『眩む』

優しい男が使うその類いの嘘は
毒にも薬にもならないけど
鈍い安らぎをくれるから


『眩む』


常套句と知りながら飲み干して
舌に残る鎮静剤のザラついた甘さ
常備されてることに安堵して
おかわりはチャイナブルー

昨夜抱いた花は何色だった?
アタシはいつでもアタシだけの色
それしか咲かせられないんだから
今夜はこれで我慢してね

また嘘を混じらせるの?
いいけど後で答え合わせはやめてね
アタシひとつも覚えてらんない
べっと出した舌はブルー

あの子が好きだったあの人と
抱き合って眠った夜から
罪悪感なんか邪魔で捨てたんだ
最後までネタバレなしで泣き顔もなし

身勝手で気侭なアタシでいいと
言ってくれるなら誰でもいいよ
本当は弱いと値踏みして
そこがいいと言われても気にしない

満漢全席いくらでも時間はあるの
勘違いと筋違いからでもどうぞ
どこから食べてもあなた方の舌を
満足させることでしょう

だからアタシにも食べさせて
その脂がのっててぷりっとしてるとこ
早くナイフで切り分けさせて
大好物なのは無責任な優しい男



「ご馳走様でしたでお別れしようね」

『眩む』

『眩む』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-10-06

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