zokuダチ。セッション21

エピ 81・82・83・84

夏休みは計画立てないで

「……みらいちゃん達も、いろはちゃん達も、もうすぐ夏休みなのね」

やや雨模様気味の空を見ながらアイシャがぽつりと呟いた。

「……一年中、夏休みみたいなモンの俺達には関係ない話だろ……」

「そうだけど、ねえ、私達も何処か行きたい……よね?」

さっきから、やけにアイシャがジャミルの方をちらちら見ている。
これは何処かへ連れて行けと言う、哀願である。

「今年の私達の夏はまだ始まったばっかりなんだからっ!
海や山の他にも何処か楽しい処あるかなあ?ねえっ、ねえ、
ねえねえねえっ!」

「……セッカチな奴、たく……んで、欲張りだなあ~……」

「ぶー!」

……段々とアイシャの口調に熱が入って来た為、こうなると
止まらなくなるのでジャミルは冷や汗を掻き始めた。

「ねえ、アイシャ、又デパート行くけど、一緒に行くかい?」

バーバラがアイシャを探してジャミルの部屋に顔を出した。

「あっ、行くっ!連れてって!」

(……やれやれ、まーた化粧品か、幾つ持ってりゃ気が済むんだか……、
全くオバちゃんはキリがないでしゅねーっ!)

「……何だいっ、ジャミルっ!!」

「何でもねえよ……」

「あんたも来なよ、どうせ一日部屋でゴロゴロ、屁をこいて
終わるんだからさあ……」

「やだよ……、荷物持ちさせる気満々なんだろ……」

バーバラから顔を背けるジャミル……。

「あら?ご名答さんだね、けどちゃんとお礼ぐらいはさせて貰おうと
思ってんだけどさ、玉には食事ぐらい奢るよ、……どうだい……?」

「……」

「いいじゃないっ、いこーいこーっ!はい、決まりーっ!!」

「おい、勝手に決めんなよっ、アイシャっ……!」

「決まったね、じゃあ支度しておいで、待ってるからさ」

「はあーいっ!」

「……やっぱりこうなんのか、まあ、飯付きだからいいけど……」

「ほんっとーにジャミルったら食べる事しか頭にないんだからっ!」

「うるせーなっ、俺の生きがいだよっ!わりィかっての!」

「何よっ!ジャミルのバカっ!!」

……二人はお互いに顔を見合わせ、舌を出しアカンベーをするのであった。


そして、デパート。

外は曇りでもムシムシ暑い上に、……中は省エネの為、冷房も控えめで……。

「おーい、何処まで行くんだよ……」

「先に洋服見るんだよ、沢山回る処はあるんだからねっ!」

「わーいっ!新しいワンピっ!」

「うげえ……、あのさ、俺、ちょっと行きたい階があるんだけど、
行って来ていい?」

「ああ、いいよ、試着とかもするからね、ゆっくり行っといで!」

「じゃあな……」

これは相当時間が掛かりそうだなと、ジャミルは改めて女達の
凄さを思い知る。

「どれ、サービスで、あいつの洋服も見繕ってやろうかね……」

バーバラはアイシャを連れていそいそと歩き回り、メンズ服売り場の
場所まで足を運んだ。

「これなんかよくないかい?最初からあそこ用に穴が開いてるトランクス!」

「バ、バーバラってば……、もう~……」


ジャミルは何処へ行ったかと思えば、本売り場で雑誌を立ち読みしていた。
アイシャに言われた事を気に掛けて、旅行雑誌を見ていたのである。
こ難しい本を読むと、普段は酔って目が回ってゲロるジャミ公ではあるが。

「……確かに、夏はこれからだからな……、常夏の島、ハワイ……、
無理、行けねえっつーの……、精々近くの海だよなあ~……、
後は……、ドズニーランドか……、これも予算の関係で俺には無理……」

ジャミルは諦めて、雑誌をパタッと閉じた。

「まあ、近場でも楽しめりゃ平気だろ、うん……、さて……」

ジャミルは思い出した様に、ゲームコーナーの方へ向かう。

「さあー、等デパート開店○周年記念、福引ですよーっ!
お楽しみ賞品がいっぱいですよーっ!!!」

「福引か、まあ絶対一等なんか当たんねーし、詐欺だよな、くだらね……」
……チラッ、チラッ、チラ……」

ゲーセン方面に家具売り場が有り、近くで福引を行っている。
そのまま通り過ぎようとしたが、一等の景品が気になり、周りの人間を
かき分け、景品案内を覗き込む。

「ちょっとわりィすね、……えーっと、一等……、……ハ、ハワイっ!?」

……もう、この景品名はお約束言うか、定番ですね……

「えーと、この福引券て、何買ったら貰えんだい?」

ジャミルは近場にいたおばちゃんに聞いてみる。

「まあ、何でもいいから千円以上此処で買い物しまくる事だね、はいよ、
どいとくれっ、フンっ!!」

「うわあ~……」

威勢のいいおばちゃんは券を握り締め、戦場に向かったが、戦利品はやはり
ポケットティッシュ沢山の様子であった。

「……やっぱ、ああなるよなあ~、当たるワケねえし、だけど、
まぐれって事も……、もしかしたら……、お、俺と……アイシャの……、
二人のアイランド……」

ジャミルは急に決意すると、何でもいいからと取りあえず買い物しまくり
1枚だけどうにか貰った券を握りしめ、福引場へダッシュする……。

「俺とアイシャのっ……!2人のアイランドっ!!……うおおおおーー!!」

「はい、券一枚ですね、ではどうぞっ!!」

周りも見守る中、ジャミルは勢いを込め、抽選機を回す……。

「出ろっ……、2人の……、アイランドオオおおーーっ!!
ふんんーーっ!!」

……ガラガラガラ……

「おおおっ……!?」

「出ましたっ……、一等でえええーーすっ!!」

「うそっ、マ、マジで……、本当に……?嘘……、夢じゃないんだろうな……、
は、ははは……」

ジャミルは本当に赤玉を引き当ててしまった喜びと衝撃……、ショックで
その場から動けなくなった。

「兄ちゃん凄いな、運がいいよ!」

「凄いですねっ!!」

周りのおじちゃん、おばちゃん達もパチパチ拍手しまくる。

「え、えへへへ……」

「改めまして、おめでとうございまーすっ!では、ホテルレストラン、
ハワイのバイキング無料ご招待券ご贈呈です!!」

「は、はいい……?」

「どうぞっ!!」

またまた飛び出た衝撃の言葉に……、ジャミルは再びその場に固まる……。

「あの、ハワイって……、旅行先じゃねえの……?」

「はあ、レストランの無料バイキング券ですが……」

「えっと、……あああ~っ!ホ、ホントだ……、ホテルレストラン
ハワイ……、バイキング無料招待券……、とほほのほ~……、紛らわしい
名前付けるんじゃねえっつーの……」

ジャミルが妄想していた二人のアイランドはあっと言う間に音を立てて
ガラガラ崩れ落ちた……。



「んで、奢ってくれるって言ってた飯も、結局フードコートの
格安ラーメンかよっ!」

「……贅沢言うんじゃないよっ!食い捲り券当てたんだろが!
ったく!!」

「カレーも美味しいわよ、私の分、分けてあげようか?」

「要らねえ……、はあ、ハワイ詐欺だ……」

アイシャに慰められるが、ジャミルは今は食い捲り券より、2人の
アイランドが忘れられず……。

「ねえ、バーバラも奢って貰うでしょ?」

「ん?あたしは遠慮しとくよ、此処の処、肉付きが激しくてさ、
ちょっと遠慮するよ……、アンタ達だけで行っといで……、また
エステ通いしないと……」

「ははっ!どうりでな、その段々腹っ!……年だな!」

「……るさいよっ!」

ジャミルを思いっきりブン殴るバーバラ。

「ちくしょう、……こうなったら食って食って食い捲って
やっかんな!」

「ふう、……アイシャ、あいつこそ気を付けてやんな、注意して
やんないとブタになるからさ……、すーぐ調子に乗るんだから、
最近のビールっ腹のホークもだけどさ……、やれやれ……」

葉巻を吸い、バーバラが急に浮かれ出したジャミルの方を見た。

「え?え、あはは、そうだね……」

ジャミルとアイシャの危ない一日

……今日は、どういう訳か、マンション内に残っているのは
ジャミルとアイシャしかいなかった。学生さん達は当然学校、
しんのすけとボーちゃんは幼稚園、バーバラ、シフ、みさえの、
年増オババトリオは集団エステ……、その他の連中も今日は
全員外出、そう言う訳で、現在マンションに残っているのは
この2人だけ。最も、シフはほぼ強引にバーバラに連れて
行かれたのではあったが。


「本当に静かだね、私達以外誰もいないなんてね」

「ああ……」

「なーんか変な感じだねっ、ふふ」

「ああ……」

「……変なのはジャミルもよね……、はあ、お茶飲む?」

「ああ……」

アイシャは呆れながらお湯を沸かす準備を始める。

(やばい、やばいんだよ、この状況……、……あそこがビンビン
立ってらあ……、クソッ……)

「電気ポットにお水淹れてっと……」

ジャミルは何となく、改めてアイシャの方を見る。今日はこの間
デパートで買った新しい夏用のサスペンダー式ジャンパースカートを
着用していた。

「……」

「おい、アイシャっ!水、漏れてるっ!ポットから!入れ過ぎだろっ!」

「え?あ、ああ!いっけないっ!溢れちゃったあ~、あーあ……、
何か考え事しちゃってて……」

「ったく、気を付けろよ、ドジっ!」

文句を言いながらアイシャにタオルをほおり投げた。

「何よっ!ジャミルに言われたくないですよーだ!べえー!!」

(……可愛いなあ、……あああ、ちくしょう……、何なんだよ、
この可愛さはよ……、反則じゃねえか!)

心で興奮しながら、ジャミルはますますやばくなっていく
自分の股を必死で制御する。

「よいしょ、これでOK、んーっと、何かお菓子ある?」

「昨日、夜に全部食っちまった、腹が減って……」

「全くもう、本当に食いしん坊なんだからっ!……私の部屋に貰った
ドーナツがあるわ、持って来るね、ちょっと待っててね!」

「宜しく……」

アイシャはスカートをひらひら靡かせ部屋を一旦出て行く。その様子を
眺めながらジャミルは今日この上ない幸せを感じていた……。

「やっちまうか?……俺……、お、狼になるか……?けどなあ、
大事な時にっ……、いつものパターンだと絶対、いっつも邪魔が
入るからなあ、も、もしもの時にでも……、ダウドが帰って来て、
あー!何やってるんだよおおお……!!とか……、ああああっ!!」

「……ジャミル、何やってるの?頭抱えて……、どうかした?」

ドーナツを持って、アイシャがジャミルの部屋に戻って来る。

「いや、ちょっと、何でもねえ……、はは……」

「はいこれ、貰い物だけど、メスタードーナツっ!あ、丁度
お湯も沸くわね!」

アイシャはポットから沸いたお湯を急須に注ぎ、お茶を淹れる。
ドーナツから漂うシナモンの甘い香りとお茶の湯気が部屋中に
広がった。2人は早速ドーナツに口を付ける。

「おいしいっ!ふふ、チビちゃんにも食べさせてあげたかったなあ……」

「いや、……今日はこれでいいんだよ……」

「?」

「い、いや、何でも……」

「本当に今日は変なジャミルねえ……」

「あ、あのさ、お前この間どっか行きたいって言ってただろ、
当たったバイキング券は別として……、何処か連れてってやるよ、
まあ、近場になっちゃうけどさ……」

「あの話?う、うん、いいわよ、無理しなくて……、えへへ、
ちょっと我儘言っちゃったね、本当にごめんね……」

「いやいや、大丈夫だっ!お兄さんに任せたまえ!そりゃ金の掛る処は
無理だけどな、近場の海ぐらいはどうにかなるからさ、山でもいいし、まあ
大船に乗った気で任せな!」

「やーだー、何か船沈んじゃいそう、あははっ!」

「ちょ、失礼な奴だなっ!!俺はタイ○ニックじゃねえぞ!」

「冗談だよ、じゃあ、期待しちゃうね!」

アイシャは口元に手を当ててジャミルに笑顔を見せた。

(やべえ、可愛い……、最高潮……、うわくそっ、……ああああっ!!)

「ジャミル、どうしたの…、お腹でも痛いの?大丈夫……?」

「い、いや、大丈夫だよ、ははっ、はははっ!」

心配いして側に寄ってくるアイシャから、……突き立っているあそこを
見られまいと、ジャミルは必死でぱっと股間を庇った。

「本当に……?私、お薬持ってこようか……?」

「ちょっ!う、うわあああー!顔、顔近いっ!!あああああっ!?」

「……ジャミル……?」

「駄目だっ、……俺っ!!」

……アイシャからほんのりと感じる甘いリップの香りに我慢出来ず、
ジャミルは我を忘れ、等々アイシャを抱きしめようとしたが……。


……すんませーん、誰かいるかーーい!?


「あっ、お客さんかしら、私見てくるっ!!」

エントランス玄関から此処まで聞こえる様な野太い濁声がし、
アイシャが率先して見に行く。……アイシャを抱こうと思い切り
ジャンプしたジャミルはお約束でスカシを食らい、その場に床に
突っ伏して倒れた。

「……結局こうなんのかよ……」


「早くしろよっ!誰もいねーのかってんだよ!!」

アイシャが急いでエントランスまで行くと、玄関先にタチの悪そうな男が
足を組んで座ってイライラしていた。

「すみません、あの……、何か御用ですか……?」

「お嬢ちゃん、此処のマンションの人?他に誰か大人の人で住んでる人
いないの?」

「今日は皆さん出掛けてます……」

「珍しいねえ、集団逃走か、仕方ねえ、んじゃ嬢ちゃんでもいいや、ちょっと
こっち来てよ……」

「だから、何なんですか……?」

男の傲慢な態度にアイシャはイラッとし始める……。

「嬢ちゃん、あんたも年頃でしょ?お洒落とか好きでしょ?
……これどう?ローンでいいからさ、買わない……?なーに、一番
お安いので100万ぐらいだよ」

男は持っていたカバンから明らかに偽物と思える宝石のついた
ネックレスや指輪をいそいそと取り出し、アイシャに見せた。

「……そんな物、私にだって玩具だって分るわ!馬鹿にしないでっ!!
帰ってっ!!」

「生意気言うんじゃねえよ、ガキがよ、俺を誰だとおもってんだっ!
ゴラア!!ガキが、このガキめがあ!!ガキめがあ!!」

男は着ていたスーツを脱ぎだすと、Yシャツを捲り、腕の入れ墨を
アイシャに見せ脅す。しかしアイシャも躊躇せず、男に平気で強気な
態度を見せた。

「ガキガキ言わないでっ!おじさんが誰だろうが私には関係ないわよ!
もうっ、帰ってよっ!!」

「……メスガキっ!!なめんじゃねえっ!!」

切れた男は刃物を取り出し、アイシャに襲い掛かろうとする……。

「帰れっつってんだよ、帰れ……、よくも邪魔しやがってからに……」

駆けつけたジャミルが速攻で男を素早く蹴り倒し、男は持っていた
刃物を床に落とした。

「いっ、……く、くそっ!!」

「ジャミルっ!」

アイシャは急いでジャミルの側に駆け寄り、ジャミルの後ろに隠れ、
ジャミルも後ろ手にアイシャを庇う。

「……ガキ共が、畜生!舐めやがってからによ、大人を怒らせると
どういう事になるか思いしれや……」

だからジャミルも成人者なんですが……、やはり舐められている。
男は慌て、もう一度、落とした刃物を拾おうとするが……。

「ぴいっ!!おじさん、だあれっ!!ジャミルとアイシャいじめちゃ
駄目だよっ!!」

「……チビっ!」

「チビちゃんっ!!」

チビが現れ、男の前で、炎のブレスを吐いて脅した。

「ド……、ドラゴンっ!?……バケモノマンションだああーーっ!!
わあああーーっ!!」

男は大慌てで逃走し、……カバンごと置いて逃走してしまった……。

「ぎゅっぴ!」

「まあ、俺だけでも大丈夫だったけどな、……チビ、助かったよ、
変なの追っ払ってくれてありがとな!」

「ぴいっ!今日はチビ、お仕事お休みだから来てみたんだけど……、
……怖いおじさんがいて、びっくりしたきゅぴ!」

「有難う~、チビちゃん、……ジャミルも有難う……」

アイシャは、チビをぎゅっとハグした。

「……アイシャ、怪我してない?大丈夫きゅぴ……?」

「うん、大丈夫よ、ジャミルとチビちゃんが助けに来てくれたから……、
本当に有難う!」

「♪ぴいっ!」

そう言ってアイシャは再びチビを強く抱きしめ、チビもアイシャの頬を
ペロペロ舐めた。

「やれやれ、茶の飲み直しだ!チビも来いよ、ドーナツあんぞ!」

「きゅぴーっ!ドーナツ!!」

もう一度、お湯を沸かし直して、チビも囲んで2人と1匹はドーナツを
頬張るのであった。

「良かった、丁度ね、チビちゃんにもドーナツあげたいなあーって
思ってたの、うふふ!」

「きゅっぴ!本当にドーナツっておいしーねえ!」

「もう、チビちゃんたら、ほらほら……」

アイシャはシナモンだらけのチビの口周りをハンカチで拭いてやる。

(……やれやれ、まあ、これはこれでいいのかもな……)

結局、狼になる事は出来なかったが、幸せそうなアイシャとチビの
姿を見て、いつの間にかジャミルのお股の奮起も今日は治まって
しまったのだった。

それから数日後、……押し売り男の忘れ物のアクセセットは、
野原家のひまわりの元へと贈呈されたが、すぐに玩具だと
気づき彼女は不満顔をしたそうである。

「たいやーっ!(ケッ、なめんじゃねーっ!!)」

Miiニュースネタ 本好きのアルベルトさん

ある日の夜、ジャミルは非常に珍しいある人物から相談を受けた。
シフである。最近、アルベルトの本好きが度を過ぎており、幾ら
注意しても聴かず、等々電話帳にまで手を出し始めた、との事。

「……やだよ、俺、本嫌いなの知ってんだろ?……特に活字たっぷりの
文学本はよ……、表紙見ただけで吐き気がする……、関わりたくねえ……」

「うるさいっ!アンタ管理人だろ!……何とかしろっ!このままだと
ボウヤの修行にも支障をきたすんだよっ!最近は風呂場にまで本を
持ち込んでのぼせるまで読んでんだよ!」

……管理人がアルベルトの極度の本好きをどうにかするのは
関係ねえだろうと思うジャミル。シフの話によると、夜間稽古で
アルベルトの部屋まで呼びに行ったものの、幾ら呼んでも返事が
ないので、勝手に部屋に上がり込んだ処、風呂場で本を抱えたまま
浴槽に沈んでいたらしい。……もしも、そのままシフが気づかなかったら、
アルベルトは多分溺死していただろう。

「だからさあ、何でもかんでも困りごとが起きたら八つ当たりの様に
俺の所にくるなっての、俺は何でも引き受け屋じゃねえんだよ……、
それに師匠のアンタが言って聞かねえんだから……俺なんか余計に
言う事聞くワケねえだろ……」

「ハア、そうだねえ、アンタに言ってもどうにかなる問題じゃないか、
……悪かったな」

シフは機嫌の悪いままジャミルの部屋を後にする。多分、苛々して
当たり場が無く、どうしようもないので、ジャミルの所に愚痴を
ブンマケに来たのだろうが。

「わるいけど、どうにもなりませんよ……、と、俺にはよ」

そう言いながら就寝準備を始めようとした、その途端。

「はーっ、ジャミルー!大変なのーっ!ちょっと出しておいたら
冷凍みかんがもう溶けちゃったーっ!気候が熱すぎる所為かなあーっ!!
もうーっ!地球温暖化はんたーいっ!」

「ジャミルはーん!たすけてーなあ!……ウスラ丸井がいじめるーーっ!!」

「うるせーこの野郎!誰がウスラだっ!しかもテメー人を呼び捨てに
しやがったなこの野郎!!」

「ジャミルさーん!ゆうなでーす!新鮮バナナのお届けでーすっ!」

「わんわん!ジャミル、いっしょにあそぼーっ!」


「……ガキはさっさと寝ろーーーっ!!」


こうして、意味も無く、住人達はジャミルの部屋に転がり込んでは
ストレスを発散していったそうな。


そして、また日は変わり、……次の日の夜。

「ジャミル、いるかい?」

「アルか?いいよ、入れよ……」

「うん、じゃあ……」

のそのそとアルベルトが部屋に入ってくる。……昨夜と反対で
今度はこっちかよ、と、思ったものの。

「で、なんだ?」

「うううう~……」

「ぎょ!」

ジャミルの顔を見た途端、いきなりアルベルトが号泣し始める。

「な、何泣いてんだよ、オメー、いきなり……」

「ご、ごめん、ちょっとショックな事が有った物で……、シフが……」

恐らくシフに何か怒鳴られたのだろうが。……故郷の恐い姉といい、
どうもアルベルトはこの件になるとダウドに負けずヘタレ化する。
……シフにはどうしても立場が弱く、頭も上がらない所為もあり……。

「泣かれてても困るんだよ、取りあえず言ってみ……」

「うん……、シフがああああーー!……僕の本、み、みんな捨てろって
言うんだよ!自分で捨てなきゃあたしが捨ててやるって!……幾ら何でも
酷いと思わないかい……?」

……まるで言う事聞かねえ幼稚園児と母親じゃねえか……、と、
思うジャミル。

「はあ、遂にほぼ強行手段に出たか……、けど、オメーもわりィんだぞ、
アル!」

「何がさ!……僕は何も悪い事はしていない!……絶対!」

「……」

アルベルトはメソメソをやめ、急にきりっとした顔つきになる。
こう言う糞真面目で頑固で真っ直ぐに己の信念を貫き通そうとする……、
そんな処がジャミルは彼の最も苦手とする部分でもあった。

「……本ばっか読んでるからだろ……、メスゴリ……、昨日、シフも
愚痴ってたよ、流石に限度があるとさ、風呂場にまで本持ち込んで
上せて溺死しそうになったんだろ……?」

「!!言ったな、くそっ……、い、いいじゃないか!読書は僕の
趣味なんだから……」

「……それが過剰杉なんだっつってんだよっ!オメーの場合っ!
少しは本から離れろっ!!」

昨日もアルベルトは外出中、本を夢中で読みながら歩き電柱に
衝突した。しかもマンションに戻ってシフに注意されるまで
額から出血していたのにも気が付かず。

「……人に言う前にさ、……ジャミルも気を付けた方がいいんじゃ
ないのかな?アイシャも昨日、来たよ、僕の所に……」

「な、何がだよ……」

アルベルトは急に黒い顔つきになると立ち上がり、とてとてと
ジャミルの部屋の押し入れの前に立ち……、そして勢い良く、
押し入れの戸を開けた。

「ほら……」

押し入れの中には。……錯乱した大量の煙草の箱の山と、
……溜まったエロ本。

「……きゃああああーーーーっ!!」


昨夜、シフがジャミ公の部屋に訪れていたのと、ほぼ同じ時刻に……、
アイシャもアルベルトの部屋に相談に訪れていた。

「……最近ね、何だかまた心配なの……」

「うん、ジャミルの事かい?」

「分るのね……、最近、また煙草の量が増えた様な気がするの……、
うん、この話じゃあの人、多分吸い過ぎでも死なないと思うから、
大丈夫だと……、その辺は諦めているの……」

「うん……」

「ぐすっ……、ひっく……」

「!!ア、アイシャ、どうしたのさ、ほらほら、泣かないで……、
話してごらん、ね……?」

アルベルトが宥めると、アイシャは漸く落ち着き、嗚咽を止めた。

「この間……、夜……、用があって……、ジャミルのお部屋に行ったら、
返事がないの……、鍵は開けっ放しだし、心配だったから……、私、
お部屋に勝手に入っちゃったの、そ、そしたら……、う……、あーーんっ!!」

「……アイシャっ!!」

アイシャ、再び号泣しだす。どうもあまりこの件は彼女自身も
思い出したくなかった様だが、泣きながらアルベルトに事情を話した。
……どうやら、風呂でエロ本を読んで噴気し、……そのままあそこ
丸出しで風呂場の床に倒れていたらしい……。そして、アイシャは
倒れているジャミルのあそこをモロに見てしまい……。

「びっくりしたから……、思わず殴っちゃったの……、そしたら、
ジャミル、そこの処だけ、記憶が飛んじゃったらしくて……、ジャミル
自身は覚えていない筈よ……、で、でも……、少しは謹んで欲しいの
ようーーっ!ジャミルのバカーーーっ!!」


「あの野郎ーーっ!!……この間からどうも後頭部がイテエと思ったらっ!」

「……と、言う事……、です、泣いてたよ、アイシャ……、つまり、
僕が何を言いたいかと言うとだね……、君も僕に偉そうな事、言える
立場じゃないだろう……、と、言う事です」

「う、う……」

「うふふ、うふふ、う~ふふふ……♡」

アルベルトは腹黒モードになると、ジャミルに詰め寄る……。
……結局。この男、ジャミルもアイシャの尻には立場が弱いと
言う事である。次の日。ジャミルの部屋の押し入れの中には、
アルベルトの部屋の本が大量に押し込まれていた。シフの機嫌が
直るまでの間、彼の本はジャミルの部屋の押し入れの中に避難
させられ、こっそり守って貰う事になったのであった。

チビのお散歩 1

ある日、チビは郵便の仕事がお休みの為、マンションに遊びに来た。
まずはジャミルの部屋に向かうが、本日は本人不在。

「ぴいー?ジャミルいる?遊びに来たよー」

礼儀も兼ねているので一応きちんとドアをチビ式でペチペチ叩き、
ノックする。

「……返事がないきゅぴ、勝手に入るきゅぴ!」

こういう時は、少々強引なのである。

「ぴ、ジャミル、いない……、……ご本出しっぱなし、……駄目!」

チビは散らかった雑誌を積みかせね、雑誌タワーを作った。

「出来た、……このご本、裸の女の人がいっぱいる、変な本!」

チビはジャミルの部屋を出、今度はダウドの部屋に向かう。

「ダウー、チビだよ、遊びに来たよおー!」

「ああ、チビちゃん、いらっしゃい!」

「きゅぴ?ダウ、何してるの?」

「うん、明日晴れる様にね……、ちょっとてるてる坊主をね……、
ここの処、雨続きだからさあ……」

「……ふう~ん、このてるてる坊主さん、誰かに似てるねえ……」

「あはは、分る?本当はてるてるジャミルなんだよお、ジャミルの
図々しさで雨が呆れてどっか行っちゃう様にと……」

「ふう~ん?」

……この男は、時々、とんでもない事を考える……。

「でも、お顔変だよお、へのへのもへじさんだよ……」

「いいんだよ、気にしない、気にしない」

ダウドはそう言って、てるてるジャミルを窓の軒下にぶら下げた。

「明日、晴れるといいねえ……」

「うん、そうだねえ、もしも晴れなかったら……、ひ、ひひひ……、
許さないよお……」

「……ぴ、じゃあ、チビ行くね……、またね……」

「……五寸釘打っちゃうぞお~、ひひひひ……」


何だかダウドが良く分からなくなってきたので、チビは部屋を出た。

「折角だから、マンションの皆にご挨拶して回ろ……」

と、前方からバカップルがやって来た。紺若ゆうなとマモルである。

「ねえねえ、まも君、もうすぐ夏休みだねえ、夏休みになったら私、
もっと沢山バナナ食べちゃうよ!」

「……夏休みも何も関係なく、ゆーなはバナナ食べまくってる
じゃないか……、はあ、少しバナナから離れろよ……」

「えーっ、やだよ、そんなの……」

「こんにちはきゅぴ!」

チビが2人に挨拶する。

「あ、ドラゴン印の郵便屋さんのチビちゃん!こーんにーちーわー!」

「やあ……」

「どうもきゅぴ」

「この間は、バナナのお届けどうも有難うございましたー!」

「……あれは重かったきゅぴ……」

「あ、あのね、近いうちに又今度はバナナ5箱、バマゾンさんに
頼むのでお届けお願いしまあーす!」

「ぎゅ、……ぎゅっぴ……」

「ご、ごめんよ、じゃあ、僕らはこれで……」

「じゃあね、チビちゃん!」

マモルは慌ててゆうなを連れ、その場を去って行った。

「ぴい~、ジャミル、どこにお出掛けしたのかな?アイシャなら
いるかなあ……、ぴきゅ?」

更に前方から、影の薄いピエロが走って来た。

「ほっ、ほっ、ほっ……」

「……ポナルどさん、何で走ってるの……?」

「はっは!ポナルどじゃないよ!ドナルドだよ!ハハっ!」

「ぴい……」

「筋肉を鍛える為に特訓しているんだよ!ドナルドマラソンだよ!
大分筋肉が付いたと思うんだけど、見てくれるかな?」

ピエロはそう言って、服を脱ぎ、逞しい筋肉をチビに
披露しようとする、が。

「どうだい!?……あら~?」

「……ぎゅっぴーーっ!!」

ドナルドの筋肉処か、いつものタプタプ脂肪腹全開、下半身には
何も履いておらずで、チビは怯えて逃げていってしまった。

「おやー?おやおやー……?何で逃げるのかなー?」

「はあー、恐かった……、……そうだ、次はアルのお部屋に
行ってみよう……」

チビはふよふよ飛びながら、アルベルトの部屋を目指す。と、
エントランス付近に女の子3人が集まり、何やら揉めていた。
魔法ガールズだった。

「食べてないよ、私、食べてないったらあ!」

「……昨日の土曜日、午前中部屋にいたのは、はーちゃん
だけだったでしょ!」

「リコ、そんなに怒らなくても……」

ちなみに、此処のマンションでグループで部屋を借り、共同で
住んでいるのは、まほプリ組、野原ファミリーである。

どうやら、昨日、みらいの元に届いたお中元のみかん一箱が
急に部屋から消えたらしい。と、いう事であった。それを今頃に
なってはーちゃんがみらい達に口を割ったらしかった。

「ぴ、ケンカ駄目きゅぴ……、やめて……」

「あっ、チビちゃん、こんにちは!」

みらいがチビに手を振った。

「みらいっ!今は大事な話をしてるんだからっ!あ、ごめんなさいね、
チビちゃん、私達、今取り込み中で……」

「チビちゃーん、聞いてよーっ!部屋に置いてあったお中元のみかん、
箱ごと急に消えちゃったの、……全部私が食べて箱だけ捨てたんじゃ
ないのって、リコが言うのっ!幾ら何でも私だって箱ごとなんか一人で
食べないよーっ!」

「……じゃあ、何で消えたのよ!おかしいじゃない!」

「ぴきゅ……」

チビが困っていると、女の子の匂いに釣られたのか、何かやって来た。

「やあ、レディ達、何を揉めているんだい?喧嘩は良くないぞ、
このオレに話してごらん?万事解決するぜっ?」

(……かっこつけマン来たきゅぴ、ちょっと齧りたいぎゅぴ……)

「ジタンさんには関係ないですよ、私達の事ですからっ!すぱっと
こっちで解決しますっ!」

「おお、リコ……、麗しいぞ、きっぱり言い切る君はやっぱ
かっこいいなあ~、ねえ、今度オレとデートしてよ!」

……結局、やはり目的はそっちの方らしい。

「とにかく私は……、みかんが消えた原因を知りたいのよ、みかんが
消える前ははーちゃんは何してたのか……、それも知りたいだけ!
私だって、はーちゃんがみかん全部一人で食べたなんて思ってないわよ……、
それは冗談だから……」

「……オレを無視しないでェ~……」

「ぴきゅ、昨日、皆の処にチビがお届けしたおちゅーげん?」

「うん、そう!私、確かにチビちゃんから受け取って、部屋に
持って行ったの、みらいのお婆ちゃんからだったよ、代表で私が
受け取ってハンコも押してちゃんとお部屋に運んだんだからっ!」

はーちゃんは両手を広げてオーバーに話した。

「その後、みかんが消えちゃったんだよねえ?」

指を口元に当て、みらいも不思議そうな顔をした。

「あのね、……もう夏なのに焼き芋屋さんが来たの、珍しいでしょ?
だから、つい……、それでね、焼き芋屋のお兄さん、喋り方が
面白かったんだよ!……イーモダーァ~、ウ~ィエエエエ……、
ハーヤークシナイトォォォイオイヨイヨ、……って」

「はーちゃん、それで外に出て行ったの……?」

リコが呆れた顔をする……。

「だ、だけど、その間にみかんが箱ごと無くなるなんて
普通思わないよ、もしもマンションに不法侵入者が入ったの
なら、誰かが見てる筈だからだからすぐに分ると思うし……、
でも、お婆ちゃんから、みかんは送ったって連絡は受けてたから……、
土曜日には届く筈よって……」

「……謎の、みかん紛失事件か……」

魔法ガールズとジタンは頭を抱える……。

(……?くんくん、くんくん、このニオイ……、分ったきゅぴ、
皆に分からない様に、黙ってこっそりお部屋に入れる……、こんな事
出来るのは、どう考えても……)

「チビちゃん、何処行くの?」

はーちゃんがチビに聞いた。

「ちょっと待っててね、すぐに戻るから……」

チビは怪しいニオイのする方向を目指して飛んで行った。

「このマンションの何処かのお部屋に犯人が隠れてるきゅぴ……」

zokuダチ。セッション21

zokuダチ。セッション21

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-08-10

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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