恋愛事情
内容を一部、加筆修正しました(2025年3月1日現在)。
上がる度に揺れるから
しがみついて
踏ん張って、
ブレる話題の修正を
それから、諦めの悪い告白を
繰り返す。
うわぁ、と聞こえる
その反応は
けれど若々しく、
深くなる緑の、色の
長い袖を勢いよく捲し上げて
暑さを拭い、暑さに笑う。
嗚呼、と歌えるほどに
能天気。卒倒しそう。
でも、と気を取り直す私は
まだ、と気持ちを堪えて
噛み砕く。砕く
ぼろぼろと。懸命に。
弱かったからジャンケン。
今も、次に何を出すか
決めかねた顔で
口を開けて、閉じて
頭(かぶり)を振って
手摺りを握る。グッと握る。
返事はない。聞こえない。
陽気なゴンドラだから。
きっと帰っても
雲間に現れる、あんな空を
一秒たりとも覚えていない。
冴えて、冷めてく。
私以外。
逆光の中で、あなたは
鼻筋を奇妙に曲げて
いつも素直な口の端。
鈴の音色に踊る
心に近しい言葉を飲む。
苦しそうな笑顔。
だから
ガタン。ゴトン。
重い荷物のように
そこに置かれて、運ばれて。
信じられないくらい
愛された。
若々しい君で、新鮮な恋で
負かされた。嘘みたい。
あなたは
泣き腫らした瞼の
重い現実で、
深くなるばかりの
この、気持ち。
その変わらなさで口を噤む。
悔しい。嬉しい。
大好き。
って気付く度に揺れて
しがみついて
踏ん張って、
この顔で、この声で
強張る、一所懸命。
走って、走って、走って。
息が切れた。
へんてこで不思議な
愛を。姿を
笑ってね。
皺くちゃになるぐらい。
沢山。沢山。
だって、だって、だって、なんだから。
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