七ならべ 2024年7月

歩道に落ちた
月のつぶやき
震えるように
夜を揺らして
こころの壁に
散らかっている
押し込めていた
硬い感情
白いあかりに
晒してしまう
いつまで影を
追っているのか
そんな声さえ
聞こえなくなる
夏だからかも
しれないけれど
今週起きた
全てのことを
聞いて欲しくて
握ったままの
右手差し出す
(2024年7月13日)

二度と鳴らない
ラジオの前で
夜のおわりを
待ち続けてる
不自由顔の
素粒子たちが
遊び疲れる
頃合いをみて
これから出会う
惑星の地図
こっそり広げ
青く描かれた
ひし形の地に
位相のずれた
舟を浮かべる
風だけが知る
ぼくのこれから
(2024年7月19日)

太陽のつぶ
波に取り込み
はじけるように
ひかり輝く
それを大事に
吸い込んでいた
記憶のなかの
函館の海
迷うことさえ
楽しめていた
そんな時間を
取り戻すには
遅すぎたかも
しれないけれど
炭酸水を
鳴らしただけで
あの砂浜に
戻れるはずさ
空が晴れても
曇っていても
波の鼓動は
止まらないから
まぶたの裏に
広げたままの
ぼくだけの夏
(2024年7月22日)

しらないことを
しらないままで
いられたのなら
ねむれぬよるも
いろあざやかに
すごせたのかな
朝は何処にも
表情が無く
夢と現実
その境い目が
信じられずに
声を着替える
(2024年7月25日)

きみの不安が
なくなるように
どんな祈りを
ささげてみても
予期せぬ風が
吹き荒れるから
海はなかなか
凪いでくれない
ことばはただの
入れものだけど
そこに収めた
感情だけが
薬になると
信じてるから
重たい蓋を
きみが開けた日
いつかの丘で
また、語れたら
(2024年7月26日)

星のならびが
変化する夏
ひとのこころも
かたちが変わる
忘れることは
やさしさだから
離れゆくもの
波に乗せたら
終焉のない
海のいとなみ
そっと眺めて
本を閉じよう
だいじなものは
どんなときでも
球体のまま
動かないんだ
(2024年7月31日)

七ならべ 2024年7月

七ならべ 2024年7月

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-08-04

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