デキすぎ年上女性上司とデキそうです…!
初出社の朝!
いよいよ今日から!
ボクはシーザー・マテリアルズ・ジャパン社という、外資系化学メーカーの、晴れて一員となるのです。
配属先、役職は、業務部の在庫流通担当です。
製品在庫の管理に、「N−SAP」という新しいプログラムを導入することになり、その専任スタッフとなります。
初出社の朝、始業時刻は9時でしたが、ボクは7時頃にはオフィスの目の前に居ました。
新入りが、始業時刻間際になって、既に仕事に入り始めている諸先輩方の中に、のうのうと入って行く訳には行きません。
良し、早目に入って、先ずはデスク周辺を整えよう。そして、顔を合わせた人達にはしっかり挨拶するようにしよう。
ボクの配属する業務部門は、入口から最も奥の一画にありました。
オフィス内は、中央一帯は無数の小さなパーティションで区切られ、周囲にはマネージャークラスの人たちの個室ブースが並んでいます。
個室とは言っても、壁面の、腰から上くらいはすりガラス、天井下はたっぷりと吹き抜けになっています。
以前勤めていた会社は古めかしく、閉塞感が半端無かったので、これは良いなぁ、と。
で、何となく、マネージャー室を一つ一つ見ながら奥に向かっていると、
┏━━━━━━━┓
■情報企画室
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というプレートの貼られた個室がありました。
「キミは、『情報企画室』という部署と密に連携して仕事をして行くことになる。実質、半分は情報企画室の人間になるようなものだ」
上司となる早乙女部長からは、そう言われていました。
「…室長は生田さんという人で、今日引き合わせようかと思ってたが、出張中らしい」
イクタ室長か、良い人だと良いな…
などと、出社途中も思っていました。
…と、すりガラスの向こうに、突如人影が現れました。
低い姿勢で居たのが、立ち上がった、そんなふうに見えました。
あ、もう出社されてるんだ…
ここは、早速挨拶しておこう。
イクタ・シツチョウ、イクタ・シツチョウ、ボクは何度か発音の練習をしました。
そして身なりを確認して、扉をノックしようとした瞬間―
目の前の扉が、突如パッと開かれました。
「…あら?」
そこには、ショートボブの女性が立っていました。
扉を開いた途端、そこに人が居たので、少々驚いた様子でした。
一方ボクの方も、その女性の装いに目が行って、思わず絶句しました。
…タンクトップに、レギンスパンツ姿だったからです。
…ぴっちぴち、しかも布面積メッチャ小さい。
その、小さい布で被われている、
…ボディが。
ボディが!!
何デスカそれは…
ノックをしようとした姿勢のまま凝固しているボクに、その女性は、
「…何かしら?御用?」
美しい顔に薄っすらと笑みを浮かべて、その人は言いました。
こ、この余裕は…一体?
この人、自分が今どんな格好してるのか、自覚してないのか…?
ボクは当惑・混乱しながらも、どうにか返事をしました。
「あ…あの、今日から、業務部で、在庫流通担当スタッフとして働かせて頂くことになりました、あの、三木と申します」
「三木さん、あぁ…N−SAPのね?早乙女さんから聞いてます。今日からなのね」
「はい…」
「何か問題でも?早乙女さんから何か言われた?」
「いえ、いえ、ご挨拶だけでもと思って…」
「あぁ、そうなの。どうぞ、入って」
「はい、失礼します…」
ボクは中に進んで行きました。
女性はデスクの前に立つと、
「私は情報企画室のイクタと言います。どうぞよろしくね」
やっぱそうなのか…
最初見た時には、秘書?事務スタッフ?などと思ったのですが、どうやら生田室長ご本人らしいです…
「はい…三木ノボルと申します。どうか、よろしくお願いします…」
…マネージャー室に居ると言うことは、部長クラスです。
簡単に言えば、かなり偉い訳です。
普通に考えるなら、50代以降、どんなに若くても40代以降の人がなるもの、とボクは思ってました。
しかし、生田室長は、どこからどう見ても、30歳になってるかなってないか位なのです。
その上、偉い人=男性という固定観念も、まだボクには厳然とありました。
非常に若くて、美しい女性マネージャー…
しかも、仕事場でこの格好…
ボクは、今後この人と、かなりの程度、密に仕事をして行くことが、決まっているのです。
大丈夫なんだろうか、これから…
動揺して、依然強張っているボクの表情から、生田室長はチラッと自らの胸許を見遣って、状況を漸く把握したのか、
「…あ、ごめんなさい、何か、びっくりしたものだから、すっかり忘れてた」
生田室長は、照れ隠しか、ちょっと前髪をいじりました。
「こんな時間じゃ、普通まだ誰も出社して来ないから、ね…」
と釈明すると、部屋の隅を指差しました。
「…いつも早目に出社して、結構しっかりストレッチをするの。仕事をし始めると座りっ放しになってしまうから」
見ると、確かに、部屋の隅にマットレスが敷いてあります。
「…はぁ」
「…そうそう、で、そのN−SAPなんだけど…今日中には仕上げて、明日から打ち合わせに入れるようにしようって思ってたの。それで良いかしら?早乙女さんにもそう話してあるけど」
「…あ、はい、よろしく、お願いします」
「もし良ければ、アウトラインだけでも、予め少し説明しておきたいけど、今ちょっと時間取れる?何か予定があって早く出社したの?」
「いえ、特に何もありません。是非、お願いします」
「そしたらね、SS会議室っていう小さな部屋があるからね…ここを出て云々」
と、生田室長はSS会議室の場所を教えてくれ、先に行って待ってて欲しいと。
で、ボクは言われた通りにしました。
SS会議室は、頑張ってもせいぜい4人程度しか入れない、極狭く、防音性が高く、完全に密閉された一室でした。
空調はありますが、ちょっとムアッとしていました。
面接をやった会議室も狭かったけど、もっと狭いのがあるんだな…
面接のことなど思い出していると、バリキャリ然という恰好に着替えた生田室長が、資料を手に入って来ました。
「ごめんなさい、資料、コピー作ってると時間かかるから、取り敢えずこれ一緒に見ながら説明するわね?」
「はい」
「…暑くない?」
「はい、大丈夫です」
「そう、まだ早いから余り空調効いてないのかしらね…」
生田室長はそう言うとジャケットを脱ぎました。
そして、ボクの直ぐ横に椅子を引き寄せると、腰を掛けて、説明を始めました。
…参ったぞ。
この小さな会議室は、小声で話しても、うるさく聞こえる程です。
なので、説明を続ける生田室長の声は、抑え気味です。
その抑え気味で落ち着いた声は、淀み無く、わざとらしくないのに色っぽく、この限られた空間を一杯に満たします。
生田室長からそこはかとなく発せらるフレグランスもまた、一帯にほわぁっと漂います。
生田所長は、時折、資料を指す、白魚のような美しい手を休めて、
「…どう、ここまでの説明、解る?」
と、潤んだ視線をこちらに向けて尋ねて来るのです。
その度に、夢心地のボクはハッとして、視線を、資料から真横に居る生田室長に移します。
相手の顔を見ないまま返事をするのは失礼だと思うからです。
で、真横に居る生田室長の美しい顔を見る、そうすると必然的に、たわわな果実も視界に入って来ます。ホントに、お顔と同じくらいの大きさのものが2つ並んでいる感じです。
見える物、聞こえる物、そして匂いまで…
折角の説明の内容の一つ一つが、頭に入る前に、どこか遠くに追いやられてしまう…
こんな完璧過ぎる女性と、密閉された小さな箱の中で…
嗚呼、変になったらどうしよう…
出社初日の、まだ始業時刻前だと言うのに…
と、こんな調子ですから、マジで、参ってしまうのです。
「でね、当面は、私と三木さんの2人だけで、2つの工場の生産予定と、全部の営業所から上がって来る販売予定を…」
それでも説明は続きます…
「…細かいことは明日以降にするけど、ここまでで、何か訊きたいことある?」
ボクは、生田室長との連携・連絡について少し訊こうとしました。
「…えっと、イクタチツ…イクタチツ、チョ…」
ボクは焦ってしまって、イクタ・シツチョウと上手く言えません。
生田室長はクスクス笑って、
「早乙女さんから聞いてない?…この会社はね、皆、『さん』付けで呼ぶ決まりなのよ、例え社長を呼ぶ時であっても。だから『イクタさん』で良いの」
「そ、そうなんですか…」
「…『イクさん』でも良いし」
「…イクさん?」
「私、『イクタ・イクヨ』って言う名前だから」
「あ、そうなんですね…」
「私自身は、実は『イクさん』って呼ばれたいのよね…昔から仇名は『イクちゃん』だし」
そして生田室長は、ポンと手を打ちました。
「そうよそうよ、三木さんは私のこと『イクさん』って呼んで?そしたら皆もつられてそう呼んでくれるようになるかも」
「…さて!ざぁっとだけど、こんな感じかしらね…」
と言うことで、生田室長改めイクさんは、一通り説明を終えて、ふぅっと息を吐くと、背筋を伸ばしました。
「ありがとうございます」
「オッケィ!じゃ明日から本格始動しましょうね」
「はい、よろしくお願いします」
「この資料、持って行って良いから」
ボクは資料を受け取ると、立ち上がりました。
「ごめんなさいね、何か飲み物でも出せば良かった」
ジャケットを纏ってボタンを止めると、イクさんが言いました。
「いえいえ、そんな…」
ボクは会議室の扉の方に歩き出そうとしました。
…と、イクさんは、サッとボクの目の前に立つと、首を傾げてボクの全身をマジマジと見渡しました。
「最初からちょっと気になってるけど…」
イクさんは、少しばかりの間ボクの身体をマジマジと眺めていました。
そして、そのままグルッとボクの周りを回って、ボクの真後ろに立ちました。
「あなた、大分猫背気味ね…良くないと思う」
「はい、良く、言われます…」
「それ、持ってる物、一旦置いてもらえる?」
ボクは資料や手荷物を卓に置きます。
イクさんは、ボクの後ろから両手でボクの両肩を掴むと、ボクの背中に、大きなお胸をギュッと押し付け、そしてボクの両肩をグッと後ろに引きました。
…ボクの身体のどこかが、ポキッと音を立てた気がしました。
しかしそれより何より…
…お、おムネ、おムネがぁ~っ!!
「…肩甲骨がね、開いちゃってるのよ」
「は、はい…」
「パソコンとか、ずーっと前屈みの侭でやってるとそうなっちゃうの」
「な、なるほど」
「時々ストレッチしないと」
結局、暫くの間、イクさんは、ボクを座らせたり立たせたりしながら、あれやこれやとストレッチを施しました。
その度にイクさんのお胸がボクの身体のどこかに押し付けられ、ボクはもう気が気ではありませんでした。
「…どうもごちそ…ありがとうございました!何だか身体が軽くなって、スッキリしました、驚きました」
イクさんが漸くボクを解放した時、ボクは心からお礼を言いました。実際その通りだったからです。
「どう致しまして」
「いつでもやって上げる」
イクさんは晴れやかな笑顔を見せました。
「じゃ、改めて、これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
会議室を出ると、オフィス内では、もう多くの社員の方々が出社し始めており、ボクは挨拶をしながら、業務部の自分の座席に向かいました。
そして、向かいながら、思いました。
イクさん、顔を合わせた直後位から、ほとんどずっと、顔を赤らめてたな、と…
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