空洞
空洞
外はガラス片に似た雨が降っていた
洞窟の中にいても
なぜだか雨の降り方や降られ方は
分かるのだと
あなたは洞窟のお腹を見つめた
私があなたの洞窟にやってきたのは
越してきたばかりのことだから
一年以上は前のこと
さっぱり変わらないあなたの居場所
適応し終えた私の目で
あなたの目がきちんと見える
色はいらないこの洞窟に似合った目
夏頃は眩しくて昼間は隠れていた
あなたはまた洞窟のお腹を見つめながら
頷くように話す
この洞窟には
電気系統が張り巡らされている
どこから鳴っているか分からないと言うよりも
どの場所からも音が鳴っている
それは確かにガラス片の雨と似ている
電気や音は時間を取り残して
それから鳴っている
割れて粉々になったガラス片を
両手で掬うのだけれど
洞窟は音の響き重なっている
あなたはいつからか私の方を向いていて
それから
冬の終わりに梅の木の匂いが少し漂っている
洞窟の出口に立った私は一度振り返って
ありのままの空洞
ガラス片の雨は私にまだ触れれない
空洞