死神という名のもうひとりの私

 床には大量のレコード、紙ジャケットの中心にはピンクのバナナ。そのけだるい声の末路はどろどろに溶けたチーズの脳髄。現在ではあきらかな記号と記憶にすぎない、そしてオレンジのマグカップ底に1940年GLASS印字の凹凸と。それはややメランコリックな混沌であるといえる。テーブルにはエッチングの銅板とニードルが散乱していた。キッチンにはカラフルなヴィンテージ玩具が犇めいている。死神=もうひとりの私が「衝動」に執着するように、自分もまた同じなのかもしれない。執着するように築きあげたオモチャの王国だ。美しく完全な世界、室内を数ミリのズレもなく片付けて始める。スパイス瓶、歯ブラシ、大量のオモチャを一定の間隔で配置していく。シンク横にはモデルガンが放置してある。以前、恐怖心と高揚感から購入したのだ。わたしはモデルガンを手にしてそのまま顳顬に当てた。悪夢がフラッシュバックして声を上げる。それは口の中で「奇妙な形態」をつくり、吐き出された。死神は何処に行こうとしているのか。何故、自分はあの死神を見過ごし許している?

死神という名のもうひとりの私

死神という名のもうひとりの私

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 青年向け
更新日
登録日
2024-11-26

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