『ノアール』

夜に紛れて訪れた貴方は
ロングコートの偉丈夫


『ノアール』


目を閉じた闇で思い出すのは
オブシディアンの瞳
じっとアタシを見たあの熱
焦がされて息もできない程

あんなにも熱いものがこの世に
存在してるなんて信じられないと
逸らしても逸らしても力づくて
引き戻される抗えない魅力

上手な嘘を操って心を奪う手管
時に本音を漏らすのも憎らしい
冷たい空気にツンとした鼻先を
人差し指の魔法で温めた

恋が恋として完結できるなら
貴方に惹かれはしなかった
いつか暗闇に突き落とされると
知っていても望んでしまう

大きな影から逃れる安穏より
全てを差し出して包まれてみたい
燃え盛るオブシディアンに
灰になるまで燃やし尽くされたい

彫刻の面影が急に緩んで
アタシの手を握るのを呆然と見てた
直接伝わる熱に目眩を覚え
引かれて気がつけば腕の中



「君から燃え移った炎で息もできない」

『ノアール』

『ノアール』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-09

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