それは口の中で奇妙なる形態を
床には大量のレコードが散乱している。紙ジャケットの中心にはピンクのバナナ、現在ではあきらかな記号と記憶にすぎないのだと思う。それはオレンジのマグカップ底にある1940年"GLASS"印字の凹凸も同じく、或いは、ややメランコリックな混沌であるともいえる。キッチンにはカラフルなヴィンテージ玩具が犇めいている。死神=もうひとりの私が「衝動」に対して執着するように、自分もまた同じなのかもしれない。一生懸命に築きあげたオモチャの王国なのだ。美しく完全な世界、室内を数ミリのズレもなく片付け始める。スパイス瓶、歯ブラシを一定の間隔で配置していく。シンク横にはモデルガンが放置してある。以前、恐怖心と高揚感から購入をした。愚かな行為だ。わたしはモデルガンを手にしてそのまま顳顬に当てた。悪夢がフラッシュバックして声を上げる。それは口の中で「奇妙な形態」をつくり、吐き出された。死神は何処に行こうとしているのか。何故、自分はあの死神を見過ごし許している?
それは口の中で奇妙なる形態を