法の方をお願い
出来るかい?」
「ええ、任せてっ!行くわよーーっ!メラミーーっ!!」
アイシャは覚えたばかりの炎系の上級魔法、メラミをブリザードに
ぶつける。単体相手専門魔法で、消費MPも馬鹿にならないが、氷系の
敵には効果覿面魔法だった。
「モンもやるモン!……サラミーーっ!!」
「……おいっ、馬鹿モンーーっ!!」
ジャミルがふざけるモンを捕まえようとするが、モンはサラミ1本を
持ってブリザードに突っ込んで行き、1匹をブン殴って仕留めたので
ある。……4人はあいた口が塞がらなくなり、ぽかーんと……。
「してる場合じゃないわーっ!もうどんどん行っちゃうわよーっ!!」
「……アイシャ、気を付けるんだっ!」
「分かってるわっ!……きゃ!?」
アルベルトが言う側から、怒りのブリザードがザラキを放ち、食らった
アイシャは倒れる。怒らせたのは多分、モンが悪い。ジャミルも怒りで
テンションゲージが上がるが、技がバトルでは役に立たない……。
「アイシャ、アイシャ……、しっかりするモン……」
「畜生ーーっ!ふざけやがってっ!ダウド、すぐアイシャの蘇生をっ!」
「分かったよお!でも、こんな時、ザオリクが使えれば……、と、
思うんだけど……、ザオラルじゃ効果が博打だし……、モタモタして
らんないし、う、うわあっ!!」
ブリザード達は固まると、吹雪を更に強くする。……ジャミル達は
完全に視界が悪くなって何も見えず、危機に追い込まれた……。
「おい、みんな、いるんだろっ!アル、ダウドっ、モンーっ!
返事しろーっ!!ちくしょ、何も……見えねえ……、冗談じゃねえぞ、
こんな処で凍死なんて絶対嫌だ……、アイシャ……」
寒さで凍え、ジャミルはその場に倒れ気を失う。……直前に
ジャミルが聞いたのはサンディが自分の名前を大声で叱咤し、
必死で呼んでいる声だった。それから……。
……じょうぶ、ですか?
「……丈夫?」
大丈夫……、ですか……?
「……?う、うわっ!?」
「おお、もう大丈夫の様ですね、良かった良かった……」
「あれ?此処は?俺達、確か船で戦ってて、それで……」
ジャミルは首を傾げる。気がつくと自分は見知らぬ部屋のベッドの上で
寝かされており、側には老人が付き添っていた。
「ご無事で本当に何よりでした、あなた方、海岸の側で倒れていたんですよ、
もう少し発見が遅ければ完全に凍死なさっていた処でしたよ、何せこの大陸は
泣く子も黙る、雪と氷の雪原大陸ですから……、さて、コホン……」
老人は咳払いをすると、チラチラとジャミルの方を見る。何か言いたい事が
おありの様である。
「あのさ、助けて貰ってありがてーんだけど、此処何処だい?後さ、俺の
連れの仲間は何処に……?」
「大丈夫、ご心配なさらず、あなた方のお仲間もちゃんと無事に
保護してあります、今は別のお部屋で休んで貰っております、ご安心
なされよ、コホ、此処はありとあらゆる生徒を徹底的にエリートに
教育する名門校、エルシオン学院であります……」
「そうか、アイシャも何とかザオラル間に合ってくれたか……、って、
が、学院……?」
「作用であります……、あっ、私はこの学院の学院長を務めている者です……」
凍死する処で間一髪助けられたジャミルの顔がまた凍り付く。
学院なんて……。何せジャミルは大のお勉強嫌い。アルベルトと
違って吐き気を催す程、本が大嫌い。……とんでもねえ処に世話に
なっちまったと……。
「処で、あなたはお見受けした処、探偵の様ですが……」
「はい……?」
爺さん……、学院長は又突拍子もない事を確認してくる。んな訳
ねえだろうがようとジャミルは言いそうになったが、学院長は
ジャミルに喋る隙を入れさせない。
「誤魔化してもダメです、あなた方はこの学院に起きている危機を
救う為、この大陸にいらっしゃってくれたのでしょう、そして、遭難
しかけたと……、いやはや、私があなた達を救ったのも雅に守護天使様の
お導き!……今度はあなた達にお願いしたい!」
また困った事になったとジャミルは思う。何処をどう見たら俺が
探偵に見えるんだいと何とか口を挟もうとしたが、学院長はまた
ベラベラ喋り出した。
「実は、この間から……、我が学院の生徒達が突然と姿を消してしまうと
言う怪現象が起こっているのです、もうこれで2人目です、生徒達は未だ
発見されていません、探偵さん、この謎を解き明かし、行方不明の生徒達を
救ってくれませんか……?これ以上こんな事が起きれば我が学院の評判は
下落するばかりであります……、是非、ウチの生徒になって、学院の調査を……」
「はいいーーっ!?」
更に弱った事になったとジャミルは……。確かに大変な事態の
様だが、だとすると、暫くは此処に世話にならなければならない。
だが、ジャミルは耐えられない。俺、お勉強なんてとてもとても
耐えられない。……嫌々いやあーーっ!で、心の中で一人で葛藤
していた。
(ちょっと、ジャミ公っ!アンタそれでも守護天使なのっ!?あの
じーさん困ってんじゃん!助けて貰ったんだからお返しすんのよッ!)
「何だ、ガングロ、無事だったんか、でもなあ~、俺、学院なんかいたら
それこそ毎日酔っちまうよ……」
(無事だったとは何サッ!……ま、アンタに選択権はないワケ、特に
アルベルトはサ、も~、喜んじゃうと思うケド……)
「……うええーーっ!」
確かにそう。アルベルトとジャミルはやる事なす事が対で、性格も
まるで逆。アホと糞真面なのであるからして。恩返し&人助け、
+学院生活……、何て言ったらそれこそ小躍りして喜ぶだろうが。
だが、ジャミ公はどうしても嫌だった。
???:あっ、学院長、その人が新しく入学する人ですかあ~?
突然、堂々と部屋にスナック菓子を囓りながら入って来たぽっちゃり
気味の男子学生。ぴちぴちしたブレザー制服からは、肉がはみ出、
ズボンのチャックは今にもはち切れそうだった。※モブ生徒、仮名・
デブとしておく。
「こら、勝手に入って来ては駄目だろう、授業はどうした?早く教室に
戻りなさい……」
「でも、学院長、新しい生徒が来るってもう、学院中持ちきりだよ~!」
……もうそんなになっとるんかいと、ジャミ公……。しかも、まだ俺
承諾してねーし!まずい、まずい、このままだと本当に学院に世話に
なる羽目になるかも知れない。それだけは何とか阻止したいと……。
(頑固モン!)
「うるさいっ!俺だってどうしたって嫌なモンは嫌なんだっ!!」
「誰と話しておられるので……?」
「い、いや、見えない悪魔と……、は、ははは……」
(バカッ!!)
「それは凄い!やはり只者ではない!私の目に間違いは無かった!
こらこら、お前は良い、早く教室に戻れと言っておるだろう……」
「はあ~い、あっ、新入生さん、ここの購買、焼きそばパンが凄い
人気なんだよー!毎日競争率激しくてさー!スペシャルカツサンドも
大人気なんだよー!じゅるるる~、毎日の学食もスゲー楽しみなんだー!
この間は何と!ステーキが出てさー!お陰でオレ、お腹こんなに
なっちゃったんだ、君も食べ過ぎに気を付けてねー!じゃあー!」
「やれやれ、全く……、して、話を戻しますが……」
デブは巨体をゆさゆさ、部屋を出て行く。それを見ていたジャミ公は
もう目の色が変っていた。先程のデブからのグルメ情報を受け……。
「サンディ、俺、気が変った……、暫く此処に居座る……、困ってる
奴らがいる限り俺ら節介部隊はほおっておけない、……にへええ~……」
(ちょ、アンタっ!レイプ目で何涎垂らしてんのっ!……まさか、
さっきの食べ物の話聞いて、一変したんじゃナイでしょうネ……)
「少しぐらい本に酔っても大丈夫だ……、確信した、焼きそばパン、
スペシャルカツサンド、此処にいる間、毎日の様に食える……、うへ……、
ステーキ……、流石、名門学院の飯、格が違う……」
(あ、あっきれたーーっ!前からアホだと分かってたけど、これホドの
アホとは……、ウ~ン……、これ、もうアホを超えたドアホに格上げ
だね……、でも、引き受ける気になったんだからヨシとしますか……、
アルベルトの気持ちも分かるわあ~……)
「うるさいっ!学院長さん、俺、さっきの話だけど、引き受けるよ、
困った時はお互い様だからな……」
「おお!引き受けて下さいますか!有り難い!有り難うございます!では、
これをどうぞ、当学院の制服と、それから前金の2000ゴールドです、
お仲間様の制服もご用意してございます、あなた方が此方に入学する事は
生徒達には伝えてありますが、静かに生活出来ます様、ご身分の事は控えて
ありますので……」
「分かった、んじゃあ、この制服、ダチにも渡して来る!」
「お願いいたします、お仲間様はこの部屋の隣の部屋で休んで
いらっしゃる筈です、お着替えが住みましたら又此方へ一旦
お戻り下さい、皆様がお休みになる学生寮へご案内致します」
ジャミルは頷き、学院の制服を受け取ると仲間達がいる隣の
部屋へと向かう。アルベルト達もジャミルの無事を確認し、
喜んでくれた。アイシャももうすっかり元気になっていた。
ジャミルは先程、学院長から受けた話を仲間達にも伝える。
「アイシャ、学院て何するのモン?」
「そうね、取りあえず、此処にお世話になっていれば段々モンちゃんにも
分かるわよ、沢山お友達を作ったり、色んな事したり、私も楽しみー!」
「♪モンーーっ!」
「そうか、この学院でも大変な事が起きているんだね……、それは
ほおっておけないね、よし、此処で暫くお世話になろうか……でも、
ジャミル、君、良く承諾したね、だって此処、学院だよ、平気なのかい……?」
「……困ってる奴らがいる限り、俺らは動かねえワケにいかねえだろ、
な~に、大丈夫さ、授業と本ぐらい耐えて……」
(……購買のパンであっさり釣られたアホよッ!)
「は、はあ?」
「こ、こらっ!ガングロっ!余計な事言うなっつーの!」
「ふう~ん、オイラ大体理解出来た、要するに、あっさりと購買の
パンに釣られて買収された様な感じ……?」
アルベルトは首を傾げるが、ダウドにはすぐ分かった様である。
「オメーも黙ってろっ!バカダウドっ!……あ」
「慌ててるって事は、やっぱり図星なんだあ~……」
「成程……、でなきゃこのアホが学院に留まるのを承諾するワケないか、
取りあえず、その嫌らしさもたまには役に立つと言う事……」
「何が嫌らしさだっ!このドスデス腹黒野郎ーーっ!!」
「……うるさいっ!バカ、アホ、おまけに食い意地の張った
バカジャミルっ!!」
こうして、久々にアホvs腹黒の毒舌バトルが始まる。大声に釣られて、
生徒達が部屋まで覗き見に集まってくる始末……。かくして、4人の
波瀾万丈の学生生活が幕を開けるのだった……。
「制服なんて初めて~、どうかな?似合ってるかな?」
「アイシャ、カワイイんだモン!」
(ふん、まーまーネ、このサンディちゃんが着られればも~、
ヤロー共はアタシに釘付けなのに!)
アイシャは渡されたエルシオン学院の制服を早速試着。女子制服は
赤いブレザーにミニスカート。活発なアイシャにとても良く似合っていた。
「ほら、ジャミルも、何か言ってあげなよ……」
「……は?アルっ!何言ってんだオメー!……まるで幼稚園児みてー!
フ、フン!」
「いーもんだっ、別にジャミルに何も言って欲しくないもん!べーだっ!」
いつも通り。どうしても素直になれないツンデレジャミ公。……しかし、
ツンしながらも彼の視線はアイシャのミニスカートに……。
「はあ、相変わらず、素直じゃないねえ~、ジャミルは……」
「バカダウドうるせーっ!に、しても、オメーの制服姿つーのも
微妙だなあ~……」
「ほっといてよお!ジャミルだって変だよっ!」
男性陣は赤いブレザー上着に黒いズボンスタイル。地味なダウドは
あれだが、アルベルトの方は既に、学院中の女子生徒が釘付け、
きゃあきゃあと話題のターゲットになっていた。
「ま、いいや、お前らも学院長の処行こうぜ、挨拶しなきゃな……」
4人組は一同、学院長が待っている隣の部屋へと移動する。モンも
いつも通り定位置のダウドの頭の上に飛び乗った。モンはアイシャに、
くれぐれも学院内では太鼓叩いちゃ駄目だからねと厳重注意を受けていた。
「見て見てっ、あの方よ、金髪の王子様みたいなお方!噂の新入生!」
「素敵ねえ~!ワタシ達のクラスに入って来てくれないかしらー!」
「んやー、オラ、あそこがもう、ひっこひっこ動いちゃうダス~!ぽっ♡
こ、今度出来たてのぬか漬けプレゼントしよっがね……、げへへ♡」
……噂を聞きつけ、女子達がアルベルトを拝もうと授業そっちのけで
教室を飛び出し、大変な事になっていたのである。
「おい、アル、オメー、スゲーのにも目、付けられてるぞ……」
「いいんだよ……、僕も色んな人達と仲良くなりたいしね……、
だからいいんだ……」
そう言ったアルベルトの顔は何となく引き攣っていた。おやおや、モテる男も
ホントに大変なのねえ~んと、ジャミ公は心で茶化し何となく笑ってみた。
「ちぇっ、いつもいつもアルばっかり……、世の中不平等だよお……」
して、4人組は学院長が待つ部屋へ。4人揃った処で、ジャミルももう一度
学院長へ簡単に自己紹介をした。
「分りました。では、ジャミルさんにアルベルトさん、ダウドさん、
アイシャさんですね、お名前は確認致しました、それではこれから
事件解決までの間、宜しくお願い致します……」
それから学院長の後を付いて行き、学院圏内の外にある学生寮へと。
道中、売店らしき店もちらほら見掛けた。この学院は学問だけでなく、
戦闘の訓練も行なっている為、武器なども取り扱っている様だった。
「はあ~、寒いねえ、本当に雪原の大陸だけあって雪だらけだよお~……」
かじかんだ手を擦り擦り、ダウドがのそのそ歩いて行く。皆が揃って吐く息も
真っ白だった。
「モンモン~、はな、垂れちゃうんだモン……、ズビッ……」
「モン、オイラの頭に垂らしてから言わないで……」
「着きました、此処が今日から皆様が暮らして頂く学生寮です、
あなた方のお部屋は2階に場を儲けてあります、ここから先は
コミュニケーションを深めると言う事で、中にいる生徒達に
色々聞いてみて下さい、では、私はこれで失礼します……」
(あ、行っちゃったよッ!な~んかセワシーじーさんネっ!)
「仕方ないよ、学院長さんなんだもの、忙しいのは当たり前さ、
さあ、僕らも中に入って今日は休ませて貰おうか……」
「そうしたいよお~、うう~、オイラ、もう凍りそう……」
「……」
ジャミルは少し気になっていた。んな、ミニスカートでよくアイシャは
寒くねえなと。……やっぱり皮下脂肪が……。
「何?ジャミル、今何か考えたでしょ?……口で言わなくても
ジャミルの言いたい事なんかすぐに顔で分かるのよう!ねえねえねえっ!」
「……いだだだだ!ふぉらっ!ふぁほ、ふふぇるふぁっ!※こらっ!顔、
抓るなっ!」
「二人とも、僕達、先に行くよ……」
「あっ、待ってーっ!」
アイシャは掴んでいたジャミルのほっぺから手を放すと慌てて
アルベルトとダウドの後を追う。ほっぺを抓られたジャミルは、
こぶとり爺さんの様に頬が伸びてしまった……。
「たくっ!アイシャの野郎ーーっ!!」
「……あ、ジャミル君だったよねー?昼間はありがとー!君も
今日からこの寮の仲間だねー!」
中に入ると、入り口付近は食堂の様であり、昼間会ったデブが既に
骨になっているフライドチキンを囓っており、お皿は空でお代わりの
後が。デブがご飯を食べ終わっていると言う事は、今日の分の生徒への
夕食の支給はもう終わった様である……。
「とほほのほ~……」
「何項垂れてんの……、ジャミル、まさか君、夕飯食べ損なったなんて
思ってないだろうね?」
「あ、アホっ!んなワケねえだろっ!……ううう~……、この匂いは
ビーフシチューかな~……」
「やっぱり、そうじゃん……」
「うるさいっ!バカダウドっ!」
「あんた達が今日から学院に入学した生徒さん達だね!私はこの寮の
食事担当のおばちゃんだよ!宜しくね!そうそう、ウチの寮はね、
食事は時間厳守だからね!夕食ならきっちり18時までに寮に
入らないとご飯抜きだから!分かったかい!?」
お玉を持った威勢のいいおばちゃんがカウンターの向こうから現れる。
「厳しいのねえ~、じゃあ今日は仕方ないわね、ジャミル、私達、
飛び入りだしね……」
「そうそう、分かってるね、お嬢ちゃん!明日はちゃんと皆でご飯
食べに来てね!」
「分りました、では、明日から僕達も宜しくお願いします、ジャミル、
2階へ行くよ……」
「うええ~い……」
アルベルトに突かれ、仕方なしにジャミルも2階へと。だが、
こんな状態のままで、一体どうやって夜を乗り切れと言うの!?
このままじゃ、お腹が空いて、俺、俺、……死んじゃうわあーっ!
お願い、硬いフランスパンでもいいのっ、食べさせてえーーっ!
「アホっ!其処まで俺オーバーじゃねえっつーんだよっ!
……書いてる奴っ!!」
「プッ……、えーと、僕らの部屋は一番奥の部屋みたいだね……」
「私は女の子だから、向こうの部屋みたいなの、じゃあ、私お部屋に
行ってみるね、行こう、モンちゃん!」
「モンモン!」
アイシャはモンを連れ、2階の女子専用部屋の方へと駆けて行く。
好奇心旺盛な彼女は既にウキウキルンルンで瞳を輝かせていた……。
「ふぁあ~、飯が食えないとなると、もう今日はする事がない、
部屋で寝る……」
「ちょ、君はっ!時間があるんだから、もう今すぐに学院の調査に
入ったっていいんだよ!?聞いてるっ?……ジャミルっ!?」
「アル、何か様子が変だよお……」
「えっ……?」
アルベルトはジャミルを注意しようとするが、先に行ったジャミルは
自分らがこれから世話になるであろう、部屋の前で立ち止まっていた……。
「もう~、ジャミルってば、何してるのさあ~……」
「変だ……、中に誰かいる……、話し声がするんだ……」
「同僚の人じゃないのかな……」
「いや、俺ら素性を怪しまれねえ様にって、俺らが暮らす部屋は俺達
メンバーだけの特別個室だから安心して生活して欲しいって学院長が
そう言ってくれたんだぜ?」
「……じゃ、じゃあ……、不法侵入者じゃんっ!?まさか、オイラ達を
付けてるっ!?」
「ダウド、落ち着けってのっ!とにかくっ、ドア開けてみるぞっ!」
ジャミルは部屋のドアノブを乱暴に回した。……部屋の中にいた人物とは……。
「……納得出来ねえ、俺達の仲間ばっかりさらわれるなんておかしいぜ……」
「あれかなあ、最近話題になってる、幽霊がさらって行くって言う奴……」
「あんなの只の噂だよ、ビクビクしてんじゃねーよ!それよりさ、
モザイオ、お前はどうするんだよ……、また誘拐犯が来るぞ?
次はお前が狙われるかもだぞ!」
「なあ~に、来たら来たらでそん時だ!反対にボコボコに叩きのめして
チンコ引き抜いて畑に植えてやるってのっ!……それか抜いたチンコを
いつも人の頭をボカスカ叩きやがるいけ好かねえ数学爺の弁当箱に
入れてやるよ!」
「さっすがモザイオだぜー!けど、誘拐犯が女だったらどうすんだよ!」
「だったらアレの方だろっ!ハン!ふざけた奴は容赦しねえさ!例え
女だってよっ!!」
「やっぱりモザイオだなあ~、スゲ~……」
「「ぎゃーははははっ!!」」
何故か部屋の中にいたのは……、ジャミル達同じく、3人の少年トリオ。
下品な会話をしてゲラゲラ笑っている。恐らく、リーダー格は、金髪短髪の
イケメン少年、モザイオと呼ばれている彼らしい。見るからに何処の学校には
必ずいる、落ちこぼれ系の不良グループの様だが。モザイオを取り巻いて
いるのは、青い髪の少年、前髪ぱっつんヘアの太った少年。……デブが異様に
多いのも、食事が美味しすぎる所為なのか。
「こ、こいつら……、人の部屋に勝手にっ!」
(待って、ジャミ公!あれ見てっ!)
サンディの言葉に前を見ると……、モザイオの後ろに何者かがすっと
現れたのである。背後に立つ生気のない人物。成仏出来ていない老人の
様だった……。しかも凄い目つきでまるでモザイオの方を睨むかの様に
じっと彼を見つめていた。そしてすっと消えてしまった。
「おいっ!お前らっ!」
「……あ~ん?何だ?テメエらはよ……」
ジャミルの呼び声にモザイオがゆっくりと振り向く。ダウドは慌てて
ジャミルの後ろに避難する。アルベルトは手でジャミルを制し、此処は
僕が言うから……、と前に出る。ジャミルではケンカになってしまう
恐れがある。調査開始前からアルベルトはなるべく騒動を起こしたく
なかった。
「何だ、テメエら見ねえ顔だな……、そうか、お前ら噂の新入生って
奴か?けど、俺らにはんな事関係ねえんだよ、やっと今日の糞つまんねえ
授業から解放されて至福の時なんだよ、邪魔すんじゃねえよ……」
「……わわわーーっ!」
「お~い、後ろのオールバック野郎びびってんじゃねえか!」
「怖いなら早くママの処に帰った方がいいでちゅよ~♡」
「「ぎゃーっはっはっはっはあ!」」
不良トリオは再び大声で笑い合い、ダウドをコケにする……。ダウドは
ブンむくれヅラになりつつも只管堪えていた……。
「この野郎……」
「だからジャミルっ!君も黙ってて!……そう、僕達は今日、
この学院に来たんだよ、これから宜しくね……、でも、学院長から
聞いていないかな?此処は僕達が暮らす部屋なんだけど……」
と、まあ、アルベルトも笑顔で応対する。……最初は……。
「フン、いけ好かねえ野郎だ、俺のいっちゃんきれーなタイプ……、
おい、お前ら場所を変えようぜ、先公にでもチクられると厄介だかんな……」
モザイオと連れは部屋を出て行く。3人が消えた後、ダウドは安堵する。
「ふう~、何処にでもあーゆーのいるんだねえ~……」
「んなとこで怯んでどうするっ!まだ始まったばっかだぞっ!畜生、
あいつら……」
「ジャミルも落ち着きなよ、とにかくだね、僕らはこの学院で起きている
事件の調査を頼まれたんだから……、変なのは相手にしなければいいだけの
話さ……」
「処がま~たそーもいかないみたいなのよネー!」
サンディが飛び出して来た。サンディは先程の幽霊の件をアルベルトと
ダウドにも伝える。もしかしたら、その幽霊にモザイオが狙われているかも
知れないと……。
「本当なのかい?ジャミル……」
「ああ、スゲー顔してモザイオって奴を睨んでたよ……」
「あのさ、余り考えたくないんだけど……、もしかして、此処の生徒が
神隠しにあってるって言う事件……、その幽霊と何か関係があるんじゃ……、
まさか……」
「バカ連中も言ってたしな、次はモザイオが狙われるかもとか……、
もしかして、あの幽霊は程度の低い生徒ばっか狙うとか……、何で
俺達の仲間ばっかり言ってたし」
「……ひえええーーっ!!」
「だから、ダウドも……、此処には他の生徒さん達もいるんだから……、
とにかく明日から、この学院の生徒に聞き込みを開始しよう、まずは
それからだよ……」
「あうう~……」
ダウドは既にベッドに潜り込み、毛布を被って丸くなって怯えていた……。
自分も連れて行かれるのではないかと思い込んでしまっている始末。
「ダウド……、自分でそう思ったら負けじゃないか!ほらっ、
しっかりしなよ!」
「……まったくッ!マジでいつまで立ってもなさけネ~ヘタレッ!
やってらんないッ!」
サンディはダウドに暴言を垂れると再び姿を消す。……大きなお世話です
よおーっ!と、ベッドに潜ったままの状態でダウドは舌を出した。
「でも、明日から僕達も授業が受けられるんだね、楽しみだなあ~……」
「お休み……、俺、もう駄目だわ……、後はたのんます……」
「あうう~……」
「……全くっ!き、君達はっ!揃っていい加減にしろおおーーっ!!」
ジャミダウコンビは現実逃避で二人して揃ってベッドに潜ったまま
その夜は出て来なくなる……。そして、翌朝……。
「ん~っ、うめ~っ!やっぱり食ってる時が一番しゃーわせっ!」
「おいしー、おいしーんだモン!シャアーーっ!!美味しすぎて
ウンコチンチンモン!」
「……全くもう、ジャミルったら……、いつもの事だけど、
恥ずかしいわあ~……、って、またモンちゃんはっ!!
……シャアーーっ!!」
「だから何で俺の方見てんだよっ!!」
「……」
「見ろよ、あそこのテーブルの連中……、ぬいぐるみと飯食ってら……、
しかも、あのチビ、スゲー食欲……、よっぽど飯に飢えてたんだな……、
気の毒に……」
「ねえねえ、あの人達、新しく入ったコ達でしょ?くすくす……」
ジャミ公は取りあえず、今日からの授業の憂鬱など忘れ、楽しい一時は
思い切り楽しんでおこうと、朝ご飯をガツガツ食べていた。ちなみに
今朝はバイキング方式で好きなおかずを好きなだけ食べていいらしい。
「あ!オイラの目玉焼き……、横から取ったなあーーっ!
このドロボーーっ!!自分の分のお代わりは自分で取りに
行きなよおーーっ!!」
「いいだろうがよ!オメーがモタモタしてるから悪ィんだっつーのっ!!
少しは機敏になれよっ!!これもオメーの為の訓練だっ!!」
……何がだよ、と、アルベルト……。ジャミルとダウドはたった一枚の
目玉焼きで取っ組み合いを始めた。早くもこの4人組は有名人になって
しまいそうだった……。
「モザイオ、見ろよ、あいつらだ……、もう此処に馴染んでる
つもりかよ……、くだらねえ人形の玩具も持ってるぜ……」
「フン、女もいるんか、生意気だな……、ふ~ん、お人形さんはあの女の
玩具か……」
「ねえ~、モザイオ~、どうするんだよう~……」
「……そうだな、特にあの金髪、優等生面していけ好かねえから、
泣かせてやるか……、おい、オメーらこっち来いよ、作戦立てるぞ……」
モザイオと2人の連れは、ジャミル達を陥れ、恥を掻かせてやろうと、
何か良くない企みを企てている様である……。
zoku勇者 ドラクエⅨ編 48