『供述』

君の為に生まれてきたんだと
痛々しいほどの告白


『供述』


恐れる気持ちも確かにあったと
振り返る今なら頷いてもいい
あの時はただ必死にもがいて
彼女の為に殉教する覚悟でした

不幸せで常に飾り立てた姿
僕は別段不幸でも幸せでもなく
安穏とした日々を過ごしていたので
彼女のそれがとても魅力的に見えたのです

少しずつ不幸せを取り除く作業に
すぐ夢中になって取り組みました
取り払われてゆく不幸せを彼女が
複雑な顔で見ていると知っていながら

あれは必要なものだったのです
無くなればすぐさま輝きを失う
不安に揺れる彼女の目を見て
僕は初めてそのことを痛感した

けれど彼女は責めませんでした
その寛大な心で僕を赦したのです
どこまでも深く赦しをくれた
愛です
深い深い愛なのです

報いるためにはこうするしかなかった
輝きを失った彼女を消して
まるで最初から何も無かったかのように
そうして僕はあのドアを閉めたのです



「彼女曰く、男はいつも勝手」

『供述』

『供述』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-02

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