スフィンクスの謎

究極の解答


 深夜の一人ぼっちの道、暗闇から突然スフィンクスが飛び出してきて、とても驚いた。
 走って逃げようとしたがスフィンクスはすばやく、簡単に追いつかれてしまった。

「逃げても無駄だ。今からクイズを出す。正解できなければ、お前を食い殺すぞ」

「せ、正解したら何をくれるんだい?」

「正解したら、お前は殺さない。お前は命が助かるのだ」

「そんなのフェアじゃないよ。僕が正解したら、あんたも何かするんだ」

「なんだって? まあよい。これまで2000年間、誰も正解したことのないクイズだ。そんなことがあるはずはないが、もしも正解すれば、私はお前の家来になろう」

「ほいきた」

「これがそのクイズだ。朝は4本足。昼は2本足。夜は3本足なのは何か?」

「うーん……、僕の家には『チャブ台』があってね。チャブ台って知ってる?」

「知っているさ。片付ける時に邪魔にならないよう、4本の足が折りたたみ式になっている小さなテーブルのことだな」

「そうそう。両親はどちらも朝早く出勤するし、お姉ちゃんも朝が早いから、朝食は僕一人でゆっくり食べる。狭い部屋だけど、僕一人だけなら、チャブ台の足を4本とも伸ばしてゆったり使える」

「それがどうした?」

「土曜日、僕とお姉ちゃんは昼前に学校から帰るけど、仕事の関係で、お父さんとお母さんも土曜日には家で昼食を食べるんだ」

「それで?」

「だから部屋の中はものすごく狭くて、チャブ台の足は2本しか伸ばせない。残りの2本は折りたたんだまま、押入れの中に半分入れて、なんとか場所を確保するんだ」

「なんだと?」

「夜になると、お父さんはまた仕事に出かける。だから家の中は少し広く、夕食はチャブ台の足を3本伸ばすことができる……。つまりクイズの答えは、『僕の家の土曜日のチャブ台』だよ」

 その後、

「お母ちゃん、スフィンクス拾ろたで」

 と僕が帰宅すると、

「また変なものを持って帰って。食費がかかるものはダメよ」

 と母はオカンムリになりかけたが、神獣は食事をしないと分かって一件落着した。
 仕事から帰ってきた父もスフィンクスを見て、

「わあ、これは美人さんだ」

 と鼻の下を長くしかけたが、母からジロリとにらまれて、あわててよそ見をした。
 小さなアパートの一室だけれど、その日以来『スフィンクスを飼っている家』ということで、近所でも有名になってしまった。

スフィンクスの謎

スフィンクスの謎

究極の解答

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-08

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