zoku勇者 ドラクエⅨ編 39

我侭女王と恋したトカゲ・3

「……ジャミルさん、皆さん!!」

「ジーラさん……!」

沐浴場に息を切らし急いで駆け込んで来た人物。女王に解雇を
言い渡されたばかりのジーラ、彼女だった……。他の侍女達は
現れたジーラの姿に皆怪訝そうな顔をしていた。

「ジーラさん、どうして此処に……?」

「女王様の悲鳴が聞こえたので慌てて飛んで来たのです、い、
一体何が……!?」

「それは……」

だがジャミルが言葉を続ける前に近くにいた他の侍女の一人が
得意げに話に割り込んで来た。

「バチが当たったの、女王様の大切なペットのアノンちゃあ~ん!
……が、あの果実を食べたら化物になったのよ、それで、アノンが
女王様を連れて其処の井戸に飛び込んだワケ、きっと女王様を食べる気よ、
……いい気味だわっ!」

「そんな……、アノンちゃんが……、女王様……」

「ね?ジーラ、アンタもそう思うでしょ?これで清々したんじゃなくて?」

「……あ、あなた方、最低ですっ!!」

「!?」

侍女達はケラケラ笑っていた。だが、ジーラは怒りで握った拳を
震えさせ、その場で笑っている侍女達に大声を張り上げ一喝。
いつもとは違う、強く言い放った彼女の姿にジャミル達4人も
びっくりするばかりであった。

「な、何よ……、生意気なっ!いつも碌に仕事の出来ない下っ端の癖にっ!!」

「私は何と言われても構いません、……ジャミルさん、皆さん……、
どうかお願いです、女王様をお助け下さい……」

「ジーラさん、あんた……」

ジーラは他の侍女達とは違う。どんなに冷たく罵られても、唯一女王の
孤独を知る数少ない人物であった……。アノンに女王が捕まった時、
ジャミルも少なからず、酷い目に遭って懲りろと思っていた。ジーラは
目に涙を浮かべ、切実に4人へと訴える。

「お願いです、このままでは女王様が余りにも……、ご両親の愛を
受けられず、その上信じていた大切な心の友であるアノンちゃんにまで
裏切られたなんて……、本当に女王様が今度こそ立ち直れなくなって
しまいます……」

「行こう、ジャミル!僕らも井戸の中へ!」

「このままモタモタしてられないでしょっ!……い、嫌だけど……、
行こうよお!」

「女王様を助けに行きましょ!」

「モンっ!」

(ホラホラ、モタモタしてんじゃねーってのよっ、ジャミ公っ!)

「お前ら……」

あれ程女王に酷い目に遭わされたと言うに、仲間達は女王を助けに
行こうとジャミルの背中を押してくれている。……女王の事を心から
心配し、泣いているジーラの為にも……。

「分かったよっ、行くぞっ!出動っ!……節介部隊っ!!」

「ま、まああ……」

4人は侍女集団達の目の前で井戸の中に身を投じる。一体何処に通じて
いるのかさえ、分からない……、深い深い井戸の底へと……。その場で
只一人、ジーラは4人と女王の無事の帰省を強く強く願う……。

「皆さん……、女王様の事をどうか宜しくお願いします、ご無事でっ……」

そして、井戸に飛び込み、辿り着いた先。其処は……。

「古い昔の地下通路だな……」

彼方此方にもう腐敗した水路が流れている。アノンは女王をこの奥へと
連れて行ったのだろうか。とにかく4人は先に進む事にした……。

「もしかしたら……、も、もう間に合わないかも……、スライスされちゃった
果実みたいに……」

またダウドの悪い方向へと悲観が始まる。それでも、アノンが女王にまだ
手を出さないでいてくれる事を念じるしかなかった。

(女王さんよ、もしもまだ無事でいてくれるなら感謝しろよ、
ジーラさんがいてくれなかったら、俺も気持ちが動かなかった
かもしんね……)

「此処のお水、くさいんだモン……」

「そうね、もう腐ってるもの、モンちゃん、余り臭いを嗅いじゃ
駄目よ……」

「モォ~ン……」

モンは鼻を押さえながらふよふよアイシャの後を付いて行く。けど、
何処に鼻があるんだと言う事はジャミルは黙っていた。いつもなら
ダウドの頭にくっついて遊んで移動するモンだが、今日は流石に
そんな気分ではないらしい。彼方此方から漂う異臭にジャミルも
目眩がしてくるのだった……。


「……旅の者よ……」


「……誰だっ!?」

「ひえーっ!?な、何だよおーっ!!」

突如、聞こえて来た声にジャミルは後ろを振り返った。後ろには、
ジャミルが突如大声を出した所為で混乱しているダウド、アルベルト、
アイシャ、モン、……そして、青白い顔の見知らぬ初老の男が……。

「あんた……、もしかして……」

「だから何だよおーっ!オイラはダウドだよおーーっ!!」

「ダウド、……しっ!」

アルベルトは慌ててダウドに静かにしている様に注意を入れる。
又見えない誰かとジャミルが喋り出したのが分かったからである。

「アタシにも見えてるから、何か見た事無いおっさんみたいだよ……、
すっゲー、悲しそうな……、暗そうな顔してんのよ……、写真に
ちゃっかり写り込んでてもおかしくない様なさあ……、ぬ~っと……」

「ひえええーーっ!!やーだやーだっ!……いーやーだああーー……」

サンディはジャミルの中から飛び出すと、仲間達に説明する。
アルベルトは唯一錯乱し、混乱しているダウドを静かに
させようと……、余りうるさいといつもジャミルを黙らせる手で、
今日はガムテープをダウドの口に貼った。

「ダウド、ごめんよ、暫くそのままでいて……」

「……えううう~……」

「旅人よ、すまんな……、この哀れな父の話をどうか聞いてくれまいか……」

「父……、って、事は、あんたやっぱり……」

「そうだ、私はこのグビアナの先の国王……、ガレイウスである……」

「ユリシス女王の親父さんだな……」

仲間達にはジャミルと喋っている相手は見えないが、今此処に先代の
国王が現れている事実に騒然……。サンディの話す様子から察するに、
愛する娘が心配で相当成仏出来ておらず、この地下水道を彷徨っている
様子も覗えた……。

「……如何にも……、娘がああなってしまったのは全て私の
所為だ……、私は王としての名声を求める余り、娘のユリシスに
愛情を注いでやれなかった……、娘が人の心も分からぬあんな
我儘な女王に育ってしまったのは全てこの愚かな父の所為だ、
だが人としての心を失い、優しさも、それらを知らぬまま孤独に
生き続ける娘をこのまま見守るのは余りにも親として悲しく、
辛いのだ……、……旅の者よ、勝手なお願いをして済まぬ、
どうか娘を頼む、ユリシスを救ってやって欲しい……」

「……おっさん、……分かったよ……」

「済ま……ぬ……、どうか、愛する娘、……ユリシス……を……」

ガレイウスはジャミルにそれだけ伝えると、静かに姿を消した。
だが、国王が本当に心から安心して眠れる時……、それはユリシスを
孤独と心の闇から救う事である……。

「ジャミル、モンにもあのおじさん見えてるモン、女王様も女王様の
お父さんもちゃんと助けてあげようねモン!」

「ああ、絶対にな!」

地下水道を進んでいく4人。扉が有る場所まで辿り着く。開いて
奥へ進むと、其処は墓石が錯乱している……。この地下水道で
墓地にあたる場所だった……。

「……ーーーっ!!」

「皆、モンスターよっ!」

アイシャの声に男衆は身構える。やはりモンスターも出る。そう簡単に
通してくれそうにない。

「ダ、ダウドっ!……ごめんっ!」

「あだだだだっ!アル、酷いよおーっ!」

アルベルトは戦闘準備の為、さっき貼り付けたダウドの口から今度は
ガムテープを思い切り引っ剥がした。急いで剥がした所為で、ダウドの
口回りにはテープの跡が付き、変なおじさん状態になってしまった。

「……もうーっ!なんのさあーっ!オイラプンプンですよおーっ!」

現れたのは蛇の様な外観のモンスター、ヘルバイパー。毒以上の
厄介な特殊攻撃、猛毒の霧を吐いてくる。それ程強くはないが、
なるべく短期間で済ませないと厄介な相手である。

「シャアーーっ!」

「それはモンの特許だモンっ!……シャアーーーっ!!」

モン、率先し毒を吐かれる前に毒を吐く。露天で食べた餃子攻撃の
息である。ヘルバイパーは倒れたが、当然の事ながら味方にも
ダメージを喰らった……。

「今だモンっ!みんなーっ!ゲップ……」

「お、おえっ、……くっせ……、ア、アイシャ……、頼む……」

「分かったわあ~……、モンちゃんたら、又歯磨きするの忘れたわね……」

アイシャは鼻を摘まみながら詠唱準備を始め、ヒャダルコを連発。
ヘルバイパーをどうにか始末したのだった。そして更に、お次は
ネコの様な外観の魔道士、ベンガルクーン。だが、ベンガルクーンは
身嗜みの為、ごしごし、顔を洗っていた……。

「わあ、かわいいーっ!にゃ~ん!」

「……コラっ、アイシャっ!不用意に近づくんじゃねえよっ!
今度は俺らがやるっ!少し休んでろっての!」

「ぶー!分かりましたよーだっ!……あ、あっ!?」

「ぶーぶーモン!ぷっぷモーン!」

アイシャはモンを連れ後ろに引っ込もうと。だが、後ろから
マミーが出現。自身の包帯を伸ばすとアイシャを拘束、地面に
叩き付け、引きずって何処かへと連れて行こうとする。

「……きゃあああーーっ!?た、助けてええーーっ!!」

「モンーーっ!アイシャを放すモンーーっ!!」

「アイシャっ!ジャミル、アイシャは僕が!君はネコの魔道士の方を!」

「頼むっ!アルっ!」

アルベルトは急いでアイシャの方の援護に回りマミーを追い掛けて行く。
改めて目の前のベンガルクーンを睨むと、……全然可愛くねえじゃ
ねえかとアイシャの趣味が分からなくなり。

「よしっ、ダウドっ、オイラは逃げていいんだっ、逃げようっ!」

……ぽかり。

「冗談なんだから殴らないでよおーーっ!ジャミルのアホーーっ!!」

「お黙りっ!冗談に聞こえねえんだよっ、オメーの場合っ!
いつもいつもっ!!」

(ハア、何でもいいケド、さっさと終わらせちゃいなさいよね……)

「ガルル、……シャーモン!シャーモンっ!」

「モンっ、下がって!此処は僕がやる!」

アルベルトはマミーと奮戦しているモンを下がらせ、今度は自身が
相手に入る。

「アル……、ごめんなさい……」

「アイシャ待ってて!直ぐに助けるよ!」

アイシャは拘束され、地面に転がされたままの状態で切なそうに
アルベルトを見つめた。だが、魔法戦士に転職したとは言え、
アルベルト本人の欠点、どうしてもトロさは変わらないのは
本人も自覚している。何よりうっかり、自分自身も捕まらない様に
気を付けなければならない……。

「う、うっ!このっ!!」

やはりマミーはアルベルトにも包帯を伸ばして来た。何とか剣で
叩き切り、マミーの攻撃をどうにか避けながら、マミーの急所を
突こうと奮戦。会心の一撃が出る事を説に祈るが、そう思っていると
中々ヒットしてくれないのが現状……。一人で戦う彼は早くも段々
息が上がって来ていた……。

「この後、大ボス戦が控えてるんだ、何とか……、ハア、も、もう、
へばってきてるのか、僕はっ!……負けて堪るかっ!!」

「……もうーっ!いやーっ!放してよーーっ!!」

「アイシャお願い、あ、暴れないでモン……」

包帯で縛られたままのアイシャは米俵の様に地面をゴロゴロ……。
モンは何とかアイシャを拘束している包帯を解いてやろうと
するのだが、何せモンは手が短い為、無理なんである……。

「……デブ座布団っ!何やってんのっ!どいてなさいよっ!
あーもうーっ!!」

「……シャアーーっ!!」

しっちゃかめっちゃか状態の一行にサンディも見ていられず、
サポートで入る。……アイシャの包帯の解除の手伝いに回る。

「サ、サンディ、……ありがとう、ごめんね、モンちゃんも……」

「油断するからこーなるなるっ!気をつけなさいよっ!」

「ふぇえ~……」

「……あああーーっ!?」

「アルうーーっ!ジャミルっ、早くしないとっ、アルがっ!!」

「分かってるっ!この糞ネコめっ!!」

ジャミルはベンガルクーンと対峙しながらも、向こうの方から
聞こえて来た悲鳴に焦り出す。拘束はされていないが、アルベルトが
マミーに包帯で叩き付けられている。だが、援護には行かせまいと、
ベンガルクーンも必死だった。そうしている内、ダウドがベンガルクーンに
マホトーンを喰らった……。

「……!!」

「オメ、ガムテープ貼がしても、それじゃ結局同じじゃねえか、……アホっ!!」

「~っ!!~っ!!」

喋れなくなったダウドはジャミルに抗議。……聞こえないのをいい事に、
バーカバーカ、ジャミルのアホーっ!……ド○テー!……と、折角の
チャンスなので、マホトーンを利用し、言いたい放題……。

「よしっ、ホータイ解けたヨ!さあ、さっさとイクイク!」

「あはっ、サンディありがとうーっ!よおーしっ、今度こそっ!
アルを助けに行くわよっ!モンちゃん!」

「モンモンっ!」

「くそ、……こんな処でっ!」

……そして、アルベルトにもマミーの魔の手が……。だが、復活した
アイシャにより、イオを噛まされ吹っ飛んで行った。アルベルトは
駆けつけたアイシャの姿にほっと胸をなで下ろし、一安心……。

「アイシャ、無事で良かった……」

「アル、ごめんね……、大丈夫?サンディが助けてくれたの、私は
もう大丈夫よ、さあ、今度はジャミル達の方へ助けに行こう!」

「……ああ、僕も大丈夫、急がなくちゃ!」

アルベルトはアイシャに親指を立てる。それを見てアイシャも
頷き笑うのだった。

「シャギャニャああーーっ!!」

「いっつ……、こ、この糞ネコモンスターめっ!」

ベンガルクーンは魔法攻撃ではなく、今度は巨大な爪でジャミルの
腕を引っ掻く。ジャミルは切られた片腕を押さえながら呻いた。
腕からはドクドク血が流れ出て来た。

「……マ、マホトーンの効果がやっと切れた~、ジャミルっ、お待たせ!
ベホイミだよお!」

「サンキュー、ダウドっ!」

何とか復活したダウドにより、ジャミルは片腕の傷を癒やして貰い、
体制を立て直す。その間にアイシャとアルベルト、そしてモンも
ジャミルの元に駆けつける。

「ジャミル、待たせてごめん!」

「反撃行くわよーっ!さあ暴れネコちゃん、覚悟しなさいっ!」

「いっくモーン!ブッシャアアアーーっ!!」

まずはモンがベンガルクーンに放屁。……ダメージは与えている物の、
これは味方の方にもダメージが行くんである……。

「はあ、やれやれ、本当に益々飼い主に似て来て困るよ……」

「モンちゃんたら、お口を磨くのも忘れてるのに、お尻からも
くさいわあーーっ!」

「くさいよおお~……」

「うるせー我慢しろっ!……てか、腹黒っ、うるせーっ!」

「モンブッブ、モンブッブ~!」

放屁の犯人は相当気持ち良かったのか、宙を喜んで飛び回っている。

(マジでいい加減にしなさいよネ、このバカコンビは……)

「お前ら一気に攻めるぞ、……いいかっ!?」

「了解っ!!」

ベンガルクーンは再びマホトーンを今度はアルベルトに向けて
放出しようとするが、さっと交わす。

「や、やった……、トロい僕でも……、しゅ、修行の成果なのかな、
あはは、はは……」

「感激すんのは後だっつーのっ!いくぞおーーっ!」

「分かってるよっ!」

「はあーいっ!ヒャドーーっ!!」

アイシャお得意のヒャド攻撃放出、ベンガルクーンの身体を凍らせる。
そしてジャミアルの連携剣攻撃!ベンガルクーンに止めを刺す。決して
厄介な相手ではなかった物の、途中でダウドのマホトーン被害&アイシャが
マミーに襲われた所為で、大分時間を食ってしまったのである。

「ぶう~……、あら?ネコちゃん……?」

「にゃっ、にゃっ、にゃにゃにゃ」

「このネコ、さっきのモンスターみたいだモン」

「……マジでモンスターだったのか……?」

「そうみたいモン、帰り道は分かるから心配しないでって言ってるモン」

「へえ~、モン、ネコの言葉が分かるんだねえ……、凄いや……」

モンに感心するダウド。アイシャの足下をネコがスリスリしていく。
ネコは一声、にゃ~とまるでお礼を4人に言うかの様に、秘密の
抜け道を知っているらしく、壁に空いていた穴の隙間から何処かへと
姿を消した。

「魔法でモンスターに変えられていたのかもね、だとしたら良かったね、
アイシャ」

「うんっ、ネコちゃん、気を付けて帰るのよ!」

「モンモンー!」

(……へえ~……、やるう~……)

ネコを無事見送った4人は急いで女王が捕まっている場所へと足を速める。
そして、アノンに拉致られたユリシス女王は……、地下水道最深部の奥の
牢獄部屋に連れて来られていた……。

「だ、誰か……、助けて……」

「なあ、ユリシスはん、何でそんな悲しそうな顔してるんでっか?
ワテはあんたのお婿さんになるんやで?なあ~、そんな顔せんといてや、
もしかして、人間になったワテの姿がイケメン過ぎて眩しすぎて
照れとるんとちゃいます?……そうやなあ~、そうなんやろ?な、
ユリシスはん……」

巨大トカゲモンスターと化したアノン。果実の力を得たお陰で人間の
言葉も喋れる様になり、ユリシスに自身の思いを伝えようとしているの
だが……。だが、ユリシスは変わり果てた醜い化物アノンの姿に怯え、
混乱し、錯乱し、取り付く暇も無い……。アノンはそれでも、ユリシスに
近づいて行こうとするのだが……。


「……いやああーーっ!……だ、誰か助けてーーーっ!!」


「ジャミル、この奥だ、……この先の部屋から悲鳴が聞こえたよ!」

「……間違いねえ、女王だっ!!」

「モンシャーモンシャー!!」

「女王様、まだ無事なんだわ、……良かった……」

(フン、あんなの一度痛い目に遭って懲りればいいんだってバ!)

「ま、またサンディはあ~……、でも、オイラも何となく、
そう思っちゃう気持ちもまだ少なからずあるんだよねえ~……、
駄目だなあ~……」

ダウドがそう言う様に、実際4人の心の中は複雑な心境であった。
だが、元国王の幽霊の願いを叶える為、ユリシス女王を
救出しなければならない……。

「さあ、ユリシスはん、ココなら誰にも邪魔されへんで、
さあ、ワテと一緒に結婚式をあげるんや、旅立ちの時やで、
……ユリシス女王はん……」

「……いやああーーーっ!!」

アノンは醜いイボだらけの腕を伸ばし、手をユリシスに差し出す。
ユリシスは涙で溢れ、視界が見えなくなる状況の中で、再び孤独の
闇に捕らわれようとしていた。……やはり、自分は永遠に一人なのだと。
……誰も自分など愛してくれる者など誰一人いない……。そう思いながら、
静かに目を瞑った……。

「やめろおおーーーっ!!」

「な、なんや……?あっ!?」

「あ、あなた達、どうして……」

ユリシスは驚いて目を見張る。現れた4人の姿に……。その人物達は
散々自身が嫌がらせをした者達である。その者達が、一体何故、本心は
女王を嫌っている城の近衛兵でも助けには来てくれないであろう場所に
来てくれたのか、唖然とするばかりであった。

「黙ってな、今、助けてやるからっ!……本当は俺らだってアンタを
許した訳じゃねえぞ、けどな、忘れんなよ、アンタを心配してくれてる
奴がいつも側にいるんだって事をさ!」

「……わ、私を……?ああっ!?」

「ジャミルっ、……女王様がっ!」

アイシャが叫ぶ。……アノンがユリシスの身体を掴む。拘束したのである。
ユリシスの首がガクッと横に傾く……。

「アノン……、お願い、やめ……、て……」

「すまへんなあ、けど、ユリシスはん、今は暫く眠っててさかいな、
こいつらを大人しくさせますんでなあ、……ワテとユリシスはんの愛を
邪魔をするもんは……、容赦せんで……!!」

「……あ、愛だと……?こいつっ!!」

豹変したアノンは気絶したユリシスを静かに地面に降ろした後、4人を
鋭い目で睨み付ける。何としても、女王を救わなければならない。
……本当は誰よりも孤独で寂しがり屋の女王様を……。

「……邪魔させん、絶対に……、わてとユリシスはんの仲を引き裂こうと
する奴らは……、わてはユリシスはんと結ばれる為、あの果実の力で
人間になったんや、おい、お前ら城の奴らに嫌々頼まれてユリシスはん
取り戻しにきたんとちゃうんかいな?」

「へ?に、人間……?」

「ジャミ公、こいつアブねーよっ!マジで自分が人間だと思ってんじゃん!
……きゃーーっ!?」

「なんや、おかしなガやな……、こんなモンまでおるんかいな、
まあええわ……」

(ちょっとッ!誰がガなのよッ!アンタらこんな化物さっさとやっつけ
ちゃいなさいヨーっ!)

勇ましく飛び出て来た物の、アノンの凄まじいドアップ顔に
耐えられず、サンディ直ぐに引っ込む。何やってんだかと
ジャミルは思ったが……。

「こんなモンじゃないモン!モンはモーモンだモンっ!!」

「……ジャミル、アノンに分からせなくちゃ、……人間になんか
なってない、なれないんだって事を……」

「ああ、鏡見せてやらなくちゃな、でも、その前にっ、仕置きだっ!
ダウドもアイシャも準備は出来てるかっ!?」

「……えうう~、はあーいっ!」

「アノンちゃん、あなたの為よっ、可愛くて小さなあなたに戻って!!」

アノンは自分の目の前で武器を構える4人組に又も不思議そうな顔をし、
首を傾げた。……こいつらが明らかに自分を倒そうとしているのは
理解出来るのだが……。

「お前ら何言うとるんや!わては人間になったんや!世界一の
イケメンや!ユリシスはんはわてが貰う!嫁さんにするんや!
もう絶対にひとりぼっちにはさせへんでえーーっ!!わてが必ず
幸せにしたる!!お前ら覚悟せえーーっ!!」

「ア……、アノン、お前……、うわっ!!」

切れたアノンは手始めにジャミルを足で強く蹴飛ばし、ジャミルは
遠くにおっ飛ばされた。慌ててダウドがフォローに行こうとするが、
アノンに爪で頭部をざっくり切り裂かれ、直ぐに自身も治療を
しなければいけない状態に……。

「い、いたたた……、血がああ……、でも、ジャミルを……」

「ダウド、薬草をっ、……い、いやあーーっ!?」

「……アイシャっ!!今行くよっ!!」

アノンは容赦せず、次はアイシャに襲い掛かり、身体を吹っ飛ばすと
壁際まで追い詰めた。アルベルトは慌ててアイシャ救出に向かうが、
アノンが地響きを立て、アイシャの前に立ち塞がると、アルベルトに
声を掛けた。

「もう帰らんかい、わてだってオニやないんやで、このまま大人しくすれば
この子にも別に何もせえへんわ……」

「ふ、ふざけるなっ、こいつめっ!!僕らは何が何でもユリシス女王を
連れて帰る!」

「……ほお、人が親切に忠告してやれば、もうこっちも容赦せん
さかいな……」

「ちょっとおお!ジャミ公っ、アンタ何ショッパナからひっくり
返ってるワケ!?しっかりしなさいようーーっ!向こうが大変な
コトになってんじゃん!」

「わ、分かってんだよっ、サンディっ、いたたた……」

対峙し、にらみ合うアルベルトとアノン……。だからお前、
人じゃないだろとアルベルトは心で密かに思うのだった……。
其処に……。

「モンーっ!」

「はっ……、モンっ!ダウドはどうしたの!駄目だろっ、い、今
こっちに来たら……」

様子を心配したモンが飛んで来てしまったのである……。

「ダウドが少しお休みしてる代わりに来たモン!モンもやるモン!
シャシャシャのシャアーーっ!!」

「あたーーっ!?こ、この、空飛ぶ豆腐めーっ!よくもやりおった
わいのーーっ!!」

「と、豆腐……?プ……」

モンはカオス顔モードでアノンに噛み付く。モンの牙攻撃に面食らった
アノンはモンをおっ払おうと奮戦するが、モンは余裕でアノンの前を
ふよふよ飛んで挑発する。

「モンっ、此処はもういいからっ!早くダウドの所にっ!
……ああっ!」

「♪モン、モン、モン、……モキャーーっ!?」

「でへへ、捕まえたでえ~……」

アノンは飛んでいるモンを爪でバシッと引っぱたくと、ついに
両手でモンを捕獲し、顔をぐにょっと掴み、そのままバカ力で
潰そうとする……。

「へっへ、兄ちゃん、動いたらアカンで、少しでも動きよったら
この糞バエのツラを、手と手で挟んでアッチョンブリケに
したるさかい……」

「こ、このっ、……くそっ……」

モンを人質……、嫌、モン質?に取られてしまい、アルベルトが
歯がみする……。アノンの後ろには壁に押しつけられたままの
状態のアイシャもいるんである……。

「アルーーっ!ちょっと避けろおおーーっ!!」

「う、うわっ!?」

アルベルトが慌てて首を引っ込め、地面にしゃがむと同時にジャミ公が
突っ込んで来た。そのままアノンの腹にキックを噛ます。さっき蹴られた
分の仕返しも含まれていた。

「……おおおーーっ!?よくも、や、やりおったなあーーっ!?」

「……モンちゃんを放すのようーっ!えーいっ!」

動きを封じ込められてばかりではいられない。壁際のアイシャも
必死に抵抗し、後ろからアノンへとヒャドを放出。アノンの身体は
凍り付き、掴んでいたモンの身体を手放す。……地面に落ちそうに
なったモンをアルベルトが慌ててキャッチ。

「モンっ、大丈夫かい!?モンっ、……モンっ!!」

「……ぐにゃら~、モンはだいじょーぶモン~……、ふにゃふにゃ……」

アルベルトが必死にモンに呼び掛ける。潰され掛かった物の、
どうにか無事らしい。

「みんなあ~、お待たせしてごめん~!ほい、スクルトーーっ!
……は、オイラ、使えないから……、連続ーーっ!スカラ、スカラ、
スカラーーっ!!」

復活したダウドも駆けつけるとすぐにスカラ連打で全員に掛け捲り、
防御力を上げた。

「わりィなあ、ダウド、手間掛けさせちまって……」

「……ひいいえええ~、ぜ、ぜーぜー、疲れたああ~……」

「……おのれええ~、わては負けん、負けへんでええ……、
おおおおーーっ!!ユリシスはんはわてが守るんやあーーーっ!!」

「きゃあ!?こ、氷がっ!!」

だが、アノンは力を振りしぼり、自分を包んでいる氷に自ら
炎の息を掛けて溶かし、氷漬けから解放された後、怒りの形相で
4人を睨む……。

「わわわ~!怒ってる、凄い怒ってるよおお~!!」

(キャー!ア、アタシもう知らないーーっ!!)

「お前ら下がってろ、後は俺がやるっ!」

「……ジャミル、だ、駄目だよっ、君一人じゃ……」

「ちょっと隙を見せちまった……、畜生、もうブチ切れ強行突破だっ!
何が何でも絶対に認めさせてやる、……お前は人間じゃねえんだって
事をな……」

「何ブツブツ言うとるんや、早うやられる準備せんかい、小僧!!」

「ジャミル、無茶しないでっ!!」

「……大丈夫だ、ええーーーいっ!この糞トカゲめえーーっ!!」

ジャミルは叫びながら山賊のサーベルを柄の方に持替えると、
アノンの巨大な腹目掛けて突っ込んでいった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 39

zoku勇者 ドラクエⅨ編 39

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-02-16

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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