『duplicity』

終焉の幕は音もなく下りて
演者と観客は切り離される


『duplicity』


間違いなく幸せなのだと
どんな時でも疑いもしなかった
貴方だけは裏切らない
そんな途方もない信頼を

始まりと同じ優しさで
冷たく残酷に貴方はそれを
ただ実行に移しただけ
アタシを取り残して

恨んでるかなんて聞かないで
恨んで憎んで愛したの
誰に止められても信じたの
まだ終われないと死ぬ程もがいて

殺されるなら貴方の手がいいと
泣きながら叫んで縋って
それでもあの目に見下ろされれば
もう何もかも遅いのだと悟る

どこで間違えてしまったの
どこまで戻ればいいと言うの
何度やり直しても貴方はきっと
このシナリオを選ぶだろう

だったらアタシは無理矢理にでも
舞台に上がることを選ぶ
心をくれないと言うのなら
せめて亡骸だけでも頂戴

眠る貴方を抱き締めて
アタシはまた幸せになれる
幕の裏で冷たくなった身体が
疑いようもなく愛を語るから

貴方の幸せは関係ない
これはアタシの幸せの物語
しくじったと呟いたなら
愛してると言ってあげる



「始めから君が幸せになる為のシナリオ」

『duplicity』

『duplicity』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-17

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