『供述』
君の為に生まれてきたんだと
痛々しいほどの告白
『供述』
恐れる気持ちも確かにあったと
振り返る今なら頷いてもいい
あの時はただ必死にもがいて
彼女の為に殉教する覚悟でした
不幸せで常に飾り立てた姿
僕は別段不幸でも幸せでもなく
安穏とした日々を過ごしていたので
彼女のそれがとても魅力的に見えたのです
少しずつ不幸せを取り除く作業に
すぐ夢中になって取り組みました
取り払われてゆく不幸せを彼女が
複雑な顔で見ていると知っていながら
あれは必要なものだったのです
無くなればすぐさま輝きを失う
不安に揺れる彼女の目を見て
僕は初めてそのことを痛感した
けれど彼女は責めませんでした
その寛大な心で僕を赦したのです
どこまでも深く赦しをくれた
愛です
深い深い愛なのです
報いるためにはこうするしかなかった
輝きを失った彼女を消して
まるで最初から何も無かったかのように
そうして僕はあのドアを閉めたのです
「彼女曰く、男はいつも勝手」
『供述』