『夢魔』

熱帯夜の悪夢
ただそれだけのこと


『夢魔』


鍵をかけないで眠る夜
気紛れな来訪者を待つ夜
あの大きな手はまた
アタシを押さえつけ従わせる

分かっていて従うのだと
貴方は理解しているだろうか
顔も見えない暗闇で跪けと
言われればそうするしかない

快楽に堕ちたわけじゃない
だけど快楽に弱い振り
貴方は押し殺した笑みで
喜んでくれるからいいの

声だけを頼りに縋りつき
声を覚えて欲しくて高く鳴いた
夜は何処までも公平で
アタシ達ふたりを取り残す

朝の光は残酷なまでに
貴方の居場所を奪うから
暗闇に蠢く大蛇のように
この身を好きなだけ犯せばいい

アタシにとって正義とは貴方で
悪とは貴方以外でしかない
見知らぬ人の悲鳴なんて
聞こえないのだから知らないわ

どんな罪も黙して受け入れ
甘やかし溶かしてあげる
溢れ零れる愛が惜しくて
舌を這わすアタシを見てね



「朝がくれば素知らぬ顔でいつも通り」

『夢魔』

『夢魔』

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-08-12

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