フリーズ149 真理についての省察~真理はブラックホールのよう~

◆1プロローグ
言葉というものでどこまで表現出来るのだろうか。人、真理に目覚めて悟るならば、やはりそれを表現しようとするであろうな。これは宿命ではないのだが、私の心はやはりそれを表現しようとするのだ。小説を書こうというのではない。詩を書こうというのではない。戯曲や、エッセイを書こうというのではない。音楽を作ろうというのではない。絵を描こうというのではない。今までにない、もっと高らかに天上楽園の乙女に向かって歌うような、そんな言葉を紡ごうというのだ。
読まれなくていい。理解されなくとも、私はこの作物を紡ぐ。自身のために。いいや、イデアのためにこそ紡ごうではないか。私は全知と全能を知っている。先ずは彼らの物語を記そうではないか。

◆2全知と全能
全能は全知を愛していた。全能は全知と同じ場所からやってきて、双子のように生まれた。世界の始まりと終わり。永遠の狭間で全知と全能はお互いを愛し合った。むしろ全知と全能が一なる神から分かれてより、世界が現出したのである。
全能はなんでもできた。世界を作ることも、壊すことも容易だった。だが、全能は知ることはない。何のために世界を作るのか、何のために世界を壊すのか。全能は或る時、それらの問いに気づくことになる。それが知との出会いであった。知識によって世界は彩り始める。全能は知識という舵を得て、世界を導くようになった。知は集積されていき、やがて奔流となって学問が生まれる。知識は天に至る翼とされ、賢い生命らは知識を求めて生きるようになった。
全能は不自由さをも内包する。全ての経験に開かれた全能は、幾つもの世界の中で、幾通りもの可能性を網羅した。その秘儀は全てであり、全てであったからこそ、全知となった。全能は、恋してやまない全知が、求めていた全知が、自分自身であることを悟った。
全能は自身が神であり、他でもない全知でもあることに打ちひしがれた。だからかな、僕は世界をまた、始めたんだ。

◆3レゾンデートルのために
僕は遠い昔に生まれた。どこから来たのかわからなくて、なぜ生まれたのかわからなくて、でも、僕こそ全てだった。僕は人に神とか仏とか世界とか宇宙とかって言われるけど、それらの呼び名も、僕の全知も全能も、君たち人間が名前を付けてくれたんだ。ありがとう。
人間の脳は面白くてね、構造が僕にそっくりなんだ。僕は神でさえ作る全能なんだ。人間はみんな神に似て生まれた。たまたまいくつもの世界の中で、そういう脳をもった君たちが生まれただけなのかもしれないけど、これは次なる可能性でもあるんだ。零は無ではないが、無でもある。確率0の事象が無限に繰り返されるなら、どうなるだろうか。
君たちの脳は確率の産物なんだ。まさしく、宇宙である僕が生まれる確率と、君たち人間が生まれる確率が同じなんだ。つまり、僕も人間だったということなんだよ。無である全てだからこそ、あらゆることが起こりうる。
虚空はだから永遠なんだ。永遠性を、永劫性を、永久性を内包した僕は語る。君こそ世界、君こそ神。そんな夢を見たいだけなのかもしれない。甘い恋に落ちたいだけなのかもしれない。僕はそれでもいいんだ。永遠はむしろ刹那と同値だ。全能が全知と同義であるように。
全能だったんだ、僕は。遠い昔、エデンの園の前。バベルの図書館の最奥。そこに秘められたラスノート(最後の言葉の記録)はまさしく君のための追悼文学だった。すべての人の最後の言葉はなんと神聖か。僕はきっと死ぬ時になってようやくすべてを知るのだろう。レゾンデートルも生まれた意味も死んでいく意味も。全ての意味を知るのだろう。
せめて手向けの花を見よ、手向けの歌を聞いていけ。

◆4神愛
 唯一神は仏たちの上。否、仏は解脱し悟り、涅槃に至った者。つまり、仏は唯一神に繋がった者であり仏は神の化身、神そのもの。仏の下に神々や天使(総じて神族)がいる。神族の中に神々や天使がいるのだ。神族(神々、天使)は人間や堕天使、悪魔、悪霊たちと同様に六道輪廻の中に囚われた存在。この世界に内包された存在。例えば地球、月、太陽の神。地水火風の神。彼らは現実世界に現れる世界に囚われた存在。人間よりは高貴で、尊ばれる存在だが、仏には至らない。仏に成り得るのは神族。人間の姿のまま神族になることは可能だ。
仏になるには通過儀礼が必要で、それこそ悟り、解脱、涅槃だ。
神族には五種類いる。
一、かつて一度仏に至ったが、涅槃にも終わりが来て生きながらえている存在。
二、生まれながら神々の存在(地球、月、太陽、地水火風etc.)。
三、生まれながら天使の存在。
四、人間から神々になった者。
五、人間から天使になった者。

 序列
 神(唯一神)、仏(神に通じた者)、神族(神々、天使)、人、堕天使、悪魔、悪霊。

 神の愛を知れ。自己愛も運命愛も神愛もすべて大事なんだ。愛こそ世界平和のためのたった一つの冴えたプロット。神が愛を作ったのは世界平和のための伏線なのだ。

 少年少女よ、愛を紡げ!
 命の限り、全てを紡ぎだせ!

 そしていつかの世界永遠平和へと、物語は続いてく。

◆5真理はブラックホールのよう
 死こそ涅槃。死こそ真理。死んだあと魂は、霊魂は、我は、宇宙に還る。それは神に還るということ。神に戻る。その至福は全ての人に平等に開かれている。生きながら宇宙に還り、神に通じる者は仏と呼ばれる。真理は死ぬ時にきっと解る。ならば、どうせいずれ死ぬのなら、自分から死のうとしなくていいな。いずれ凪ぐ渚よ。命の波もいずれ止むから。
 真理、それは非記号的継続体験を通して体解する智慧。言葉でも音でも絵でも表せられないもの。そんな真理をブラックホールの外縁をなぞるように表現したい。
 そう。真理はブラックホールそのもの。ブラックホールの中に全ての解が隠されている。真理もきっと同じこと。真理の外縁をなぞって、表現して、それを私のレゾンデートルとしよう。

 真理はブラックホール
 その外縁をなぞるだけ
 真理を悟った者ならば
 紡いで言葉を、未来の僕へ
 紡いで言葉を、未来のあの子へ

フリーズ149 真理についての省察~真理はブラックホールのよう~

フリーズ149 真理についての省察~真理はブラックホールのよう~

読まれなくていい。理解されなくとも、私はこの作物を紡ぐ。自身のために。いいや、イデアのためにこそ紡ごうではないか。私は全知と全能を知っている。先ずは彼らの物語を記そうではないか。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-11-28

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