zokuダチ。セッション25
エピ 95・96・97・98
真夏の体験学習編 6
「はーっ!ジャミル、やっと来たあ!」
「……お腹ぺこぺこだよ……」
「もうっ、全然時間通りじゃありませんね、ジャミルさんっ!」
「モフ!バーベキューモフ!嬉しいモフーっ!」
「な、……何ですと……?」
魔法ガールズ達も、待ちくたびれたかの様にジャミルを出迎えるが、
まだジャミルは狐に包まれた様な表情をしていた。しかし、普段中々
マンション内で顔を合わせない連中も今日は全て揃っている、非常に
珍しい機会かも知れなかった。次に目に付いたのは、わんプリチームの
ガールズ、悟、大福。
「ジャミルさん、こんにちはーっ!今日は焼き肉パーティご招待有り難う
ございまーすっ!」
「いろはーっ、すごいねえーっ!こんなにおにくいっぱい!クッキーも
いっぱいやいちゃおうーっ!ドッグフードも!」
「……こむぎっ!」
「全くもう、はしゃいじゃって……、肉より魚の方がいいわ……、ほらほら、
まゆもどんどん食べるのよ!カルシウムは沢山取るのよ!」
「……ユ、ユキったら……」
(犬飼さんと……、バーベキューなんて……、し、幸せだなあ……)
「はいっ!悟くんもっ、大福ちゃんも、私も特製の焼きおにぎり焼いてるから
どんどん、じゃんじゃん食べてねっ!」
「……ええええーーーっ!?」
(オレは遠慮させて頂くぜ……、悟、しっかり味わって食べるんだぜ……、
……幸せの味って奴をな……)
「おいしいわん!」
クッキーと犬のエサを網でバカスカ焼こうとするアホこむぎ。……魚を串で
どんどん焼き、相方のまゆに提供し、栄養を付けさせようとするユキ。して、
自家特製の暗黒ダークマター焼きおにぎりを悟に食べさせようとする
いろは……。見物していたジャミルは楽しそうで何よりだなと悪寒を感じ、
その場を逃げた。
「母ちゃん、凄いゾっ!う、牛さんの……、お、お肉だゾっ!!」
「……ボ~オオオオ……」
「ホントねえ~、しんのすけ、こ、こんなのもう食べられないかも
知れないから今のうちに沢山食べておくのよっ!!」
「おいおい、んな、……オーバーな……」
「……たいやいっ!(万年係長、もっと稼げっ!!)」
「アンっ!アンっ!」
ドケチ野原一家も変わらず……。滅多に食べられないバーベキューを
楽しんでいる。
「ユリアンっ、ホント、どうなってんだよ、これ……」
「ああ、ジャミル、俺にもよくわかんないけど、ホークとバーバラさんが
主催になって俺達の為に、寺修行ご苦労さん打ち上げ会を立ち上げて
くれたらしいんだ……」
シノン組と肉を焼いていたユリアンも、ジャミルの姿に気づくと、
すっ飛んで来た。
「……ホークとバーバラが……?俺達の為に?あのケチが……?」
「ケチなんて言うなよ!……やっぱいい女は考える事が違うぜっ!
バーバラお姉さまあ~ん……!」
「そうだぞ!肉くれる人に悪い奴はいねえんだぞ!」
ジタンは尻尾をぴんぴん立て、そして、肉を齧るシグの姿は、
まるで餌付された犬の様である。やがて、ジタンはダガーに
耳を引っ張られ、シグもマリカに仲間の処へと、連れ戻されて行った。
「グレイさんはドコッ!?美奈子が焼いた愛情たっぷりのお肉を
あーん♡させるんだからッ!……グレイさあ~んっ!」
「よお、アルテミス、オメーも相変わらず苦労してんだな、猫の癖に」
「ジャミル……、何だったらウチの美奈……、お嫁さんに貰うかい……?」
アルテミスは遠い目でジャミルを見た。ジャミルは勘弁とばかりに
スタコラその場を去る。
「……此方スネーク!良質肉感知!よし、獲物捕獲まで後数秒!」
と、ジャミルの横を、巨大な段ボールがガサガサと通って行った。
「あいつも何やってんだよ……」
「バナナー!バナナも焼いちゃおうー!」
「ゆ、ゆーなっ!バナナは焼いちゃ駄目なんだったら!」
此方も滅茶苦茶である。バナナ好きが度を過ぎ、バナナを串に刺し焼いている。
その様子を見て、突っ込み担当のマモルは肩を落とす。
「はーっ!じゃあ、みかんも焼いてー!焼き串みかんっー!」
「……はーちゃんもっ!いい加減にしなさいっ!!」
此方もである。はーちゃんはみかんを焼こうとし、リコに注意される……。
だが、皆、それぞれ好き勝手で、実に楽しそうであった。
「いいねいいねえ!俺こういう雰囲気大好きだよ!んー!」
「……おっさん、アンタもフラフラ何してんだよ……」
ペンとノートを片手にラグナがウロチョロ歩き回っていた。
また自身の仕事の雑誌取材の様であるが。
「今度、ウチのマンションの皆さんの日常体験を取材で
奥様系雑誌に書くことになってさあ、マンションの宣伝にも
なって一石二鳥でお客も増えるかもしんねよ!」
「はあ……」
「んじゃね、ジャミちゃん!」
ラグナはふらふらとまた歩いて行ったが。直後、石につまづいて
グリコのポーズになり、勢い止まらず何処かに走って行った。
「大丈夫かよ、……何処かのテーブルにでも突っ込まねえと
いいんだけど……、?こっちの組はと……」
「な、なあ、ダガー……」
「はい?」
「その、……やって欲しいなあ、……お口開けて、あーん……、とかさ、
……ダメ?」
ジタンはテレテレ頭を掻きながらダガーの方をちらっと見る。
「もう……、ジタンたら、今日は特別よ、はい……」
「おおおー!ダガーっ!あ、あー……」
もう勝手にして下さい、ラブラブモードが始まりそうであった。その時。
「やっばー!どうも胸がごわごわすると思ったら!出てくる前に
シャワー浴びてそのまんまブラすんの忘れちゃった!
……ま、いいか、もう夜だしね!あはは!誰も分かんないわね!」
「お姉ちゃんたら……、普通忘れないわよ……、女子の大事な嗜みよ……」
「いいのっ!たまにはあたしだってハメ外す事あるんだから!
それよりも、肉肉!サラは痩せすぎなんだからもっと食べなさいっ!
あたしがどんどんお皿に持ってあげる!どんどん太りなさい!
トムっ、じゃんじゃん肉焼いてーっ!ほらほら、無愛想なアンタもっ!
皿貸す!」
「あ、ああ……、ユリアン、お前、鼻血が出てるが……」
「は、はうううーーっ!?ち、違うんだよトム!これはそのっ!
はうううーー!!」
「お、お姉ちゃんたらあー……、本当にもうー……」
「……僕に構わないで……」
「……」
「ジタン、何処を見ているの?……あなたも鼻血が出ているわ……、
これじゃ今日はもうお肉を食べるのは控えた方が宜しいのでは
ございません事……?早く鼻を拭いた方がいいわ……」
「!!ち、違うんだアアッ!ダガあああーー!!これはその、
君に肉を食べさせて貰えると思ったらつい興奮してえええっ!!」
「……知りませんっ!」
言い訳通じず。ラブラブモードから一転、ジタンの発情による噴気ブラブラ
モードになってしまい、はい、あーんしてはお預けとなった……。
「はい!ハンバーグどんどん焼くよーっ!ドナルド特製だよーっ!
……眼鏡デブ親父が邪魔しに来ない内に沢山食べてねーっ!」
「へえ……、おっさんにしては随分と真面な事するじゃない!」
「おおー!うまそーっ!」
「……それにしちゃ、随分と肉が薄っぺらいな……」
「ジェイル……、失礼だよ……」
珍しくピエロが真面な事をしており、シグ達4人組も集まって感心している。
ジェイルが言う通り、確かに焼いている肉はノーマル100円単一の
ハンバーガーの肉で薄っぺらいのだが……、ドッグフード、バナナ、
みかんを焼いていた方達よりは今日はあの変態ピエロが真面に輝いて見えた。
「きゅっぴ!ジャミルっ、来たよっ!」
「おお、チビ……、って、……おおおおっ!?」
「ほほ、今日は儂らまで御招待にあずかりまして申し訳ありませぬのう、
……騒々寺の住職ですじゃ……」
チビとドラゴン集団に護衛された住職も到着する。その姿はまるで
モンハン状態である。
「おお、あんたが住職さんかい?いやあ、その節はウチのマンションの
馬鹿ガキ共がお世話になっちまってなあ……、迷惑も掛けただろう、
悪かったなあ……」
「いやいや、此方こそ、この子達のお蔭で、儂は助かったのですから、
感謝しても感謝仕切れませぬよ、ほほほ……」
チビの頭を撫でながら、住職が微笑み、ホークと握手を交わした。
……その馬鹿共を派遣したの何処のどいつだよと、ジャミルは不貞腐れる。
「うむ、美味い肉だ……、しかし、見ればやはり野菜の減りが
悪い様だが……、これではいかんぞ、野菜も肉も平等に食べるべき
ではないか?なあ、ジャミル……」
「ちょ、何で俺の方みんだよ、堅物ガラハドめっ!」
「う~む……」
「ふっ……」
「って、相変わらずむかつくなあーー!縮れ糞頭!人を小馬鹿にした様な
その笑い方っ!」
「いや、小馬鹿ではないが?……大馬鹿だが?」
ジャミル、キーキーぴょんぴょんジャンプし、グレイに激怒と八つ当たり。
……どうやっても今の処、グレイに勝つのは無理の様である。
「……バーバラ、大変よ、確かにこれじゃお肉が足りないわね、
お野菜ばかり余ってしまってるわ……」
肉を焼いていたクローディアが困った顔をする。
「大きい客が増えたからな、でも大丈夫さ……」
「シフ……?あ、あああ…、成程……」
アルベルトもシフの顔を見上げ妙に、納得した様であった。
「そうさね、よしっ!ジャミルっ!!」
「は、はあ?」
「お客さんが増えたからね、担当責任者!今から追加分の肉を買いに
大急ぎで買い出しに行っておいでっ!!」
バーバラ、ジャミルにびしっと指を付き付ける。
「……結局俺がパシリにさせられんじゃねえかっ!!おい、ゲラ=ハ、
暇なんだろ、お前玉には動けよっ!」
「わ、私がですか……?ぎゃ、別に構いませんが……」
「コラ、人の相棒勝手に駆り出すな!オメーが行きゃいいんだよ、
オメーがよ!」
「あいてっ!……く、糞狸親父めえ~!」
「ジャミルのお仕事だもんねえ~、しょうがないよお~……」
ダウド、知ったこっちゃないと言った感じで、呑気に肉をもぐもぐする。
「つべこべ言うんじゃないよっ!ホラ、とっとと行くんだよっ!!」
「……ち~き~しょおおおお!厚化粧オババめえーーっ!揃いも揃ってっ!
今にみてろおおーーっ!!」
「あっ、待ってジャミル、私も一緒に行ってあげる!」
「アイシャ……、う、うん……、ああ……」
「行こう!」
アイシャ、ジャミルの手を握る。……普段はガサツでもこういう時、
意外とウブなジャミ公は顔が真っ赤である……。
「……ああ、やっぱお肉は美味いわあ~……、ワイ、涙がでるわ……」
「本当だね、こんなに美味しいの……、何だか申し訳ないね……」
「谷口さん、近藤にはあまり肉くれない方がいいんスよ、すぐ調子に
のるんスから、ブタがブタ食ったら共食いになりますからね!」
「あんたもだよ……」
「イガラシっ!……何か言ったか?」
「……何でもないス」
幸せそうに肉を啄む野球馬鹿達の横を、手を繋ぎ、顔の赤い
ジャミルとアイシャが慌てて突っ切って行くのであった。
奇妙で変で賑やかで、それはとても楽しい夜の一時となったのである。
俺がアイシャでアイシャが俺で……1
「待てよ、アイシャ!待てったら!!」
「……いやっ!絶対待たないっ!ジャミルのバカっ!べえ~!」
マンションの解放廊下を今日もけたたましくジャミルとアイシャが
駆け抜けてゆく。
「何だ、又やってんのか……、たく、うるさいねえ~、ドタバタ
ドタバタ……、あんた達っ!追い掛けっこなら外でやんなっ!
……こらっ、聞いてんのかっ!!」
しかし、2人はシフの声を無視し、2階へ駆け上がって行ってしまう。
「よしっ、今日こそは一発ホームラン打つからな!」
「無理だって、シグには……、それより先俺に打たせてよ!」
「いいや、今日は俺が先に打たせて貰う……」
「……てめーらもっ、此処でボール遊びすんなって毎回何回言ったら
分るんだっ!!学習する事をしろっ!知能の無い猿ガキっ!!」
「やべ、まーた見つかっちまったぞ、逃げろ、リウ、ジェイル!!」
「合点!」
「承知の助だ……」
「わざとやってんだろ、バカ共めっ!待ちなーーっ!!」
シフ、悪ガキトリオを追って外に飛び出した。そして、アイシャを追った
ジャミルは階段の途中でアイシャを捕まえる。
「何よっ!放してったらっ!ジャミルのバカっ!!」
「うるせーなっ!大人しくしろっつの!……の野郎!!」
「あっ、ジャミルさんとアイシャさん又喧嘩してるっ!」
「……ガルガルはダメだよっ!二人とも、なかよくしようよーっ!」
丁度、休日のショッピングに2人で出掛けようとしていたいろはと
ヒトバージョンのこむぎ。ジャミアイコンビの毎度お馴染の凄まじい
痴話喧嘩に遭遇。しかし、2人の声も無視。喧嘩は更にエスカレート。
「やーだっ!放してって言って……、ちょっとどこ触ってんのっ!!」
ジャミルは慌ててつい、アイシャの胸を掴んでしまったのであった。
「わきゃああーーっ!?」
「なんかわかんないけど、す、すごーいっ!」
「やべっ!……てか、触れる程、胸の感触ねえよ……」
「……何ですって……?も、もう……絶対許さないんだからっ!!きい~!!」
アイシャ、ジャミルに身体を捕まえられたままの状態で後ろを向いたまま
足でゲシゲシジャミルを蹴とばした。
「やめろっ!えーいっ!!静かにしろってのっ!!」
「止めて止めて、止めてくださあーーいっ!……あっ!?」」
「あぶないようーっ!」
「もうっ!いい加減にしてったらっ!は、な、し、て、っ……!!」
……チーン……
「お、おおおお……」
アイシャは等々ジャミルの急所にケリを入れたのだった……。
「……視界が……真っ暗だ、あはは……、あ~……」
「ちょっ、ジャミルっ!?きゃあっ!!」
「……ジャミルさんっ!アイシャさんっ!」
「おっこっちゃうーーっ!」
「うわああああっ!!」
「きゃああああっ!!」
いろはとこむぎが叫ぶ中、ジャミルはアイシャの身体を掴んだまま
意識が朦朧とし、階段で足を滑らせ、そのまま2人とも階段から
転げ落ちたのだった……。
そもそもの喧嘩の起こりはこうである。1時間前……。アイシャは
ジャミルの部屋におり持参していたアイドル雑誌を見ていた。
それはバーバラが勧めてくれ、プレゼントしてくれた物であった。
「はあー、……ボウヨミ・イクゾーさんて、素敵ね、今大人気なのよね……」
アイシャは雑誌の写真の中の金髪の俳優さんに胸をときめかせてみる。
「ふん、こんなイケスカねえのさ、腹ん中真っ黒だろ!何考えてんのか
分かんねえよ!」
「?ジャミル、何怒ってるのよ、……あ、もしかして妬いてくれてる?」
アイシャはパタッと雑誌を閉じると嬉しそうにジャミルの顔を見た。
「べ、別にー?俺はお前が何に転ぼうがどうでもいいよ、唯、こいつの顔が
気に食わない、それだけ……」
ジャミルはムスッとし、アイシャが閉じた雑誌をわざわざ再び開き、
ボールペンでイクゾーさんの鼻に鼻毛、頭に巻グソを描きはじめた。
「……ちょっ!何してるのよっ、バカねっ!子供みたいっ!!」
アイシャはジャミルから雑誌を引っ手繰った。
「あ……、何すんだよっ!折角描いてやったのにっ!!よこせっ!」
「ちょっと!返しなさいよっ!!」
ビリッ……
「あ、ああ……」
そして、お約束で雑誌が真っ二つに破けたのである。
「……ひーどーい、……ジャミルのバカっ……!!」
「んだよ、んな下らねえ雑誌、又買えばいいだろっ!」
「……もう知らないわよっ!ジャミルのバカっ!!」
アイシャはジャミルに悪態をつくとそのまま廊下に飛び出して行ってしまう。
「おいっ!ちょっと待てっつんだよっ、アイシャっ!!」
……そして、先程の騒動になったのである……。
「……?」
「あ、アイシャ、目を覚ましたのかい、良かったー!」
ジャミルが気が付くと、ジャミルはあまり馴染みのない部屋に
寝かされていた。おまけに側にはバーバラがおり、良く分からない
事を言っている。
(なーんか、身体が変だ……、前より更に小さくなった様な気がする……)
「何か食べたい物はあるかい?買って来るよ」
「別に何も、それより、俺どうしてたんだ……?」
「ハア?どうしたのさ、ジャミルみたいな喋り方してさ、やだねえ、
この子は!」
バーバラはいきなりジャミルをぎゅっとハグするが……。
「……うわ!化粧くせえな!ちったあ匂いのきつくねえ香水に
抑えろってんだよ!この妖怪オババ!!あーくせえ!!」
「……アイシャ、アンタ、い、今なんて……」
「ハア?うるせーな!何言ってんだよ!何がアイシャだよ!俺は
ジャミルだっつーの!!」
「アンタ……、やっぱりさっき階段で落ちたから、頭を……、こ、
これは大変だよっ!」
「だーかーら!おめえの言ってる事もさっぱり分かんねえんだよっ!」
「バ、バーバラっ!……大変だよお!!」
バーバラが大混乱している処に、ダウドが部屋に駈け込んで来た。
「そっちも何かあったのかい!?」
「うん、ジャミルがおかしいんだよお!急にメソメソ泣き出して、
何言ってるのよ!私はアイシャよ!……とか、泣いてばっかり
なんだけど……、あ、おかしいのはいつもなんだけどさあ……」
「わ、分ったよ、すぐに行くよ!」
「あのさあ……」
「アイシャ、アンタは此処にいるんだよ、いいねっ!」
「ちょ、あ……」
バーバラとダウドはジャミルを部屋に残し、飛び出して行ってしまった。
「だーから、あいつらホントに何言って……、あ?あああ、
……あああーっ!!」
ジャミルは部屋に置いてあった鏡で自分の姿を見、声を張り上げた。
「俺、……アイシャになってる……」
俺がアイシャでアイシャが俺で……2
「まいったなあ……、どうすれば、どうすれば……」
「……ジャミル、いるんでしょ?私よ……」
ジャミルがオロオロしていると、小さく部屋のドアを叩く音がした。
「アイシャか?」
慌ててドアを開けると、自分の姿のアイシャが立っていた……。
「うはっ……」
「もうっ!どうしてこんな事になっちゃったのよっ!」
「俺が知るかっ!とにかく中へ入れっ!」
「ふええ~、信じらんない、もう~……」
ジャミルの姿のアイシャは只管ぐしぐしベソをかく。
「あのさ、頼むから俺のツラでメソメソすんのやめてくんね?我ながら
カマみてえで気色わりいんだけど……」
「何よっ!ジャミルこそっ、私の格好で大股開く様な
立ちスタイル止めてよっ!」
「だ、だからっ!早く中へっ!!」
アイシャはしかめっ面をし、しぶしぶ部屋の中へと入るが。
「……」
「はあ~、てか、お前、部屋逃げ出してきたのか?」
「うん、さっきダウドがこっちに来たでしょ?その隙にジャミルの
部屋から逃げて様子窺いながら隠れてたの……」
「そうか、お前が俺の部屋に……、つう事は……」
「そうよ、私の部屋よ……」
アイシャはジャミルの部屋にしょっちゅう訪れてはいるが、ジャミルは
アイシャの部屋の中までは直に入った事はなく、今回が初めてであった。
(いい匂いすんなあ、やっぱ女の子の部屋だなあ、巨大ダンベルとかあったら
俺、どうしようかと思ったわ……、ははは……)
「でも、これからどうするのよう、私、嫌だわ、いつまでもこんな……」
「ま、仕方ねえさ、何とか元に戻れるまで普段通りに過ごすしかねえな」
「無理よっ!そんなのっ……!!」
……涙目のうるうるジャミル……、(アイシャ)が訴える……。
「頼む、本当に気持ちわりィから止めてくれ……」
はあ~っ!全くう!ジャミルってば何処行っちゃったのさあ!
ちょっと、目を離したらこれだからね!……縄で縛っとくかね!
「大変っ!ダウドとバーバラが戻って来たわ!」
「……ふ、普通にしてろ、んで大丈夫なフリしてやりすごせ!それしか
ねえんだから……」
「分ったわ、何とかやりすごすわ……」
アイシャは覚悟した様にぎゅっと目を瞑った。
「……あっ!ジャミルっ!いなくなったと思ったらっ、階段から
落ちたんだからふらふら出歩いちゃ駄目だよお……!!」
事情を知らないダウドはジャミルの姿のアイシャに説教を始めた。
「だ、だって、仕方ないじゃないのよう、ふええ……」
(お、おいっ!コラッ!!)
又、ジャミルの姿でメソメソし始めたアイシャをジャミルが突っついた。
(そ、そうだった、私は今、ジャミルなんだったわ、えーっと、
こういう時は……)
「……全く、あたしらだって一応アンタの事心配してんだからね!
反省しなっ!」
「ごめんなさい、ダウド、バーバラ、俺、ちゃんと反省します、本当に
ごめんなさい……」
「はあ……?」
「ちょっと、アンタ……」
「うわわわわっ……!!おま、普通にしてろってあれ程っ!!」
ジャミルが慌ててアイシャを引っ張る。
「何よ、普通じゃないのよ!」
「だから!俺の格好でなよなよすんなあーーっ!!」
「……バーバラ、あのさ、やっぱ二人とも病院に連れてった方が……」
「んだとおっ!バカダウ……いてっ!」
アイシャがジャミルの足を踏んだ。
「はあ、何で私が自分の足を踏まなきゃいけないの……、
ジャミル、さっき言ったでしょ、普通にしてろって、普通に、
普通にしてましょう……」
疲れてしまったのか、やるせなさそうにアイシャが口を開く。
「分ったよ、とにかくっ、俺……、じゃなかった、オホン……、
私は大丈夫よっ!だから2人とも自分のお部屋に戻って、ね?」
ジンマシンを放出しながらジャミルがダウドとバーバラに無理矢理
愛想を振りまく。
「……」
その様子を見てダウドとバーバラは顔を見合わせた……。
「分ったよ、こっちも忙しいからね、まあ、アンタが大丈夫なら
あたし達はこれでおいとまするよ」
「じゃあ、オイラも部屋に戻るよ、ジャミルも早く部屋に戻りなよお……」
2人はアイシャの部屋から漸く去って行った。これで一旦一安心だが
問題は解決した訳ではない。
「ふう~、やっと行った、んで、これからどうするかなんだが、
今日の処はオメーが俺の部屋に泊まるしかねえだろうな……」
「やっぱり、こうなるのね、いいわよもう……、……臭くないかしら……」
「時々お前もえげつない事言うなあっ!?」
「冗談よ、本当はこんな事教えたくないんだけど、此処、タンス……、
私の下着が入ってる……、夏は蒸れるからちゃんと毎日お風呂入って
下着取り替えてね、お願いよ……、でも、元に戻るまでの間だからね……、
ぐすっ……」
アイシャは泣きそうな顔をしながら、仕方なく、自分の部屋の説明を
ジャミルにするのだった。
「おう、俺の部屋にもタンスん中に下着とかパンツ入ってるだろ、
それ着てくれや」
「分ったわ、……じゃあ……」
「じゃあな……」
トボトボとアイシャが肩を落としながら自分の部屋を後にする。
「大丈夫、少しの間だもん、きっと元に戻れるわ、……きっと……」
そして、アイシャはジャミルの部屋にお邪魔する。
「……お邪魔します……、はあ、やっぱり汚いわ、今日は一段とゴミだらけ
じゃないの……、もう~っ、何考えてんのっ!!ジャミルったらっ!!」
やっぱり普段から何も考えてない男、それがジャミルである。
「お掃除しないとっ、どうせ掃除機なんかないんだし、贅沢言わないわ、
ホウキとチリトリっ!ないわ、何処にもないじゃないっ!!」
「ジャミル、戻って来てたんだ?」
けたたましい声を聞き付け、ダウドが部屋に顔を出した。
「あ、ダウド、悪いんだけど、ホウキとチリトリ持ってないかしら?」
「かしら……、って、何その変な喋りは……、それにそんなモン
何に使うの……?」
「お掃除するのに決まってるでしょっ!ダウドこそ何言ってんのっ!
あっ……」
「!?」
アイシャはとてとてと窓ガラスに近寄って行く。
「もうっ、此処にもこんなに埃っ!これ、拭いた方がいいわね、ダウド、
悪いけどこのゴミ箱の中のゴミをゴミ袋に入れて貰えるかしら?私は
バケツにお水くんでくるから」
姿はジャミルのままだが、口調は完全にアイシャに戻っており、それは
現場を見ていたダウドを大いにガクガクブルブル震え上がらせるのであった。
「♪うふふっ、この際だから徹底的に綺麗にするわよっ!見てなさいっ、
ゴキちゃんっ!」
ジャミルの姿のアイシャは足取り軽く、スキップをしながら部屋を出て行く。
何だか分からないが、どうやら汚い処を掃除出来るのが嬉しいらしかった。
「……怖いよおおおおーーっ!!」
そして、アイシャの部屋でのジャミルは、ベッドの上で
パンツ丸見えの大胆な格好で股を開いてゴロゴロしていた。
「暇だ、女の部屋ってどうしてこう、味も素っ気もなくてつまんねんだ、
何か面白いモンはないのか……」
ジャミルは枕の横に置いてある変な顔の馬のぬいぐるみをほおり投げて
壁にぶつける。
「こんにちはー!アイシャさんいますか?いろはです!」
「こむぎもいるよ!おみまいにきたんだよ!」
「う……、うえ!?」
ジャミルは慌てて広げていた股を閉じる。先程の慌しい現場を見ていた
2人はショッピングに行くのを中断し、心配してお見舞いにわざわざ
来てくれたのだが。……こんな状況のジャミルにとっては大迷惑の何者でも
なかった。が、気持ちを切り替えてアイシャに成り切ろうと……。
「はいっ、どうぞーっ!」
「お邪魔しまーす、階段から落ちたんですよね、あの、大丈夫なんですか?」
「ええっ、大丈夫、大丈夫よっ!アイシャちゃんは元気!こーんなに
元気よっ!」
「はい?」
「なんか、アイシャおかしいよ……」
「だから何でもないのよっ!うふふふっ!元気だったら!いつも通りよっ!」
プウ~……
「!?」
「……お、おならっ!?」
「や、やべっ!何?今のは何でもないのよっ、うんっ、本当に何でも
ないんだったらっ!!」
(バーバラさん達が話してたの聞いたけど、やっぱり階段から落ちた所為……、
なのかな……)
「でも、だれだっておならはするよね、うん……」
いろはとこむぎは顔を見合わせてこそっと話す。……アイシャが
この場にいたら、……泣き喚いて怒り狂う処である……。
「あっ、これお見舞いです、まゆちゃんが作ってくれた、にゃんこマフィン、
お裾分けにどうぞ、食べて下さい!」
いろははマフィンの入った袋をジャミルに手渡す。袋からは焼きたての
マフィンの香ばしい臭いが。……ジャミルは今アイシャの姿なのも忘れ
鼻の穴を大きく広げる。……アイシャがこの場に居たら殴り殺されていたであろう。
「!!う、うまそーっ!……あ、ど、どうもー!いろはちゃん、どうも
ありがとねっ!おいしそーだわっ!」
「……」
マフィンを見て袋に涎を垂らし、興奮し始めたアイシャに、いろはとこむぎは
不思議そうな表情をしながらも、一応挨拶をし、部屋を後にする。
「……いろは、何かへんだよう……」
「あっ?……わ、私、おかしい!?」
「……違うよう、アイシャだよう……」
「ええ……?」
「あれ、アイシャじゃないわん……」
俺がアイシャでアイシャが俺で……3
その日の夜……、こんな状況の時に限りジャミルは加齢臭組に夕食に
誘われる。……場所は中華料理屋のパーミヤンである。
「何でこういう時に気前が良くなるんだア?ふうっ……」
「……ジャミル……」
再び、アイシャがジャミルを訪ねてくる。元の自分の部屋に。
「アイシャか?いるぞ……」
「……うん、お邪魔します……、って、自分の部屋なのに……、
ぐす……」
中に入った途端、自部屋に懐かしくなったのかアイシャが又
ぐずり出した……。
「それで、ジャミルもホーク達にお誘い受けた?」
「ああ、ロマ1組は全員強制参加だと、なーに考えてんだかよ……」
「ぐす……、こんな状況じゃなければ楽しめるのに……」
「だからな、ぐしぐしぐしぐし……、俺のその泣き顔……、
やめろっつんだよ……」
「はあ、お願いだから、普通にしててね、ジャミル」
「分ってるよ、おい、俺の処来るときはくれぐれもダウドに気づかれんなよ……」
「うん、気を付けてるわよ、じゃあ……」
アイシャはジャミルにそれだけ言うと不安そうな表情を浮かべ、
部屋を出て行く。
「やれやれだあ……」
そして、中華料理屋パーミアン……
男は男、女は女同士の席に着き、丸い円卓を囲んだ。
「アイシャっ、どんどん食べなよっ、お腹空いただろ!」
「ええっ、遠慮しないわっ!」
バーバラの声に喜んでジャミルが返答し、テーブルから身を乗り出し
張り切り出す。
「ジャミル……」
声が聴こえたのか、アイシャが遠巻きにジャミルを睨んだ……。
「って言うのは冗談よっ!うふふー!」
「……」
「バーバラ、今日、アイシャおかしくないか?」
シフが不思議そうな顔をしてバーバラに訪ねた。丁度二人が階段から
落ちた時、悪ガキトリオを追い掛け外に飛び出して行った後だったので
シフは状況を知らないでいる。
「ああ、ちょっとね、……これこれこうで、こうだったのさ……」
「へえー、成程な……」
「アイシャ、階段から落ちたんですって?大丈夫なの?」
クローディアもアイシャの姿のジャミルに尋ねる。
「ええ、アイシャちゃんは元気よっ!こーんなに元気っ!
もーりもりよっ!」
「今日は何時にもまして元気ね……」
「そうなのっ!困っちゃうわあ!うふふふっ!」
……あまりにも、アイシャ(中はジャミル)の言動が不自然過ぎな為、
今日のこむぎ同じく、クローディアも複雑な顔をし出した。
(……ジャミルのバカ……、後で覚えてなさいよ……)
やがて、元気のいい、変なボーイが料理を運んで来る。
「アイヨッ!オーダーオマチデスガア!ペキンダックダヨ!オイヨイヨ!」
ボーイの青年は、何故か滑舌が悪かった……。
「おおっ!北京ダック!いただきまーすっ!」
ご馳走を目の前にしたジャミルは、今の自分がアイシャの
有る事を忘れたかの様に北京ダックにがっつき貪りついた。
「何だかアイシャ、本当に今日は凄いわね、お腹が空いていたのかしら……」
「……頭を打った所為もあるんだよ、……クローディア、此処は静かに
見守ってやろう……」
「バーバラ、……そうね……」
あまりにもガツガツするアイシャ……、(中身はジャミル……を)見、等々
本物が動き出した。
「……アイシャ、ちょっと……」
「んだよ、何よう……」
「ちょっとこっち来てっ!!」
「なになにー!なんなのよおー!」
アイシャはジャミルを引っ張り、無理矢理女子トイレまで連れて行った。
「んだよっ……!」
「あれ程普通にしててって言ったのにっ!約束守ってよっ!それに
よくちゃんと噛まないであんなにガツガツ食べたら太っちゃうでしょっ!
……バカっ!!」
「……別に、俺の身体じゃねえし……」
「……ぷう~っ……」
アイシャは涙を堪えて頬を膨らませ、もう今にも爆発しそうであった。
「ま、また俺の顔でっ……、わーったよっ、抑えるよ、
セーブすりゃいんだろ!」
「もう私、どうしたらいいの……、お願いだからちゃんとしてね……」
「分ったから、あんまり泣くなよ、頼むから……」
自分の情けない状態を見ているのも辛いが、それ以上に自分の
身体の中のアイシャがしょげているのをみると、ジャミルは
どうにもならない気持ちに……。仕方なく席に戻り、大人しく
する事にした。
「……」
「おや、さっきはどうしたんだい?ジャミルと何話してたんだい?」
バーバラはニヤニヤしながらジャミルの顔を見た。
(静かにしろっつんだよ、このオババは……)
「別にっ、何でもないのよっ!」
「そうかい……?」
「アイヨッ!マーポードウフ、エビチリオマチッ!」
ボーイが今度は麻婆豆腐、エビチリを運んで来た。
滑舌が悪いので、マーボーがマーポーになっている……。
「ふーん、両方とも辛いやつだねえ……」
「エビチリか、これじゃ甘すぎるね、もうちょっと辛い方が
いいんじゃないかい?」
一口味見で食べてみたシフが文句を言う。
「……充分辛いよ、アンタの味覚がどうかしてんじゃないの……?」
バーバラに突っ込まれても、シフは納得いかない様子で、テーブルに
置いてあるオプションの豆板醤を自分の分の皿に掛け始めた。
「……うっ、か、辛っ!」
ジャミルも麻婆豆腐を一口、口に入れてみるが、辛さが本格的な為、
動揺する。
「アイシャ、大丈夫……?」
クローディアがジャミルの背中を擦ってやる。
「アイヨッ!ムセテンナヨ!」
ボーイがジャミルに水をさっと差し出し、ジャミルは慌てて
それを飲みほした。
「はあ~……」
「落ち着いたかしら……?」
「……大丈夫よ、ありがとう、クローディア……」
「まだアイシャにはこれはきつ過ぎるね、無理しなくていいよ」
今日はバーバラもアイシャなジャミルにやたらと気を遣い捲りであった。
「うん、……私、お肉もっと食べたいわあ!」
「……」
どうしても、ジャミル本人の地が出てしまうのであった……。
一方、男性陣テーブルの方のアイシャは……。
「ジャミル、どうしたの?今日はあんまり食べてないみたいだけど……」
いつもと様子が違うジャミル(中身はアイシャ……)にアルベルトも
心配そうな表情。
「ダイエット中なの……」
「はあ……?」
「おう!ジャミ公おもしれえなあ、階段から落ちて頭打ったんだと?
ガハハ!普段から抜けてると思ったけどなあ、ガハ、ガハ、ガハハ!!」
「キャプテン、最初から飛ばして飲み過ぎですぎゃ、お酒は控えないと……」
「うるせーんだよ、ゲラ=ハはよう!こんな時だからこそ飲むんじゃねえか!
ガハハハ!」
「お前……」
「?」
グレイがまじまじとアイシャを見つめた。
「実はあの馬鹿じゃないんだろう……?」
「!!!」
「……なんてな、冗談だ、……気にするな……、ふっ……」
グレイはそう言うと、髪を掻き上げた。
(……な、なんなのよう、もう~……)
「お~い、しけてんじゃねえぞオラ、お前今日やけに表情が硬いじゃねえか、
飲まなきゃ駄目だぞっ!オラ、飲め飲め!」
出来上がり、更に酒癖が悪くなったホークは、本当は未成年の筈の
アイシャのコップにビールを注ぎ始める。外観は20歳のジャミルなので……。
「ホーク、あんまりジャミルにお酒飲ませないでよお、後始末が
大変なんだからさあ~……」
「……うるせんだよ、黙れダウド、今日はぁ、……無礼講なんだ、ひひ……」
「キャプテン……、いつも無礼講じゃないですか、ぎゃ……」
「もうっ!飲むわよっ!とことん飲んでやるんだからっ!!」
アイシャはやけになり、コップに注がれたビールをぐびぐび飲み始めた。
「……ぷはあ~……」
「おお、ジャミ公……、イイ飲みっぷりだなあ!やっぱりおめえはこうで
なくっちゃなあ!ガハ、ガハ、ガハハ!」
「飲むわよっ!……もっとっ!!」
アイシャは自らコップにビールを注いで更に勢いよく飲み始める。
「ういっく、ひっく……」
「おお!すげえ飲みっぷりだなあ!それでいいんだっ、
ガハハハハ!オラオラ、もっと飲めっ!!」
「……キャプテン、いい加減にして下さいぎゃ!!」
ホークのあまりの過ぎた無礼講ぶりに遂にゲラ=ハも呆れて切れる。
「ジャミル……、君、今日、階段から落ちたんだろ?駄目だよ、
そんなに飲んじゃ!もうこれで止め……」
「……アル、何か変、……頭ふわふわするの…、ふぃっく、
……あれ?あれ?おかしいなあ~……」
「ちょ、ジャミルっ!?」
「きゅう~……」
アイシャは隣に座っているアルベルトの肩にもたれ、そのまま眠ってしまう……。
(……あれ?何かおかしいな……、何でこんなに今日は
ジャミルが可愛くみえるんだろうか、あのジャミルがだよ……、
おかしいなあ……、僕、どうかしちゃったのかなあ……?)
ドギマギしながら、もう一度、眠っているジャミル……
……(中身はアイシャ……)の表情を覗ってみる。
「……ふにゅうにゅ~……、にゅ……、あっつーい……、
身体、ぽかぽか……」
(う、うわっ!……やばい、やばいよこれっ!な、何なんだろう……、
一体何が起きてるんだ……、あ、ああああ~……)
何が何だか分からず、アルベルトの頭もパニックになり始めていた……。
(……違う、あれ違う……、ジャミルじゃないよお……、どういう事……)
そして、昼間脅えていたダウドまで冷静になり、等々異変に感づき始めている。
zokuダチ。セッション25