ストーリー

ストーリー

小説です。

策戦

#与える 歓成(かんな)
地上では、本川はいつも棘のあるバリアを張っている。学校の教室で僕が話しかけても、彼女は「何? 用ないなら話しかけないで」と冷たく言い放ち、折りたたみ携帯の画面に視線を戻してしまう。 だけど、地下鉄のホームで僕を見つけると、彼女は小さくため息をつきながらも、僕が隣に座ることを拒まなくなっていた。 ガタゴトと激しい金属音を立てて、電車が駅を出発する。 窓の外の景色が、コンクリートの殺風景なトンネルの壁へと切り替わった。 本川はブレザーのポケットからガラケーを取り出し、アンテナマークをじっと見つめている。三本立っていたバリ五のアンテナが、一本になり、やがて完全に消えて――画面に『圏外』の文字が浮かび上がった。「あーあ、また圏外。ほんと使えない」 彼女はパタンと派手な音を立てて携帯を閉じると、それをバッグに放り込んだ。 地下鉄が駅と駅の間の長いトンネルを走る、およそ三分間。 それは、地上からのメールも、着信も、すべての繋がりが遮断される、僕たちだけの『空白の時間』だ。「……地上にいるとさ、息が詰まるんだよね」 本川が、電車の網棚の上の広告を見つめたまま、ぽつりと言った。騒音にかき消されそうな、小さな声だった。「みんなに話を合わせなきゃいけないし、携帯が鳴ったらすぐ返事しなきゃハブられるし。学校って、ずっと誰かに見られてるみたいで疲れる」 彼女が自嘲気味に笑う。いつもの突っぱねるような態度はどこにもなかった。 僕はポケットから青いMDプレーヤーを取り出し、液晶リモコンの再生ボタンを押した。淡いエメラルドグリーンの光が、僕らの間のわずかな隙間を照らす。 イヤホンを引き抜き、片方を本川の前に差し出した。「これ、聴く?」「……何それ」「ミスチル。僕が一番好きな曲」 本川は少し躊躇(ためら)ったあと、「一枚ちょうだい」と言うように、細い指先でイヤホンを受け取った。それを自分の右耳に差し込む。 僕の左耳と、本川の右耳が、一本の細いコードで繋がった。 車内の騒音を割って、桜井和寿の掠れた歌声が僕らの耳の奥に流れ込んでくる。『どれくらいの値打ちがあるだろう? 僕が今生きている世界に』「……いい曲だね」 本川が、僕の方を向いて小さく微笑んだ。至近距離で、彼女のシャンプーの甘い匂いが鼻をかすめる。心臓がうるさいくらいに跳ねたけれど、彼女に気づかれないように僕は前を向いた。「この圏外の時間、僕は結構好きなんだ」 僕は、自分の耳に響く音楽に声を乗せる。「ここなら、誰の目も気にしなくていいから。本川が無理して笑わなくてもいいし、僕も冴えない自分のままでいられる。……だから、しんどい時は、ここで半分こしよう。音楽も、その、息苦しいやつも」 本川は何も言わなかった。 だけど、一本のコードの先で、彼女が小さく頷いたのが分かった。 やがて電車が減速し、窓の外に次の駅のホームの明かりが差し込んでくる。 本川のバッグの中で、ガラケーが『ブブブ』と小刻みに震え、センターに届いていたメールの受信を知らせた。外の世界との繋がりが、また戻ってくる。 本川は名残惜しそうにイヤホンを外し、「ありがと」と僕の手のひらに返した。 液晶画面を見つめる彼女の横顔は、さっきよりも少しだけ柔らかくなっているように見えた
 ストーリーをさらに深めるための次の展開案この「圏外の共有」を経て、二人の距離は「地下鉄限定の特別な関係」へと深まります。ここから後半に向けて、物語をどう動かしていくかの選択肢です。展開案①:地上の変化地下鉄で孤独を「分かち合った」ことで、学校(地上)でも本川が他のグループに無理に合わせるのをやめ、自分の意志で行動し始める。それを見守る歓成。

1. 【地下鉄から地上への滲み出し】学校での変化:地下鉄で「息苦しい時はここで半分こしよう」と言われた本川は、学校(地上)でも歓成と目が合うと、ふっと張り詰めた表情を緩めるようになります。クラスの女子グループが誰かの悪口や噂話で盛り上がっている時、本川はこれまでのように無理に話を合わせず、窓の外を眺めるなど、少しずつ距離を置き始めます。歓成の視点:教室での本川の小さな変化に気づくのは、世界で歓成ただ一人です。声をかけ合うことはなくても、二人の間には「地下鉄の圏外の時間」という確かな絆(秘密)が共有されています。2. 【地上での衝突と、最大の危機(試練)】事件の発生:本川がグループに同調しなくなったことで、女子グループの間で「最近、本川なんか冷たくない?」と孤立し始めます。ある放課後、本川は教室や渡り廊下でグループのリーダー格から冷たい言葉を浴びせられ、深く傷つきます。歓成の葛藤:歓成はその場面を目撃しますが、クラスでの自分の立ち位置や、ここで介入したら余計に本川が窮地に立たされるのではないかという不安から、その場で彼女を助けることができません。自分の無力さに激しい自己嫌悪を抱きます。3. 【クライマックス:再びの地下鉄、そして本当の分かち合い】状況:その日の夜、いつもの地下鉄のホーム。本川はいつになくボロボロの表情で、声をかけても完全に心を閉ざし、ブレザーのポケットに手を突っ込んだまま俯いています。歓成の行動:電車が走り出し、いつもの「圏外のトンネル」に入った瞬間、歓成は昼間に助けられなかったことを本川に心から謝罪します。「ごめん、僕、怖くて動けなかった」と、自分の情けなさ(弱さ)を先に分かち合います。見せ場(感情の爆発):歓成が自分の弱さをさらけ出したことで、本川の瞳から涙が溢れます。本川は「歓成のせいじゃないよ……。でも、すごく怖かった」と本音を吐き出し、歓成の手をぎゅっと握り締めます。ここでいつもの「HANABI」が二人の耳に流れます。『もう一回 もう一回』という歌詞が、傷ついた二人が地上で再び立ち上がるための応援歌(アンセム)へと変わる瞬間です。
あれから、何年かの月日が流れた。 僕たちの折りたたみ携帯は、いつの間にか液晶画面が大きくなり、地下鉄のトンネル内でもアンテナが一本、二本と、電波を拾うのが当たり前の時代になっていた。もう、あの頃のような完全な『圏外』は、この街のどこにも存在しない。 ――四月。 僕は無事に就職が決まり、社会人一年目のスタートを切っていた。 サイズがまだ体に馴染まない新しいリクルートスーツを着て、僕は都心のオフィスビルの雑踏を歩いている。周りを見渡せば、洗練された大人の世界が広がっていた。 すれ違う先輩社員たちは、誰もが都会的で、仕事ができて、とても魅力的に見える。 その時、一人の女性社員とすれ違った。すれ違いざまに、ふわりと、どこか懐かしい甘いシャンプーの匂いが鼻をかすめる。(あ……) 僕は思わず足を止め、振り返りそうになるのをぐっと堪(こら)えた。 胸の奥の、ずっと深いところにしまってあった記憶が、その匂いだけで一気に呼び覚まされる。 脳裏に浮かぶのは、あの薄暗い平成の地下鉄。 世界から切り離された三分間の暗闇。 一本のイヤホンコードを半分こして、小さな青いMDプレーヤーから流れるミスチルの「HANABI」を一緒に聴いた、あの生真面目で、少し棘があって、だけど誰よりも傷つきやすかった本川の横顔。 学校(地上)という息苦しい戦場で、僕と孤独を半分こしながら、少しずつ自分らしく変わっていった彼女の姿。 オフィスビルのガラス窓の外には、抜けるような春の青空が広がっている。 僕はブレザーの胸ポケットを上からそっと押さえた。そこにはもう、塗装の剥げた青いMDプレーヤーは入っていない。だけど、あの圏外の時間に彼女と分かち合った確かな体温は、今も僕の心臓のすぐ近くに残っている。「本川」 声には出さず、心の中でその名前を呼んでみる。 僕がこうして社会人の第一歩を踏み出したように、本川もどこかの街で、新しい自分を見つけて成長しているだろうか。あの頃よりも、もっと綺麗に、自分らしく笑えているだろうか。 この広い地上を歩き続けていれば、いつかまた、どこかの駅のホームで、あるいは偶然の雑踏の中で、彼女に再会できる日が来るだろうか。 ビルの壁面に備え付けられた大きな液晶ビジョンから、聞き覚えのあるイントロが、街の喧騒に混ざって微かに流れてきたような気がした。『もう一回 もう一回』「よし」 僕はネクタイを少しだけ締め直し、前を向いて歩き出した。 まだ何者でもない社会人一年目の僕だけど、あの夜の光が僕の中にある限り、どこまでだって歩いていける。

昨日の夢に弄ばれてる

普通、普通に普通。

出来合いの愛で気合い入れる

スーパーのお惣菜売り場には毎日品数豊富なメニューが並んでる。
こんな風に特定のSNSでやり取り続け出会いを見つける。サイトの受信をタップして相手の顔とメッセージを見る。まるで食べ歩きする感じだ。

ハムスター

この話は此出さんの恋の進展した話。
此出さん遂できた彼女さん圧迫で押し潰す。
とんだ巨漢だった。言葉通りにすると思いきや、言葉を取り良いように受け取った。
彼女さんを押し倒し、上から近寄る。
彼女さんは「おいで」と言う。此出さんはそのまま腹で押し潰した。


この作品は此出さんにまつわるものです。エブリスタへお越し米沢文庫港の「二度目のデート」をお読みください。

殺意

強い殺意をもって挿し殺されました。怨恨ではありません。頼んだか言えば、頼んだかも知れません。だが、死因は胸部圧迫によるもの。確かに凶器は刃渡り10センチの名刀。もう少し声をあげてもよかったのですが、次第に窒息していきました。くるしい思いだけしました。
動かないでいると「風呂」と急かす。洗いたい気持ちは分かりますがゆっくりしたい。その夜は添い寝したような気がします。
相手は自分より若い国籍不明。1人暮らし、同性の友達と仲いい。殺し屋ではなかそう。団地で普通に日常を過ごしてる。職場は飲食ではない。
機敏なのか適当なのか、表面で走ってる。
数日後に連絡を取ってみました。すると思ったより早くフランクな返事が返ってきました。なら、連絡してくれればと思いましたが、彼は男なのでしないんです。彼から連絡…しないんです。
男かどうか問うと意味変わってきます。‘交際’となる。また、男は6歳児だというのも世界共通と確信に変わる。友達になれないのかと諦めてくる。
次の約束をしたかったが通じない。連日の雨。連絡しなかった。夜だという理由が大きい。何の約束。‘交際’という体なら金銭になる。そんなことじゃない。殺されて終わりだと思いたくなかった。
きれいな晴れになった休日の夕方、メッセージを一つ送ったが音沙汰なし。日曜日は会話できない。ここまでくれば、あれは抵抗しなくて良かったとさえ思う。1回でマックスを味わった。さて、夜が明けたら何と送ろうか。もちろん決まってる。あいさつから入って、休日の優先を探ること。今まで誰かに聞かれたことを丸々言えばいい。
もしかして、もしかしなくても。見かけ倒しだろう。あの殺意はもうない。
言葉通じればいいは安易だったかもしれない。
返事は「何?」だからなあ。掘り下げる気にならない。
一日、ヘルプで呼ばれ普段会わない人と仕事した。滞りなく仕事した。進展があったのはその翌日。
職場に行くと此出さんがこちらに来てにこにこしながら話す。どうやら、この数日で事態は展開したらしい。知らない間に。その国籍不明の若い男性が自縛でシフトを外されていた。どんな自縛かは知っていた。にこにこっぷりの意はおそらく、繰り上がり感いっぱいだから。此出さんは5年先輩の中年男性。ホウレンソウはしてくれる仲間。
聞くやいなや、となれば、連絡してやろうと思う。すると「やあ」すぐに返事が来た。事態のこと問いて説教でも、する気はなかったが察してないのは分かった。
でもこれ、此出さん知ってそう。恥や言い訳は無い。積もる話でもない雑談かとも思ったが、かなり重要な報告だったことに気付きたのはもっと後だ。帰りは近くの公園で、此出さんと荷造りして駅へ向かいました。
仕事は順調だ。季節感ありすぎて、温度調節してる。
数ヶ月ぶりに道で山田さんにあった。距離があったので手を振ったが返事なし。見えてるだけ。山田さんは体形が大きく物腰が柔らかい人、同僚の此出さんと年齢が近い。荷物を端に置く。路肩に椅子をつくり並べて、あれこれ出来事を話した。会ってない間の仕事のこと、会社のスタッフのこと。
そのうち此出さんが来て、こちらから挨拶。
数時間後、また現地でと言いあとにする此出さん。10m15mまっすぐ歩いてる。
翌日、三度目を果たす。初めて顔を見る。殺した人の顔を知ります。挨拶してもこちらを見ない。
「お名前は」
「サトウです」
そのままボードを渡す。
質問に答えてくれた。それでよかった。名は佐藤勝(しょう)。
彼の部屋で彼はテディベアになってたので近寄りました。すぐスマホ画面を見せて来ました。瞬時に理解した。その場にしゃがんで目を見ようとしましたが、俯いてる。何それ知ってんの!?と思いながら。
返り討ちにされてしまいます。
駅へ向かう道。写真を撮ろうと言い出してくる。歩きながら写真を撮る。
改札口に着くと手を離し、改札を通ると「ありがとう」と大きく手を振る。電車の中、座ってる。「ありがとう」と送って、待受を此出さんとのツーショットにする。
中略
韓国でもベトナムでも中国でもないので国籍不明。分かるのは年下ということ。モデル体形。
もう一度野球してる姿が見たくなった。
2ヶ月前
あぐらかいて知人と電話してる。
近寄ってボードを渡す。
「うるさい」
「うるさくない」即答して黙らせる。
もらって去る。これが彼との初めてのやり取り。20分後に彼を見ると野球をしてた。コスタリカに飛ばしてやろうと思った。野球で稼げばいいのに。
1ヶ月前
車内で電話してる彼。電話を終えたときに注意した。両肩に手を置いて口元を見ながら「電車の中で電話しちゃ駄目だよ」。手を離す。
彼はスマホ画面を見せ、スマホゲームを始めます。腕に軽くしがみつき、画面を見る。夢中になって見るていると、向かいに座ってた中年女性が騒ぎ出した。「淫らだ不潔、若い子は。国が国が。」と。知らないふりした。安全面で今なにを。
「次の駅で乗り換えようね」そう言って車両を変えた。二人座れた。シートは席になってて横向きになりにくかった。
下から顔を見ると斜めで合わしてきた。
「キスしたいならしてもいいよ」
言ってみた。数秒は何もなかった。キスは唇じゃなかった。
地下鉄を乗り換えた。急行の電車が来るのを5分待った。車内は座れなかった。10駅して1つ空いて座らせてくれた。無言の仁王立ちのまま5駅、隣が空いて座る。降りる駅は肘で起こしてくれた。
コンビニに行きたいと言われ、店内で翌日食べるおにぎりを1つ買った。鞄にしまうとき寄ってきて知られた。店の外で、出てくるのを数分待った。出てくる。歩くとき手を握ったかな。それで胸部圧迫され挿し殺されました。
その後人伝にその人がどうなったか知り、完全に差し違えたことを悟る。車内で手を握り注意したことが。これほどまでに傾くとは。傾いてくれていい。差し違えて、その先に何があるか。何もないだろうから哀愁立ち込める。
どうもこうも頭にある。可もなく不可もなく、たまに負担ながら日々過ぎる。
再会を果たしたのは10月。待ち合わせ場所に先に来て、雨の用意をしようとしゃがんでいた。後ろを見たら来たばかりか、居た。会えてうれしいと英語で言おうか。

ママのかお

抱っこ紐の中でママを見る。ぼくはママをみてる。ママずっとななめ下をみてる。知らないおねえさんと目が合いにこやかに笑ってくれた。目はよくみえる。人のかおだけ分かる。感情はないから、ぼくは何も話さない。ママはだまったまま電車にのる。ずっとななめ下。何も聞こえないような。ぼくの声も聞かないことが一目で分かる。ママのことすきねと先生に言われる。そういうことは聞きたくない。
知らない中年女性が手を振ってるのをみただけ。ママに押されベビーカーが動いてる。
パパの帰りは少しおそい。それまで小さく聞こえるラジオの音。口も聞かないというよりか酷くかんしゃくを起こしてくる。パパが帰って来ても。話を聞いてもらえてないと思ってる。ぼくだって思うけど、あきらめてる。そのうち物を投げてくる。パパはしゃがんで抵抗しない。後から知ったが、男は強いからやったら言われるらしい。ぼくは何もしなかった。
デパートの下り階段でママはぼくの手を離した。すたすた歩くママの背を見ないようにして、足を出す。いつから黙ってるんだっけ。
ママのかおは顎しかみないようにしてる。妹ができた。実感はない。ママがいないときにパパはおにぎりをちぎって分けてくれた。大した会話はしてない。パパと過ごしてたのにママが来て二個目のおにぎりを奪い取って捨てた。ぼくはこっそり拾って食べた。いつもママといるからパパのこと知らない。だけど、その日パパのこと知った気がした。それでもパパは休みの日はどこかに連れてってくれる。家族旅行だ。行き先でママがボイコットみたいなの起こした。ぼくはママを無視した。夕食はジュースを飲んだそれ以来、旅行には行かなくなった。
知らない人に香水のにおいをお見舞いされる。思わず手を当ててしまった。ママのにおいだったから。 すれ違いざまだった。そう、すれ違いざま、ママと。感情が前に出るママとすれ違ってる。妹と同じにおいだった。

[イヤママ・リトル]

ストーリー

お読みいただきありがとうございました。

ストーリー

起用もの

  • 小説
  • 短編
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 策戦
  2. 昨日の夢に弄ばれてる
  3. 出来合いの愛で気合い入れる
  4. ハムスター
  5. 殺意
  6. ママのかお