zoku勇者 ドラクエⅨ編 43

ヘタレとヘタレ若様・3

「……オマエタチ、ソコカラウゴクナ、オトナシクセヨ、デ、
ナイト……、イオラヲマトメテゼンインニブツケテヤルゾ……」

「はうっ!?あわわわーーっ!!」

「ダウドっ、静かにっ!落ち着くんだっ!ナムジンさんの為に
頑張るって決めたんだろ!?君の気持ちを絶対に曲げないで!!」

「……そうだぞっ、落ち着けってのっ!!このバカダウドっ!!」

「何だよお!バカジャミルーーっ!!で、でも……、ナムジンさんの
為ならオイラ……、にへえ~……、で、でもやっぱり怖いよおおーーっ!!
……んへえ~、ナムジンさあ~ん……」

ナムジンの為に頑張りたい気持ちは確かにあるのだが、やはりヘタレの
症はどうする事も出来ず、今日のヘタレは顔がキリッとなったり、崩れたり
本当に落ち着かなかった……。

「ソコノコゾウ、ズイブンオジケヅイテイルヨウダナ……」

祈祷師の1匹が杖を構え、矛先を4人に向ける。アイシャがイオラを
使える様になれば、当然、敵の方も使える輩が出て来てもおかしくは
ない頃。アイシャも負けずに言い返す。

「あなた達なんかの意地悪な魔法になんか絶対に負けないんだからっ!」

「……クソナマイキナ……、マズハオマエタチカラダ、ミセテヤレ……」

「ウガァ~~っ!!」

祈祷師の大将が後ろに控えていたグール軍団に命令すると、奴らは
奇声を上げ、前列に躍り出る。だが、空中にいたモンが上からグール
軍団に向かってオナラ弾を発射!……グール軍団は揃って後ろに
全員ぶっ倒れた。

「……ウガァァァ……」

「やったモンっ!」

「……お、おえええ~……」

だが当然の如く、味方にもダメージは行く、プチジハード攻撃である。
4人はそれでも何とかモンのオナラの臭いに耐えている……。

「……フザケルナ、クソドモ!モウヨウシャセヌ!!」

そして、祈祷師も等々怒りのイオラを4人に向け詠唱、放出。
ジャミルも皆も揃って大ダメージを食らう。倒れた4人を見て、
仮面の下は恐らくほくそ笑んでいるであろう、祈祷師軍団。

「ム、ヤツラマダ、イキテイルゾ……」

「ソウトウシブトイトイウコトナノカ……」

「……ふざけんなよ、俺らがこんなとこでやられると思ったら
大間違いなんだよっ!!」

「ナンダト!?」

恐らく、HPポイントは一気に15ぐらいまで削られたであろう、
だが、ジャミルは根性で一人立ち上がる。……ジャミルの声を
倒れたまま聞いていたダウドも、動けない状態のまま、気力を
振り絞りベホイミをジャミルに向け、何とか唱えるのだった……。

「ジャミル……、ごめん、オイラ今はこれだけで……」

「サンキュー、ダウドっ、ありがとな、モン、薬草を皆に!
俺が何とか此処は抑えとくからよ!」

「モンモン!お任せモン!」

「しょーがないなあ、アタシもやりますカっ!!」

サンディも妖精モードになって飛び出し、皆の救護係に急いで回る。
仲間達が回復するまで何とかジャミル一人で頑張らなければならなかった。
だが、目の前の祈祷師軍団はまだまだMPの余裕はたっぷりであろう。
更に祈祷師は意地の悪い事をする。先程モンのオナラ弾でひっくり
返っていたグール達を全員よっこらしょと法術で立ち上がらせた。

「……グガァァァーーッ!!」

「チッ!けど、怯んじゃいられねえよっ、……アイツ、ナムジンだって
戦おうとしてんだっ!スゲー頑張ってんだよっ!!」

「……ナムジン……、ナムジンさん……、ううう~……」

「ダウドっ、無理しちゃ駄目モンっ、今、痛い痛いに薬草塗り塗り
するからね、モン!」

「ちょ、何かヘタレ様子がおかしくネ!?」

「ううう、ナム、ジン……、さああ~んっ!!」

モンとサンディは、回復魔法の使えるダウドを先に優先的に
回復しようとするが、ナムジン……、の言葉でダウドが何だか
おかしくなっているのを感じていた。

「……オイラ、やるよおおーーっ!!」

「モンーーっ!?」

「……キモーーっ!?」

等々、ヘタレ発狂する。いきなり起き上がったかと思いきや、
グール達に取り囲まれ、大ピンチのジャミ公に向かって砂塵の
槍を構え突撃して行った……。

「……!?う、うわ、ダウドっ!何だお前っ!何して……」

「ジャミルーーっ!避けてーーっ!うおーーっ!ヘタレ発狂の一撃ーーっ!!」

「……汗」

ダウドは槍を構えたまま、自ら高速回転。一撃処ではない、竜巻を
起こしグール軍団に衝突した。グール軍団はそのまま竜巻に
飛ばされて何処かへ飛んで行く。見ているジャミルは騒然。
今日のヘタレは全く何が何だか分からない爆弾ヘタレになっていた。
更にヘタレ竜巻の勢いは勢力を衰えず、次は祈祷師軍団の方へと
矛先を変えた。しかし、自分でヘタレ発狂と言っている辺り、
やはりヘタレである……。

「ナ、ナンダカヤバソウナノダガ……」

「コレハ……、ワレワレガユダンシスギテイタトイウコト
……ア、ァァァーーッ!?」

気づいた時には遅いんである。祈祷師集団もヘタレ竜巻にぶつかり、
ふっとばされ、地面に墜落し、倒れた……。其処に、モン達に薬草で
HPを大分回復して貰ったアルベルトとアイシャが急いで走って来る。

「お前らっ、平気かっ!?」

「うん、モンとサンディのお陰でね!」

「大丈夫よっ!」

だが、直後、2人は倒れている祈祷師達、そして、ハッスルしている
ダウドに首を傾げた……。

「これ、もしかして、ジャミルが1人で倒しちゃったのかい……?」

「いや、ダウドだよ……」

「……」

アルベルトとアイシャは再びダウドの方を見る。そう言われても、
どうやってダウドが祈祷師達を倒したのか分からず……。ジャミルも
説明するのもアホらしい様で、とにかく奇跡が起きてダウドが倒した
……と、無理矢理言っておいた。

「♪ふんふふ~ん、オイラナムジンさんの為なら強くな~る!ふんふ~ん!」

「……だ、そうだ……」

「友情の力?って、本当に凄いのねえ~……」

だが、ジャミルは……。

「ナムジンさ~ん、ナムジンさあ~ん♡んふふ~っ!」

「……チッ、何だよ、さっきからさ、ナムジンナムジンばっかでさ、
面白くねえの……」

「ふう~ん……」

アルベルトはチラっとジャミルの顔を見る。そして何となく
納得した様で……、含み笑い。

「アル、オメーもよう、何、人の顔見て笑ってんだよっ!」

「分かるよ、君、すぐ顔に出るし、単純だからさ、……ダウドが
ナムジンに取られてる様で、何となく面白くないんじゃないかと……」

要するに。ジャミ公は自分で気づかない様にしようと誤魔化しているが、
完全な焼きもちである……。

「あー、成程っ!分かるッ!……プゥ~ッ!」

……ジャミ公は吹きだしたサンディに又デコピンしようとするが、
サンディはジャミ公に舌を出しさっさと消えた。

「ふふっ、ジャミルったら!そうねえ、可愛い処あるもんね、
ジャミルは!」

「ふふっ、……可愛くないモン!」

「……うるさい、うっさいっ!てか、モンうっせーぞっ!
デコ出せーっ!!」

モンもいつもの定位置に逃走。ダウドの頭の上に避難した。

「畜生~、ど、どいつもこいつも……、うう~……」

「さてと、又モンスターに集られない内に地下の入り口を
探さないとね……」

アルベルトはそう言いながら辺りを見回すが。周囲には、
もう中には誰も住んでいないだろう、腐敗したボロボロの
パオが彼方此方錯乱していた。

「どうしてこんな事になってしまったのかしら、酷いわ……」

「モン~……」

アイシャの呟きを背に受けながらジャミルも辺りを慎重に
見回してみる。やはり何処も彼処も同じ様な廃墟が続く
風景だった。

「……ん?向こうの方にもう一つ石碑があるな……」

「よしっ、僕が調べるからっ!」

「……」

アルベルトは石碑に向かって突進して行き、石碑に齧り付くように
夢中で眺めている。ま、いいかと思うジャミル。

「よう、それには何が書いてあったんだ?」

「うん、こう書いてあるよ……」

アバキ草は我らの守り神。悪さを働く魔物もその臭いには耐えられない。

「ジャミルのおならみたいなニオイモン?」

「……るさいっ!モンっ、オメーのだって人の事言えねえだろうがっ!」

……今はどっちが臭いかなどとおならの擦り付け合戦をしている
場合ではない。早くアバキ草を見つけないとなのだが……。

「あそこ、洞穴があるみたいなんだけど……、何か入りたくないなあ~……」

ダウドに言われ、正面を見ると確かに奥に続く洞穴があった。其処から
何処かに通じているのか、4人はその先を潜ってみる事にした。

「なんだい、あんたら……」

「あ、こんちは……、え、ええ?」

洞穴に入ると、中には子供から大人まで数人が屯していた。だが、
この村人達からはもう生気が感じられなかった。恐らく、モンスターに
殺されたカズチャ村の村人の幽霊なのだろう。勿論、彼らの姿が
見えているのはジャミルとモンとサンディのみ。

「ねえ、ジャミル……、もしかして、ま、また……」

「ピンポーン!うん、数人はこの中にいるぞ……」

「……うきゃああーーっ!!」

今日はもう幽霊づくしで勘弁してえーーっ!と、ダウドは只管
唸っていた……。最もダウドには幽霊の姿は見えないのだから、
それ程怯えなくても良さそうな物である。

「あんたなにもんだべ?……魔物がいなくなるまでみんなで此処で
隠れてるだよ……、アバキ草があればモンスターは此処には
近づけんでのう……」

「みんなでかくれんぼしてるモンーっ!モンもやりたいモンーっ!」

(……デブ座布団のアホっ!)

「……モン、頼むから静かにしてろや、じゃないと……、
SPデコピンの刑+夕飯抜きとキャンディー一週間没収の刑!」

「キシャシャーーっ!」

モンは慌てて又ダウドの頭部の上に乗る。デコピンの刑も嫌だが、
何より大好きなキャンディーを一週間も食べちゃ駄目になるのは
モンにとって最高の罰。

「おとうちゃんが此処に隠れてろっていっただ、魔物、おらが
やっつけるからって、でも、まだ戻ってこねえだよ……、しくしく、
おとうちゃん……」

「オラ達はもしかしてもう、死んじまってるんだべか……、
分かんねえだよ……、んでも此処はオラ達の大事な故郷だあ、
離れる訳にはいかねえだよ……」

ジャミルは実際には何もない空間を仕切りに見つめている。
アルベルト達には見えていないので、又何が起きているのか
不安になった。

「そうそう、昔なあ、この村からヨソに嫁に嫁いだ娘ッ子がいたなあ、
確か名前をパルちゃんと言ったなあ、他の子よりは身体が弱かったが、
偉く可愛い子だったのう、今も元気でいるだべか……」

「ん……?パル?……パルちゃん!?ばあさん、本当にこの村に
その名前の子がいたのか!?」

「んだ……」

婆さんはジャミルの言葉に頷く。アルベルト達には見えない空間に
向かってジャミルが大声を出した為、びっくりする。ナムジンの母親、
パルはこの村の出身で、カルバドへ嫁ぎ長ラボルチュの嫁となった。
そして息子のナムジンを身籠もったのである。……その後……。

「そうか、嫁さんに行って此処から離れたから災いを免れたのか、でも……」

結局、身体が弱かったパルは、余り寿命が残されておらず、ナムジンを
産んだ後、数年で亡くなる運命となったのだった……。

「おい、兄ちゃん、何ブツクサ言ってるだ?この先の地下の泉にはな、
アバキ草ちゅー、ありがたい草が生えてるだ、魔物がその草の汁を
浴びると忽ち化けの皮が剥がれるちゅー噂があるだよ……」

「おばさんっ、それマジか!?アバキ草はこの先にあんのか!?」

「ああ、んだんだ」

「!」

まるで独り言を言っているかの様に見えるジャミルだが、ジャミルの
言葉を仲間達はちゃんと聞き逃さなかった。

「よしっ、お前ら分かったぜ!アバキ草はこの先の地下だ、行こうぜっ!
おばさん達、村のみんな、有り難うな!」

「モンモンですー!」

ジャミルは集まっている村人の幽霊達にお礼を言い、モンも頭を下げた。
そして、地下の泉へと走って行く4人を村人の幽霊達は静かに見送る。

「坊や達の目的は分からんが、気を付けるんだで……」

「どうか無事でなあ……、頑張れよ……」

「んだんだあ~……」

そして、通路の先の地下へと降りた4人。其処は上の廃墟とは
偉くまるで違った場所で、新鮮な空気が漂う、不思議な泉が
広がる場所だった……。

「此処の泉の何処かにアバキ草があるんだね……」

「はあ~っ、たまには外に出ないとッ!もう、ジャミ公、
オナラばっかするんだからっ!嫌になっちゃうッ!」

「……ガングロっ!うるさいっ!!」

「……嫌だなあ~……」

「ちょっとダウド、何でそんなに嫌そうな顔してるのよっ、もう幽霊さん
なんかいないわよ!」

「いや、あのね……、だからね……」

アイシャは腰に手を当て、ま~だ何だか、うじうじしている
ダウドに迫る。

「大体分かるよ、どうせ又……、ドラクエ3時代に泉にボッチャン、
墜落したのを思い出し……」

「ンッ、なになに~!ヘタレ、何かやったの~ッ!そう言えば、前にも
アンタらそんなよーな事言ってなかったッ!?どれだけ秘密あんのっ、
スゲー気になるんですケドっ!?」

「モンーっ!?」

「あ、あはは~、……な、何でもないから~っ!……何でもないよお~っ!!」

「……むぐぐぐぐ……」

ダウドは慌てて恥ずかしい前作での過去を又バラしてくれそうになる
しつこいジャミ公の口を必死で塞ぐのだった……。

「あ、あの草じゃないかな……」

アルベルトの言葉に皆が一斉に正面を見る。岸の側に他に生えている
草とは明らかに違う一際不思議な輝きを放っている草が生えている。
村人達が教えてくれた通り、この草がアバキ草に間違いは無い。遂に
見つけたのだった。

「よしっ、後はこれをナムジンに渡せばいいだけか、お前ら
急いで戻るぞっ!」

「わ~いっ、ナムジンさん、待っててねえーっ!」

「……チッ」

「……プッ……」

「アル、笑っちゃ駄目よ、ジャミルが益々嫉妬しちゃうじゃないの!」

「あ、そうか、ごめん……、僕、気が利かなくて……、あはは……」

「……だーからああっ!俺は嫉妬なんかしてねえーっつーのっ!!」

「思いっきりしてるじゃん……、アンタバカ?」

「してるモン……」

「……ガングロっ!モンもうーるーせええーーっ!!」

……一番やかましいのはジャミ公、お前だろう。かくしてアバキ草を
無事入手した一行は今度はそのアバキ草をナムジン本人に渡す為、
ナムジンが滞在している狩人のパオの方へと戻るのだった。

その頃、狩人のパオ、ナムジンのパオにて……。

「……二人で会う時はボクの方からお前に会いに行くと言っただろ?
もう二度と此処へは来るなよ……」

「グギギ……」

ナムジンが滞在するパオ内には、ナムジンと、相棒のポギーが。
一体、外の兵達に見つからずどうやって中に入れたのかは謎であるが、
それでもナムジンは愛おしそうに、自分に身体を寄せすり寄ってくる
ポギーの頭を優しく撫でた。その時、パオの外から……。

「はあはあ、お、おっさん達……、ま、まだ……、ナムジンは
中にいるかい……!?」

「あれは……、ジャミルさんの声……?」

「おお、兄ちゃん達でねえか、どうしたい、んなに息切らしてよお……」

「若様を探しに行ってくれたんだったでな、大丈夫だあ、若様は
ちゃんともう戻って来てパオの中にいるでよ……」

どうやら間に合ったらしく、まだナムジンが此処に滞在して
くれている事を知り、4人組は急いでパオの中へと突入した……。

「……いたっ!ナムジンっ!!」

「ジャミルさん達ではないですか、脅かさないで下さいよ……、と、
此処にいますので……、すみません、もう少し静かにお願いします……」

「グギ~……」

ナムジンはパオの隅で丸まっているポギーを指差す。ジャミルは
すぐ理解し、小声で、……分かった……、と小さくナムジンに
向かって呟いた。

「おや?あなたがその手に持っているのは、確か……」

「ああ、アバキ草さ……」

「ア、アバキ草ですって……!?」

ジャミルは自分達がカズチャ村へと訪れた事、……ナムジンの
母親の幽霊からナムジンを助けて欲しいと伝えられた事、
ナムジンへと話した。だが、ナムジンはジャミルが幽霊の
姿が見え、直に話が出来る事に驚きを隠せず、最初は戸惑いの
目を向けていたが……。

「アバキ草の事は母上から聞いた事がありまして、幼い頃、
実際に見せて貰った事もあります、でも……、あなたは本当に
母上の幽霊と会って話をしたと……?とてもそんな事は……、
信じられません……」

「そうですね、信じて貰えないのも無理は無いかと……、でも、
ジャミルがあなたのお母様と話が出来たからこそ、僕達は
こうしてアバキ草の事も知る事が出来、手に入れてあなたに
無事届ける事が出来たのです……」

「アルベルトさん……」

しかし、ナムジンはまだ戸惑いが隠せない様だった。だが、
そんなナムジンを安心させるかの様、すり寄るポギーの姿があった。

「グギギ!グギギ!」

「ポギー……、そうだね……、ジャミルさん達だって信じてくれた……、
ジャミルさん、アルベルトさん、ダウドさん、アイシャさん、有り難う、
ボクも皆さんを信じます!カルバドの民の目を覚ます為、そして、草原の
平和を取り戻す為、戦いの時です、どうかそのアバキ草を、ボクに渡して下さい、
力を貸して下さい!」

「ナムジン、お前……」

ナムジンはジャミルに向かってこくりと頷く。その顔には又新たな
決意の証が刻まれていた。……必ずシャルマナを倒し、民を救い、
カルバドに平和を取り戻すのだと。

「う、うっわああ~っ、ナムジンさんが……、オイラの事、ダウドさんて
呼んでくれたっ!うへ、にへええ~……、えへへへ~……」

「ノロケてるダウドに一発成敗いたすモン!……プー!!」

(……ヘタレ、やっぱりキモイんですケドっ!?)

サンディにキモがられ、モンには頭からおならされるダウドでは
あるが、やっとナムジンにちゃんと名前を呼んで貰えた嬉しさからか、
全く気にしていない。

「よし、これあんたに託すぞ、……頼んだぜ!」

「……はい!」

ジャミルはアバキ草をナムジンに手渡す。ナムジンもジャミルの
手から受け取った大切なアバキ草を力強く握り締めた。

「これをすり潰した汁をシャルマナに掛ければ奴は必ず化けの皮を剥がし、
正体を現す筈です!」

「いよいよシャルマナと対決ね!頑張りましょうね、ナムジンさん、皆もね!」

「はい、アイシャさん!」

「よしっ!けど、ナムジン、マジでアンタの試練の時だな……」

「そうですね、まずはボクとポギーは先にカルバドへ戻ります、
皆さんはその後から来て下さい、又ちょっとした芝居をこれから
打ちますので……、お願いします……」

「分かったっ!」

ジャミルもナムジンに力強く頷く。仲間達も。ナムジンを信じ、
シャルマナ討伐の決死の戦いが今幕を開けようとしていた。
ナムジンはまず、外にいる兵士達を先に集落へと帰還させる。
兵士達は急に凜々しい姿を見せ始めたナムジンに歓喜と
喜びの声を上げた。

「よし、兵士達は戻ったな、さあ、ポギー、次はお前の番だ、
カルバドに向かってくれ、ボクも直ぐに行くよ……」

「グギ!グギギ!」

ポギーはパオの外に出て行き、ナムジンはアバキ草をすり潰した
アバキ汁を作り終える。……いよいよ、ナムジンもカルバドへと戻り、
出陣の時が訪れた。

「……では、ボクもそろそろ行きます、皆さん、もう少し時間が
立ったら来て下さい、お願いします……」

「ああ、けど、余り無理すんなよ……?」

「大丈夫です、……ジャミルさん、あなたに全て話せて本当に良かった、
ボク、カルバドの長を継ぐ物として……、父上の名に恥じない様に
精一杯頑張るつもりです……」

「ナムジン……」

「あ、ナムジンさ~ん、あ、あの……」

「ん?ダウドさん、どうかしましたか?」

「!い、いや……、その、えへへ、何でも無いよお、オイラも
ナムジンさんが絶対勝つって、信じてるよお……」

「有り難う、ダウドさん……、皆さん、では……」

ナムジンは微笑むとパオを出て行く。ナムジンの決意、最初に会った時、
ヘタレていたナムジンの偽りの姿はもう完全に消えた。その後ろ姿を
4人は静かに見送るのだったが……。

「何だか彼、本当に変わったね、出会った最初の頃が嘘みたいだ、
いや、変わったんではなく、僕らが事実を知らなかっただけで、
最初からナムジンさんは芯が強かったんだろうけど……」

「ま、どこゾのヘタレのまま、素で全く変わんねーのもいるんだケド……」

「……サンディ、うるさいんだよお~……」

「本当、素敵よね!私達も全力でナムジンさんのお手伝いしなくちゃ、
ね、ジャミル!」

「ん?あ、ああ……」

アイシャにそう返事を返すジャミルだが、シャルマナは女神の
果実の力を得ている。……とてもナムジン一人では完全に
シャルマナを倒せない事も承知していた……。ラボルチュと
話をしたあの時、ナムジンの為、自分達は必要以上に手を
貸さないと言ってみた物の……」

「ああ~っ!でも、少し時間が立ってからって、一体いつ
行けばいいんだよお~っ!ねえ~っ、……ジャミルううう~っ!!」

「分かってるってのっ!ルーラが使えるんだからよ、んな、焦んなっての、
……けど、もう俺らも行った方が良さそうだな……」

「……ちんぽこォ~!ちんぽこォ~!ち~んちん!!」

ヘタレがナムジンを心配し、発狂しだした為、そろそろ自分達も
カルバドに向かおうとジャミルも決意する。……ついでにダウドの
頭の上でモンもカオス顔で発狂しだした。だがこの時、ジャミルは
とても嫌な予感を感じた為、カルバドに一刻も早く戻る事を
決めたのであった。……ナムジンの身に何かが起きそうな……、
悪い予感がしていた……。

「あれは……」

「おお、あんたも来ただか!今、ナムジンさんとあの魔物が
戦ってるだよ!今、決着の戦いを見守ってるだ!あんたらも
広場に急ぐだよ!!」

ジャミル達もナムジン達がそろそろカルバドへと戻った頃かと
頃合いを見計らい、ルーラでカルバドへと飛んだ。広場近くへ
駆けつけると其処で見た光景は、倒れているポギーの姿、そして
ポギーに刀を突き付けているナムジンの姿。村人達も広場に集まり、
雅に今、村中が大騒ぎ中だった。

「……ひええ~っ!ナムジンさあ~んっ!ま、まさかまさか、
本気でポギーをっ!?」

「バカダウドっ、落ち着けってんだよっ!これから一芝居打つって
言ってただろうがよっ!」

「あ、そ、そうか……、あ、あはは~……、で、でも……」

「行こう、僕らももっと近くへ!ナムジンさんの作戦を見守ろう!」

「でも、大丈夫なのかしら……」

「モン~……、何だかポギーも心配なんだモン……、本当に
お芝居なんだモン?」

「アイシャ、此処はナムジンを信じるしかねえ、アルの言う通りだ、
俺らも行こうや!」

「……そうね、行きましょ!」

(うっひょー!な~んか、スゲー面白くなって来たんですケドっ!!)

不安に駆られる4人だが、とにかく今はナムジンを見守るしかない。
彼の作戦を信じて……。

「はっはっは!でかしたぞナムジンよ!流石オレの息子!よくぞ
魔物を倒したなっ!!気高き遊牧民の息子よ!!」

「……は、はい……、怖くて怖くて……、足が震えました……、
で、でも……、漸くこれで戦いに勝つ事が出来たのですね……、
父上とシャルマナが見守っていてくれたから……、シャルマナ、
今までボクを見守ってくれていて本当に有り難う……」

「ホホホ!良くやったぞえ~!ナムジン様、お主は本当に
可愛いのう~!もう魔物に怯えなくてもよいのじゃぞ、ささ、
もっとこっちにちこうよれよれ!わらわがたっぷりそなたを
可愛がってやるぞよ~!もう泣かなくてもよいのじゃぞ~!!」

「グギ……」

「!?こ、これはっ!!」

シャルマナはナムジンに近くに寄る様に手招きをする。だが、
倒した筈のポギーの身体がピクリと動いた。そして……。

「ああっ、父上!申し訳ありません!まだ魔物は生きています!
どうやら急所を外してしまった様です!い、一体どうすれば……」

「……グギーーっ!!」

「!!こ、こいつめっ、まだ生きていたのかっ!!ナムジンっ,
今こそお前の手で完全に魔物に止めを刺すんだっ!そいつは
オレの命を狙った不届き者だからな!!」

ラボルチュは息子に命令する。倒れていたポギーは起き上がり、
くるりと回転ジャンプする。だが、獲物を狙う鋭いその視線の
相手は、ラボルチュ……、ではなく……。

「グギ、グギギ……」

「分りました……、今だっ!ポギーっ!!あいつに飛び掛かれええーーっ!!」

「グギャアーーっ!!」

遂にナムジンの作戦が決行され、シャルマナに反旗を翻したのである。
ナムジンは抱えていた刀を握り直し、ポギーはシャルマナへと飛び掛かり、
油断していたシャルマナを転倒させる。そしてナムジンは倒れている
シャルマナへと刀を思い切り振り下ろす。

「……な、何をするのじゃあーーっ!?うああーーっ!!」

「……ナムジンっ!お前、血迷ったのかああーーっ!!」

ラボルチュが怒鳴り、奇声を上げるがナムジンは構わずそのまま
更に隠していたアバキ汁を躊躇せずシャルマナへとぶっ掛けたので
ある……。

「お前の悪事もこれまでだっ!さあ、シャルマナっ!正体を
見せてみろっ!!」

「……く、な、何をなさるのじゃあ~……、……あああーーーっ!!」

「ホント、スゲえな、ナムジン……、大したモンだよ……」

「うんっ!……ナムジンさん、かっこいいよお~、だって未来の
族長さんだもの、にへえ~……」

(マジであのボーヤ、やるじゃん!)

「モ、モン~……」

ナムジンを見守る4人。だが、側で見守っている村人達は事が
分からず、ナムジンの行為が理解出来ず、アバキ汁を掛けられ
苦しんでいるシャルマナの姿に戸惑いを隠せず騒ぎ出す……。
アイシャもモンの様子がおかしいのに気づく。

「モンちゃん、どうかしたの?……大丈夫よ……」

「アイシャ、何だか……、モン、怖い予感がするんだモン……」

「モンちゃん……」

モンは震えながらアイシャに抱き付く。……いつもお調子者のモンが
これ程怯えている姿を見るのはアイシャも何となく不安になって
くるのだった……。

「……ナ、ナムジン様……、一体どうしちまっただよ……」

「皆さん、落ち着いて下さい、此処はどうかナムジンさんを信じて
見守ってあげて下さい……」

アルベルトも混乱しだした村人達を宥める。その間にもナムジンも……。

「落ち着くのだ、カルバドの民よ!この女は人間ではない!
今こそ見届けよ!お前達が信じていたこの者の正体を!!」

「……く、くそ……、からだが……、わ、わらわのからだ……、
が……、くずれ……、……アアアアーーーっ!!」

シャルマナの身体から、もの凄い勢いで煙が放出される。美しい
女性の容姿だった彼女の姿は溶けて崩れ始め、……醜い巨大な怪物、
呪玄師シャルマナへと変貌を遂げたのだった……。その姿はまるで、
膨張し肥えたテンツクの様であった……。

「父上、こいつは人間に化けて妖しい術で皆を誑かし、洗脳させ、
行く行くはこの草原を乗っ取ろうとしていたのです……、もう少し
遅ければ父上も完全にこの魔物の手に陥る
処でした……」

「う……、嘘だ……、シャルマナ……、オレを騙したのか……?
嘘だろ?嘘と言ってくれ……」

「……父上!あなたももう目を背けないで!……例えもう姿は
見えなくても……、あなたの事を本当にずっと愛していて
くれたのは誰なのか……、今こそ思い出して下さい……」

「ナムジン……、オ、オレは……、パ、パ……、ル……、
うう……」

「おのれ……、ナ、ナムジンィイイーーンっ!……よ、よくも
オオオオーーーっ!!若造があーーっ!!やりおったのうーーっ!!」

「ヘッ、やっと正体を現しやがったなっ!」

ジャミルは鼻を擦り、仲間達も身構える。だが、遂に本性を
現したシャルマナにカルバドの民は怯えて錯乱し、パニックに……。
そんな村人に対し、力強くナムジンは声を張り上げるのだった。
カルバドの未来を継ぐ将来の族長として……。

「民よ、怯えるな!今こそ皆で力を併せカルバドの集落を守る時!
私に力を貸して欲しい、さあ、我に続けーーっ!」

ナムジンは刀を光らせ、勇ましく、天に刀を突き刺す仕草を取る。
だが……。

「うわあーーっ!シャルマナ様が化物になっちまっただあーーっ!!」

「……もうこの集落はオシマイダヨーンーーっ!!」

「ホエホエー!逃げるが勝ちダスーー!!」

「……お、おいっ!お前らーーっ!!」

見ていた4人もこの無様な光景を見て唖然とする……。村人達は皆、
揃って広場から逃げ出す。思わずジャミルも村人に声を張り上げるが、
パニックの住人は皆、自分が一番、自分が大事でまるで聞いていない。
民達だけではない、本来なら族長を守る立場の近衛兵達までもが……。
民は誰1人としてナムジンに続こうとする者はおらず……。

「……何なんだよっ!あいつらはっ!」

「そうよ、こんなのってないわよ……」

「ブブーのブーモン!シャアーーっ!!」

「酷いよ……、皆、あれだけナムジンさんの事、腰抜けだとか
言ってたのに……、……本当に意気地が無いのは誰なのさ……、
ううっ……」

「ダウド、君の気持ちは分かるよ……、こうなったらもう躊躇ってる
暇はないよ、ジャミル、皆!」

ジャミルはいらついた様に地面を蹴り、ダウドは再び落ち込み出す。
その身体は悲しみと怒りで震えていた……。ジャミルもこれで
ナムジンとカルバドの民の心が一つになり、皆で力を併せ、危機を
乗り越えてくれると信じていた。その思いは早くも崩れ去り、醜い
場面となった……。だが、アルベルトの言葉にダウドも漸く前を向き、
ナムジンと共にシャルマナと戦う決意を固めた……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 43

zoku勇者 ドラクエⅨ編 43

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-02

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work